「雪と僕」
雪が降っている。
誰かが言ってた、雪がシンシン降っているって。
でも、耳を澄ましたってシンシンなんて音は聞こえない。
僕にはそんな音は聞こえない。
それでも雪を見ると聞いてみる。
「なんでそんなに白いんだい?」
もちろん雪は答えちゃくれない。
それでも天を仰いで口を開ける。
口の中にポツリとヒンヤリ気持ちいい。
隣りのオバさんが教えてくれる。
「雪は空気中のゴミとか混ざってるから汚いんだよ」
「へー」
なんでそんな事言うのか分からない。
汚くたって気持ちいい、それでいいじゃないか。
僕には何の問題もない。
後ろのオジさんが教えてくれた。
「排気ガスとかも混ざってるんだよ」
「へー」
やっぱり僕には関係ない。
口を開けて気持ちいい。
周りの人達が口を揃えて言っている。
「うわーキレイだね」
「白銀の世界、美しいね」
「雪がシンシン降ってるよ」
やっぱり僕にはシンシンなんて音は聞こえない。
キレイだとも美しいとも思わないけど、口を開けて待っている。
口の中にポツリとヒンヤリ気持ちいい。
それだけでいいんだ。
みんな少し黙っておくれ。
おしまい。