表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/89

第七十一話、おまけシナリオで、サーキュレイトの深淵に触れる



今更ではあるのだけれど。

晶さんの後のモンスター化の一助となりそうなすんごい一撃を受けたことによるショックでこの世界のことを思い出したというか、いつの間にやらオヤジに盗み見されていた黒歴史ノートそのものが具現化されていることに気づかされてしまったので、この遊園地の来歴について少しばかり解説したいと思う。



厳密に言えば、この遊園地で繰り広げられるサプライズとスプラッタ満載のちょっと不思議な物語と。

晶さんたち伝説のバンド、『ガラクターズ』が大人になるまでのスピンオフ的な、やっぱり超常な力の絡むファンタジーな物語同士は繋がってはいないはずなのだが。

そのあたりの都合はオヤジには理解いただけなかったということで納得するしかないわけで。



ここでの物語は、超常現象、オカルト的なものと研究、体験している普通ではない大学生の主人公が、ひょんなところから生きた大迷路と化したこの遊園地に迷い込むところから始まる。


主人公は、このあまりに広大すぎて死の気配すら近くにあるエキサイティングな遊園地から脱出するためのキーパーソンでもあるヒロインと運命的な出会いをするわけだが。

どうやらそのお話がめでたしめでたしで完結して、結構経っているのが今の状況らしい。


つまるところ、正規の……物語の道筋通りの脱出方法は失われているということで。

まぁ、この場のオカルティックな不思議を利用して訓練を行っている以上、前言撤回で別の方法が用意されているのだろう。



その辺りのことは、オレの二面同時中継を伺ううちに何とはなしに把握したことで。

そうなってくると、今この場に取り残されているオレは、正真正銘ほったらかしの自由自在というか、やりたいことをやるだけのオマケになってしまって。



だったらとにもかくにも興味本位でとことん楽しもうと。

勢い込んだままに、オレは物見やぐらの根元にこっそり取り付けられた鉄の扉を開け放つ。

一応、余計な面倒というか邪魔が入ってもあれなので、誰も近くにいないことを確認しつつその先に足を踏み入れると、すぐに下りの螺旋階段があるのが分かる。


内側から閉めたら二度と開かないんじゃないかとか、物語の道筋にはなかったいらぬ心配をしつつも慎重に下りていくと、予想から外れることもなく、すぐにその終わりが見えてくる。



そこは……なんて表現すればいいのだろうか。

思えばどのお話、物語にもひとつ覚えで結構登場する、男の秘密基地と、虹色のネオン的機械的光が眩しいコックピットを足して割ったような場所だった。


近代的というか、SFチックなお話を読むのも書くのも苦手なくせに結構重要なところに配置する作者の性質がよく現れている場所であるといえよう。


虹色の光がひっきりなしに流れ回るように明滅する中、いくつも見えるレバーだったりボタンだったりハンドルだったりするギミック。

実のところほどんど背景みたいなもので、この場において重要であるのは、狭い部屋の地面に描かれた、少しばかり盛り上がった魔方陣めいたものだけだ。


申し訳なくも全て分かってますよ、とばかりにそこへ近づくと。

陣の中へ踏み込むその寸前で、ぶぅんとらしい音が鳴って、薄い緑色の光が立ち上っていくのがわかる。


いわゆる、ホログラムらしきもの。

そのまま何も言わず、それでもわくどきしながら見守っていると、すぐにその中心に人らしき影が浮かんできた。


それは、だんだんとはっきりしてきて。

その表情どころか、着ている服……緑色の作業着まで分かるようになると。

その人物がこの遊園地に足を踏み入れて、お土産屋あたりにいた園の従業員のおじいさんとみせかけて、今となってはこの生きた遊園地に取り込まれ飲み込まれながらも孫の身だけを憂う、この遊園地の生みの親であることが分かる。



『……おぉ、まさかこの場所に気づき、やってくるものがおるとはのぅ』


はてさて、キーパーソンとなるお孫さんがいない状況でどのようなリアクションかな、などと思っていると。

思っていた以上にはっきりと、機械な音声とは思えない声が聞こえてくる。



なんやかやあって主人公がこの場に訪れた時、ヒロインなお孫さんのことを託して彼はこの遊園地に飲まれ消えていくわけだが。

オチでなんだかんだいって復活するだけあって、朗らかで憂いなどこれっぽっちもありゃせんよ、なんて声色で。



「いやぁ、何て言うかごめんなさい。ズルっこっていうか、そもそも最初からこの場所の存在、知ってたからなぁ」

『……む? むむむ? もしや、その声はっ。創造主様でありますかな! いやはや、こんな形でも長生きしてみるものじゃのう』


なんとなく後ろめたさがあって。

思わずそう呟くと。


返ってきたのは、何だか多分に勘違いしてるっぽい、何でそんなこと知っているのか驚きしかない、そんな言葉で。


何だか思わぬ展開になってきたぞと。

もしかしなくても、オマケで6番目なオレにも存在理由があるのかも、なんて思わずにはいられないオレがいて……。




        (第72話につづく)









次回は、9月14日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ