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ゆめ

作者: 灰皿


夢を見た。

私が通っていた中学校が突然崩壊した。

その後、一瞬で世界が真っ白になった。

私は直感でこれは死後の世界だ、と思った。


そこには大勢の同級生の姿があり、欠けている人間の名前を今いるメンバーで出し合っていた。

しかしその間に、たくさんの人がこの世界から消えていく。

きっと現実世界に戻っていったのだ、そう感じた。


でも私はそこから消えたくなかった。

一人ぼっちになってもいい。死んだあとに誰も悲しんでくれなくていい。

ただ生きるだけで精いっぱいだったあの世界には戻りたくなかった。


はじめは30人くらいいたのに、15人、10人と減っていった。

でも私は何も感じなかった。


“かえれてよかったね”とも思わなかった。感情は動かず、ただただ無だった。



ついに人数が3人になった。


それでも私の感情は動かない。

これでも揺るがない自分はどこかおかしいんじゃないか、と考え始めた。

それがきっかけとなり過去の記憶を辿った。

そしてやはりどうでもよいと思った。それほどに現実世界は苦痛だった。



ついにたったひとりになった。


なにも起こらない。


なにもない。


でも前の世界よりはずっと良い。



そう思っていると1人の同級生がふと現れた。

帰ったはずじゃなかったのか。

疑問に思い尋ねると、どうやら1年に1度ここに遊びに来られるらしかった。

もう1年経ったのか。成仏もせずにここで1人。あと何年繰り返すのだろう。


私はこの世界に度々来る人間たちと毎回ほんの少しだけ会話をした。

現実世界のことなんて聞きたくなかったんだ。



それを長い間繰り返した。

同級生は見る度に大人になっていっていた。


時が経ち、今まで面白がってこの世界に来ていた同級生もパッタリ来なくなった。

別に寂しくはない。向こうでうまくやっているんだろう。



そうして1人の時間を過ごしていると、思い出したようにパラパラと同級生たちが遊びに来はじめた。

嬉しそうに結婚の報告や出産の報告、大手企業のお偉いさんになったなどの報告にやってきたのだった。



私は成長もせず、何も変わらず過ごしている自分がどうしようもなく憎くなった。


そして私には特別な日が来ないのだ、と、悲しくなってしまった。






朝起きて泣いた。


逃げたいのに、逃げた先は地獄だった。


今だって現在の同級生の状況などを風のうわさで耳にして落ち込む毎日だ。

今この世界で逃げているから、夢と同じように私も成長していないのだ。

そして置いて行かれてしまったような気持ちになっている。勝手に。

私のこのもやもやした気持ちがあの夢を生み出してしまった。

この夢は2021年10月の下旬に見たのだが、あれからずっと頭から離れない。


置いていかないで わたしも連れていって


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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分の現実と向き合いたいけど、逃げたいときってありますよね。「夢」を中心に語られていますが、きっと脳が頑張ってもうひとつの世界をみせて居るのだと思います。 生きることだって、ひとつの抵抗だ…
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