用語&設定解説コーナー『なぜ? なに! ブシドーちゃん!』(第2回)
★目~『第二回では次の項目を解説しているよ!』~次★
1.アモルファス金属とは?
2.セシウム時計とは?
3.アイドルの等級(戦略級、作戦級、戦術級、特殊)とは?
4.向日葵の園とは?
5.ルナリアンの等級とは?
6.例外の九人とは?
7.プランク単位とは?
8.核パルス・エンジンとは?
9.反物質エンジンとは?
ー ★ ー ★ ー ★ ー ★ ー ★ ー
「3!」
「2!」
「1!」
「どかーん!(※せんじゅつかくだんとうがばくはつするおと)」
「〝なぜ? なに! ブシドーちゃん!〟の時間だよ!」
「ここでは何の脈絡も解説もなくさも当然のように使われて貴方を混乱させたSF用語や作中用語並びに設定を解説するよ!」
「きちんと読まなきゃ非国民だよ!」
「では早速、逝ってみよう! 殺ってみよう! アイドル皇帝陛下万歳!」
Q.アモルファス金属とは?
A.
「非晶質金属とも言われるな。ケイ素とか金とかで作った合金を溶かしてから急速に冷却する事で作られる。この急速冷却が余りに急速なもんだから、合金は結晶格子を構成せずに固化する、つまりは無秩序な状態で固化するからアモルファス金属と呼ばれる。なんのこっちゃ。早い話、非常に頑丈で、それでいて耐食性があり、しかも弾性に富むから加工がし易い。現代、どんなものでも3Dプリンターで作られる関係上、この硬くて丈夫で自由自在に曲げられるアモルファス金属は何にでも使われている。
と言うか、〝地球脱出〟の大目標を果たす為には地球脱出船が必要で、その船は3Dプリンターでしか作れず、3Dプリンターにはアモルファス金属が好適だってんで大量に作られて、で、その大量生産されたアモルファス金属の中でも〝宇宙船建造に適さず〟と判断されたものが民間に払い下げられた結果、何にでも使われるようになった――が正しいな」
Q.セシウム時計とは?
A.
「正確にはセシウム133原子時計だな。ご存じ、原子は原子核とその周りを周回する電子で出来ているが、量子力学を信頼するならば、電子の軌道や電子の持つ磁力の強さ次第で原子はエネルギーの異なる状態に変わる事がある。で、このエネルギーの異なる状態に変わる際に電波や光を特定の周波数で放出、又は吸収するんだが、原子時計はこの周波数(9,192,631,770Hz)を感知して時間の基準とする。振り子時が振り子を時間の流れの基準にするようにな。
原子時計は時間の誤差が少ない。どの程度少ないか。3000万年に1秒しかズレないとされてる。ヤベエな。働き者だ。見習いたいぜ。現在、1秒とは『セシウム133原子が91億9263万1700回振動する時間』と定められているぜ。因みにセシウム133は自然界で唯一、放射能を出さずに安定しているもんだから原子時計に使うのにうってつけだった訳だな。
どうしてこんなに正確な時計が必要とされるかと言うと、そりゃ、ルナリアンとの戦闘は秒単位で計画されるから、1秒の間違いが生死を分けないようにだ。あ、因みにどうでもいいが、大忘却以前に使われていたクォーツ時計はクォーツと呼ばれているように水晶を利用して時間を計っていたそうだ。水晶が3万2768回振動したら1秒なんだとさ。水晶時計は100万秒、大体10~11日で1秒ズレたらしいから、セシウム時計の正確性が分かるだろ」
Q.アイドルの等級とは?
A.
「セット・リストを基準としたアイドルの格付けだ。言い換えると『そのアイドルはどれだけの火力を持つか』の格付けだな。上から順に戦略級、作戦級、戦術級、特殊級だ。
戦略級はその気になれば単独でエレベーターの基部都市を破壊して何百万人も殺せる。メガデス兵器、核とか燃料気化爆弾とかをセット・リストに持っているアイドルがこれに分類されるが、絶対数は少ない。戦略級アイドルに分類される奴は全アイドルの一パーセントにも満たないだろうな。ってか、セット・リストはそのアイドルの深層心理を反映するんだぜ。深層心理に核弾頭のようなものを抱えてるとか『地雷系女子』ってレベルじゃねーからな。こえー。
作戦級は基部都市の層一つを丸ごと破壊して数万人を殺せるような奴だな。BC兵器、だからガス兵器とか細菌兵器とか、それから大砲を作り出してぶっ放すような奴もこれに分類される。作戦級も貴重だ。全アイドルの三~五パーセントしか居ない。
で、俺もそうだが、アイドルの九割以上が戦術級アイドルに分類される。町一つは簡単に破壊出来るだろうが、使用武器のレンジ、要するに同時攻撃可能な相手が一人とか二人の奴が戦術級に分類される。ま、剣とか銃とか、人が手に持って使うような武器を使う奴は殆ど戦術級だ。因みにセット・リストが増えて、最初は剣しか使えなかったけど後から核弾頭を使えるようになりました――ってどんな奴だ。どんな心境の変化が彼女にあったのかしら――てな奴は戦術級から戦略級に分類変更されるが、基本、変更される奴は居ない。人間の深層心理はそう簡単には変わらないからだ。
後は特殊級か。特殊級は、電気とか、水とか、火とか、ガスとか、変わった所だと〝作詞能力の向上〟だとか、戦闘にも使えるがそれ以外の用途で使った方が有用な奴がこれに分類される。電気使いであれば〝向日葵の園〟に送られるし、火使いはゴミ処理から火力発電、まあ基本はインフラとかの社会基盤維持に携わる事になるな。
何れにしても『火力の格付け』であって強さの格付けでないのに注意しろ。戦略級でも近付かれれば戦術級に簡単に倒されちまう事も多いからな。それぞれに得意な距離と得意な戦い方がある訳だ」
Q.向日葵の園とは?
A.
「基部都市の緊要部に設けられている発電施設だ。墓石のようなユニットの内部に、特殊な薬剤で眠らされた電気系の特殊アイドルを埋め込み、そのアイドルが即身仏になるまで電力を搾り取る。薬剤で眠らせるのは『起きてると電力を出し渋るかもしれないから』だ。効率的に搾取する為だな。その、だから、あー、うん。彼女らは安からな夢を見ているらしいが本当の所は誰にも分からん。因みに首都では原子力発電が用いられているから〝向日葵の園〟は補助的にしか使われていない。あることにあるけど数が少ないんだな。
嫌な話だが、首都の住人の中には、『地球で暮らしている奴らはアイドル様を無駄に食い潰している!』とか色々な事情や背景を考慮せずに言う奴も居る。マジで嫌な話だな。悪かった」
Q.ルナリアンの等級とは?
A.
「ルナリアンは級と型で分類される。級は下からSSS、SS、S、H、A、B、C、D、E。
人類が最初に遭遇したルナリアンを〝H級〟、〝Hard級(撃破困難)〟として、それに対応する形で〝Soft級(撃破が比較的容易い)〟、〝SuperSoft級(撃破が容易い)〟、〝SpecialSuperSoft級(撃破が極めて容易い)〟に整理したものが原形となっている。Aから上はここ1世紀くらいで観測されるようになったルナリアンだからこの限りではない。アルファベット順に並んでるのはソイツらの特徴を英単語に当て嵌めてたら偶然そうなっただけだな。
型は級ごとにそれぞれあってそのルナリアンの働きや特徴を表す。例えばSSS級には〝グレイ型〟とか〝マーズ型〟が居る。あ、そうそう、例外的にグレイ型の中でも指揮官の役割をするものを〝指揮官級〟と呼ぶ。紛らわしいがコイツは普通にSSS級グレイ型だ。
さて、〝撃破が容易い〟とか書かれてるが、これはH級に比べればの話で、しかもルナリアンと対1個グループ(4~5人のアイドル)で戦った場合の想定だ。グレイ型はアイドルであれば割と簡単に殺せるが数が多いから人海戦術で押されると割と簡単に殺し返される。SS級は強敵だ。油断したり相性次第では1個フェスティバル(48人)でも負けるかもしれない。S級とH級ともなれば言わずもがな。
A級から上は、正直、どうすれば勝てるのか俺らが教えて欲しくなる位に強い。ってかズルい。例えばあるA級はマッハ5で成層圏を飛行するわ重力の働く方向を自在に操るから核兵器でも傷一つ付けられねえし、あー、他には核分裂を自在に操ってヒロシマ型原爆の300倍の火力を2秒に1度投射してくる奴とかも居る。訳が分からん。大体、A級以上は空間や真空の相転移をエネルギー源としているから死の概念がないらしい。倒す事は出来る。でも殺す事は出来ない。倒しても数日から最大数年で復活するんだとさ。理論上、宇宙が存在する限り存在する事を止めないそうだ。なんだそりゃ。もう許して。
唯一の救いは、それが救いと呼べるならばだが、地球上に500億生息しているとされるルナリアンの内、確認される限り、A級は数十体しか居ないって事だ。アイドルと同じようにルナリアンの九割以上がSSS級なんだな」
Q.例外の九人とは?
A.
「前項で解説したA級をその身に宿したアイドルだ。A級をエネルギー源にしているから他のアイドルを圧倒する力を誇る。9人しか居ないのはA級ルナリアンの凄まじいパワーに耐えられるのが9人しか見つかっていないからだな。良く『例外は1人で1万人分働く』と言われるがこれは強ち嘘じゃない。例えば俺のかあ様、ゴホンゴホン、コクジョー・キシドーは生涯で10匹倒せばエース、200匹倒せば教科書に載るルナリアンを戦術級アイドルの身で5万匹以上も抹殺している。因みに彼女らに埋め込まれたA級ルナリアンの幼体は、昔、〝ノー・エントリー〟の地下に広がっている遺跡、〝深層真相領域コキュートス〟で発見されたA級の残骸から培養されたものだが、どうしてそんなもんが旧時代の遺跡にあったのかは不明だ。
A級以上に対抗出来るのはこの〝例外の九人〟だけで、〝例外の九人〟の〝例外〟はここから来てるんだが、〝九人〟もタナー段階には抗えず、517年、〝第4次スタッフ・オンリー〟会戦で――あー、ちょっと待って――コクジョー・キシドーが引退している。本当は十人になる筈だったんだけどな。トロ子……
エヘンエヘン。湿っぽくなっちまった。最後に九人の名前のリストを載せておくからな。
〝トップ・オブ・アイドル〟――喬木のオオルリ・ウグイス
〝文明の炎〟――アイドル皇帝ストレンジラブ
〝夜しかない世界の昼行燈〟――名状しがたきアルハズラット
〝ぴょんと跳ねて首を刎ねる〟――断頭台兎のコクジョー・キシドー
〝暗黒微笑〟――あらあらうふふのマーマレード
〝円卓の主〟――議長のエリザベス
〝絶望的な希望〟――素晴らしきサクラ
〝最高速の鎮魂歌〟――サイトカインストームのエーリカ
〝思い付く限りの祝福〟――謎のクエスチョン
あの人が〝ぴょんと跳ねる〟ねえ」
Q.プランク単位とは?
A.
「例えば1秒の長さは地球に住む俺らの生活の都合に合わせて作られた、つまりは自然界にある物理定数を人間用にアレンジして作り上げた単位で、当然、地球上の地球人にしか通用しない。対するプランク単位は自然界にある物理定数を用いて定義された単位だ。例えばプランク時間は光子が光速でプランク長 (1.616×10の-35乗m) を移動するのにかかる時間で5.391×10の-44乗秒だとされる。なんのこっちゃ。
普遍的な、自然界に存在する定数だけを使った単位だから、昔から『もし高度な知能を持った地球外知的生命体が存在すれば同様の単位系を使っている可能性がある』とは言われていたそうな。で、まさに、ルナリアンはこの単位を使っていて、且つこの単位的な規模で行動している。要するに地球人の何億倍もスケールの大きい社会を営んでいるらしい」
Q.核パルス・エンジンとは?
A.
「核爆発の反動を利用した推進システムだな。エンジン内でヘリウム3と重水素から成る燃料ペレットにレーザーを照射して核爆発を起こして、んで、その爆風を磁場で受け止める。受け止めた際のこの反動で物体が前に進む訳だな。クッションに磁場を使うのは核爆発の爆風を受け止められる物質がこの世にアイドルニウム合金位しか無い為だ。移民船のような大質量の物質を動かすのに非常に効率的だが、反面、爆発の規模を操作するのが難しいから速度を制御し辛く、小回りが利かなくなるのが欠点だとされているぜ」
Q.反物質エンジンとは?
A.
「反物質ってえのは通常の物質と接触した際に対消滅を起こす物質で、この対消滅の際、それはもう途轍もないエネルギーを放出する。そのエネルギーを推進力に変えちまおうっつーエンジンだな。例えば質量100キロの物体を宇宙空間で50年加速させるのに必要な反物質の量は100マイクログラムだとされている。1マイクログラムってのは1グラムの100万分の1だから、はー、イメージが掴めないな。俺も糖尿病だから明日から孫ダビ珈琲に入れる砂糖を1マイクログラムにするか。苦くて飲めねーよ。
従来、移民船兼人類首都である〝ノア号〟には核パルスエンジンが使われていて、それを稼働させる為の核燃料を用意するのに非常に手間取っていた。何せ全長100キロメートルを超える〝ノア号〟を月まで運ぶとなると核燃料が死ぬほど必要になるからな。実際、人類が地球を離れられていない理由の大きな一つがこの燃料不足だった位だ。それがこの反物質エンジンの発見で変わるかもしれず、人類はついに月脱出を果たせるかも――と騒がれてるが、さて、どうなるか。反物質の生成は簡単じゃねえし、金も掛かるし、何よりも今までになかった技術だから実用化するまでにどれだけの年月と人とモノを食うか。100年前にこれが見つかってりゃなあ。
こんなもんか。では今回の解説はここまで。また次回の解説で逢おうな。それまで達者で生きてろよ。
神聖にして絶対キュート不可侵なアイドル皇帝陛下万歳!」




