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第二十一話、あまりにあまりな苛烈さに、閑話休題




「晶さん、せっかくだし一人一体をノルマにしよう。援護はするから、能力発動してみ?」

「……はっ。せぇちゃん、すごい。強い……ね」

「いやいや、最初に出てくるファミリアさんだからね。あちらさんも力抜いてるのさ。晶さんだってできるよ」



オレとしては、他に何か広がりがあるんじゃなかろうかってにらんでいるけど。

晶さんの表向きと言うか、本人が自覚している能力は、ドラムスティックに込められた力に応じて炎を吹き出す、と言うものだ。


タイプとしては、『ネイティア』ってやつに属するんだろうけど、能力名である【炎礫振霊】を見ていると、他の可能性があるんじゃないかって思えてくる。 

 

通常の能力者はその名に対して主に一つしか効果が無いというか、一つしか使えないそうだけど。

晶さんに対してはそうじゃない予感めいたものがあるのだ。

身内びいきなところはあるかもしれないけど。



まぁそれはともかくとして、現時点で晶さんが使えるのは、名も無きドラムスティックから炎を打ち出す事のみ。


恐らく、晶さん本人がその能力の全てを自覚、把握していないのだろう。

その辺りの部分でも、しっかり見守ってなくちゃならないんだけど。



じゃあ何でそんな事オレ知ってるのかって話にもなるよな。

まぁ、これも一応【博中夢幻】……『摺り抜ける電線』の効果の一つなんだ。


この能力により、夢の住人(ご都合主義)になれれば相手の情報プライベートなんて当然のように分かるものらしい。

……自分で言うのもなんだけど、ふざけた能力だよな。

まぁ、オレができるって信じてないとできないから、オレ自身が大概なのかもしれないけれど。



ちなみに、当然のごとく立花さんや黒姫さんの能力も把握している。

これによって、こっそりフォローできるようにするってだけで、だからどうこうするってわけでもないんだけどさ。

現時点では二人共能力を発動するほどでもないし、また解説するような時はそのうちくるだろうさ。

 


「能力名と曲法の発動の仕方は分かるよね? とにもかくにもやってみよう」



いわゆる守護霊交代前の晶さんにはとんと向いてない気がしなくもない、今の所攻撃一辺倒な能力。

これが味方を補助したり、回復したりとかなら、今の晶さんらしい力だねって言えるのに、名前からしてやな進化後の『彼女』っぽい力だ。


いつもいつでも、いつまでたっても怒ってる所なんか、正に炎っぽいよね。

……やっぱりもしかしなくても、ドラムパートのスタメン任せておけないのは、ガラじゃないでしょって部分は確かにあるのかもしれなかった。

 


ただし、これは口にするとアウトなのだ。

こう見えて、お前にはできないと言われればムッとなって意地でもやろうとしちゃう頑固者なところは『彼女』と同じようだったから。





「う、うん。やるよ。…………【炎礫振霊】っ」


なんて、まだまだスタメン任せられない理由を半ば決めにかかっていたオレだったけど。

そう言って可愛らしく頷き、ドラムスティックをしっかと握りこむ仕草をした……途端。



氷水を背中にびしゃりとかけられる感覚。



「黒姫さん、立花さん! 早くこっちへ、巻き添えを食らうよ!」


素質はあるのか中々のアジール(曲法の力が発動する時のオーラ的なもの)の湛えよう……などと思っていたのが、いきなり爆発的に広がってゆく感覚。



「うわ、ちょっと洒落になんなくないっ」

「こ、こわいよぉ~」


間に合わぬのなら、オレの創った夢の世界……【博中夢幻】一番目ファーストの『ハッピープレイス』の力により緊急避難も辞さない所であったが。


黒姫さんも立花さんも、危機察知能力はしっかりしていたらしい。

オレが部活で鍛えたイザと言う時はでかい声に反応するや否や状況を察知したのか、こちらへとダッシュしてくる。



晶さんの能力が発動したのは、まさにその瞬間で。

初めに感じたのは、こちらに吹き付けてくる熱風。

こりゃ、オレ達どころか本人もやばいんじゃなかろうかと気付かされたオレは慌てて【博中夢幻】の一番目、『ハッピープレイス』を発動し、所謂よくある障壁、バリアーを張り巡らせる。



本来は、自分の異世で壁を創って守るものだが、同時に夢に出てくるよくわからん敵……あるいは夢に出てくる位よく知ってる敵役ポジションの登場人物が撃ってくる必殺技的なものを、夢のお約束でなんとなく防ぐ意味合いもある。


ただ、夢だと判断すると、こっちの技もいくら撃っても当たらなかったり効かなかったりして、結局鬼ごっこになっちゃうんだけどね。


 

   (第22話につづく)







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