〜序章〜 婚約破棄された男と婚約破棄した女
とりあえず第一部は書けていますのでそれを投稿した後、続きをゆっくり書きたいと思います。
続くかどうかはわかりませんが、反応がよければ続けたいと思います。
「みんな、サーシャを助けるために力を貸してくれッ」
「えぇ」
「いわれなくても、私はギルに力を貸すよ」
「わ、私だって、貴様が望むなら力を貸してやる」
「サーシャちゃんは、私の友達だもん」
禍々しいオーラが漂う大きな屋敷の前に一人の青い髪の少年ギルと四人の少女が武器を構え、それぞれすり傷だらけになりながらも立っている。
「クソっ、なんで僕はあのときサーシャに呪具を・・・」
「ギル・・・」
「おい親友待てよ」
少年が額に手を当てて涙を流していると、少年とは違う男の声が響いた。
「アルトッ」
「よう、親友。水くせぇじゃねぇか、俺だってお前に力を貸すぜ。それに、サーシャが大変なんだろ。いくら婚約破棄されたからって元婚約者の危機なんだ、俺も行くぜ」
新たに現れた黒髪の少年アルトはギルに手を差し出す。
「き、貴様ッ何故ここにいる?」
ギルがアルトの手を取ろうとすると、美しい金髪の髪を持ち、緋色の瞳を持つ甲冑姿の少女がすかさず間に入る。
「サーシャに婚約破棄されたあと、部屋に籠っていると聞いたぞ」
甲冑少女の声からは凄まじい気迫を感じる。
「まぁな、だけどいったろ、俺は元婚約者だ。アイツの危機だっていうなら助けるさ」
「アルト君、わかってるの?なんで君が婚約破棄されたか」
そこへさらに、雪の様に真っ白の髪に魔法使いのローブを纏う少女が加わる。
「分かってるって、俺があちこちの女生徒へ手を出したからだろ」
「ならなんでッ」
「別に・・・それより早く行こうぜ」
アルトは五人の先頭に立ち禍々しい魔王城と呼びたくなる屋敷へと向かう。
「待てッ、貴様は足手まといだッ。貴様があそこへ行けるとは思えない」
甲冑姿の少女がアルトの前に立ち、通さぬように剣を構える。
「もう一度いう、貴様は邪魔だ」
「今のままならな、おいロリババア聞こえてんだろ」
アルトが空へ向かって独り言をいう。
『聞こえとるわ、だぁ〜れがロリババアじゃッ失礼な』
驚くことに、独り言を呟くアルトの隣へ十歳くらいの少女が現れる。
「おっ、きたきた。早速で悪いんだが、封印解いてくれねぇか」
「解いてもよいが、お主は彼女を制御できるのか?」
「あぁ、もう大丈夫だ。二度とあんなヘマはしねぇ」
アルトにロリババアと呼ばれた少女はアルトの瞳をじっと見つめる。
時間にして三秒ほど、じっとアルトの瞳を除いた少女は「はぁ」とため息を吐く。
「服を脱げ」
「やだッえっち」
「しばくぞアホッ、解除の為じゃ。上だけでいいから早く脱げ」
「はいはい」
少女に命令されるとアルトはすぐに着ていた服を脱ぐ。
「なッ」
「アルトッ」
「それは、なんなのだ・・・」
ギルと少女たちが見たのはアルトの上半身に広がる鎖の文様。刺青のようだが、刺青ではない。魔法による刻印。
「汝を縛る戒めの楔を解き放て《解除》」
少女が発動した魔法によってアルトの上半身に刻まれた鎖が消える。
「サンキュ、よし、こいエレメージュちゃん」
手を何度か開けて閉じるを繰り返したアルトは自身の魔力を使い召喚魔法を発動する。
「・・・・・・」
アルトが召喚魔法によって召喚したのは全身が真っ白な雪のようで明らかに人間ではないな美女。さら
に、美女はアルトよりもはるかに大きい。アルトが召喚した美女の正体はは精霊である。
しかも、精霊の中では最上位に位置する氷の大精霊、名をエレメージュといい神話にも登場する、ある種の氷の女神と呼ばれている精霊である。
「・・・・・・」
エレメージュはじっとアルトを睨みつける。
「な、なぁ、悪かったよ。俺が未熟なせいでエレメージュちゃんに苦しい思いをさせてたのは、ね、ねぇ、無言はやめて欲しいんだけど。いつもみたいに話してよ」
「・・・はぁ〜、全く君って奴は仕方がないな」
「手伝ってくれるのか?」
『まあね、君があの娘のことをどれだけ思っていたのかは知ってるし。少し羨ましいよ』
「・・・ありがと」
エレメージュの微笑みにアルトは照れたように顔を赤くする。
「ア、アルトッその精霊は・・・」
先ほどからエレメージュと二人で話すアルトにギルが入り込む。
「あぁ、ギルの思っているので正解だ。氷の大精霊エレメージュ。俺の相棒だ」
「なッ」
アルトの発言に、ギルだけではなく彼の背後にいた四人の少女全員が驚いた。
「み、認めない。私は認めないぞ、貴様のような軽薄な男が彼女のような大精霊と契約しているなんて・・・」
そういったのは甲冑姿の少女。
『ねぇ、君。君はアルトの何を知っているの?』
「ひっ」
自分の相棒を馬鹿にされたことに怒ったのか、それとも別のことに怒ったのか何に怒ったのはわからないが、エレメージュは甲冑姿の少女へ信じられないほど圧のある声で話しかける。
「エ、エレメージュちゃんッ。クレアちゃん、いいたいことは分かるが話は全て終わってからにしようぜ。俺達はサーシャを救わないといけない」
「あ、あぁ、すまない。先ほどの発言は取り消そう。そうだな、サーシャを助けなければ」
甲冑姿の少女クレアは落ち着いたようで深呼吸をしたあと、アルトへ謝罪する。
「さて、囚われのお姫様を救いにいきますか。いくぞエレメージュちゃん《精纏》」
アルトが《精纏》と唱えた瞬間、アルトの前にいたエレメージュが小さくなり人間サイズに変わる。その後、エレメージュは吹雪に変わり、アルトの周りを吹き荒れる。
「よし、成功だ」
『ハハハ、良いねアルトッ。僕達やっぱり最高だね』
「そうだな」
アルトの周りで吹き荒れる吹雪が晴れるとそこには白銀の鎧を纏い、ガラスよりも透き通った氷でできた馬に跨る聖騎士がいた。
「名付けて《氷の聖騎士》ってところか」
『ほんと君のネーミングセンスは神がかってるね』
「だろ」
無邪気な少年のように笑うアルトにロリババアと呼ばれた少女も含めた六人が驚く。
「アルト君《精纏》を使えたの?」
「あぁ、初めてやった。そんで成功した」
「初めてッ」
「もういいだろ、俺が屋敷の結界を破壊するから準備しろよ」
アルトがそういうと、氷の馬が天を駆ける。
「この馬はなんて名前にする?」
『グレイシアなんてどうだい?』
「サイコー、それにするか。頼むぜグレイシア」
グレイシアと名付けられた氷の馬は返事をすることはできないが、背中に乗せるアルトへ「任せろ」といいたげに、天を駆ける。
氷の馬に跨るアルトの姿は地上にいる六人にとっては絵本の英雄を見ているようだった。
「エレメージュちゃん、頼むぜ《氷竜吐息》」
アルトが手を屋敷の方へ手を広げると巨大な水色の魔法陣が展開される。
そこから放たれる魔法は氷魔法の最上級魔法の一つである《氷竜吐息》。
それにより、マイナス二百度よりも更に冷たいレーザーが屋敷を覆う結界を凍らせ、砕く。
砕かれた結界はキラキラと散り、そこら中を星々が煌めく夜空のような世界へと変える。
「よし、行くぞ」
アルトの掛け声により、結界の砕け散る様に見惚れていた六人はハッとなり、屋敷へと突入した。
「助けに来たぞサーシャ」
「今さら何よ、わかってるのかしら?婚約破棄されたのよあなた」
アルトが屋敷に入って目にしたのは、茨の棘により拘束された炎のように赤い髪を持つ美少女。そう、彼女こそがアルトの元婚約者であるサーシャだ。
彼女がこうなった理由は遡ること、一週間前・・・




