交わる想い
「こ、これは・・・魔法、なのか?」
「こんな魔法みたことねぇ・・・」
「き、君がやったのかいっ?」
特に驚いていたのは魔導士達だった。それも仕方ないだろう、今アルトが発動した魔法は本来、人間だけでは発動することのできない精霊魔法の中でも最上位を超える禁断の魔法なのだから、神話の時代より以降に発動されたとこのない魔法だ。驚くなという方が鬼畜だろう。
さらに、アルトは今の魔法を全力で放っていない。こんな魔法を全力で放っていたら敵で家ではなく、守るべき街もろとも銀世界に変えてしまう。
ちなみに今ので百分の一に抑えた結果なのだが・・・
「うそ〜ん」
発動した本人すらも驚いている。
『ほ、本当だったらもう少し範囲は狭い予定だったけど・・・まぁ、結果オーライ?』
脳内でエレメージュがそう呟く。
「結果オーライだけど限度がッ」
アルトもそう叫びたくなるだろう。今の魔法で約三分の一のモンスターが氷像と化したのだ。
生前、一度も放つ事はなかったのだが放っていたらと思うと・・・体の震えが止まらない。
「な、なんだこの魔法はッ」
ベルモンドも目を極限まで開けて目の前に広がる光景を網膜に焼き付ける。
「すごいわアルトッ。流石私の英雄ね」
いつの間にか隣に来ていたサーシャはアルトに抱き着き豊満な胸にアルトの腕を挟む。
「ハ、ハハハ、神の悪戯とでもいうのか?」
そして、二人から少し離れた場所には全身鎧を纏ったクレアが顔を真っ青にして呟く。
「ま、魔導士隊ッ続けッ」
正気に戻ったベルモンドが魔法の止まっている魔導士隊へ声を掛けると再び魔法による攻撃が再開される。
アルトの魔法は残念ながら空を飛んでいたモンスターたちには効かなかったようだ。
魔導士達が放心状態だった間に距離を詰めていた。
「しまったッ」
誰かがそう呟いた。
モンスターが何匹か防壁の周辺まで押し寄せてきた。慌てて魔導士達が魔法を発動させようとする、弓を持った冒険者たちは弓を構える。
直後、押し寄せてきていたキラービーは両断され、デビルバットは灰となった。
「やれやれ、私もまだまだ未熟だな」
「アルトだけに戦わせるわけにいかないわ」
モンスターたちをやったのは緑色の血を垂らす片手剣を持つクレアと炎の球を掌に顕現させるサーシャだった。
「なんか懐かしいな」
アルトは突然、そんなことをいいだす。
アルトの脳裏に過ったのは学園時代の記憶。
当時はまだエレメージュも封印しており、魔法らしい魔法があまり使えなかったためみんなに足手まといになっていたアルトだが、そんなアルトを囲むようにいたのがギルたちだった。
ギルとクレア、レイネの三人で前衛を務め、アルト、サーシャ、サリアで後衛からの攻撃。そして、リリアンによる支援魔法といったバランスのとれたパーティだった。
「この十年ちょっとで私も成長したと思っていたが・・・軽く自信を無くすな」
「そうね、アルトに比べたら私達の成長何て」
二人は苦笑する。
「さて、そろそろ敵が近づいてきた。騎士団は前進しろッ」
ベルモンドからさらに指示がでる。
それにより、防壁の前に展開していた騎士団たちの陣形は前進し、モンスターたちとの距離を詰める。
戦いが始まり二時間が経過した。
今夜は満月だったようで、真っ黒な夜の闇には何千ものモンスターの影と不気味なほど美しい満月が浮かぶ。
「回復ポーションが切れましたッ」
「くっ、まだ空にはモンスターがいるというのにッ、弓兵はどうだッ?」
「矢が尽きました」
「・・・どうすれば」
戦況は激しくなり、地上は騎士団たちの活躍によりなんとか突破されることはなかったが、
未だ何千と空を飛ぶモンスターたちを見てベルモンドは悪態をつく。
アルトの魔法により下半身を凍らされたアークゴブリンロードも大人しくしている。
最初は手に持っていた棍棒で氷を叩いていたが壊れないことを理解したあとはこのざまだ。
「なんとしてでも街にはいかせないッ」
ベルモンドがそういった。
『ねぇ、アルト。そろそろアレやらない?』
「アレって・・・あぁ、アレか」
『おい、アレとはなんだ?それよりアルト。妾が全然活躍していないぞッ。妾も戦いたいッ』
先ほどまで始めに放った精霊魔法ではなく、普通の魔法を放っていたアルトだったが、黒光りする虫のように湧き出てくるモンスターたちにうんざりしていた。
そこでエレメージュがアルトに提案をする。
そしてその提案にローズが不満を漏らす。なにせ、この戦いが始まって何も活躍していないからだ。
「まぁローズもあとで頼むから、少し待っててくれ」
『ふふふ、最初で最後だと思っていたアレを使うのさッ。まぁ、僕とアルトだからできるんだけどね、だからぁ〜ローズには無理だろうねぇ』
『な、なんだとッ。貴様ッ、喧嘩なら買うぞ』
そしてアルトがオッケーしたことによりエレメージュがローズに喧嘩を売る。
ローズもまたエレメージュからの喧嘩を買うのだが。声はアルトの脳内に響くためはっきりいって、滅茶苦茶迷惑だ。
「うるさいッ。それより行くぞ。《精纏》《氷の聖騎士》」
一瞬でエレメージュが実体化し、そのままアルトと一つになる。
眩い閃光が走ったあとに現れたのは氷の鎧を纏う聖騎士。
アルトの英雄譚にも登場する勇者の如し魔法だった。
「その魔法はあのときの」
精神的にも疲労し少し疲れを見せていたクレアは一気に疲労が吹き飛ぶ。
サーシャもまた自分の命を救ってくれた時の姿を見てなんともいえない感覚に陥る。
「来いグレイシアッ」
あのときエレメージュが名付けてくれた氷のペガサスを召喚し、それに跨る。
「駆けろッ」
アルトの声に反応しグレイシアは翼を羽ばたかせ飛ぶ。
流星のように一直線でモンスターの群れに進むグレイシアの体に月の光が反射する。
幻想的なペガサスに跨る聖騎士アルトは魔力で作った槍を右手に持ち、左手に剣を持つ。
グレイシアが進めば前方にいたモンスターたちは槍に刺され、グレイシアが通過すれば周りにいたモンスターは剣に切り裂かれる。
下級モンスターたちはあっという間に死体と化していく。
アルトとアルトの跨る氷のペガサスは、モンスターたちにとってはさながら死を運ぶ神といっても過言ではない。
そんな一騎当千の英雄アルトの姿を見ていたベルモンドたちは・・・
「彼は何者なんだッ。魔導士ではなかったのか?」
「おいおい、これが英雄って奴じゃないのか?」
「それより、あの氷でできたペガサスに氷でできた鎧姿ってまるで・・・まるで、英雄アルトみたいだわ」
「まさか、死んでもなお、サルシャラ様のために現れたというのか?」
全員が眼前のできごとに目を疑っている。
そして一人、あながち間違っていない考察をするものもいる。
「ハハ、ハハハ、モンスターたちが羽虫のように蹴散らされている」
クレアはもう諦めたかのように目が死んでいる。
「アルトったら、どこまで私を惚れさせれば済むのッ」
サーシャは・・・平常運転だ。素直になったサーシャほど盲目な乙女はそういないだろう。
もはやアルトが空が赤いといえばサーシャも空が赤く見えるだろう。
『おい、アルト。妾も何か手伝わせろ』
ワイバーンを串刺しにしたアルトの脳内にローズの声が響く。
「そうだな。よし、ローズの魔法で地上のモンスターを拘束してくれ」
『任せろ。魔力を少し多めに持って行く。《魔薔薇の拘束》』
無詠唱で発動されたローズの魔法により地上の大地に亀裂が入り、そこから普通の薔薇より棘の多い茨でモンスターたちを拘束する。
『拘束だけではないぞ。ふふふ、咲け《死の黒薔薇》』
得意げにローズがそういうと茨に拘束されていたモンスターたちが一瞬でミイラになる。
「うわ、なにアレ?魔力と生命力かなんかでも吸われてるのか?」
『その通り。妾の薔薇を咲かせるための肥料となった』
アハハと苦笑するアルトは内心ドン引きしていた。
「にしても、あのアークゴブリンロードをどうすればいいかだな?」
『氷像にしちゃう?』
『いや、氷像にするだけではいづれ暴れ出すだろう。ここはみじん切りに』
『みじん切りって・・・魔王ってのは随分物騒なんだね』
『貴様の方こそ、なんだあの氷像の数々は?モンスターをただの作品としか考えていないのではないか?』
『やるのかい?』
『妾に勝てると思っているのか?』
「あぁ〜もうッ。エレメージュもローズもうるさいってば」
二人に頼ると喧嘩を始めるのでアルトは頼るのをやめた。
「アレやってみるか・・・」
サラマンダーやワイバーンなどの竜種を一匹残らず討伐した後、アルトはとある魔法を試そうとしていた。
右手に持っていた氷の槍に更に魔力を加えて形状を変化させる。
槍は三つ又に変化し、さらにプラズマが槍の周りに発生する。
「こんな感じかな?」
アルトが使ったのは転生する直前にシヴァから授かったトリシューラの魔法だ。
ローズとの戦いで使ったトリシューラと比べると魔力の消費が天と地ほどの差があった。
強化前のトリシューラの魔力の消費量が1だとすれば強化後のトリシューラの魔力消費量は軽く10000くらいだろうか?
それほどまでの魔力を消費しているアルトだが息一つ切れていない。
神の使徒として転生したことにより魔力量も大幅に強化されていた。しかも、魔力の回復も強化されたためいくら消費しても少ししたら回復する。
これはもはやアルトの魔力量は無限に等しい。
そんなアルトだからこそ、数々の大魔法を発動できていた。
そしてアルトがアークゴブリンロードにトリシューラを投擲しようとした瞬間。
アークゴブリンロードの足を拘束していた氷が砕け散った。
「なっ」
『嘘ッ、あの魔法を自力で解除するなんて・・・ア、アルト』
エレメージュもこれには予想外だったようだ。
「おう、喰らいやがれッ《真・神撃一槍(トリシューラ)》」
ビュンと一筋の青い稲妻となった槍はギュンギュンギュンと不規則な軌道変更を起こし、漆黒の夜空に青白い閃光を残し街に向かって突進するアークゴブリンロードの心臓部目掛けて突き進む。
「グオオオオオオッ」
心臓を貫いたトリシューラはアークゴブリンロードの左肩まで抉りとる。
激痛により雄叫びをあげたアークゴブリンロードだったが即座に傷を治癒し始めた。
「なんだよソレッ」
『ふむ、自然治癒か。しかもかなり最上位のものか。まさかッ超回復』
『まずいよアルト。傷が塞がる前に攻撃を続けないと』
「心臓貫いたのにどうすればいいんだよ」
切り札が効かなかったことでアルトは若干焦り始める。
その間にアークゴブリンロードは加速して街に向かって突進する。
「このままじゃ・・・」
「アルトォォォォォ」
すると下からアルトを呼ぶ声が聞こえる。
「サーシャッ」
アルトが声の方へ視線を落とす。そこには魔力枯渇により少し顔色の悪いサーシャがいた。
アルトはすぐに地上へ降りてサーシャをお姫様抱っこする。そして再びグレイシアに跨り飛翔した。
「なんでこんなとこにいるんだよ?」
「アルトが頑張ってるから私も手伝うわ」
「手伝うって・・・魔力が無いだろッ」
「ゴクゴク・・・大丈夫。大きいの一発なら撃てるわ」
サーシャの心配をしたアルトだったが、サーシャは懐から魔力回復ポーションを取り出して一気に飲み干す。
空になった瓶は再び懐にしまうところにアルトは「かわいい」と感想を残すも、アルトの心配は収まらない。
「お願い。私はアルトのつ、妻なのよッ。旦那様のピンチなら妻である私がサポートする」
まだ少し気恥しかったようで言葉に詰まっていたが力強くサーシャが叫ぶ。
「ッ」
そんなサーシャの攻撃にアルトは瀕死のダメージを負う。
『『はぁ〜』』
アルトの思っていることが分かるエレメージュとローズは同時に溜息を吐いた。
ちなみに、アルトがこのとき思っていたのは・・・
『サーシャマジ可愛すぎッ女神かッ。もうこの戦いが終わったら結婚したい。子供は何人くらいできるかな、今なら百人だって作れそうだぜ以下略』と考えていた。
一部死亡フラグらしき展開があったが死にはしないだろう。
「わかった。サーシャ力を貸してくれ」
「いくらでも貸すわ。私の身と心はアルトのものなんだから」
ここでもまたサーシャの攻撃にアルトは悶えるもすぐに正気を取り戻して防壁に突進しかけているアークゴブリンロードの方を向いた。
「ローズッ」
『《魔薔薇の(ズ)拘束》』
アルトの声でローズは魔法を発動する。再び現れた茨がアークゴブリンロードの足に巻き付く。足をとられたアークゴブリンロードは転倒する。
「よし、サーシャいくぞ」
「えぇ、旦那様。《獄炎》」「+《真・神撃一槍(トリシューラ)》」
昔は使えなかった炎の最上位魔法《獄炎》を発動する。そこへアルトが《真・神撃一槍(トリシューラ)》を全力で投擲する。
「「《神獄炎・(ー)神撃一槍》」」
事前に打ち合わせをしていたかのように息ピッタリな二人の魔法。
青白い稲妻の槍は地獄の炎に包まれ炎の神の一撃となる。赤い稲妻となった槍はアークゴブリンロードの両足を貫く。
「「いっけぇぇぇぇぇぇぇ」」
両足を貫いたあと、槍は方向転換し、アークゴブリンロードの背後から心臓を貫く。
「グオオオオオオ」
雄叫びをあげ、超回復による傷の治癒を試みるアークゴブリンロード。
「グ、オ・・・オオオオオオ」
そして何やら異変を感じたアークゴブリンロードは自身の傷跡を見る。
そこには決して消えることのない地獄の炎が傷を通して体の内側からアークゴブリンロードを焼いていた。
対象のものを燃やし尽くすまで消えることのないこの炎はアークゴブリンロードの細胞を全て焼き尽くす。そう、超回復したとしても再生できないほどに・・・
やがて全身を地獄の炎で焼かれるアークゴブリンロードを正面に氷の聖騎士と赤髪の姫君が氷のペガサスに跨り王をうしなったことで混乱しはじめたモンスターたちを討伐する姿が防壁の上に立つ冒険者たちの目に映る。
地上で戦闘を行っていたものたちには地上に舞い降りた神に見え。
防壁から戦いを眺めていたものたちにはおとぎ話にでてくる魔王に見える。
そして・・・
「よかったなサーシャ」
騎士団に混じっていた友人クレアにとってアルトたちは学生時代に見れなかったバカップル姿が映る。
「嬉し涙の筈なのにな・・・どうして、こんなにも胸が苦しいのだろうか・・・」
ふとクレアの口から零れた言葉は夜の闇に消えるかの如く誰の耳にも届かずに消えた。
クレアがアルトに抱く感情は誰も知らない。友愛なのか親愛なのか恋愛なのか・・・
クレア自身ですら自分の気持ちを理解できていない。
しかし、そんなクレアを周りの声が押しつぶす。ついさきほどまで下手すれば王都の滅亡を意味していた邪悪の巨人は二人の男女により討伐された。
方や素直になれない悪女と他国にまで知られている公爵家の令嬢サルシャラ・ベルメル。
そしてもう片方は見た目はまだ十六、七くらいの美少年。その容姿はまるで王都の英雄アルト・ヴァリアントのようだ。
ここまでくれば誰しもが察する。
「英雄の復活・・・」
「まさか本当に?」
「でもよ、あの事件以来、男のおの字すらなかったサルシャラ様があそこまで気を許しているんだ。それにあの容姿だぜ。英雄の復活だろ」
「「「「「うおおおおおおお」」」」」
魔獣行進による被害はほぼゼロだったといって等しい。死者はゼロ、負傷者は軽傷者、重傷者合わせて三百四十八人。怪我の大小はあれど、命に関わる怪我はなかった。
街への被害にいたっては完全にゼロだ。ここまでくれば奇跡といっても過言ではない。
そして今はまだ朝日が昇らない未明。防壁の内側は松明の炎が揺らめいていた。
「諸君らのおかげでこの街は守られた」
ベルモンドが疲れ切っているであろう肉体に鞭を打ちながら街を守るために戦った勇者たちへ勝どきをあげようとしていた。
しかし、あの場にアルトの姿はない。
なぜなら、アルトが現在いるのはベルモンド邸の庭だからだ。
勿論、庭にはアルトだけではなサーシャも一緒に座っていた。
サーシャは魔力を使い過ぎた所為で魔力枯渇を起こしているが意識ははっきりしており、アルトに体を預けていた。
「ありがとうアルト。この街を救ってくれて」
「サーシャの大切なものは全部守る。俺の命もな」
「ふふふ、ちゃんと学習したのね。そうよ、私にとってはあなたの命が一番大事なんだから、死んだら許さないわよ」
相変わらずイチャつく二人の姿を使用人たちはひっそり見ていた。
本来ならアルトもサーシャも使用人たちの気配に気づいているのだろうが、今回は激しい戦闘の後ということもあって、完全に気が抜けてしまっており、気づいていない。
「・・・綺麗・・・」
夜が明け、登ってきた太陽を見てサーシャが呟いた。
「そうだな、十二年前はさほど綺麗とか思わなかったけど、十二年間、何もない暗闇で過ごしたからさ、太陽ってこんなに綺麗だったんだって何度も思ったよ」
そっとサーシャの肩を抱き寄せたアルトはサーシャの耳元で囁くようにそういった。
「綺麗だと思ったのは太陽だけなの?」
するとサーシャはアルトの眼をみて聞いた。
「いや、サーシャも十二年合わないうちにさらに綺麗になったなって思った」
「ありがと、うれしいわ。でも、私はもう三十になるのよ。世間からは行き遅れとかいわれてるのよ」
魔性の笑みを浮かべたサーシャは「どうしてくれるの?」と脳が解けそうなほど甘く、熱い声音で囁く。
「そうだな、もしだぞ。もし、俺が不老不死だったとして、サーシャも不老不死になり一緒に永遠という時間を一緒に過ごしてくれっていったらサーシャはどうする?」
「勿論、私もアルトと一緒に永遠という時間を過ごすわ」
魔性の笑みから一転し今度は白百合の良く似合う少女の様な笑みを浮かべたサーシャは即答する。
「これって」
アルトはサーシャの前に一つの小箱を開けて見せる。小箱の中に入っていたのは神秘的な宝石のついた指輪だ。
「不老不死を得る指輪だ。サーシャ・・・俺と結婚してくれ」
「ええ、よろこんで」
その瞬間、二人の間で止まっていた時間は動き出した。
後に、この光景を見ていたベルメル家の使用人たちは口をそろえてこういう。
「美しい美女だったサルシャラ様はアルト様から指輪を貰いプロポーズされたそのわずかな、間だけ、まるで十二年前のお姿に見えた」と・・・
アルトにもサーシャの顔がのあのときの姿に映っていた。
いや、正確にいえばサーシャの喜んだ笑顔は、アルトのずっと求めていた笑顔。
アルトとサーシャが初めてあったあの日、アルトがサーシャを好きになったきっかけであった花を見て笑顔を浮かべるサーシャの笑顔と同じだったのだ。
「ほら涙でてるぞ。ほんとに、サーシャは初めて会ったあの日から俺の胸をこんなにときめかせてばかりだ」
優しくサーシャの目尻に溜まっていた涙を拭ったアルトは右手でサーシャの髪を撫でた。
「アルトの方こそ、初めてあったあの日からこんなにも私の心を揺さぶる。愛してるわアルト」
「俺もだサーシャ」
「指輪をはめて下さる」
「かしこまりましたお嬢様」
お互いに冗談を交えて軽く笑ったあとアルトはドキドキしながら箱に入っていた指輪を手に取りサーシャの白くしなやかな細い指に指輪をはめる。
指輪はサーシャの指より二回りほど大きかったがサーシャの指にはめた途端に縮まりピッタリサイズとなった。
流石神様製の指輪だ。
「ふふふ、結婚式はどこであげる?」
「シルバリオ聖王国の教会とかがいいな」
「そうね、あそこの聖堂ほど素敵なところはないわね」
「ふふふ、アルトこっちを見て」
「お、おう」
そして二人は澄んだ青空に浮かぶ、光輝く太陽を背景に唇を重ね合わせた。
これで第一部は完結です。
次章から本格的に古代兵器を封印するための旅にでる・・・かもしれません
感想まってます。




