目指すべき場所
ミヤがスケートを始めたのは四歳の頃だった…その頃はアルタイルに住んでいて両親の勧めでやってみたら楽しくて今まで続ける事となった…何より上手く滑れると両親が喜んでくれたのが一番嬉しかった…
ダイスケに言われてミヤは自分の幼い頃のことを思い返していた。
「おーい!ミヤさん!ミヤさんの番やで〜!」カオリの呼ぶ声にハッと気づいてミヤは練習に戻った。
「ご迷惑をおかけしてすみませんでした…」
「いえ…こちらこそリカさんを指導して貰えたりしてこちらも有意義な練習でしたわ!」ジュンとミドリは堅い握手を交わした。リカとミキ…マイとカオリ…それにミヤもそれぞれ握手を交わす…
「リカちゅわ〜ん!ウチが教えたトコ、ようおさらいしておいてな!次は勝負やで!」
「はい!よろしくお願いします!」「ちょっと!リカさん…中堅クラスにそんな気を使う事無いわよ…」
「なんやて!もう一回言うてみい!」「ほら…カオリ…シャトルに間に合わなくなるわよ…」
ミヤが一人でぼんやりしているとみんなが去ったリンクから音楽が聞こえて来た…
「これは…トトトの歌…?」
みんながリンクを覗きに戻るとスケート教室のプティクラスの幼児達に囲まれたダイスケがいた…「おにいちゃん!きょうもあれ!」「わーい!はやくはやく!」
「ようし!」トトトの歌に乗ってダイスケの刻むステップに子供達が手拍子をする…
ヴェガのメンバーやそこにいる全員が楽しそうに滑るダイスケの笑顔に引き込まれる…
「見て…あの子供達の笑顔…スケートのテクニックはあなた達のほうが数段上かもしれないけど…あの子はあなた達に忘れて欲しくない素敵なモノを持っているわね…」
ジュンの言葉に全員が頷いた。ミドリも笑って頷く。リカは嬉しくて満面の笑みを浮かべている…
ミヤは小さな声で呟いた…「忘れて欲しくない素敵なモノ…」
帰りのシャトルの中で窓に映る星空を見つめながらミヤはトトトの歌を口ずさむ…
自分は何の為に滑るのだろう?
自分は何を目指して翔ぶのだろう?
「あなたの笑顔を見てヴェガの人も笑顔になるんだろうな…」
ダイスケの言葉を思い出してミヤは「面白い人…うふふふ…」そう思った後、「人を笑顔にするようなスケートを滑りたい…」星空に向かって彼女は静かに呟いた。




