エピローグ ちょっと危険?な新婚生活
それから。
俺の生活は一変した。
国の所属はアマルランドの駐在武官の副官のままだが、アンジェと書類上結婚したことで、ヴィルトール家の一員となったため、アンジェのたっての希望もあって、俺はヴィルトール卿の邸、アンジェの隣の部屋で生活し、そこから毎日の勤務に通うことになった。
そして、今朝も……。
「あなた♪ お・き・て……あ・な・た♪ ……ちゅっ」
結構早起きなアンジェが、毎朝俺を起こしに来る。
「あ……アンジェ……」
寝ぼけ眼をあけると、ぼんやりと目の前にアンジェの顔が。
「これ以上遅くなるとお寝坊さんしてしまいますよ」
「ああ、そうだな……」
眠たい身体を強引に起こす。
時計を見たら、結構ギリギリの時間。
昨夜は、遅くまで次の式典の警備計画に目を通して、添削をしていたからな……。
少しばかりいつもより眠気が残ってしまっている。
「はい、これ、タオル。顔を洗ってくるとスッキリして気持ちいいですよ」
そう言って、アンジェは俺に顔を拭くタオルを渡してくれる。
まだ5歳だというのに、この辺はすっかり立派な奥さんしている。
それと、結婚したその日から、俺に対する態度というか、言葉遣いから明らかに変わった。
本人が言うには、
「だって、妻は夫を立てるものでしょう? だからわたしも、奥さんらしくしないと」
と、どうもアンジェは形から入るところが結構あるらしい。
こうして、毎朝アンジェに起こされて、一緒に朝食を食べてから出勤する毎日。
そして、出勤間際には。
「それじゃ、あなた。行ってらっしゃい。……ん」
目を閉じて俺の方に顔を上向かせるアンジェ。
お約束過ぎる感はあるが、行ってらっしゃいのキスを毎朝するのも日課になった。
これを忘れた日には、その夜帰るとものすごーく、不機嫌なアンジェ。
名目上とは言え、夫婦になったことで、遠慮が要らなくなったせいもあってか、甘え方もだいぶ激しくなった気がする。
今日もそんな彼女のくちびるに、軽くキスをしてやると、ものすごく嬉しそうにアンジェは笑う。
そして。
「いってらっしゃいませ!」
そう言って、玄関から見えなくなるまで手を振って見送ってくれる。
これはこれで、俺も幸せだなぁ……と感じてしまう一瞬。
これまで、俺は家庭というものをほとんど知らなかったから、彼女にそのぬくもりを教わっているような感覚ではある。
ただ、我に返って冷静に考えると、これって、かなり危険な領域に足を踏み込んでしまっている気がしなくもないが。
でもまあ、最終的にきちんとアンジェを幸せにできるなら……まあ、こんな結ばれ方も悪くはないか。
そう、思っている。




