大切な存在
ヴェガに帰ってからのミヤのスケートは変わった…それは一緒にアルタイルに帯同したカオリとマイでさえ、驚く程であった。
「なあ…マイマイ…ミヤさん、あの事故の後からめっちゃ楽しそうに滑ってない?ウチらはどこか怪我したんちゃうかって心配してたのに…損したわ!」「まあまあ…でも…本当に人が変わったみたい!ミヤさんのファンは多かったけどこれほどまでとはね…」
二人がスタンドを見渡すとミヤのスケーティングを観に多くの人がスタンドに入っていた…ミヤはスタンドのファンに向かって手を振ったり、お辞儀をしたりした。ミヤは自分自身に驚いていた…「私…スケートでみんなを楽しませているかな?これでいいのかな?ダイスケ君…」
みんながミヤのスタイルが変わった事に期待や尊敬の念を持つ中、彼女をずっと側で見てきたジュンだけは何故か少し悲しそうな顔をした…
やがて星間学生杯を一か月後に控えた頃…ミヤは寮の自室でカレッジカリキュラムを終えた後、練習までのひと時をスクールのカフェで過ごしていた…
ふと近くの席に視線を移すと楽しそうに話すカップルの姿が目に飛び込んできた…
ミヤは少し寂しそうに笑って一つため息をついた。「不思議ね…今までだったら私のすべき事に一生懸命で他の人の事なんて気にも留めなかったのに…ダイスケ君…今頃何してるのかなぁ?」
空を見上げるとトトトの歌で子供達とスケートを楽しむダイスケの姿が浮かぶ…
そしてそのダイスケの存在は日を追うごとにミヤの中で大きくなっていった…
「ミヤ…今のところ合ってなかったわよ…もう一度!」「はい!」ジュンの言葉にミヤは頷いた。ダイスケの言葉を胸にミヤは練習に打ち込む一方でダイスケに会いたい気持ちはどんどん大きくなっていく…日に日に少しずつ元気が無くなっていくミヤを見つめて…そしてジュンは目を伏せた…「やっぱり…」
「アルタイル行きのシャトルに乗られる方は六番ゲートまでお越し下さい…」
練習のオフの日に目深にキャップを被り、シャトルに乗り込むミヤの姿があった…




