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悪役令嬢キーワード

悪役令嬢は破滅したかった

作者: リィズ・ブランディシュカ



 私はどうやら悪役令嬢という存在であるらしい。

 それを知ったのは、七歳の誕生日の頃。

 使用人から、この世界が乙女ゲームの世界だという事を教えてもらった。


 悪役令嬢に待つのは破滅の運命のみ。

 慈悲も容赦もなく断罪される未来だけ。


 それを知った私は、必死になってその未来を回避しようと努力する。


 ……と、破滅回避の予定を立てていたのだが。


 途中で、冷静になり思いなおしてやめた。


 私は、したい事がある。だから、別に破滅されてもいいのだ。


 それに、とくにこの地位にも、家にも思い入れがなかったから。


 両親は私に愛情を注いでいないし、有力貴族にとりいるためのコマとしか思っていない。


 情はなく、あたたかな会話もしたことがない。


 だから、私は別に破滅してもかまわないのだ。


 私は、貴族にしては珍しく自由な生活の方が好きだし。







 というわけで。特に運命に逆らわなかったらこうなった。


婚約者「婚約破棄だ」


私(あ、どうも)


婚約者「俺はヒロインと共に生きる」


そうですか


婚約者「この国からでていけ」


はいはーい


 色々省略したが、特筆すべき事が何もなかったので、現実もこんなもんである。


 おなさけでいただいた馬車と少しのお金を持ち、着の身着のままの旅に突入した。






 馬車に揺られながら、未来について考える。


 さて、国を出たらどこに腰を落ち着けようか、と考えた所で使用人が追いついてきた。


 ん?


 何か、まだなんかあったっけ。


 私の悪事は全て断罪されたはずだけど。


「ちょっと、お嬢様、何で濡れ衣を着せられたまま追放されてるんですか。あれほど、破滅するから気を付けてくださいって言ったでしょう」


 いや、まあ。

 せっかく忠告してくれたのに無駄にしてしまったのはすごく申し訳ないけど、貴方には迷惑かからないようにしたし。


 他の人が道づれにならないように、いつも一人で行動してたでしょ。

 

「自由な方が好きなの」

「好きなの。じゃありません、今からでも遅くないので、濡れ衣をはらしてください。ほら、戻りますよ」


 ちょ、乗り込まないで。

 御者に方向転換させないで。


 自分がのってきた馬車に別れを告げないで。

 私が放り出したら、貴方道のど真ん中で遭難しちゃうでしょ。これじゃあ放りだせないでしょ。


「私は破滅したかったのに」


 膨れた態度でいると、同乗者の使用人が大きなため息。


「私には貴方に幸せになってもらうという目的があるんです。返しきれない恩を返さなくちゃならないんです」


 この使用人、昔どこかの道で行き倒れていたから、通りかかった時に拾ったのよね。

 その時のことを恩に思ってるから、どうにか返そうとしてくれるんだけど。


 私達、幸せの定義が異なってるから。


「美味しいご飯を食べてふかふかのベッドで眠って、温かい家庭を築く事が幸せだなんて思わない事ね!」

「大抵の人は普通それが幸せなんですよ! 絶対そっちの方が幸せですから! お嬢様の方が折れてください!」


 いつも話は平行線。







 まったく分からず屋め。


 はぁ、私は冒険者とか旅人になって、その日暮らしの生活を送りながら各地を旅したかったのに。


 私の主張なんか無視して、馬車はどこまでも引き返していくのだった。






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