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それぞれの夜 それぞれの朝

その頃…リカはミドリの計らいで宿舎を訪ねてきたシズカと部屋で話していた…


「ムク…」シズカが連れて来たムクを抱っこしながら頭を撫でるリカ…

「ママ…アルタイルのペットホテルに預かってもらうって言ってたから…嬉しいです!」

「コールドスリープにすれば連れていけるかなって思ったの…リカが少しでもリラックス出来るように…でも今のところトップだなんて…スゴイじゃない!」シズカはリカに微笑みかけた…


しかしリカは微笑みながら俯いて「ママ…私…一生懸命頑張ることは大切だと思うけど…優勝する事が目標なのかな?優勝に向かって頑張って…ダイスケさんもママも喜んでくれて…良いんだよね…これで…」


シズカは真顔で少し考えるような仕草を見せた…そして彼女は掛けていたソファーから立ち上がってリカの横に寄り添って頭を撫でる…


「そうだね…でも…とりあえずは頑張ってみようよ…頑張って切り拓いたその先できっと答えが見つかると私は思うよ…」

「うん…」「そして私もダイスケ君もずっとあなたと一緒にいるわ…いつまでも…」

「うん…うん…」リカは何度も噛みしめるように頷いた。そして身体をシズカに預けて目を閉じた…



それぞれ想い想いの夜は更けて行き…

そして新しい朝がやってくる…



早朝のヴェガ・スケートアリーナの前を通るメインストリートをリカとダイスケは走っていた…向こうから朝靄あさもやの中を駆けてくる一つの影があった…


すれ違う影と影…言葉は交わさなかった。

ただ…今日の演技にお互いに全力を尽くす決意を感じて彼女達は空を見上げた…


ミヤはふと立ち止まって目を閉じた…


幼い頃の自分が蘇る…


「パパ…ママ…どう…?」


「わぁ…ミヤ…上手よ…すごいわ…!」


「ははは…ミヤは将来、スケート選手になるのかな…?」


「なれる…?わたし…スケートせんしゅに…」


ミヤの父親はミヤを抱き上げて彼女の目を見て言った…


「いいかい…?ミヤ…パパとママはミヤがなりたいものになれると信じているよ…

でもね…一番大事なのはミヤが…ミヤ自身が

出来ると自分を信じてあげる事だよ…」


「うん…わたし…なれるよ…ぜったいになるんだ!スケートせんしゅに!」


「ははは…ミヤは頑張り屋さんだからね。

パパもママも楽しみにしてるよ…」




ミヤは目を閉じたまま、演技の振り付けをイメージして舞った…


そして目を開けて微笑んで…また彼女は走り出した…


いつの間にか朝靄が解けて太陽の光が雲の隙間から顔を見せていた…

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