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現場管理部門生物課のルピタです!

 ディメンションクリエイトコーポレーション、長いのでDCCorp.とかDCCって呼ばれていますが、世界の管理を業務としている法人です。法人とはいっても、神界の行政を司る部門の一つに過ぎないのだけれど、251億年前くらいに行われた民営化政策の一つとして、民間に次元管理部の運営が委託されました。民営化の21億年前くらいから、いくつかの若い神様が義務を放棄して世界の管理を怠り、多くの有望な世界が崩壊するという事態が発生しました。この若い神様の義務の放棄問題を重く見た上位の神様が、若い神様の管理者離れを防ぐため、世界の管理に報酬を授けることを決定しました。また、管理の方法も若い神様に親しみやすいようにと、当時流行っていた育成ゲームや、拠点防衛ゲームといったシミュレーションゲームの要素を多数盛り込みました。この政策は大変功を奏したのですが、ゲームに競争が生まれるのは至極当然のこと。若い神様同士で、どちらの世界がより優れているか、という世界の優劣が生じました。神様が無理な発展を行って崩壊した世界もありました。酷い場合、競争相手の世界を侵攻し破壊する神様まで現れました。この侵害行為は禁止されましたが、神様同士の競い合いは無くなりませんでした。これ以上の世界の崩壊は許されません。そこで、神様に世界の管理のアドバイザーとして計画的な発展を支援する機関の設立が求められました。それがディメンションクリエイトコーポレーション、DCCです。競争を無くすことはできずとも利用することはできる、ということで、世界の管理の報酬をDCCに依頼する際に必要なポイントとし、そのポイントに応じてより高度な管理が行えるというシステムになりました。これにより、競争の力はより良い世界の発展に向き、無茶をして世界の崩壊を招くという失敗も少なくなりました。今ではDCCと同じ業種の法人も増えたり、ポイントの購入できるようになったりと、世界の管理は一大市場となりましたが、DCCは業績トップの座を一度も明け渡したことがありません。


 そんなDCCの現場管理部門生物課で植物の管理を担当しているのが、長らくお待たせしました。私、ルピタといいます。神界の三大企業の一つ、DCCの入社。大変狭き門なのですが、真面目に勉学に励んだおかげか試験に無事合格し、今、ここDCCが私の職場になっています。もう入社11億年目となり、昇進が噂されるようになりました。出世などあまり考えていなかった私ですが、私の働きが同僚にも認められているということで、大変喜ばしいことです。



「ルピタさん、部長がお話があるそうですよ」

「わかりました!」

 ここはDCCの本社ビルのオフィス。私は仕事を中断しすぐに立ち上がりました。声の主の方に歩み寄ると見慣れた先輩の顔があります。その顔はいつにも増して笑顔でとても綺麗です。

「ついに昇進かしらね」

「いえいえ、まだ私にはそんな……他人の上に立つなんてとても」

 最近はこの話題で持ち切りです。認められるのはとても嬉しいのですが、人の上に立つという責任は大変重いものです。リーダーとしての経験はありますが後輩がみんな良い子ばっかりで、私は運が良かっただけです。そんな私が部下を持つのは些か心配です……

「何言ってるの。仕事に真面目だし、後輩に優しいし、上の評価も高いし、同僚でさえ嫉妬どころか尊敬の眼差しで見てるし。私も貴女の教育係になれたことが誇らしいわ」

「そんな、ペルフメ先輩にはまだまだ足元にも……」

「もっと自信を持ちなさい?貴女なら大丈夫よ」

「……」

 先輩の『大丈夫』ほど安心できる言葉はないです。この『大丈夫』に何度救われたことでしょう。先輩が教育係じゃなければきっと落ちこぼれていました。私は気が弱くてあがり症なのを先輩に何億回助けられたことでしょう。これもやっぱり私の運が良かっただけです。

「とにかく、部長のところに行ってきなさい?まず間違いなく昇進の話だけど。今日のお昼を賭けても良いわ」

「先輩がそういうのなら間違いないですね。……わかりました!頑張ります!」

「その意気よ」 

 いつも通り先輩に勇気づけられ、私は部長がいる会議室に足を向けました。


 コンコン

「ルピタです!」

「おお、ルピタさん。入って入って」

 がちゃ

 ドアの向こうにはのんびりな性格で人気がある優しい顔の部長がいました。のんびりな性格ですが、仕事はミスなくこなす素晴らしい方です。私なんて未だにミスをすることがあります。ですが、いつも部長が丁寧に間違った箇所の解説をしてくれます。こんな部長を持てたのは、私の運が良かっただけです。

「失礼します!」

「うむ。そこに座って」

「はい!」

 私は部長の席の斜め隣りの席に座りました。部長はいつも机を挟んで対面せず、90度の位置で話をします。

「ルピタさん、君に嬉しいお知らせだ」

「は、はい!」

「君の昇進が決まったよ」

「あ、ありがとうございます!」

「私が推薦したんだけど、その必要もなかったよ。誰一人、反対しなかったからね」

「ありがとうございます!」

「いやいや、君の日頃の努力の成果だよ。君のような部下が持てたこと、嬉しく思うよ。これからもよろしくね」

「カルモ部長から丁寧なご指導を賜っているおかげです!」

「そう言ってくれると私も嬉しいよ。それで昇進なんだけど、今やってる仕事を片付けて、現場から帰ってきたらすぐに始めるからね。君が向こうに行っている間にこちらの準備を整えておくよ」

「そんな、部長の御手を煩わせるなど……」

「いやいや、やらせてくれ。君への感謝の気持ちだよ」

「うぅ……ありがとうございますっ!」

「ふふ……現場はよろしく頼むよ」

「はい、もちろんです!失礼します!」

 私は立ち上がり部長に向けて一礼した後、会議室のドアを開けて私の席に戻ります。先輩はやっぱり間違っていませんでした。流石です。

 私が昇進ですか……。この職場が好きで、他にすることもないからただ働いていただけだったのですが、これからは部下のことで責任を持たなくてはなりません。責任という言葉は言うのは簡単ですが、そこに生じる重圧は非常に大きいです。これから、今まで以上にしっかりしなくてはいけません。頑張らなくては……


「おかえり」

 待っていてくれたのでしょうか。先輩がオフィスのドアにもたれ掛かって立っていました。

「その顔は、やっぱり昇進の話をされたでしょう?」

「な、なんでわかるんですか?」

「それくらいわからなかったら教育係失格よ」

「ええ!?」

「冗談はさておき」

「冗談なんですか……?」

 冗談でも昇進の話をされたことを当てられました。やっぱり先輩はすごいです。

「貴女、責任が~って考えてるでしょう?」

「ええ!?な、なんで……」

「わからなければ先輩失格よ」

「ええ~!?」

 心が読めるんですか!?私にはできません。これでは部下を持つことはできません……。

「冗談はこれくらいにしておいて」

「本当に冗談なんですか!?」

「とにかく、責任が~なんて深く考えちゃダメよ?」

「で、でも。部下を持つという事は責任を背負うということで……」

「もちろん、昇進することで新たな責任は発生するわ。でもね、すでに働いている時点で多くの責任を負っているでしょう?そこに一つ二つ三つ増えたところで大きな差はないわ」

「そ、そうなんですか?」

「まあ、これはルピタさんだから言えることだけどね。真面目に働いていて、後輩にも気を配れて、上司の評価も高く、温厚篤実な性格。少し一人で抱え込むところはあるけど、仕事はしっかりこなす。貴女以上の社員はウチにはちょっといないわね」

「持ち上げすぎです……」

「これでもまだ褒め足りないわよ。頑張りなさい」

「はい……」


 私は自分のデスクに戻りました。これから担当の世界へ出張です。荷物をまとめて向かいます。

「ルピタ、アゴニアル様の世界へ向かいます!」

会社のしくみは全くわからないので変なところがあるかもしれません。

昇進とか人事とか全然わからないです。


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