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第二十七話、そりゃあ何事も、夢のようにうまくいくはずがない




「【博中夢幻】の二番目セカンド、『摺り抜ける電線』発動っ! ……シィィっ、線光っ!!」



夢見る住人になった時。

戦うような場面になった時。


空気を吸うように当たり前に出てくるちっとも必ず殺せない必殺技。

ようは、手のひらから出てくるごんぶとのビームだ。

咄嗟というか、慧さんを怖がらせているあの物騒なセリフを止めたい一心での一撃だったわけだが。



害意ありまくりのそれに対し、全くもって反応する気配のなかった、この学園の警備システムを刺激させようといった意味合いも含まれていた。


警報か何かが鳴れば、人が集まるなりなんなりしてオレ自身も怒られそうではあるが。

こそこそしている割に言うことが物騒なヘタレもただじゃ済まないだろうと思っていたのだ。


とはいえどうせ必ず殺さない技であるし、それで十分だと。

結構ノリノリで手のひらを向けていたわけだが。



ギャリィン!

と、空気を抉るというより大層硬いものを削って互が悲鳴上げているような、そんな音。

思わず顔をしかめていると、どぶちゃぁっ!! なんて音がしてもうそこまで来ていたはずの黒いのは跡形もなくなっていて。


しーんとするその場。

どうやら素敵なくらいきっかり相打ちだったらしい。

期待していた警報も鳴らず、耳障りのよくない物騒な声も聞こえなくなっていて。


遠目に見えたのは、ドームに張り付いてこっちに来ようとしていた赤や水色のファミリア達が、そそくさと逃げていく……そんな姿で。



「万年……さん?」

「び、びっくりしたぁ。びーむ!? いきなり何さ、お兄ちゃん!」

「い、いや。ほら。今入って来ようとしてただろ? だ、だからダメだぞって。牽制するつもりだったんだけど……」



信じられないものを見やり、やっぱり怯えてる風の慧さんに、まさかあんな結果になるとは思わず、どもりつつ言い訳するしかないオレ。



「ダメだよ。異世の外で能力使ったら! 先生に怒られるよっ。警報が鳴らなかったからまだよかったけど」

「いや、なんていうか申し訳ない」



怒られるどころか、守る仕事ですら許可が必要で、異世の外で能力を勝手に使う事は犯罪上等な奴らのみだというのは、後々に知って冷や汗をかくことになるわけだが。




「すごい、です。倒せるひとが、いるなんて……」


どこか遠い目をしてこちらを見てくる慧さん。

オレの曇りきった目から見ると、なんていうかオレに惚れたら怪我するぜ? って感じだったけど。



結局そこで二時間休み終了5分前のチャイムがなって。

話はまたお昼にでも、という事になって。

当初の目的であったイレギュラー犯人探しについての聞き込みができなかった事に気づかされたのはそれからすぐの事だった。


なんていうか、それより大きな問題が降ってきたような感覚。

オレとしては根拠もなしに、二つは繋がってるんじゃないのか、なんて考えていたけれど……。






それから慧さんが上の空で、本当にお昼の約束をしたのかなって心配ではあったけど。

案の定というかなんというか、玲ちゃん達と約束したという事を話し、ついてくる事になった晶さん以外にも、同じ昼食の間には参加者がいた。



慧さんのお姉さんでもあるみんなの司令塔……精神的支柱っぽい鳥海春恵とりうみ・はるえさんと。

表には出さぬように努力はしているんだろうけど、ぽっと出で現れたオレにどこか気に入らないといった空気を漂わせている(あくまでオレの主観だけど)、愛敬麻子あいきょう・あさこさんだ。



多分きっと、実際はその名前と違って愛嬌を振りまくのが苦手な子なんだと思うよ。

いや、そう思わんといきなり嫌われているってやってられないじゃん。

……なんて事を内心で考えつつも、ごくごく穏やかな昼食の時間が続けば良かったんだけど。



そんな愛敬さんよりも。

対面に座って明らかにこちらを威嚇……あるいは睨みつけてくる春恵さんが気になってしょうがなかった。


いかにも優等生然としている彼女にそんな視線を向けられると、本当に何もないはずなのに何だか悪いことをしたような気になってくる。


加えて背中のちょっと慧さんより大きな羽根が、バッサバッサとこちらを威圧してくるから余計にそう思えて。



こりゃ、自分勝手に犯人探しだなんて空気じゃないな。

慧さんたちを襲った正体不明のファミリアもどきについて慧さんが知っていそうだったから、その話のすり合わせをしたかったんだけど。

慧さんは相変わらず心ここにあらずで、声をかけようにも春恵さんがさりげなくガードしてる感じだった。



一体お姉さんに何を言ったんだい、妹(慧)さんよ。

明らかに警戒されてるんですけど。


どうみても、妹さんが心ここにあらずの理由が。

このどうしようもないオレであると確信持っているみたいに。




       (第28話につづく)







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