2話:決闘と入寮
お久しぶりです
では、第二話『決闘と入寮』お楽しみください
翌朝、シンは学園長室へと向かった。
朝食も食べ、着替えもした。体長にも特に問題はない。
トントン「シンです。入ってもよろしいでしょうか」
「ああ、来たか。入っていいぞ」
「失礼します」
シンが部屋へと入ると、そこには学園長のほかに二人いた。
一人は生徒会長。セイネ先輩は笑顔で手を振ってきたので、軽く会釈で返した。まあ、こちらは分かる。
もう一人は‥‥髭の濃いおっさんだった。誰だ?
「ああ、こっちのことが分からないか」
「こちらの方は、セントアリア学園の清掃員、という事になっている、理事長よ」
「え……理事長ですか?」
「ええ。こちらの方が、この学園の設立のために出資してくれたのよ」
「どこかの貴族ですか?」
「いいえ。王族よ」
「ああ、貴族じゃなかった‥‥王族ですか?」
「ええ。王族よ」
「この髭面が、ですか?」
「ええ。その髭面のおじさんが、よ」
「………」
しばらく場を静寂が支配したが、意外にも最初に口を開いたのは他称王族の髭面のおじさんだった。
「まあ、なんだ。王族と言っても、“元”が付くぞ。それに、この国のじゃなくて、エルフのだからな」
「エルフ、ですか?あの時々、英雄譚などにも出る森の賢者とも呼ばれる」
「ああ。そのエルフだよ。俺はもう人間で言うと50は超えているぞ」
「エルフが長寿だという事しか分からないのだが‥‥まあ、分かりました」
「ま、そう言う事だから。で、この人を呼んだのは、お主の職業の適性を見るためだ」
「職業適性を見るのは昨日のような機械は使わないのですか?」
「昨日の?ああ、魔道具のことか。似たようなものは使うが、職業のやつを使える者は限られているからな」
「そうなのか?」
「じゃあ、さっさとお主の職業を調べるとするか。ベート頼んだぞ」
「分かったよ。じゃ、調べるぞ。これに手を置け」
ベートは何処からか水晶を取り出し、シンの目の前へ置いた。
シンは言われた通り手を推奨へと乗せる。
「『水晶よ、彼の道を示し給え』」
詠唱により水晶は光だした。
光が収まると、シンの前には一つの板が出ていた。
それに触れようとしてもすり抜ける。どうやら触れないようだ。
「ん?何だ、これ。失敗したのか?」
「ベート、如何した」
「いやな、見た事もない職業が、ずらーっと、並んでるからよ」
「とりあえず教えろ。それがお前の仕事だろ」
「はいはい。一気に言うぞ・・・・」
聖剣使い・魔剣使い・傀儡使い
剣神・魔将軍・暗殺者
創造魔導士・賢王・詩人
迷い人・家政婦・料理人
魔王・聖騎士・魔導騎士
英雄
「・・・・以上、16職」
ほとんど息継ぎもせずに早口で言っていったベートは、息を切らせたのか大げさに呼吸をしていた。
「うん。何と言えばいいのかな・・・・いろいろな意味で異常だね。まず職業の数なんだけど・・・・ベートが見てきた中で一番多かったので何職だった?」
「え~っと確か、7、かな?」
「では、シンさんは倍以上なのですか?」
「そうなるな。はっきり言って、職業の内容も異常だけどな」
「相反する職業に、後衛職と前衛職、ついでに斥候も出来る中衛職。そしてサポートメインの、ぶっ!」
「いきなり笑うな。俺も言ってる途中、笑わないように気を付けたんだから」
「迷子は置いておいて、家政婦と料理人とは‥‥なかなか珍しい職業に着きましたね」
「そうだな。大体は家政婦ではなく、執事とか侍女とかになるんだけどな」
「そうなんですか。知らなかったです」
「そりゃ、職業のことを知らなかったやつが知ってたらビックリするわ」
「そうですか。で、これって異常なんですか?」
「ああ、異常だよ。ほとんど知らない職業ばっかりだ。半分くらいしか知らねぇな」
「そうなんですね。ところで、職業が多い利点って何ですか?」
「とくには無いけど、敢えて言うなら将来の幅が広がることくらいか」
「まあ、その辺はとりあえず置いておきましょう。昨日、シンさんには伝え忘れてしまったのですが、あなたの生徒会での役職が決まりました。シンさんには庶務をやっていただこうと思います」
「はぁ。分かりました。でも、僕がやって批判は無いのですか?」
「批判のしようがないでしょう。自分たちの解けない問題を、初見で尚且つ限られた時間内で解いて見せたのですから、さらに言えば、あなたは今年の主席です」
「え?僕主席だったのですか?」
「「え?」」
「ハハハ!お主昨日の結果発表見なかったのか。まあ、合格は決まっていたのだから、見ても仕方がないのだろうが」
「まあ、いいです。では、庶務でも大丈夫ですか?」
「まあ、何処やっても同じだと思うので、それで大丈夫です。では、今日の所は寮に戻っても大丈夫でしょうか?」
「ああ。明日の挨拶考えておけよ。お前が新入生の代表挨拶の一人だからな」
「新入生代表挨拶?何ですか、それは」
「まあ、明日みんなの前に立って挨拶することになっているから、その準備をしておくように」
「分かりました。では、失礼します」
シンは一礼して学園長室を出た。
そして、寮へと戻っていった。
翌朝、シンは朝食を食べ終えた後、どこへ行けばいいのか分からずに、寮の前で固まっていた。
「ああ、やっぱりね」
後ろから聞いたことのある声が聞こえ振り向くと、そこにはリーナがいた。
「おはよう。どうしたんだ?」
「どうしたんだ?じゃ、無いわよ。あなた、このままじゃ遅刻するところだったでしょう」
「まあ、場所が分からなかったからな。仕方がないだろう。今日も他の寮生の流れに任せていこうと思っていたのに、誰もこの寮に居なかったのだから」
「いやいや。あなた知らないの?貴族と商人の子供以外でこの学園に合格したのはあなただけよ」
「え?本当か」
「こんなことで嘘ついてどうするのよ。本当に決まっているでしょう」
「そう、か‥‥知らなかった。誰が合格したのかなんて気にもしていなかった」
「それはそれで問題だと思うけど‥‥それよりも、ほら、早く行きましょう。新入生代表が二人も入学式で遅刻とか、笑えない冗談よ」
「二人?」
シンは昨日学園長の言っていたことを思い出した。
『新入生代表の一人だからな』
ああ、そう言う事か。
「新入生代表は複数いたのか。なら、特に気負う必要は無さそうだな」
「あなた、自分が新入生代表だという事は分かっていたのね」
「ああ。ところで、新入生代表とは何なんだ?」
「そっちは知らないのね。新入生代表は特待生のことよ。特待生枠は合計点が250点以上じゃないと貰えないのよ。例年一人か二人くらいみたいだけど、今年は3人もいたからちょっとした騒ぎになっていたわ。それに、そのうちの一人は平民だ、ってね」
「リーネのほかにも、もう一人いるのか。会ってみたいな」
「案外あなたとは気が合うかもしれないわよ。彼、外の生活に憧れがあるみたいだから」
「む。僕には外の生活は分からないな。今回のことで初めて外に出たからな」
「じゃあ、一緒に色々話せばいいじゃない」
「それもそうだな。リーナ、紹介してくれるか?」
「ええ、いいわよ。じゃあ、今日の入学式の後話しましょう」
「分かった。取り敢えず、そろそろ行くとしよう。流石にこれ以上遅くなったら、入学式に遅れてしまう」
「そうね。ついて来て」
リーナについていった先には、大きな闘技場のような場所があった。
「ここでやるのか?」
「ええ。ここしか全校生徒が入れる場所がないらしいわよ」
「そうなのか。かなり広いんだな」
「ほら、入りましょう」
「ちょっと待て」
リーナに引っ張られるように中へと入ると、中には数千にも上る人達がいた。
「シン・リオンさんとリーネ・アトラウス・リルフィードさんですね」
「はい。シンです」「リーネです」
「ついて来てください」
案内についていった先には、金髪のシンと同じくらいの年齢の少年と、学園長、そしてセイネ先輩がいた。
「おはようございます」
「ええ。また迷子になったのかしら?」
「いえ。今回は迷子になる前に拾ってもらえました」
「助けてもらう前提なのがちょっと気になるけど、まあいいわ」
『これから入学式を始めます。まず初めに新入生歓迎。生徒会長、よろしくお願いします』
「あら、呼ばれちゃったわね。行ってくるわ」
セイネ先輩は顔を引き締めると、全生徒の目線の集まる会場の中心へと歩いて行った。
シンたちが今座っている場所も十分に視線が集まっているのだが、そこよりも視線が集まっている。
『新入生の皆さん。初めまして。と言いたいところなのだけど、おそらくパーティな喉集まりで顔を合わせた事のある人の方が多いわね。知っているとは思いますが、改めて自己紹介をさせていただきます。セイネ・ビリア・シンスターです。私たち学園生徒会、並びに学園はあなた達新入生の入学を歓迎します。ここでは身分の差は関係ありません。ここでは魔法、剣、勉強。何でもいい。それらが上のものが正義です。この学園では実力順にクラスを割り振っています。しかし、今上のクラスだったとしても、いつ抜かれるかは分かりません。私達3年生も皆が切磋琢磨して成長してきました。遠慮などせずに2,3年生や先生方に聞いてください。それらがあなた達の力となりましょう。今年の生徒会枠は5枠です。特待生の内一人はすでに生徒会へ入ることが決まっています。よって、残りは4枠です。皆さん前期のうちに残り4枠は決めることになります。生徒会のメンバーはそれぞれがある分野、またはいくつかの分野で学園内でもトップに近い成績を残しています。生徒会枠がすべて埋まるまで、皆さん実力を伸ばし生徒会へ一歩でも近づけることを願っています。以上で生徒会長からの賛辞を終わりとさせていただきます』
時間にすれば短かったのだろう。
しかし、その内容は新入生の心に染みる結果となった。
『続いて、学園代表からの挨拶。学園長、よろしくお願いします』
「学園長、何か言われても切れないでくださいね。大魔法をぶっ放さないでくださいね」
「分かっている」
学園長はセイネ先輩に何か言われていたが、すぐに先程までセイネ先輩がいた場所に向かっていった。
『あー、あ~・・・うむ。私がこの学園長である、アンディー・シリウス・ヴィルヘディアである。私からは、そうだな。この学園では学園カースト制度、並びに学年カースト制度と言うものを取り入れている。これは、この学園の信条である〈実力こそすべて〉に繋がっている。学園入学と同時に君たちは基本的には学園外から切り離される。その一環として生徒には全員寮へと入ってもらっている。そして、先程のカースト制度はこの後それぞれのクラスで渡される学生証で分かるが、入学時の結果でポイントが与えられている。そのポイントは今後の授業の成果によっても変動する。ここまで聞けばわかっているとは思うが、現在の学年カースト1位はシン・リオンだ。2年生にしても下の方の順位はすでにポイントで負けている。勿論これから抜かすこともできる。そのための方法の一つを教えよう。決闘システムだ。この場所のほかに学園の敷地内には決闘をできる場所が10カ所存在するが、これは後に教えられるだろう。だから私から言う事は一つだ。争え!より強いものを倒せばその分だけポイントは上昇する。ただし、下位の生徒が上位の生徒に挑む場合、二回までは強制的に受けさせることができる。勿論、上位の生徒も勝てばポイントは貰える。上位下位に関わらず、負けたら10ポイント失うからな。無駄にするなよ。これが0になって、一カ月が経ったら強制的に退学になる。勿論進学試験に落ちたものも同様だが、今は置いておく。いろいろと言ってきたが、強くなりたければ、強いやつに挑み、学べ!逃げるだけしか能の無い雑魚には用はない!逃げ方を学びたければ、そこらの狩人の弟子にでもなっておけ!と、言う事で、だ。勿論私達教師に決闘を挑むことも可能だから、存分に挑むように。教師への決闘ではポイントは減らないが、教師によってはポイントをつけてくれることもあるぞ。これで、学園長からの挨拶を終了する』
学園長の話は少し長かった。
そう言えば、学園長の名前は初めて聞いたな‥‥
『続いて、新入生代表挨拶。まず初めにシルヴィディオ・シューディナス・アルビアさん。お願いします』
「はい」
名も知らないもう一人の特待生の名前を聞き、どこかで聞き覚えのある名前だな、とか、考えているうちに彼は闘技場の中心にいた。
『ご紹介にあずかりましたシルヴィディオです。知っている方の方が多いかもしれませんが、私はこの国の王子です。しかし、この学園では立場など紙切れと同じです。ですので、気軽に話しかけてもらえたらうれしいです。話は変わりますが、私の職業は剣神と大賢者、その他3つほどです。私はこの国の王子として、学園の主席の座を狙っていましたが、主席どころか次席まで取られてしまいました。勿論、彼らを恨んではいませんよ。これからは彼らや皆さんと切磋琢磨し、実力を付けていきたいと思っています。これで、私からの挨拶は以上です。ありがとうございました』
『有難うございました。続いてリーネ・アトラウス・リルフィードさん、お願いします』
「はい」
彼の自己紹介で謎が解けた。彼の名前の最後についているのが、この国の国名だったのだ。だから聞いたことあるような気がしていたのか。
『えー、私はリーネです。知っている方も多いと思いますが侯爵の一人娘で、王子の婚約者です。私の職業は剣聖と魔神でした。王子と同じく主席の座を狙っていましたが、思わぬ伏兵に足を掬われ奇しくも次席と言う結果に終わりました。これからの二年間で彼や王子、そして皆さんと共に力を付けていき、卒業までには主席の座を奪えるように頑張りたいと思います。これで、私からの挨拶は終わりにさせていただきます。ご清聴、ありがとうございました』
『有難うございました。続いて、シン・リオンさん、よろしくお願いします』
「はい」
二人に習って、返事をしてから前に出る。
『えっと、このような場で発言するのは初めてですが、精いっぱいやらせていただこうと思います。僕はシン・リオンと申します。生まれて初めて里の外に出て、この学園へと入学しました。僕の職業は聖剣使いに魔剣使い、傀儡使いに剣神や魔将軍、暗殺者に‥‥あと何だったかな?まあ、他にもいくつかの職業に適性がありました。そして現在、このような場で自分が話していることに違和感も大きいですが、これからは皆さんと共に学び、競い、成長したいと思っています。分からないことがあったら聞いてください。僕も分からないことがあったら聞かせていただきます。これで、僕からの挨拶は終わりにさせていただきます。ありがとうございました』
『これで、入学式の全てのプロットが終了しました。新入生はその場で待機し、次のアナウンスをお待ちください』
2,3年生が次々に会場から出ていく中、1年生は指示に従い自分の席に座っていた。
「シンさん、リーネさん、シルヴィディオさん。あなた達特待生組は他の10クラスには所属しません」
「この学園って、一つの学年10クラスなのですか」
「ええ。一応そうなっています。ですが、特待生はそれとは別のクラスに入ることになります。何か質問は?」
「いえ。とくにはありません」
「私の方からよろしいですか?」
「どうぞ」
「特待生のうち一人は生徒会に入っていると言っていましたが、誰なのですか。何となくは分かっているのですが‥‥一応聞いておきたくて」
「ああ、その事ですか。生徒会に入ってもらったのはシンさんですよ」
「やはりですか。シン君と呼んでもいいかな」
「大丈夫ですよ」
「私のこともシルディオと呼んでくれ」
「分かりました。シルディオ、よろしく」
「ああ。こちらこそ。今度一度戦ってもらえるかな?」
「決闘システムを使えば、強制的に受けさせることもできるぞ」
「いや、君の方が強いのは何となく分かるから、それはやめておくよ」
「まあ、戦うくらいならいいけど、いつやるんだ?」
「うん。そうだね。会長、ここを使っても大丈夫ですか?」
「今からですか?」
「はい」
「まあ、大丈夫ですけど、審判は学園長の方に頼んでください」
「学園長頼めますか」
「うむ。シンの実力は何となくしか分かっていなかったからな。丁度いい」
『アー、うん。今から主席シンと第三席シルヴィディオのエキシビションマッチを執り行う。特待生との差を知るいい機会だ。全員見ていくといい』
「シン君、今すぐになるけど大丈夫かな?」
「ん?ああ、大丈夫だよ。武器は持ってきているからな」
シンとシルヴィディオは先程あいさつした場所へと上り、ある程度差を開けて立つ。
「ルールの確認だ。まず、勝敗条件はどちらかが負けを認める、また、審判の私が危険だと判断したら止めさせてもらう。また、殺しに繋がる攻撃は禁止だ。一応ここで死んでも生き返るが、魂に傷がつく可能性もあるからな。それでは、両者ともに準備はいいか?」
「私は大丈夫だ」「僕もだ」
「それでは、開始!」
「こっちから行かせてもらうよ。『我が剣よ、我に応え給え』行くぞ!」
「ふむ。『刀よ』」
シンは空間魔法により刀を取り出す。
「『我に力を』」
身体強化魔法。シンの場合は使う場所を一部に定めている。そして、その場の判断で魔法をかける場所を変えるという離れ業をやってのける。
「来い」
刀を正面に構え、シルディオを迎え撃つ。
「はぁぁ!『水弾よ、我が敵を穿て!』【アクアボール・トリプル】」
三つの小さな水球を出し、シンに向かって放つ。
一つ一つの威力は小さいが、おそらく隙を作るのが目的なのだろう。
「なめるな。『水よ』」
シンはその一言でシルディオと同じ大きさの水球を作り出す。
しかし、密度はシンの方が上だったようで、シルディオの水球を貫き迫る。
「く!『土壁よ。我の前に建ち、我を守り給え!』【ソイルヴォール】」
「慌てすぎだ『風よ、壁を穿て』」
シンが使っているのは詠唱短縮と言う技能だ。
勿論、シンがその事を知っているはずもない。詠唱は出来るだけ短く、それを目指しているうちに出来るようになった。その程度にしか考えていない。
シルディオも詠唱短縮は使用しているが、シンほど短くは出来ていない。そもそも、シンは詠唱自体を自分で作っているので、完全に自己流だ。
「まだだ!『炎よ、我が剣に集い給え!』【エンチャントソード・フレイム】」
シルディオは剣に火を纏わせ、土壁を破壊し出てきた風の球を切り裂いた。
勿論、魔法を切り裂いたのではなく相殺しただけなのだが、細かいことは置いておく。
「様子見はやめにしよう。シン君の方が私よりも実力が上の様だ。ここからが、私の全力だ!
『戦場に住み、戦場をかける戦神よ。我が願いに応じ、我に力を貸し与え給え!』【ダブルエンチャント・ボディ】」
「へぇ。僕もこのままじゃ危ないかな『疾く在れ』」
シンは足にのみエンチャントをかけなおす。元々かけていたエンチャントはそのままだが、足への返還を必要としなくなった分、先程よりも反応速度が上がる。
「『我が剣に集いし炎よ、我が敵を焼き滅ぼせ!』【ダブルエンチャント・フレイム】
『荒れ狂う炎よ、その怒りを鎮め、我に従い給え』【エンチャントセクアントル】」
「流石にここまでとは思わなかったよ。僕の本気の一部を見せよう
『我魔を裂き、魔を滅し者なり。我が剣よ、願いに応じ魔を滅する力となり給え』【エンチャント・ブレイクマジック】」
シンの刀に変化は見られない。しかし、その悠然と敵を待ち構える姿に、シルディオは少しばかり気後れした。
その隙をシンが見逃すわけもない。正面から攻撃を仕掛けてくるシンに気付くと、シルディオはすぐに反撃に姿勢を取った。
「『風よ、敵を撃て!』【ベントスボール】」
「しっ!」
シンが刀を振ると、文字通り風の球が切れた。
常識では、魔法は切れないものとされている。先程シルディオがやったように、魔法で魔法を攻撃させて斬るのは出来るが、剣じたいにエンチャントをかけ、物理的に切ることは不可能である。
「何!?」
「ここ!」
驚いたシルディオは、シンを目の前に思わず隙を作ってしまった。
そこをシンは突き、シルディオの首筋へと刀を当てた。
「そこまで。勝者シン・リオン」
「ありがとうございました」
「ありがとうございました。いや、シン君。君は本当に強いね」
「いや、僕なんかまだまだだよ」
「それは私に対する嫌味かな?」
「そういう訳では無いのだけど・・・!」
「さて、この戦いを見て、特待生の実力がどの程度が、みんなも分かっただろう。特待生に決闘を挑めと進めた私が言うのもなんだが、無茶な挑戦は身を亡ぼすからな」
『それでは、一年生は先生方の指示に従い、それぞれの教室へと向かってください』
アナウンスに従い、一年生たちはそれぞれの教室へと向かっていく。
それぞれのクラスごとに名前が呼ばれていく形式の様だ。
「さて、シン、シルヴィディオ、リーネ。お主たちは私について来い。特待生は全学年統一だ。勿論、学年ごとの授業は受けてもらうが、特待生は最悪の場合授業は自由参加でも良い。じゃ、行くぞ」
学園長に従い、ついていった。
着いていった先にあったのは、一つの家。
「ここは寮ですか?」
「ん?ああ、言っていなかったな。特待生たちは、基本的にここでの共同生活となる。ご飯を作れるものがいないなら、学食を使うといい。特待生は無料になっている」
「男女共同生活ですか?」
「ああ。男女共同だぞ。安心しろ。女子が許可していないところに男子が入ろうとしたら、センサーが作動するからな。対巨獣殲滅級のが、な」
「それって魔法ですよね。シンには効かなくないですか?」
「あ‥‥シン。女子の居住スペースに、許可なく入るなよ」
「?女子の居住スペースに行って何かあるんですか?」
「ああ、これなら大丈夫だな。安心したか?リーネ」
「信じていたので大丈夫です」
「そうか。お前たち三人に、これを渡しておく。先程言っていた学生証だ。失くすと再発行の手続きは面倒だから、失くさないように気をつけろ。あと、シンにはこのバッジを渡しておく。生徒会役員の証だから、落とすのではないぞ」
「分かった」
「お前たちの部屋のカギだ。一応二人部屋になっているが、シンには一人部屋になってもらう。部屋が足りなかった。シルディオは上級生と同じ部屋だ。リーネはセイネと同じ部屋だ」
三人はそれぞれの部屋のカギを受け取り、寮の中へと入っていった。
「シン君。取り敢えず、自分たちの部屋へ行こうか」
「ああ。そうだな。行こうか」
時々方向を間違えるシンをシルディオが手助けしつつ、寮の部屋へと辿り着いた。
この寮と教室が合わさっている家は、4階建てになっている、あと、地下もあると言っていたか?
「シン君は方向音痴なんだね・・・」
シルディオが苦笑しつつ尋ねてきた。
「ああ。里にいたときは妹が助けてくれていたのだが、学園にはいないからな」
「そうなんだね。確か、学生証の機能に地図を出す機能もあったよ」
「本当か?教えてくれて助かったよ」
「これくらいお礼を言われるような事じゃないよ。じゃあ、私は自分の部屋に向かうとするよ。シン君の部屋はそっち側の一番奥だから、間違えないようにね」
「ああ。助かった」
シルディオと別れ、シンは廊下の突き当りにある部屋へと入った。
そこで待っていたのは、思いもよらない人の影だった。
線は細く、肌はきめ細やか、真っ白な肌が特徴的な、女の子だった。
「え…?」
「え‥‥あ…キャァァァァァァ!」
「は!?アブねぇ!」
次の瞬間、徐々に顔を真っ赤にした彼女は、シンに向かってビンタがしてきた。
容赦のないその一撃を、シンはすれすれでかわした。
しかし、その後は続けて物を投げてこられ、焦ったシンは廊下へと飛び出た。
「え?え?何で女子が僕の部屋に?」
先程の奇声に驚いたのか、他の部屋からもぞろぞろと人が出てきた。
「あれ?シン君?間違えて、上の部屋にでも行ったの?」
「いや、さっき突き当りの部屋って言ったよな?」
「あ、ああ。君の部屋は突き当りにあるよ」
「何で突き当りの部屋で、女子が着替えているんだよ!?」
「シン君、って言ったか?あそこの部屋になっちまったのか?」
「ああ。カギも渡されたぞ」
「あちゃー。学園長、絶対忘れていたな。あそこ、四階の部屋の床が抜けたから、直るまであそこを女子に貸し与えていたこと」
今回の件に関して、シンは悪くなかった。
完全に学園長の過失であり、ほぼ100%シンと先程着替えをしていた彼女は被害者であった。
しかし、彼女にとってそれは学園長だけの過失ではなく、シンに選択が迫られることになることを、今はまだ誰も知らない。
さて、皆さんがヒロインだと思っていたでしょう、リーナはヒロインではなく、友達枠です。
リーナはシンの親友とする予定であるシルヴィディオの婚約者と言う役でした。他の作品だと親友から婚約者を伝えられるというのが、テンプレとして多いと思いますが、今作ではそんなテンプレは無視して婚約者と先に出会わせました。
そして、この話を聞いて、セイネ先輩が正ヒロインかと思った方も多いと思いますが、セイネ先輩の方にも婚約者がいる設定です。
そして最後に、大穴で学園長だと思っていた人もいるかもしれませんが、違います。学園長は既婚者です。
一般的に英雄譚だと、貴族の娘を奪ったりすることもありますが、今作ではそう言う事もありません。
ここまで聞けば分かるかも知れませんが、ヒロインは最後に一瞬だけ出てきた彼女です。(殆ど話に関わっていない妹と思っていた方は外れです)
今後どのような展開になるのか。乞うご期待!
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