第五十一話、観光気分で楽しみたいくらい、色々あって飽きさせない
何とはなしにおさらい。
スタートしてすぐの地点にいきなりあったお土産屋さんで買い物を楽しむには、この園内での通貨が必要らしい。
そのためは、この終わりの見通せない園内のどこかにある宝箱や、そう言う役目を負うファミリア(モンスター)を倒せばいいらしい。
これは後々知る事なのだが、今はオレたちの貸切りになっているけど、普段は能力を使えない一般の人が、曲法という能力体験をしつつ遊べる施設になっているそうだ。
一昔前までは、普通の遊園地で。
経営難で潰れかかっていたそうだが、雨の守り神ことオブシディちゃんを始めとする、はぐれ(主を何らかの理由で失うか、曲法能力者の支配から逃れたもの)ファミリアさんたちが棲みついていたらしく。
今のここの経営者が、彼らと共存というか、彼らとともに園を盛り上げる案を思いついたのだという。
それが意外とアタリで。
三輪ランドなるこの施設は今現在結構な人気スポットらしい。
外部での実地体験学習にかこつけた修学旅行にしては早すぎるだろうって思ってたけど。
このような時期であったのは、ここを貸切りにするのが難しかったというのもあったようだ。
一般の人は、強くてかっこよくて有名らしいウェポンタイプの曲法のレプリカ(銃とか剣とか、らしいものは一通りそろっている)を手渡され、時折襲ってくる(フリ)はぐれファミリアさんたちを撃退して回るらしい。
その間に、所謂遊園地のアトラクションが存在していて。
場所によっては必ずアトラクションに参加しないと通ることのできない場所もあるようだ。
はぐれファミリアさんたちは、オブシディちゃんみたいなもさもさもこもこの動物めいたものたちかと思いきや、初級ダンジョン的な学校内の施設にも出てきたような、ゴーストというか人影みたいなものが多かった。
カラフルの色分けされていて、属性分けのようなものがされているらしく、相性を考えて戦わねばならないようだ。
ある意味中継地点、チェックポイントのような意味合いのあるアトラクションは。
オサレな横文字がついた(基本小難しくて覚えられない)コーヒーカップやらメリーゴーラウンドやらがあって。
通らなければ反対側へは行けないから仕方なしという体で、三対三のまま楽しんで。
たまに見つかる宝箱を開けては、一喜一憂して。
ふらふらと両手上げて近づいてくるはぐれファミリアさんから通貨を強奪しつつ。
先へと進むその中に。
青色の……恐らくきっと火に弱そうな(そもそもこう言う施設で火が使えるのも凄いと思うけど)はぐれファミリアさんがいたので、晶さんの手加減の訓練に勤しんだりもした。
コツは、線香花火の小さな玉が、落ちずに維持できるように、だ。
それが、曲法のコントロール方法に正しいかどうかは、オヤジの受け売りなので多分間違いないとは思うんだけど。
おかげさまで何とか豆粒くらいの大きさの火の玉で青いはぐれファミリアさん一体だけを跡形もなく吹き飛ばす事ができた。
……それでも、黒光りする石っぽい通貨は出たから、多分問題ないだろう、うん。
慈悲も容赦もない一撃ではあったが、辺りに余計な被害を出さずに済んで、どや顔可愛い晶さんを見れたので、まぁよしとしよう。
話題にあがった通貨は、薄くコインの形にカットされた、黒曜石らしい。
はぐれファミリアさんに限らず、大小形様々な宝箱に入っていたわけだが。
コーヒーカップを笑い声あげて通貨した先にあった古そうな木箱には、通貨とは別のものがあった。
黒いうさ耳に見せかけたオブシディちゃんの耳あてなどのグッズに混じって、普通の紙ではない羊皮紙っぽいつくりの地図が入っていたのだ。
「おお、この遊園地の地図かな。……まだ三分の一もいってないみたいだ」
「う~ん。とりあえずでぐちはのってないねぇ」
肩を突き合わせて地図を覗き込んでいるユーキと響さん。
晶さんが見つけて、お揃いだとばかりに付けてもらっていたうさ耳をフィットさせながらだから、思ったより固くて長くて黒いそれがユーキの頬に痛そうな感じでねじ込まれていたけれど。
当の本人はもしやそのケすらあったのか、まったくもって問題なさそうだったので、それに倣ってオレ達も地図を覗き込む。
「さっきのお土産やさんがここで、これがめりーごーらんどかな」
「ちょっ、みんなして顔突っ込まないでっ! 埃っぽい! 意外とこれ年季入ってるって!」
「んー、よくよく見ると、上の方はまだまだ行っていない所が多いみたいだな」
「この先、お化け屋敷……」
本気で嫌そうなユーキに、どこ吹く風の響さんに、何だか嬉しそうな晶さん。
それを、生暖かく後ろで眺めている、大人なカップルの理くんと愛敬さん。
晶さんが指し示すは、『雨の守り神の館』と書かれたハコモノ。
ちょうどこれから向かう先に、おどろおどろしい飾り付けの建物が見えていたので、お化け屋敷だとあたりをつけたに違いない。
その様子を見るに、そういったものが意外にも晶さんは好きらしい。
オレ自身も含めて、『彼女』もホラーものは苦手だったはずなので、そのリアクションはオレにとって結構衝撃的だった。
『彼女』と晶さんは同じじゃない。
改めてオヤジに言われた事の証明のようで。
もしかして、晶さんってばこれがきっかけがモンスター化するんじゃないだろうな、なんて。
自分勝手に戦々恐々としていたオレがそこにいて……。
(第52話につづく)




