見た事もない笑顔
…シズカさんは兄貴のシステムの問題と聞いて急いで僕の部屋に来て下さった。
「すみません…こんな時に…」「いいのよ…一人で居ても色々考えちゃうしね。ダイスケ君…貴方が居てくれて救われるわ…で、システムの問題って…」
僕は昨日の出来事をシズカさんに事細かに話した…「なるほど…あなたの涙の水分を媒体としてフィギュアの中にシステムが入っちゃったって訳ね…時間経過から見ても完全に同化しちゃってるわね…」「同化するとどうなるんですか?」「まだ実験例が少ないからハッキリとどうなるかは分からないんだけど、無機質のフィギュアは多分生物として生まれ変わるわね…実はあのシステムにはニコラは私の細胞をサンプルとして使用しているの…だからその生物は言わば私とニコラの子供のようなもの…出来れば私が保護したいわね…」
シズカさんは僕の服を着て座っている彼女の方を見て会釈した…
慌てて彼女も頭を下げる…「彼女は?友達?」「ああ、もう一つ相談したいというのは彼女の事で…今朝起きたら僕の横で寝ていたんです…」「ダイスケ君の横で?」
彼女はいきなり僕の横に駆け寄ってきて「あなた…ダイスケさんっていうんですね…ありがとうございます!」そう言って僕の顔を眺めてからシズカさんに向き直って笑った…
僕はシズカさんに「彼女…記憶喪失じゃ無いかと…名前や住所を聞いても分からないって言うんですよ…それが嘘をついているようでも無くて…」「記憶…喪失…?」
シズカはその娘の瞳をじっと見つめる…
瞳のバイオ・エメラルドグリーンの輝きを見た時にある仮説が頭によぎる…
「あ…あ…」「ど、どうしたんですか?シズカさん…」「ダイスケ君…フィギュアってどれくらいの大きさ?」「どれくらいって…等身大フィギュアだから…彼女くらい…!ま、まさか…!」「そのまさかよ…彼女…フィギュアが生物に生まれ変わって人間になっちゃったのよ…」
なんて事だ…でも一瞬にしてバラバラだった僕のたくさんの疑問のピースが繋がった。
「よろしくお願いします…ダイスケさん!」
見た事もないくらい可愛い笑顔で彼女は笑った…