初めての…
夕焼けの街をとぼとぼと僕の後ろを歩くリカ…僕は立ち止まって彼女に話しかける…
「どうしたの?さっきからずっと元気ないよ…」「何でも…ないです…」
僕とリカはコンビニの前を通りがかった…
「リカ…アイス大福買おうか?」「今、要りません…」「メロンシャーベットもあるよ…」「要らないです…」珍しく取り付く島も無いリカにどうして良いのか分からず仕方なく僕達は自分達のマンションに着いてしまった…
ただいま!ムク…遅くなってゴメンね…すぐご飯あげるからね!」僕がムクの食事を用意している時もリカは元気が無い…
美味しそうに食事を食べるムク…いつもならその姿を見ているととても幸せな気分になるのにリカが元気が無いと僕は…
ソファーに掛けているリカの前に僕は跪いた。「ねえ…リカ…本当にどうしたの?何か僕が悪いことをした?お願いだから教えてよ…」するとリカはソファーに寝転がって僕にせなかを背中を向け…やがてゆっくりと口を開いた…
「ダイスケさんは何も悪くないんです…私が…胸が痛くなっちゃって…」「えっ?」
「ダイスケさんとミキさんが話し合ってるのを見たら胸がモヤモヤして…ダイスケさんは悪く無いのになんか腹が立ったような…イライラしてしまって…私…嫌な女の子ですよね…こんなんじゃダイスケさんにもママにも嫌われてしまう…ううう…」
震えているリカの背中を僕は後ろから抱いた…「ダイスケ…さん?」「リカ…落ち着いたら僕の方を向いてくれるかい?」「は、はい…」
リカは急いで涙を拭いて僕の方を向いた!
「嫌だ!私…今可愛く無いでしょう?」
僕はリカのその言葉が終わるか終わらないかの所で彼女を抱き寄せて口づけた…
彼女の口唇は初めての口づけに震えていたがやがてしっかり僕の背中に手を回してきた…
長い口づけが終わって僕はリカの目を見つめた…「リカ…僕はね、ミキとは幼い頃から一緒にいて仲良く育ったんだ…君よりも彼女と一緒にいる時間のほうがはるかに長かった…」
リカは一瞬また胸に痛みが走った…
「でもね、僕がこの先、一緒に生きていく人は彼女じゃない…でも彼女がもう君のように翔べないと聞いて僕はせめて彼女が大事にしているサークルだけは何としても守ってあげたいと思ったんだよ…」「そうだったんですか…だからミキさんは…」「うん…これからも頑張ってサークルを背負っていくって…」
リカは起き上がってソファにかけ直した…「じゃ、じゃあ…ダイスケさんはミキさんのこと…好きというわけじゃ…」「好きだよ…でも、リカだってシズカさんのこと好きでしょ?スケートサークルの人達は?」「ママはもちろん…みんな好きですよ…だっていい人ばっかりですから…」「だよね…僕もみんな好き!」「あははは…」そう言った僕の顔を見てリカは笑顔を見せてくれた。リカの笑顔に僕もムクも嬉しくなった…僕もリカも
「ねえ…リカ…膝枕してよ…」「は、はい…えーっとやり方は…ブレスフォンを…」僕はリカの両手を握って上に上げた…そして膝の上に頭を乗せる…僕はリカを見上げてリカは俯いて僕を見つめる…「ダイスケさん…」
リカはダイスケにもう一度口づけた…「あっ!」でもすぐに彼女はキスを止めて「ゴ、ゴメンなさい…ダイスケさん…私…慰めてる訳では…」「分かってるよ…」「えっ?」「嬉しかった…僕もリカを愛しているから…
好きと愛しているはまた違うんだよ…」
「愛してる…?私もダイスケさんを…?」
「今夜はベッドにおいでよ…一緒に寝ようよ
…」「えっ?ダイスケさんと?嬉しい…」
「まだ胸は苦しいかい?」「あら?もう全然大丈夫かも…すみません…ダイスケさん!私、お腹が空いて来ちゃいました…」
「じゃあ、さっきのコンビニに買いに行こうよ…」「アイス大福かメロンシャーベットどちらにしようかなぁ?…」そう言って彼女は笑った…
いつもよりリカとの距離が少し近くなった夜だった…




