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1話:追放と入学試験

始めましての人も、また会った人もこんにちは。シシノです

最近はVRMMO物ばかり書いていたので、異世界物は久しぶりです

誤字脱字の報告や、間違いの報告、『こうした方がいい』などのアドバイスの方も貰えると有難いです


告知

『ビジターズ・デウス・オンライン~魔王をも従えるPKプレイヤー~』

https://ncode.syosetu.com/n7764gl/

こちらの作品もよろしくお願いします


では、第1話『追放と入学試験』お楽しみください

 少年は一人森の中をさまよっていた。

 身寄りはある。行く先も決まっている。

 しかし、自身の方向音痴はどうしようもない。

 つまり少年は、ただの迷子であった!




 時間は今から2日ほど前まで遡る。


「シン、お前を家から勘当する。そして、それに伴いお前を里から名前を除する」


 実の父から述べられた言葉は、事実上関係を断つという事と同じであった。

 少年の名前は『シン・リオン』。斬魔の里、その族長の次男として生まれながらも、兄弟、同年代、果てには3つ4つ下の子にさえ、剣の腕が劣るという、斬魔の里の生まれとしてはありえない状況であった。

 また、残間の里に生まれたならば、10になる前には使えるようになる【斬魔】も、12(成人)となった今でさえ魔法の補助なしには使うことができない。

 剣術の稽古の時間以外のほぼ全てを本を読み魔法の訓練へとあて、そして、斬魔の里の人間は使わない魔法を使っていたため、シンは異端者として扱われていた。


「今後会う事はそうそうないだろう。最後手向けだ、親としてお前に刀と、王都の学園への受験を受けられるようにしておいた。これが受験票だ。では、明日までに荷物をまとめ、里から出ていけ」


 急遽決まった予定ではあったが、親として最後の恩情をくれたようだ。

 他の家だと、刀はもとより、受験票など貰えず、王都へ出て冒険者として魔物や魔獣と呼ばれる生物の討伐をし、その日暮らしの生活をするらしい。そう考えると、学校に入学できる可能性があるだけましなのかもしれない。


 そして、シンはその日のうちに少ない自分の荷物と、最低限のお金と一日分の非常食を持って、王都へと向かって旅立った。




 そして、現在に至る。

 元々、王都へは2日もかからない予定だったのだ。実のところ、整備された道を通ればシンの脚ならば3日ほどで王都へ着いただろう。

 しかし、シンが選んだのはまっすぐ通れば一日でつく、よく人が入っては迷う森だ。

 そのため昨日の内は食料に余裕があったのだが、2日経った今となっては食料が付き、森の中で迷っていた。

 そして翌日、シンはあまりの空腹に気絶してしまった。

 最後に聞いたのは、自分に走り寄ってくる足音と、魔法を使うための詠唱だった。




 それからどれくらいの時間が過ぎたのだろうか。

 シンが目を覚ますと、そこは白いベッドの上だった。

 外を見ると若干空は紅くなっていた。

 足に重みを感じ、そちらの方を見ると、美しい自分と同じくらいの年齢の少女がいた。


「ん…あ、目を覚ましたのね。よかったわ。森で倒れていたのから連れてきたのに、死んでしまったら寝覚めが悪いもの」

「ああ、助けて戴いたのですね。ありがとうございました。できれば、今日の日付を教えていただけませんか」

「?別にいいけど、今日は水の日よ。あなたは半日ほど眠っていたわ」

「ふぅ~。良かったです」

「何かあったの?」

「明日、受験をする予定なので、流石に森で倒れて遅れました、では笑えませんから」


 だったら、最初から遠回りしていけばよかっただろう、大方の人はそう言うだろうが、シンにとっては違った。なぜ近道があるのに遠回りしなければならないのか。神に聞けばそう言っただろう。


「あら、あなたも明日受験するのね。じゃあ、ライバルね!」

「ライバル、ですか?僕程度で相手に出来るかは分かりませんが、出来る限り頑張ります」

「ええ。そう言えば名乗っていなかったわね。私は『リーネ・アトラウス・リルフィード』よ!よろしくね」

「僕は『シン・リオン』です。こちらこそ、よろしくお願いします」


 リーネの伸ばした手を掴み、笑顔で返した。

 これが後にパーティを組むことになるメンバー、一人目との対面だった。


「シン君って呼んでもいいかな」

「はい。大丈夫ですよ。僕はリルフォード侯爵令嬢とお呼びさせていただきます」

「え!?」

「どうかしましたか?」

「そこは、名前で呼ぶ流れじゃないの?しかも、すごく畏まった呼び方だし…リーネと呼んでください」

「いえ、私はしがない平民ですので、リーネ様と」

「ライバルでしょ!リーネと呼びなさい!そうしないと不敬罪よ」


 あまりにもひどい理不尽に苦笑したが、今回は従う事にした。


「分かりました。リーネ、これからよろしくね」


 出来る限りの笑みを浮かべそう言うと、リーネは顔を真っ赤にし、伏せてしまった。


「待つのよ、リーネ。あれは男よ。いくら可愛かろうとも、あれは男…(ブツブツ…ブツブツ)」


 そして、何やらブツブツと呟き始めた。

 その後十分もすると顔を上げ、その顔からは熱が退いていた。


「ああ、ごめんなさい。取り敢えず…シンは明日までどこに泊まるつまりなの?」

「金なんかほとんどないし、野宿かな」

「はあ、シンは何も知らないできたのね。学園から遠く離れたところから受験に来る人もいるから、受験の前一週間は学生寮が受験者に対してのみ解放されているわよ」

「本当か?」

「ええ。それにご飯もでるらしいわよ。毎日、朝と夜の二食ね。昼食は出ないらしいけど、明日の午前中は試験で昼過ぎには試験結果が出るらしいから、昼食に関しては関係ないわね」

「リーネ教えてくれてありがとう。それで、何処で受験の手続きと寮に入るための手続きをすればいいのか、教えて貰えるか」

「ここまで教えて、そこだけ教えないなんてことしないわよ。そう言えば、シン。受験の内容ぐらいは知っているのよね?」

「いいや、全く。受験を受けること自体、一昨日聞いたばかりだからな」


 リーネは大きく溜息を吐いて、呆れた目でじとーっと見てきた。


「な、何かおかしい事でもあったか?」

「おかしいも何も、何で受験者本人が受験することを、受験3日前まで知らなかったのよ」

「なぜ、と言われても困るのだが…勘当が決まったのが一昨日だからな」

「え!あなた勘当されたの?でも、あなたのこと貴族のパーティで見た事無いけど‥‥どこかの隠し子だったの?」

「いや、ただの族長の息子だよ」

「族長?このあたりに部族なんて数えるほどもないはずなのだけど‥‥」

「斬魔の一族、で分かるか?」

「うーん‥‥ごめんなさい。やっぱりわかんないわ。もしかして、この国の部族じゃないのかしら」

「いや、一応はこの国の領土の一部に入っているぞ」

「え?本当に‥‥‥‥あ、話が大きく脱線してしまったわね。話を戻しましょう。明日の試験の内容だったわね」

「ああ。よろしく頼む」


 指を四本たてて、一つ一つ丁寧に教えてくれた。


「明日の試験は大きく分けて4つよ

 一つ目は一般素養と魔法基礎ね。問題を解いていくタイプになるわ

 二つ目は武術の試験。教官か騎士団の誰かとの模擬戦闘ね

 三つ目は魔法の試験。多分、魔法の制度と威力の測定になるわ

 四つ目は面接よ。これに関してはそのままだから、特に言うことは無いわね

 この四つで合計300点中150点を取って面接で大きく印象を損なわなければ合格できるわ」

「ふむ、つまり問題解いて、戦って、魔法を見せ、話せばいいのだな。分かりやすくていいな」

「面接もシンは言葉遣いも悪くないし大丈夫そうね。私はそろそろ帰らなければならないから。明日はお互いに頑張りましょう」

「ああ、負けないからな!」

「忘れていたけど、寮はここを出て右に真直ぐ行って、外に出られる道を左に行けばあるわよ」

「教えてくれて助かったよ。ありがとな」

「じゃあね」

「ああ、また今度」


 最後に軽く挨拶すると、リーナは()へと曲がっていった。

 シンはそれを見送ると、リーナとは反対(・・)方向へと歩いていった。

 リーナの唯一のミスは、シンが何故森の中で迷っていたのか、それを考えなかったことである。

 そもそも、シンが右と左を間違えなければよいのだが、それは難しい話である‥‥



 こうして無事に(?)方向音痴を発揮したシンは、リョウとは真逆の方向へと向かい、尚且つ途中で戻ろうとしたところで、さらに別の道へと進んでしまい、似たような形の学園内をさまようこととなった。

 そして何故か、階段を上ったり下ったりしながら、さまよい続け、気付いたころには夕暮れ時となっていた。


「ふむ。これは、迷ったのか‥‥さて、如何するべきかな。里にいたころはシーが見つけてくれていたが、今ここにシーはいない‥‥はてさて困った(グ~~)」


 かくして、森でさまよい空腹で倒れた少年は、自身が昨日から何も食べていなかったことを思い出した。

 しかし、そこで思い出したところで意味はない。

 だが、それによってなって腹の虫によって、助かることとなったのはまた一興だ。


「誰だ!ここは関係者以外立ち入り禁止のはずだ!」


 そう、助かりはしたが、それは人がいたというだけ。

 実際の所、シンはそこが関係者以外立ち入り禁止だと知っていたとしても、持ち前の方向音痴の力でそこに入ってしまっていたであろうが、その少年がそれを知るよちはない。


「すいません。ここが入ってはいけない場所だとは知らず、迷っているうちに間違って入ってしまいました」


 このような場合、言い逃れをするよりもすぐに白状し、事情を説明することが助かるのに最も早い近道である。


「嘘をつくな!迷子でここまで来られるわけがないだろ!ここまでに、いくつの幻惑の魔法がかかっていると思っているんだ!」


 ‥‥筈だったのだが、助からない者は仕方がない。逃げるとしよう。


「では、そう言う事ですので、失礼します」


 シンはそう言うと、パッと後ろへと振り返り、一目散に駆け出した。

 しかし、目論見は外れ、シンは数歩ほど走ったところで、その少女に襟を掴まれ、そのまま引きずって出てきた扉の中へと入っていった。


「バカが、逃がすわけがないだろう」


 その言葉が少女の口から洩れたが、一日中何も食べていなかったシンの耳に、その言葉は届かなかった。


「姉様、不審者を捕まえました!」

「学校では生徒会長と呼びなさいと何度も‥‥まあ、いいわ。で、本当に不審者なのね?」

「はい!逃げ出そうとしたので間違いないと思います!」

「ただの迷子の可能性は?」

「この学園の生徒で、迷子になることなどないと思われますが」

「どう見ても、この学校の生徒ではないわね。あなたが不審者だと思って捕まえてきたのは、明日の入学試験を受けに来た子だと思うわよ」

「いくら何でも、ただの受験生が姉…生徒会長の幻影魔法を破れるとは思えませんが」

「偶然かもしれないでしょ」

「ですが!」

「それよりも、その子を放してあげたらどうなの?首が絞まって死にそうよ」

「?あ、忘れてました」


(た、たすかった。生徒会長?が知らせてくれなければ、死んでいたかもしれない)


「あ、ありがとうございます。けほっ、けほっ」

「はいどうぞ」

「ありがとうございます‥‥ふぅ。僕はシン・リオンです。明日の受験のために来ました。森で行き倒れ、この学校の受験生に偶然拾っていただき、寮へ行こうと思ったのですが道に迷ってしまい。取り敢えず、寮ならば人数もいるかと、魔力の高い方へと向かってみたのですが、途中魔法が大量にあったので、切り捨てながら来た次第です」


 シンが名乗り、ここに来たまでの経緯を説明すると、生徒会長は少し驚いたような顔を。少年の方は呆けたような顔をした。

 何かおかしいことを言ったのだろうか、そんなことを考えていると生徒会長が口を開いた。


「ちょっとおかしいことを言っていたような気がしなくも無いけれども、それはとりあえず置いておきましょう。リオンさんは行き倒れた、と言っていたけれど、その後何か食べたのかしら?」

「いいえ、寮に着いたら何か食べさせてもらおうと思っていたのですが、あいにくと迷ってしまったもので‥‥‥‥」

「仕方ないわね。ちょっと待っててくれるかしら。お弁当だったら置いてあるから」

「ありがとうございます」


 本当に助かった。そろそろ空腹で吐き気を覚えてきたところだ。

 生徒会長はその場で何もない空間に手を突っ込む(・・・・)と木で作られた箱を取り出した。


「空間魔法ですか?」

「いいえ、その上位互換の時空魔法よ」

「本当ですか?始めて見ました。まあ、自分以外の使う魔法を見るのも初めてなのですが」

「あら、あなたの初めての人になれて良かったわ」

「ふざけすぎですよ、生徒会長」

「名乗るのが遅れたわね。私はこの【セントアリア高等学園】で生徒会長を務めさせてもらっている、『セイネ・ビリア・シンスター』よ。一応王族だけど、さほど気にしないで話しかけてね」

「はあ、ではセイネ先輩と呼ばせていただきます」

「ふふ、ありがとう」

「‥‥はっ!会長、その男から離れてください!」


 ずっと呆けていた少女は声を上げ、突如シンに向かって剣を向けた。


「ルシア!剣を下ろしなさい」

「その男は危険です!ハァァァ!」

「剣を向ける意味を分かっているんだろうな?」


 シンはルシアと呼ばれた少年を睨みつけ、あまりある魔力の一部を開放した。


「ぐっ‥‥な、めるなぁ!」

「忠告はしたぞ」


 振り下ろされた少女の剣は剣先から真っ二つに分かれた。

 シンは服にすら傷一つなく、少年に向かって伸ばされた手には先程弁当と一緒に渡された、木製のナイフが握られていた。


「‥‥‥ルシア、このことは父上に報告させてもらうわ」

「姉様!この男はやはり危険です!ここで潰しておくべきです!」

「と、言っていますが、セイネ先輩。どうするんですか?」

「リオンさん。今回は私の妹が無礼なことをしたわね。このことはきちんと父上に報告し、ルシアの処断、並びにあなたへの非礼の詫びを入れさせてもらうわね。それと、リオンさんは明日の試験は合格よ。でも、勉強の方が出来るかは分からないから、一応テストだけは受けてもらうわ。あと、面談もあるとは思うけど、その口調の感じなら大丈夫そうね」

「ありがとうございます」

「いいえ、これでも足りないくらいよ。そのお弁当を食べて待っていてちょうだい。私はルシアを連れて、いったん家へ帰るわ」

「分かりました」


 セイネ先輩はその場で魔法陣を展開すると、ルシアを連れてどこかへと転移した。

 シンは先程渡されたお弁当の蓋を開き、食べ始めた。肉にナイフを入れると、ナイフの刃先は少しばかし欠けてしまった。


「ふむ、魔法も掛けておいた方が良かったかな?」


 ルシアのことをなめ過ぎていたことを後悔しつつ、ナイフに魔力を纏わせると再び肉に刃を入れ食べ始めた。




 それからどの位経ったのだろうか。

 シンがお弁当を食べ終えたころ、セイネ先輩は魔法を使って戻ってきた。


「あら、もう食べ終えていたのね」

「はい。とても美味しかったです。どうも有難うございました」

「大丈夫よ。じゃあ、寮に連れてってあげるから、ついて来てちょうだい」


 セイネ先輩がシンのことを先導して、寮へと連れて行ってくれた。

 途中あたり触りの無いことを話しながら、道を進んでいった。


「ここよ」

「何から何まで有難うございました。このお礼はいずれまた」

「大丈夫よ、この位生徒会長の仕事の内よ」


 微笑みを浮かべつつ、そう言ってくれた。


「では、またいずれ会えることを願っています」

「私も、あなたが学校に入学できることを楽しみにしているわ。そうそう、あなたの試験ね。テスト以外全てなくなったわ。テストが終わったら、また生徒会室にでもいらっしゃい」

「迷わないように気をつけます」

「ふふふ。そうね。じゃあ、明日のテストは頑張ってね」

「はい」


 シンは寮で入寮の手続きを終えると、一時的に選ばれた部屋へと向かい、ベッドで倒れこむようにして眠った。

 一時的に気絶したとはいえ、まともに眠れていなかったのでともかく寝不足だったのだ。




カーン!カーン!カーン!


 朝6時の鐘が街中に鳴り響く。

 鐘がなるのは一日に3回。6時、12時、18時の三回だ。

 それとは別に、5回連続で鳴り響くこともあるのだが、それは王都に大きな被害が出るとみなされた時だけなので、今回は置いておく。


 昨日寮の手続きをしたとときに、朝ご飯は鐘が鳴った時から1時間だと言っていたので、忘れないうちにさっさと食べに行くとしよう。

 流石に食堂に行くのには迷わず(部屋が突き当りにあるので、出たら真直ぐ行けば食堂である)、スムーズに朝食を食べることができた。


 朝食を終えたシンは周りの人たちの流れに紛れて、試験会場へと向かった。

 テストの開始時刻は8時からだ。鐘のなった時間からまだ一時間ほどしか経っていないはずなのだが、既にかなりの人数が集まっている。

 今いる人数だけでも軽く2、300人はいそうだ。

 受験票には最大合格人数も書かれていて、それには250人と書かれていた。まだまだ増えるであろう人達のことを思うと少々心苦しくなる。

 まともに試験を受けることもせず、既に合格が決まっているのだから当然だ。



 それから一時間ほどが過ぎ、集まった全員は受験票の番号ごとに50のクラスに分けられた。

 一クラス30人ずつ入れるので、大体1500人近く集まったことになる。

 そうなると入れるのは6人中1人。一クラスあたり5人程度しか受からないことになる。


 そのうち一つの枠を無条件に貰ったシン。窓際の席に座り肩身を狭くし、凄く気まずい思いをしていた。


「では、今からテストの問題を配ります。試験中の魔法の使用は禁止。魔法を使ったものもカンニングとみなします。カンニングをした人物は立場に関わらず全て受験は失格。今後の受験を禁止します」


 そんな説明がされているうちに、魔法によってそれぞれの机の前に一つのプリントが配られてくる。


「300点満点中150点で合格とは言っていますが、このテストで0点を取ったものは合格できません。実技のテストならば理由によっては合格になる可能性はありますが、このテストで0点はよっぽどのことがない限りありえないので、安心して受けてください。では、試験時間が1時間。テスト開始です」


 試験管の合図でテストが始まった。


 ウーン?なんだ、この簡単な問題は。うちの里の連中なら5歳児でも解けるような問題ばかりだぞ。

 まあ、魔法の問題に関しては全く解けないだろうけどな。

 テストは10分ほどで解き終わった。

 そのまま、ボーっと外を眺めていると、突然試験管から声をかけられた。


「865番。試験は終わったのか」

「はい。全ての問題を解き終わりました」

「見直しは終わったか」

「はい」

「では、試験会場からの退場を許可する。次のテストが始まるまでには会場に向かっておくように」

「了解しました。失礼します」


 シンは教室から出る際には物凄く視線が集まった。

 シンは『解き終わるのが速かったからかな?』と思っていたが、実際の所は『このテストの難易度を全部解き終わったのか?』という疑問から来る奇異の視線であった。




 シンは昨日話していた通り生徒会室へと向かって歩き出した。

 勿論場所が分かっているわけでは無く、魔力の塊に向かって歩いているだけだ。




コンコン

「どうぞ」

「失礼します」


 生徒会室に辿り着いたシンはドアをノックし、許可をもらうと中へ入った。


「今はテストの時間だと記憶しているのだけど?」

「早く終わったので退出を許可されました」

「今日は迷わないで来られたのね」

「先輩がこの学校では突出して魔力量が多いので、他にも数カ所かに魔力の塊がありましたが、そちらは他にも数人が集まっていたので」

「学園長かしら?まあ、いいわ。今から私と一緒に学園長に会いに行ってもらうわね」

「学園長ですか?」

「ええ。本来は一般教師たちが面接するのだけど、時間の都合と単純に学園長があなたに興味を持ったらしいのよ」

「それでですか。分かりました。期待にそえるかは分かりませんが、会わせてもらいます」

「そう言ってもらえると助かるわ。じゃあ、行きましょうか」


 そう言うとセイネ先輩は昨日と同じように魔法式をくみ上げ、魔法陣を展開すると、転移した。

 転移した先は、おそらく学園長室なのだろう。かなりの広さのある部屋となっていた。

 しかしながら、その広い部屋に居たのは一人の少女だった。

 いや、少女と表すべきではないのかもしれない。

 彼女からは今まで感じたことがないほどの魔力が見える(・・・)

 セイネ先輩の場合はただ大きな魔力の塊がそこにあるといった感じだったが、目の前に居るはずの彼女は違う。

 目の前に居るはずなのに、その距離はどれだけ近づいても、その分だけどんどん遠ざかっていくような、ともかく濃密なのに部屋全体に広がるほどの魔力があった。


「セイネ先輩、彼女が学園長ですか?」

「へぇ。分かるんだ」


 口を開いたのはセイネ先輩ではなく目の前の彼女だ。


「いや、なに。大抵の人は私のことを見ると『学園長の孫』だとか『迷い込んだ迷子の女の子』とか、言うからな。我は結婚すらしておらんぞ、と言ってやりたくなるね」

「ここまで濃密な魔力を前にして、そんな反応をできる人がいるのですね」

「?ああ、そうか。お主知らぬのか。魔力量を可視化することはほとんど不可能だし、魔力量に大きな差がある場合、それを感知することも儘ならんぞ」

「そうだったのですか?ここまで濃密な魔力は始めて見ましたが、それでも抑えられているように見られますが」

「まあ、そうじゃの。そこのセイネも我の魔力を感知することは敵わなかったぞ。まあ、最低限魔力がそこにあるという事は分かっておった様だがな。発生源がどこかまでは分からなかったようだな」


 セイネ先輩は少し顔を赤くし、「今なら分かります」と恥ずかしそうに言っていた。


「まあ、なんだ。お主かなり魔法を使えるのだな。誰に習ったのだ?」

「?」

「?」

「え?」

「誰に習ったのか聞いておるのだが」

「魔法って、誰かに習うものなのですか?」

「魔法を習わずに何を習うのだ?魔力操作か?魔法式か?魔方陣か?」

「いえ、何一つ習っていませんよ。全部独学です。お恥ずかしながら、僕の里で魔法を使うものは異端者として見られていましたので」

「・・・・はい?いやいやいや、お主のレベルで誰にも習っていないは嘘だろ」

「いえいえ、そんなくだらない嘘つきませんよ」

「始めて魔法を使うときはどうやったんだ?」

「確か、魔力を掌に集めて、精霊に食べさせました」

「せいれい?」


 セイネ先輩はすでに思考を放棄した後の様だ。


「はぁ。もういいわ。そうだな。これからは授業の時間以外は我の時間のゆるす限りは、お主の魔法を見てやる」

「本当ですか?学園長自ら見ていただけるとは光栄です。学園長がどのレベルの魔法を使えるのかは知りませんけど」

「我の事を知らないのか」

「はい。里から外に出たのも初めての経験なので」

「まさかとは思うが、お主。自分の職業適性を見た事無いのか?」

「職業適性?何ですかそれは?」

「そんなことも知らない子供が、スラム育ち以外にもいたとはな」

「それでは、私から説明させていただきます」


 復活したセイネ先輩から説明を頂いた。

 職業適性とは、職業の適性(向いている職業を表すらしい)を調べる魔道具存在し、それを使って自分に向いた職業を確認し、その上でその職業を選ぶことが多いらしい。向いている職業は複数の職業が表示されることの方が多いが、大抵は一つの職業に絞って訓練するらしい。

 勿論、そこに表示されなかったからと言って、職業適性が皆無とは限らないが、少なくとも表示された職業の中に初級の職業が無ければその系統にはほとんど才能がないという事らしい。


 職業には(クラス)があり、それは大きく4つに分類される。


 初級、それさえないのであれば、その職業系統への適性が低いことを表す。剣を使う職業であれば【剣士】、魔法職ならば【魔法使い】などが良い例である。


 中級、それは一定以上の才能があることを示す。上のような職業で表すのならば【剣聖】や【賢者】などがあげられる。


 上級、それは限られた人間の身に現れる職業のことであり、上級の職業に就いたものは大抵なにかしらの功績を立てるか、悪い意味で名を広める。例は【剣王】や【大賢者】などがあげられる。


 特級、それは人間を辞めたとすら評される、化物たちの一種である。特級に着いたものは大抵、どこの国にも属さないことが多い。例は【剣神】や【魔神】が良い意味でも、悪い意味でも有名だ。(魔神は魔法が強い者の事を指し、神を指すわけではありません)


 4つに分類されるとは言ったが、これとは別に神級と称される【勇者】や【魔王】などもあるらしい。


「さて、ここまでで何か質問があるかな?」

「僕の里の皆は、どのレベルに分類されますか?」

「ふむ、それは難しい質問だな。君の住んでた里、まあ、おそらくだが【斬魔の一族】の里だろう」

「ええ。そうですけど、学園長は知っているんですね」

「前にあったことがあってな。その時の印象だと、おそらく特級はあるだろうし。もしかすると神級かも知れんな」


 まあ、先程の話を聞いていて、何となく分かってはいた。


「そう言えば、セイネ先輩や学園長の職業な何なのですか?」

「我は【魔神】じゃな。剣の方は一応剣士としての才能はあったが、その程度だな。他にもいくつかあったぞ」

「私は【剣王】と【大賢者】よ。上級だけど、この二つがあると、特級とも相性によっては勝てるのよ」

「二人とも凄いのですね」

「そう言えば、昨日のルシアは【剣聖】と【魔導士】よ。魔導士は‥‥リオンさんは分かっているか」

「はい。魔導士は魔法使いが一定のレベルまで達すれば至れるレベルですね」

「正解よ。まあ、それは置いておいて、剣聖の真剣を木製のナイフで防いだ、いや、真っ二つに切り裂いたのだから、リオンさんの職業は剣聖よりも上になるわね」

「いえ、あとで気付いたことではありますが、少しナイフの方も欠けてしまっていたので、切り裂いたとは言えませんよ。防いだ際に剣がおれた、と言うべきです」


 呆れる様にセイネ先輩は額に手を当て、大きなため息をついた。


「いいえ、はっきり言ってそれはおかしいですよ。相手は真剣、あなたは木製の、しかも食事用のナイフです。その差で真剣の方は二つに割れ、それに対しあなたのナイフが欠けただけという時点で、はっきり言えば異常です」


 シンは剣に関しては、本当に異常なレベルのもとで育った。また、魔法に関しては剣とは逆の意味で異常なところで育ったため、一般的な知識(いかに異状なのか)が理解できていなかった。

 シンからすれば、「お父様ならば指の先でも真っ二つに出来る」というレベルのことなのである。


「そう、なのですか‥‥‥」

「まあ、一般的な知識は今後身に付けていくとして、魔法の技術に関して言えば、この学園の中でも随一でしょう。リオンさんさえよければですが、学園生徒会、通称【パールヴァスエクイティ】学園内の騎士団のようなもので、将来何になるとしても贔屓にしてもらえる。騎士団はもちろん、商人や冒険者なんかでもだね」

「それは魅力的ではありますが、どこの馬の骨とも分からない男を、そんなところに入れても大丈夫なのですか?」

「ああ、それは大丈夫だ。お主は何も知らないのか。ここは、完全に貴族の手は回せないようになっている。これは過去の王族が決めたことだが、契約と言う魔法で学園と契約を結んで今後も貴族、王族に関わらず、手を回すことは出来なくなっている。それに、お主は一応どこの人間かは分かっておる。まあ、今ではただの家なしのようじゃがの」


 そこは突かないでほしかったが、もう言われてしまったものは仕方がない。

 そんなことで怒るほど、僕は子供ではない。


「そうですか。では、こちらこそよろしくお願いします」

「じゃ、リオンさん‥‥‥いや、これからは仲間となるのですし、親しみも込めてシンさんとお呼びしましょうか」

「は、はぁ」

「リオンさんにはそうですね‥‥‥学園長、どの役職がいいと思いますか?」

「テストの結果次第だな」

「そう言えば、何だったのですか?あのテスト問題は。僕の所にだけ初等学園の問題でも紛れ込んでいたのですか?」

「はい?何を言っているのですか。今年の問題は例年よりも、少々難しくなっておりましたよ。二年生に上がるころになれば皆分かるようになると思いますが‥‥それに、初等学園はあくまで貴族の礼儀作法のための学園なので、テストなどありませんよ」

「では、あの問題は何だったのでしょうか?」

「ちょっと待っていろ。今からお主のテスト問題の採点結果を見てみる。受験番号は?」

「確か、865番です」

「分かった。‥‥‥865番の採点結果を教えて貰えるか?・・・ああ、そうだ。何、カンニングの疑い?それはないだろう。‥‥それは例年通りにしろ‥‥すまなかったな」


 机の中から謎の機械を取り出した学園長が、それに向かって話していた。

 一分ほどで会話を終えると、こちらへと向き直った。


「お主の採点結果を教える。点数は100点満点中・・・100点だ」

「はい?私の聞き間違えでしょうか。100点と聞こえたのですが‥‥」

「ほっ。良かったです。ケアレスミスがあったかと思いました」

「セイネよ。聞き間違えではないぞ。100点じゃ。お主、どんな勉強をしてきたのだ」

「どんな、とは?数年前まで知り合いの家で勉強を習っていた程度ですが‥‥魔法に関しては独学ですけど」

「一般素養の方は習っていた、という事でも分かる、だがな。魔法の方は一応、高等魔法大学の試験問題だ。それを独学でどうやったらできる?」

「どう、と言われても困るのですが」

「聞き方を変えよう。どうやって解いた」

「はぁ。まあ、始めて見る魔法陣でしたので、魔法式の方を分解して、その効果を一つ一つ‥‥‥どうかしましたか?」

「どうかしましたか?じゃないわよ。その様子じゃ、自分がどれだけ非常識なことをしたのか、分かっていないのでしょうね。初見の魔法陣を一発で解けるような人、高等学園には片手の指で足りる程度しかいないわよ。それも、学者気質の人ぐらいだし‥‥」

「まあ、分かった。では、明日の朝8時までにここに来い。職業の鑑定をするからな」

「分かりました」


 その日は受験の結果を見ることもせずに、迷う事無く寮へと帰るのであった。




その日の昼頃

「今回の主席は誰にするのだ?」

「テストの結果が一番高いのは865番ですね」

「865番ですか?その番号は剣術の試験にはいませんでしたよ」

「魔法の試験にもいませんでしたね」

「その子なら生徒会推薦枠で選ばれたので、自動で100点ですよ」

「どちらの試験ですか?」

「え~と‥‥あれ、おかしいな?その番号に二つ付けられている?」

「そうなると、全科目満点で865番が主席という事になりますね」

「しかし、今年は侯爵家の令嬢や、王女様、公爵家の嫡男も入学されるのだぞ」

「だが、例外を認めるためにもいくまい」

「では、学園長に判断を委ねましょう」

「では、連絡を‥‥」


ピピピピピ

 その時、学園長の方から連絡が来た。


「はい。え?865番ですか?‥‥はい。今話していたところです。100点でしたよ。あの、カンニングの可能性は?・・・無いですか。分かりました。それで、主席の件なのですが‥‥分かりました。ではその様に」



「主席は例年通り成績最高者に、とのことです」

「では、865番ですね」

「では、この結果で、張り出してきますね」


 テストの結果が書かれた紙には、【生徒会推薦枠・主席『シン・リオン』特待生】【学園推薦枠・次席『リーネ・アトラウス・リルフィード』特待生】【学園推薦枠・第三席『シルヴィディオ・シューディナス・アルビア』特待生】・・・・・・・と書かれていた


ここまでお読みいただき有難うございました

お楽しみいただけたでしょうか?

次話の投稿は未定です

出来る限り早く更新できるよう頑張ります


====================

ここからはお願いとなります。

ブックマークと評価(下の方にある【☆☆☆☆☆】のことです)をよろしくお願いします。

評価基準は大雑把に・・・

つまらない、興味がない、と思った方は☆2以下のクリックを

面白い、また読みたい、続きが気になる、と思ってくれた方は☆3以上でお願いします

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では、また次回お会いしましょう。

See you NEXT TIME!


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