最愛との再会
「ア、アルト?」
「あぁ、そうだ。サーシャに会うために生き返った。ただいま」
「アルトッ」
サーシャもまた、アルトが分かると一瞬でアルトとの距離を詰めて抱き着いた
「ごめんなさい。ごめんなさい。私ずっと、ずっと、あなたを苦しめて」
嗚咽まじりに、涙を流し、素直に自分の気持ちを伝えるサーシャをアルトは優しく、し
かし、力強く抱きしめる。成長したサーシャはアルトの身長より少し下といったくらいである。
おでことおでこを合わせ・・・
「私、私ッ、アルトのことが大好き。愛してる」
「俺もサーシャのことが大好きだ。愛してる。この世に存在する誰よりも愛してる」
部屋の中央で抱きしめあう二人はお互いへの愛の言葉を口に出す。
「お、おい、どうなってるんだ。お嬢様に男が?」
「えっ、でもお嬢様はアルト様だけって・・・」
そんな二人をこの家の使用人たちとクレアは部屋の扉に隠れて覗き込む。アルトの顔をしらない使用人たちは戸惑い。
「おじょうざまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「よがった、よがったですぅ。ほんとに」
アルトを知っている使用人たちは心の底から喜んだ。
「やっと素直になれたな。サーシャ」
あのときとは違い、心の底からの言葉を素直にいえるようになった友人を見て微笑ましそうに二人を見つめるクレア。
「二度と私以外の女に愛を囁かないで」
「二度と俺以外の男に笑顔を見せないでくれ」
キスしそうなほど顔を近づけお互いの眼を見つめると独占欲からでた言葉を漏らす。
「はい」
「あぁ」
サーシャが笑顔で答え、アルトも笑顔で答える。
そして、アルトはサーシャの腰に手を回し、サーシャはアルトの首に腕を回す。
やがて、二人の距離は完全にゼロとなり、口づけが交わされた。
チュ・・・、チュル・・・んはぁ・・・チュと艶めかしい水音が小さく響く。
「はぁ、はぁ」
「はぁ、はぁ・・・うふふ、幸せ」
息も切れて肩で息をする二人だったが顔は幸せに満ちた表情をしている。
「ほんとエロ可愛いな。あのときよりさらに綺麗になってる」
「エロ可愛いってなに。アルトはあのときと変わらないのね」
「まぁな。死んだときのままだし」
「こっちきて」
サーシャはそういってアルトの手を引っ張りベッドに座らせる。
「ほんとうにアルトなのよね」
「あぁ、俺だ」
「ほんとうに、良かったぁ〜」
再び涙を浮かべたサーシャはアルトの手首を掴む。
「え、えっと、サーシャ?この縄は何?」
「うふふ、アルトと私を繋ぐ縄よ」
「へ、へぇ〜。その割には俺の手首をベッドに固定しようとしてるよね」
「えぇ、今日からアルトは私と一緒なのよ」
「サ、サーシャ?」
サーシャの様子がおかしいと感じたアルトは顔を俯かせているサーシャの顔を覗き込んだ。
「ヒッ」
変な声をだしたのはアルトだ。何故かって?サーシャの瞳が暗かったからだ。深海のように暗く神秘的な瞳はアルト以外を映していない。
「えへへ、アルト。大好きよ」
手首を縛られ身動きが取れないアルトに抱き着くサーシャ。そんなデレデレのサーシャにアルトは理性が崩壊する寸前であった。いや、既に崩壊していた。理性が崩壊した彼をとどめているのは自分の手首を縛っている縄だった。
「やべぇ、すげぇ幸せなんだけど」
「あれ、クレアの臭いが染みついてるわね。仕方ない、私の臭いでマーキングしないと」
完全にヤバい状態になってしまったサーシャに扉から覗いていた使用人たちとクレアはゾッとしていた。先ほどまでキスをしていい感じだったのに、「何故こうなった?」と・・・
アルトは抱き着いてスリスリと彼の胸元に頭を擦りつけるサーシャに話をしていた。
サーシャもアルトの胸元に頭を擦りつけながらアルトの話を聞いていた。
「そんなことが・・・それで、アルトは魔王と一緒にいたのね?」
「そうだな。死んでから昨日までずっと一緒だったな」
「浮気したの?」
ものすごくいい笑顔をアルトへ向けるサーシャ。しかし、アルトは喜べなかった。
ついに、サーシャがアルトへ向けて笑顔を見せてくれたというのにアルトが喜べない。サーシャの眼が笑っていないからだ。
「だ、断じて浮気などしておりません」
「ほんとう?」
「は、はいっ」
脳が溶けそうなほど甘い声を出すサーシャ。さらにサーシャはアルトの耳元へ顔を近づける。
「ほんとのほんと?」
「はい。浮気なんてしていません」
「そう、ならいいわ。それより魔王とお話したいわ」
「た、ただいまッでてこいローズ」
十年前よりも妖艶になったサーシャの前にアルトは成すすべ無し。
『久しいな娘、いや、サルシャラ』
「えぇ、久しぶり。私がアルトの傍にいない間に随分と仲良くなったみたいじゃない」
アルトやクレア、使用人たちは目を疑った。ローズの背後に禍々しい人型の影が見えるなど。
サーシャの背後に炎を支配する女王が見えるなど・・・目の錯覚に違いない。
『まったく、毎分惚け話を聞かされていた妾の身にもなれ』
「うふふアルトったら、死んでも私のことを」
ちなみにこのときアルトはエレメージュの力を借りて縄を斬り、クレアや使用人たちのいるところまで避難していた。理由はいわなくてもわかるだろう。あの二人に巻き込まれれば死ぬ。
『妾が何度誘惑したことか・・・そのことごとくを断ったアルトを妾は何度ほんとうに男なのか?と疑った事か』
「えへへ・・・ってそうじゃない。だいたい話は分かったわ。それで、あなたが私に話したいというのはなんなの?」
すると、その場にいたス〇ンドらしきものは消え去り平和とはいないが殺気に満ち溢れた空気は消え去った。
『まずは謝罪をな。妾のせいで迷惑をかけた』
「いいたいことはそれだけ?なら、私は気にしていないといえば嘘になるけど、今はいいわ。
世界の危機なんでしょ。しかも、あなたの力を使わないといけないほどの」
『そうだ。妾の魔王としての力を使わなければ古代兵器を破壊するのはほぼ不可能といっていいだろう。しかも、たとえ奇跡が起きて破壊できたとしても二体残っている。そんな奇跡が二度三度と続くことはないだろう』
ベッドに腰かけたサーシャはアルトが逃げていることに気づく。すぐにアルトがどこにいるか探すと扉の所に隠れていた。すぐにでも捕まえて縛りたいところだったが魔王との話を優先した。なんたって世界の危機である。
そして扉に隠れているアルトに向かって(目が笑っていない)笑顔を向けて「なんで逃げたの?」と口パクで伝える。アルトは背筋が凍る。
「でも、なんでアルトなの?」
『・・・妾にもわからん。気づいたらアルトのことを好いておった』
「はぁッ、アルトは私のよ」
『わかっておる。アルトが説明していた通り、妾とアルトは十年以上一緒にいたのだ。千年以上もあのペンダントに封印されていた妾にとってアルトと一緒にいた時間というのは千年以上の価値があり、楽しかった。好きになるのも仕方ないだろう』
ローズの話を聞いていたクレアはアルトを見て「なに魔王を惚れさせてんの?」と訴える。
使用人たちも「お嬢様がいるのに他の女堕としてんじゃねぇよ」と男女問わず睨みつける。
「それは無理ないわね。だって私のアルトだもの」
お気づきだろうか。今の言葉の中に「私の」という部分でアクセントが非常に強かったことを・・・自分のものアピールをしながら自分の男は素晴らしいという誇らしげな表情。
『あぁ、そうだな。アルトだから仕方ない。まぁ、今は神霊となった妾と契約しているのだがな』
ローズもサーシャに対抗する。そして二人は「アハハ」と笑う。
「話は終わりかしら?」
『あぁ、そうだが・・・おっと、ひとつ言い忘れておった。もし、アルトが妾と結ばれても恨むでないぞ。素直になれない悪女』
「・・・その喧嘩買うわ。それにあなた、サラッとアルトに呼び捨てされてたわね。その辺とかもしっかりと話をしないとね。ねぇ、アルトォ〜」
ようやく二人の話が終わった。しかし、アルトの苦難はこれからだった。
ローズは霊体となり、姿を消す。アルトはベッドに腰かけて妖艶に微笑みながら手招きするサーシャのもとへ引き付けられるかのように向かう。
ベッドの前まで来ると、アルトは手を引っ張られサーシャに押し倒された。
「ねぇ、なんで逃げたの?」
「に、逃げてない。手首が痛くなったから・・・」
「そうなの、仕方ないわね。それじゃあ、二度と私から離れないで」
「俺だってそうしたいけど、古代兵器の破壊とかがあるからな。できるかぎりそうする」
本当は「勿論」と答えたかったアルトだが、古代兵器を放っておくことは出来ない。
「なら、私も手伝うわ」
「本当か?確かにサーシャがいてくれるなら心強いなッ」
「危険って止めないのね?」
「あぁ、サーシャは俺が守るからな」
「ッ・・・そう。そうね、私のことはアルトが守ってくれるものね」
そういったサーシャは再びアルトの手首を縛ろうとする。
しかし、今回は流石のアルトも抵抗する。
「なんで抵抗するの?」
「い、いや、逆になんで縛るの?」
「私はアルトと二度と離れたくないの。私のせいで辛い思いをさせるのも嫌なの」
「でも、これからはそんな思いしないで済むんだろ?」
「えぇ、私も大人になったの。子供みたいに恥ずかしがることもないわ」
それからしばらくアルトはサーシャに押し倒されたままだった。
抵抗しようにもアルトがサーシャに抵抗などできるはずもなく、彼女の成すがままとなる。
覗いていたクレアたちはこのまま二人がヤるのではないのかと思いその場を離れようとしたが、
残念なことに全員ドキドキワクワクしながらその場に留まっていた。
「あのぉ〜サーシャさん。ドアを閉めにいってもいいかな?」
「いや、離れないで」
「でも「だめ。私が閉めに行く」はい」
そしてサーシャはドアを閉める。
「これで邪魔者はいないわね」
「そうだな」
二人はお互いの服を脱がせ始める。
「ふふふ、アルトったらもうこんなにしちゃって」
「仕方ないだろ。サーシャが魅力的なのが悪い」
「ねぇ、アルト私の心臓の音聞こえる?すっごくドキドキしてるの」
そういってサーシャがアルトの手を優しく掴みむずからの胸へと誘う。
「俺もドキドキしてる」
アルトがそういったとき、屋敷の外が急に騒がしくなる。
「魔獣行進だああああああああああああ」




