謎の女性
スクールの事務室の外線着信が鳴り響く…
「はい…はい…またその件ですか?でしたらスクールのホームページをご覧になってください…え?ご覧になったのですか?そこをなんとか?あなた…ここを何だと…あっ!」
通話は途切れて、ミドリは受話器を置きながら大きなため息を漏らした…「ふう…これは何とかしないといけないわね…シズカにも相談相手になってもらおうかしら…」
ある日、僕達はスケートの練習に向かった。リンクの玄関から中に足を踏み入れようとしたその瞬間、玄関脇に待機していたこの間とは違う人だかりがリカを取り囲んだ…
「ああ、君がリカちゃんだね?ちょっとだけ取材いいかな?」「抜けがけは無しッスよ!
…さあ…こっちの壁際へどうぞ…」小型のテレビカメラまで現れて僕は唖然としてしまった…「リカちゃん、あのダンスは自分で考えたの?」「今や、どこのスクールのプティクラスやロークラスでもあの穴掘りダンス…イーナダンスだっけ?真似して大ブレイクだよ。本当に可愛いねぇ!」「あの…その…」矢継ぎ早な質問にリカが戸惑っている!僕がリカを連れてリンクの中に逃げようと決心したその時だった!
「いい加減にしてください!」ミドリコーチの大きな声が空気を一変させた。
「あなた方、スクール側に施設や人物への取材許可は取ってらっしゃるでしょうね。無断でこのような事を行っているという事になれば今後一切の取材のご協力は出来かねます。
ホームページには取材をされる場合はスクールの広報課に取材の意図、取材内容をまずご連絡下さいと以前より掲載させて頂いております。ここは教育の場でもあります。それを踏まえてこちらにもご協力頂ける誠実なメデイアの方々のみと時間を作らせて頂きたいと思っておりますがいかがでしょうか?」
コーチのメディアへの強烈な先制パンチに瞬く間に人だかりは姿を消してしまった…
「さすがね…ミドリ!」そこへシズカさんも現れた…
「シズカさん!」「ママ!」「…ママ?」
ミドリコーチはリカの言葉に反応した…
「いや…その…ほら、い、妹はね、小さな頃に母親が亡くなって…それから私が母親代わりだから…うふふふ…」「そ、そうなの…
でも、ビックリよ…この間、リカさんがシズカの妹さんだと聞いて…」「でも…ダイスケ君…ちょっとやり過ぎちゃったわね…」「はい…でも、もう一つ僕の目論見が上手くいっていたら…」「目論見?」
「ええ…このスケートサークルの質の高さ、
リカの滑り…そしてミキの情熱的なスケーティングのレベルの高さを見直してもらうんです!」