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月のあかり

シズカさんは懐かしそうに宙を見つめながら続けた…


「実は以前ニコラから預かっていたノートがあってそこにバイオツリーの研究成果の一部が載ってあったの…バイオツリーは無機質の物の中でも特にある金属に引かれるらしい…私はその金属を二種類まで特定してその二つから合金を作り出したの…その金属の小さな薄いチップがミキちゃんの体内に入っているわ…もう一つの工夫はバイオウォーターにミキちゃん自身の細胞を使っている事で拒否反応を限りなくゼロにしている事…こんなところかしらね…」


「凄い!やっぱりシズカさんは天才だよ…」そう言った僕の言葉に…首を横に振る…


「天才はあなたのお兄さんよ…会うことの出来なくなった今でも…ううん。遺して行ってくれたものが大きくて多過ぎて…今でも私は彼に大切にして貰っている…」そう言ったシズカさんの目にも僕の目にもそしてミキの目にも涙が浮かんでいる…


リカが控え室から出て来た…「あれ?皆さん…どうしたんですか…」リカは僕の顔を覗き込んで「ダイスケさん…ひょっとしてまだ痛い所があるんですか?」首を横に振った僕は「ううん…君がいてくれて僕は幸せなんだよ…」とリカに本心から言うとリカは僕を抱きしめた。「嬉しい!…嬉しいです!ダイスケさん…」


シズカさんはニッコリと笑ってミキの車椅子をまた押し始めた…車椅子のミキも「こんなところでラブシーン始めないでよね…」と笑いながら二人はヴェガの皆さんと一緒に寮に帰って行った…


「僕達も帰ろうか…いつもより帰りが遅くてムクがきっと怒ってるんじゃないかなあ…」

その言葉にリカは僕の大好きなあの可愛い笑顔を見せてくれた…


思わず僕はリカを抱きしめてしまった…

「あの…ダイスケ…さん…」驚いたリカだったがすぐに目を閉じて僕の身体をギュッと抱きしめ返した…




真っ暗な病室をカーテン越しの月明かりが照らす…ミヤはゆっくりと目を開けた…


見覚えの無い天井から身体を起こして辺りを見回した…「うっ!」身体の所々に痛みを感じる…皮肉な事にその痛みがミヤに事故の事を思い出させる…


窓際に立ったミヤはカーテンを開けて夜の風に当たった…時間が経つ度に色が変わっていくアルタイルの月を見ながら彼女は色々な事を思い出した…


リカの事…チームメイトの二人の事…復活したミキ…そして…


「そうだ…ブレードが壊れて…転んで滑って行く私の前にマットみたいなものが…でも誰がリンクにマットなんて…?」


ミヤは月に問いかけたが月はミヤに優しく微笑むだけで何も語りかけはしなかった…

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