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第十八話、異なる世界でレベルアップという名のご都合主義



クラブ活動と言う名称ではあるが、やはりオレの世界で言う所のゼミみたいなものなんだろう。



あの後すぐに軽音部、ガラクターズチームとしての最初の実践授業があった。

オレの第一の目的としては、大人しい晶さんを、未来であんなモンスター風に変貌させてしまうきっかけとなったキーパーソン、コードネーム『小生意気な奴』を発見することだったわけだが。


今考えると、そんな適当な名前を安易につけてしまったことを後悔していた。

人の性格を変えてしまうくらいなのだ。

そこには、のっぴきならない大きな理由があってしかるべきなのだから。




信更安庭学園の実践授業。


一週間の授業で、およそ三分の一を占めるそれは、この世界に蔓延り蔓延している、『曲法』なる超常能力を知り、覚え、鍛え、一流の曲法能力者としてデビューできるように、郊外での実地体験も含め、学ぶ時間らしい。


簡単に言えば『曲法』と呼ばれる力を使い、同じ能力者と戦って勝つ方法を学ぶとも言える。

何せこの世界の芸術においててっぺんを取るには、『曲法』の力が強いかどうかで大きく左右されるらしいからな。



その強さも決めるのに、戦って争わなければならないのだから、ぶっ飛んだ世界だとつくづく思う。

加えて、細かく派閥なんかもあったりして、『曲法』を犯罪から嫌がらせまで悪さに使う奴も結構いるらしい。

オレやユーキ、慧ちゃんのような『護衛』の任についている人がいるのも、その辺が理由のようで。

 


ちなみに、ユーキは我屋さんを、慧ちゃんは玲ちゃんについている。

『護衛』についているのは、オレ達のように単純に家の都合もあるが、『曲法』の能力が必ずしも争いに勝つための能力ばかりでない点にある。

まぁ、『曲法』は進化するらしいし、そのためにこうして学ぼうと言うわけなのだが。


 



「みなさんおはようございます。今日からお待ちかねの実践授業が始まります。二学期末にある発表会に向けて正式メンバーを決めたいと思うので、パートがかぶっている人は切磋琢磨して頑張りましょうっ」

「……」

 

ボーカルとピアノ志望で、我屋さんと一緒にいる玲ちゃんはともかくとして。

その気もホントはないのにドラム志望しちゃってるオレや、新加入のみゆ&まなコンビに対し、晶さんは不機嫌というかずっと不満があるような感じだった。



今は大人しい彼女であるがゆえに、悲しそうな目でこっちを見てくるだけだが。

グループのブレインっぽいポジションの、愛敬麻子さんだけでなく、パート決めにあたって大人というかグループの中心、リーダーっぽい雰囲気のある天使姉こと鳥海春恵さんに、パート決めについて『話が違う』事を言われたのがそもそもの原因だとオレは思っている。



なんでも、元々正式メンバーに彼女が決まっていたのに、あっさり白紙にすると言われたようなのだ。

どうやら晶さんの『曲法』の力が、コントロールがきかず、本人がそもそも争いに向いていないから、とのことで。

 

過去の記憶にある、『お前にドラムなんてできるわけない』といったスパイシーなものではなかったが。

晶さんを変えてしまうかもしれない『小生意気な奴』は、もしかして春恵さんなのだろうかと。

凝りもせず節操なく容疑者? が増えていったけれど。


実際は晶さんを心配してのことなのだろう。

しかし、人畜無害に見えて負けず嫌いと言うか、無理だと言われれば燃えてしまうタイプである事は身にしみて分かっている。


今はただ、嘆いているだけにしか見えないが、それがいつ爆発するか分からない。

これ以降、ますます気にかけなくちゃならないだろう。


そんな事を内心で決心しつつオレ達ガラクダーズチームは。

他の班とともに担当教官の小柴見泉先生に連れられて、普段一般教養を学ぶのに使っている教室を出て、離れにある小さな体育館……多目的ホールなどと呼ばれる場所にやって来ていた。



 

「今からここに、『異世』を展開します。【ネイティア】、【ファミリア】、【フィールド】、様々なタイプに分かれる『曲法』を、まずは体験してくださーい」



さてここで、各々のパート練習と言うことにはならず、それどころか撥の一つもなかった。

なんでも、ここは『異世』と呼ばれる別空間を作り出せる場所なのだとか。


いわゆる、心と時間の修行場といった所だろうか。

あ、でも、オヤジに呼び出されたあの空間とは違い、普通に時間の経過はあるようだ。



つまるところ、この世界の人たちがその身に秘めた『曲法』なる異能を周りの被害を考慮せずに扱える場所って事なんだろう。


何より凄いというか驚きなのは。

この『異世』なる場所でトレーニングする事で、自分の異能の、そもそもの元になったもの……才能と言うか技能まで向上すると言う事だった。


実際、楽器の練習時間もあるのだが、大半は異世の中で技術向上させるらしい。

なんて言っていいのか、ご都合主義と言うか不思議な世界である。



ただ一つ、問題なのは。

例えば好きで演奏しようと思ってるドラムが。

その人自身の異世により向上できる才能だとは限らないと言う事、で……。




      (第19話につづく)







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