急いでパフェを食べないと
「ちょっと…待ってってば…!」
僕はリンクから出て行ったリカを一生懸命追いかけた…
やがて先を歩いていたリカに追いついた時、僕達の横を揃いの白いトレーニングウェアを来た集団とすれ違った。
その内の少し小柄な女性…顔立ちのハッキリした女性が僕に尋ねてきた…
「すみません…このスクールのスケートリンクはどちらですか…」僕は今、来た道を指差して「ああ、ここを真っ直ぐ行けば見えて来ますよ…」「ありがとう…」彼女は僕より少し年上だろうか?カレッジクラスの女子のような感じだ…
彼女達はスケートリンクの方に向かって歩いていく…僕はふと我に返ってリカを追いかけた…
…リカは小さな花壇のまえで小さく身を屈めて花を眺めていた…「ここにいたの…」
僕はリカの背中越しに彼女に話しかけた。
「ダイスケさん…すみません。私が調子に乗ってあんな事をしたせいで怒鳴られてしまって…私、あなたを楽しませてもあなたに嫌な想いをさせるなんて…黙って部屋であなたの目を喜ばせていたほうが私…幸せだったのかな…?この花のように…」リカは小さな赤い花を見つめている… リカの背中は小さく震えて涙が一粒、二粒…彼女の足元の砂の色を変える…
僕はリカの横から彼女の顔を覗きこんだ…
大きな瞳から涙が溢れている…
「リカ…」僕が彼女の名前を呼ぶと彼女は悲しそうな顔で僕を見つめた。
僕は笑って彼女の涙を指で拭った。
「ありがとう…僕を気遣ってくれて…
でも…君はやっぱりフィギュアじゃない。
フィギュアはこんな温かい涙は流せない…
それに…ちゃんと僕は見てたよ…」「何を…ですか…?」「君が翔んだ時…君は君の為に笑顔になったんじゃないのか?」「あれは…」リカは自分のスケーティングの景色を思い出した…
「私、確かにあの瞬間は全ての事を忘れて
…ただ翔んでいる自分が気持ち良くて…」
「急がなくていい…だからさ、一緒に見つけようよ…」「ダイスケさんと…?」
「そう!だってさ…君は…その…ぼ、僕の彼女になってくれたんじゃないの?」
リカは大きく目を開いて「私が…ダイスケさんの…彼女…あら…あらら…」彼女はまた真っ赤になってしまった…
「あははは…また一緒にパフェを食べに行かなきゃね!」僕が笑うと彼女は目に涙を浮かべて「私、もうフィギュアが良かったなんて言いません…だってダイスケさんに彼女にしてもらうほうが嬉しいですから…!」そう言ってリカは僕の手を握った…
こうして僕には可愛くて優しい最高の彼女が出来た。これから僕は彼女の側であの素敵な笑顔を何度も見られると思うと嬉しい気持ちが止まらなかった…