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しゃんたしゃん




「しゃんたしゃんだ。しゃんたしゃんがいっぱいだ」

「んんんんん゛~~~。そうだねえ。しゃんたしゃんがいっぱいだねえ~~~」


 サンタクロースの国にて。

 サンタクロースの露衣ろいは、脂下がった顔を下に向けながら、とろけきった声音で以てそう言った。

 ぴょこんと。

 頭の上部から狼の両耳を出し、ふくふくの頬のように全体的に丸々とした少年へと幼児化してしまった冬和とわに。


 あの日。

 十二本の薔薇の花束を贈ろうと、警察官の冬和が働いている警察署の前に立っていた露衣の胸に飛び込んできたのは、押収した薬を間違って飲んでしまい幼児化してしまった冬和だった。

 最初は狼の子どもの姿だった冬和は露衣のサンタクロースの格好を見ては、狼の耳の出た少年へと変化すると、すごいすごいと大はしゃぎで露衣の周囲を何度も何度も飛び跳ね続けていたのだ。

 乱舞驚喜している冬和の姿を見た、冬和と同じく警察官であり狼人間でもある銀牙ぎんがは露衣にとても厚かましいお願いだけどと前置きして頼んだのである。

 もしよかったら、元の姿に戻る為の方法を見つけるまで、面倒を見てくれないか。


『ちょっと息抜きをさせてやりたくて。忙しいサンタクロースさんに無理を言っているのは重々承知しているんだけどさ』


 申し訳なさそうに言う銀牙に、お任せくださいと胸を張って引き受けた露衣は、相棒のトナカイである綾斗あやとに連絡を取って事情を説明、上司に許可を取ってもらい、こうしてサンタクロースとトナカイと妖精しか立ち入る事が許されないサンタクロースの国へと冬和を連れて来たのであった。


「しゃんたしゃん。しゃんたしゃん」

「ううううううか~わ~い~い~~~」

「おい、仕事しろバカ相棒」


 仕事を疎かにするならそのガキを警察署に戻してくるぞと、綾斗が露衣を脅せば、露衣は背筋を伸ばして、贈り物のラッピングを超高速で丁寧にし続けるのであった。











(2024.12.19)




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