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星空の水瓶と、夢のひとしずく

作者: 逢乃 雫

色なき風が


空から樹々の梢へと



秋を、ひとしずく


また、ひとしずく



運んでくるように


染まりゆく並木通りの



秋づくひと葉


またひと葉は



揚羽のような


サフランイエロー



空を渡りゆく


燕たちの行き先を



地平線の彼方に


追いかけて



風蝶草がそよめく


夕紅の丘で



風のさわやぎを


頬に感じながら



()るさの月を


見送るように紅く



萌えるケイトウの


花は情熱を


心に燈すように




星月夜の空に


煌めきのひとしずく



夏空を奏でた


星の竪琴(たてごと)



ベガが西北の空へと


移りゆくとき



季節の第三楽章を


(そら)は奏で始めて



やがて南の空へ


浮かび上がる


みずがめ座の星々




星月夜の空に


やさしさのひとしずく



月のない紺碧の


ビロードのような夜に



だからこそ気づく


星たちのやさしい光



星空の水瓶から


煌めく光のひとしずくは



幸せとは何かを


ささやくように




いくつもの


星たちが宙には瞬いて



眩しい太陽の 


その向こうにも



街明かりで


照らされた向こうにも



この心の空にも


きっとたくさんの


星の光が瞬いて



日々の中にある


ひとつの笑顔


ひとつのやさしさ


ひとつの言の葉



そこにある


星の光のような


真心のひとしずく



それを心の水瓶に


大切に受けとめながら




色なき風が


空から樹々の梢へと



秋を、ひとしずく


また、ひとしずく



言の葉という


ひと葉ひと葉にも



実りへの


願いをこめながら



星月夜の宙に


浮かぶ星空の水瓶



心の水瓶にもまた


煌めく夢が、ひとしずく




















黄道十二星座の一つ、みずがめ座は、秋の南の空にあり、星の光はささやかですが、サダルスウド(最高の幸せ)、サダルメリク(王の幸せ)、サダクビア(秘密の幸せ)など多くの星がアラビア語で「幸せ」を意味します。


秋の月の入りは「るさの月」と呼ばれます。「星月夜ほしづきよ」は月のない夜に星が煌めく情景、「色なき風」は秋風のことです。


ビロードのような花のケイトウ(鶏頭)は、セロシア(ギリシャ語で「燃焼」)とも呼ばれ、花言葉は「情熱」です。風蝶草ふうちょうそう(クレオメ)は、風に舞う蝶のような花が秋に咲きます。


季節の星や花をモチーフに詩を描かせていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] >色なき風が >空から樹々の梢へと >秋を、ひとしずく >また、ひとしずく 冒頭からグッと引き込まれてしまいました。 「どうしたらこんな美しい文章が書けるのだろう?」と感動しました。 タイ…
[良い点]  サフランから浮かべるイメージに中東から南欧ともなれば、正しく星座絵の水瓶が浮かびます…☆  星や花に云われる言の葉までもがアラビア・ギリシャに繋がる不思議に、オスマン帝国の旅団が天文航法…
[良い点] 最初のほうの「秋を、ひとしずく また、ひとしずく 運んでくるように」という表現がいいですね。 季節の変化を流れではなく、しずくの積み重ねで表わすのは、素敵な感性ですね。 また、その先に現れ…
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