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幼稚園のガーディアンナイトは諜報員(スパイ)  作者: 木場貴志
第3章 諜報員(スパイ)を襲う、ちっちゃな襲撃者
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第3章 諜報員(スパイ)を襲う、ちっちゃな襲撃者 その1

 翌朝。

 スッとすっきり目が覚めた。

 まだ、仕掛けた目覚ましは鳴っていない。

 時計の針はまだ6時前を示していた。

 予定していた起床時間にはだいぶ早いが、身体がもうスッキリとしてしまっていたので、二度寝する必要もなさそうだ。

 ゆっくりとベッドから身体を起こし、ベッドの上にあぐらをかいて座る。

 外は明るく晴れていて、分厚い遮光カーテンを開けると、眩しい朝陽がこれでもかというほどに部屋の中めがけて注ぎ込まれてくる。

 明るい朝日を浴びながら、大きく伸びをする。

 さあ、今日から新しい任務の始まりだ。

 ベッドから降りて、顔を洗って着替えると、だいたい6時半くらい。

 朝の職員食堂がそろそろ開く時間だ。




 朝食を食べ終わり、そのままコーヒーを片手に職員食堂に新聞が置いてあったので、それを一つ持ってきて目を通す。

 新聞ってヤツは、現地の情勢を知るのに極めてベーシックな情報源だ。

 政治問題はもちろん、この国の日常について、他愛ない雑多な記事の数々が載っているが、その中に重要な情報が隠れていることは珍しいことではない。

 そういう観点で見ていくと。

 ふむ……やっぱり、大酋長選は重要関心事ではあるんだな……と。

 一般国民には投票権がないはずなのだが、かなりの紙面が割かれている。

 それから……なんだ、これは?

 これは……飲み物か?

 ミルクとフルーツが混ざってて、少し冷やし固めてあるみたいな、そんな感じで……どうやら最近こっちでは流行っているらしい。

 なかなか街に出る機会は少ないだろうが、今度出る機会があったら試してみるか。

 こういうものは見聞きするよりも実際に試してみるのがいちばんだしな。

 外国で情報収集活動するなら、現地の習俗に精通するのは第一歩だからな。

 そんな感じで新聞を見ながらコーヒーを飲んでいると、気が付けばだいぶ職員食堂に客が増えてきていて。

 なんとなーく、俺の周囲にだけスペースが空いているような……。

 時計を見たら、もう7時を回っていて。

 あ、そうか、もう、こんな時間か。

 こんな時間に全く見知らぬヤツが当然のようにここにいて、コーヒーすすってんだもんな。

 変な目で見られもする。

 利用者も増えてきたことだし邪魔にならないように、一旦部屋へ退散するか……。

 そう思った時。

「ここ、よろしいですか?」

 俺の向かいの席に誰か来た。

「あ、どうぞ……って、園長先生じゃないですか」

 いつの間にか、園長先生がいらしていた。

「おはようございます。バーンズリー中尉。……いえ、ここで中尉と呼ぶわけにはいきませんね。何とお呼びしたら良いでしょうか……」

「では、マットと。ファーストネームの」

「わかりました。では、マット先生」

「はい」

「あなたには、クラス担任は特に固定せず、全クラスの体操と運動の指導を主に担当していただくことになりました」

 自分の朝食トレイの上のパンをちぎりながら、仕事の話を始める園長先生。

 それ、多分後で園長室で話す予定の件……だよな?

「体操……ですか……」

「体操教練とかは、基礎教練でやりますよね? ああいうのを、子供たち向けにアレンジしてやって欲しいのです。子供たちは性格にもよりますけど、運動をしない子はやらせないと全くやりませんから。だから、日常的に体操の時間は設けてやっているんですが、そこをあなたに担当していただこうと思うのです」

「なるほど」

 まあ、軍人なら体操は誰でもやっていることだしな。

「それと、運動についても、子供たちが飽きないように、遊び感覚で子供たちが楽しめるように、やっていただきたいです。ただ、やらされてる感ばかり募ると、子供たちは飽きて勝手なことを始めますから。子供は侮れませんよ」

 ちぎったパンにジャムを塗って、口に放り込みながら、園長先生はそう言った。

 子供たちは侮れない。

 俺も頭では理解しているつもりのその言葉の意味を、俺はその日のうちに身に染みて味わうことになる……。

「一応、マット先生にお願いするのはその辺りです。もちろん、子供たちの警護も疎かにはできません。大変ですが、これからしばしの間、よろしく頼みます」

「分かりました」

 俺が頷くと、園長先生は穏やかな顔で二度三度、頷き返す。

「頑張って下さいね。期待しています」

 園長先生はそう言って、スクランブルエッグをひとくち。

 そして、一つ思い出したかのように。

「あ、今日朝一で園長室で話そうと思っていたことはだいたい話しちゃいましたけど、一緒に職員室へ行って、その時に全職員に紹介しますので、集合の予定はそのままで」

「分かりました」

 俺は頷くと。

 園長先生の朝食タイムをあんまり邪魔したくなかったので、そろそろ退散することに。

「では、私は一旦部屋に戻ります」

 そう言って、席を立った。

「では、マット先生。また後ほど」

「はい」

 俺は職員食堂を後にした。




 その後、しばらく自室で時間を潰して、8時に園長室へ行って園長先生と合流し、職員室へ連れて行ってもらう。

 園長先生とならんで全職員の前に立って。

「新任のマット先生です。各クラスの体操と運動の時間を担当していただくことになりました。では、マット先生から一言どうぞ」

 いきなり振られてびっくりする。

 何も言われてないから、なんにも考えてなかったじゃないかよ。

 ……仕方ない。

「体操を担当することになりました、マットと申します。皆さん、どうぞよろしくお願いします」

 極めて無難な挨拶しか出てこなかったがしょうがない。

 もうちょっと気の利いたこと言えれば良かったが。

「では、マット先生の席は、そこの一番手前の席が空いてますので、そこを使って下さい。それと、今日は一日私も先生と一緒に各クラスを回ってこれからの毎日の流れを確認していきますので」

「分かりました」

 そんなわけで、俺は指定された席に着く。

 俺の席には何か一枚紙が置いてあって。

 ……これ、今日の授業予定表かな……?

 年長・年中・年少の各クラスの体操・運動の時間が線表になって記載されていた。

 今日は、この線表に沿って動く感じかな?

 なるほど。

 授業時間だけだと、けっこう空き時間もありそうだ。

 今日は初日だし、園内をくまなく歩き回って園内をしっかり頭の中に叩き込んでおくのが良いだろう。

 そんなわけで、朝の職員会議も終わって、朝一からの年長組の体操の時間に臨むことになる。


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