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フルングニル星域会戦ー1

 「やっと、ここまでは来たか。願わくば、後3か月は欲しいけどね」


 奇怪な形状を持つ艦を寄せ集めたような部隊の旗艦、先頭を行くアジャンクール級巡洋艦2番艦オルレアンの戦闘指揮所では、非常に若い女性軍人が部隊の仕上がりについてぼやいていた。  

 なお彼女自身は、指揮している艦の形状とは打って変わって非常に美しい容貌の持ち主だった。

 ただし、制服をだらしなく着崩して指揮所に持ち込んだベッドに寝転がりながら指示を出している姿は、彼女が軍人としては異形の精神の持ち主であることを示している。その意味では第66巡洋艦戦隊の司令官としてお似合いかもしれない。



 「出来ればミサイルの再装填時間は5分に縮めたいけど、現状では大事故を起こすだけだし。8分で済めばいいとしましょう。後はもう少し、艦隊運動の訓練を…」

 (一応、言うことはまともなのに…)


 その司令官、リコリス・エイヴリング准将の副官を務めるリーズ・セリエール少尉は内心で溜息をついていた。リコリスは能力的には素晴らしい軍人だ。天才的な戦術家だし、限られた時間で部隊を及第点まで鍛え上げる手腕もかなりのものだ。

 なお後者については、リコリスは改善すべき点を発見して方針を決めるだけで細かい点はリーズたちに丸投げだが、それが出来ない上官は山ほどいる。

 まるで見当違いの訓練をさせて時間を浪費したり、出来もしないのに専門外の分野に手を出す輩に比べれば、素晴らしい上官だと言っていいだろう。…怠惰を絵に描いたような勤務態度さえ無ければ。




 「ところで少尉。明日はファブニルに降りて、美味しいものでも食べに行かない? 確か、誕生日だったでしょう。私が奢るから」

 「え!? は、はい。ありがとうございます!」


 そう考えていたリーズは、突然リコリスから明日の休暇について提案されて面食らった。

 戦争と艦隊戦チェスにしか興味がなく、朝食はパンと紅茶とサプリメント、昼食は戦闘糧食C(人体に必要な栄養が全て入ったエネルギーバー、お世辞にも美味しいものではない)、夕食も戦闘糧食C等という食生活を送っていた人物から、まさか外食を提案されるとは思わなかったのだ。


 もっと驚いたのは、リコリスがリーズの誕生日を覚えていたことだ。誕生日自体は副官が赴任するときに送られる書類を読めば分かるが、リコリスが記憶しているとは予想外だった。

 必要の無い情報を暗記するのは記憶容量の無駄遣いと断言し、士官学校で散々暗唱させられたはずの「十二か条の宣誓(軍人としてあるべき心構えを12の文に纏めたもの)」ですら忘れるような人なのだが。



 「あれ、迷惑だった? なら、別にいいけど」

 「い、いや違います! お気遣いありがとうございます。嬉しいです!」


 リーズの驚愕を困惑と受け取ったらしいリコリスが不安そうな口調で言い、リーズは慌てて誤解を正した。驚かされはしたが、リコリスの提案は決して不快なものではなかった。


 「なら、いいのだけど… 無理してない? 別にこれは上官としての命令ではなくて、1人の人間としての提案だから拒否してくれても…」


 しかしリコリスは不安そうな顔のままだった。ファブニル星域会戦の終盤、巡洋艦と護衛駆逐艦のみを率いて敵新鋭戦艦と対峙した時の方が、余程堂々として自信ありげに見えた位だ。本当に戦争以外の分野では不器用な人である。



 (まあ、それがこの人のいいところだけど…)


 リーズは内心でそうも思った。軍人の中には部下を奴隷と混同し、休暇中でも私用でこき使うような輩がかなりの数見受けられる。リーズの同期でもその手の上官に当たり、酷い目に遭ったと零している者は多い。

 その中でリコリスの誠実さは際立っていた。命令への服従を要求するのはそれが必要な時だけで、私的な場面では絶対に上官としての権威を振りかざさない。

 能力はともかく人格的には尊敬できない人物の代表格と言われることも多いリコリスだが、リーズとしてはその一事だけでも好感を持てる。




 「ところで司令官、司令官には美味しいお店の心当たりがあるんですか?」


 しかしそれはそれとして、リーズには聞きたいことがあった。リーズの着任前は戦闘糧食C(大抵の人間は3日で飽き、7日で喉を通らなくなる)を何か月も食べていたような人が、特定の惑星における飲食店の情報など知っているのだろうか。


 「…あ、それは」


 リコリスが言葉に詰まった。色白の顔がさらに白くなっていく。

 なおリーズがアリシア准尉とエルシー飛行曹長に聞いたところによると、現在惑星ファブニルでは生鮮食料が不足しており、まともなレストランは営業していないという。僅かな生鮮食料は全て財閥の屋敷に運び込まれ、庶民向けの食堂ではインスタント食品を温めて出すだけらしい。

 

 少なくともリコリスよりは食べ物に興味があり、それなりの金もある(パイロットの給料は、下士官でも並みの士官を上回る)2人が調べてこれである。リコリスに見つけられるはずが無いという勘は、どうやら当たっていたようだ。


 「ご、ごめんね。やっぱり、この話は無しにして」


 リコリスが非常に申し訳なさそうな口調で謝罪した。少尉に謝る准将というのも、あまり聞いたことがない。


 「ま、待って下さい。レストランは無理でも、他の観光地に行きませんか?」


 リコリスがそのまま会話を終了させようとしたのを見て、リーズは慌てて提案した。「人付き合いも外出も大嫌い」だと常日頃から公言しているリコリスが、せっかく一緒に出掛けようと言ってくれたのだ。この機会は逃したくない。


 「観光地? ファブニルにそんなものあったかしら?」


 リコリスが怪訝な顔をした。確かにファブニルは工業惑星で、観光地は少ないが。


 「実は一度、行ってみたかった場所があるんですよ」

 「ふーん」


 リコリスの返答は素っ気なかったが、その表情は嬉しそうだ。リーズは顔が綻ぶのを感じた。















 自分は何をやっているのだろう。寄ってきたウサギの頭を撫でながら、リコリスはつくづく思った。

 ここは元々、『連合』軍の基地があった場所だが、戦闘及び敗走する『連合』軍が弾薬庫を爆破した影響で雑草だらけの更地になっている。そこに、大量のウサギが放し飼いされているのだ。


 このウサギたちは元々、同地の『連合』人居住区の政府が戦前に民間人たちに配ったものだ。

 開戦前、『共和国』人居住区との対立が深まっていく中、同政府は内戦による食糧不足を予想した。そこで思いついたのが、雑草だけで育つウサギを食肉用に配ることだったらしい。

 平民の飢え等、対岸の火事以下の些事としか思わない人間が多かった『連合』旧政府にしては、意図としてはまともな政策だったかもしれない。しかし問題は、この思いつきがあまりに粗雑なものだったことだ。


 そもそもウサギを食べるという発想が、大抵の人間にとって縁遠いものだ。宇宙時代の黎明期ならともかく、大型家畜が全ての有人惑星に行き渡っている現代、ウサギがまともな市民の食卓に並ぶことはまず無い。

 スラム街では雑草や野菜屑で育てたウサギを食肉や毛皮として売っているが、そのことが逆に「貧乏人の食べ物」という偏見を強めている。スラムの住人以外でウサギを飼う人間もいるが、あくまでペットとしてである。

 そのような文化的背景を無視してウサギを配った結果は、単に市民にペットを無料配布しただけの事だった。市民たちはウサギを可愛がるだけで、一向に食用にはしなかったのだ。

 

 その後、ファブニルは『共和国』の完全占領下に置かれ、重要な地区に居住していた『連合』系住民は『共和国』奥地に移住させられた。ペットのウサギを残して。




 

 手元に残った大量のウサギに、『共和国』が派遣した現地政府は頭を痛めた。野に放せば農業害獣となるのが目に見えているが、殺すのも寝覚めが悪い。取りあえず移住してきた『共和国』人にペットとして配布することで大分処分したが、それでも一部は残った。


 困り果てた現地政府は、取りあえずそこかしこにある雑草だらけの荒れ地に柵と小屋を作ってウサギを収容した。

 それだけなら飼育費用ばかりが掛かるが、誰かが一計を案じた。ウサギ放牧地の周りに飲食店や動物園、遊園地なども作り、小動物と触れ合える娯楽施設として飼育費用を回収することにしたのだ。

 リコリスとリーズが来ているのも、そのような施設の1つである。正直リーズに誘われなければ、絶対に来ることは無かっただろう。



 「やっぱり可愛いなあ」


 隣のリーズが、嬉しそうにウサギを撫でている。彼女は動物好きらしいが、宇宙船であちこちの星を移動する宇宙軍人は当然ペットを飼えない。そのため、一度ここに来てみたかったのだという。


 (まあ、いいか)


 リーズの笑い声を聞きながら、リコリスは自分の前にいるウサギを見つめた。こういう丸っこくてふわふわした生き物は嫌いではない。それに…


 (彼女もウサギが好きだった)


 リーズの顔を見ながら、リコリスは内心で溜息をついた。不快だが懐かしくもある痛みが胸中に走る。19歳になったリーズは、ますます似てきた気がする。




 「あっ、別の子が来ましたよ!」


 リコリスの内心等知らぬ気に、リーズが歓声を上げる。その声もまた似ていて、リコリスはますます憂鬱な気分になった。

 分かっている。リーズ・セリエールはジュリー・オードランではない。分かっているはずなのに。



 「ところで、リコリスさん」

 「は?」


 不意に名前で呼ばれ、リコリスは飛び上がりそうになった。


 「ご迷惑でしたか!? その…勤務中でも無いのに『司令官』とお呼びするのもどうかと思ったので…」


 リコリスの態度を見て、リーズが驚いたように謝罪した。

 

 「…ああ、いや別にいいのだけど。少し驚いただけよ」


 リコリスはそう答えるしかなかった。リーズに他意はなく、ただ勤務外での呼び方に困っただけなのだろう。


 「それで、何?」

 「いえ、大したことじゃありません。リコリスさんが楽しんでくれているか、ちょっと気になっただけです」


 リコリスが続きを促すと、リーズは照れくさそうに答えた。その表情もまたそっくりで、リコリスはやり切れない気持ちになった。


 「あの、やっぱり退屈でしたか!? だったら、別の所に」

 「いや、そう言う訳では無いわ。ただ、こういう場所に来るのは久しぶりだから」


 リコリスの表情の変化を不満と受け取ったらしく、リーズが慌てたように言う。リコリスはこちらも慌てて、理由にもなっていないような答えを返した。

 そう、リコリスは戸惑っているだけだった。ジュリー・オードラン以外の人間と、このような時を持っている事に。






 「あれ? リーズさんにリコリスさん!? 来てたんですね!」

 「ち、ちょっとアリシア!? もう少し、何というか…」


 微妙な空気を振り払うように、背後から声がした。振り返ると、2人の少女が駆け寄ってきている。言わずと知れたアリシア・スミス准尉、及びエルシー・サンドフォード飛行曹長の2人組である。

 なお2人の背後からは、数羽のウサギがぴょこぴょこ走ってきている。血筋の関係で人間からは警戒の目を向けられる事が多い彼女たちだが、小動物には好かれるらしい。


 「へえ、貴方たちも来ていたのね」


 リコリスはそう答えるしかなかった。なお2組の邂逅は特に意外な出来事ではない。現在の惑星ファブニルは大量の工業労働者と軍人が流入したため、男性人口の比率が異様に高くなっている。

 人口構成を反映してか娯楽施設は賭場や娼館が中心で、休暇中の女性が遊びに来る場所と言えば、このウサギ園くらいしか無いのだ。



 「はい、アリシアがウサギ好きだと言うので」


 早速ウサギを撫でているアリシアを見やりながら、エルシーが少し緊張した様子で言った。天衣無縫なアリシアと比べると常識人の彼女は、上官との距離について考えているのだろう。


 「階級の事は気にしないで。気楽に遊んでなさい」


 リコリスは2人にそう答えた。休暇中まで上官として威張り散らす趣味はリコリスには無い。2人の少女には、フルングニルへの出撃前最後の休暇を楽しんで貰いたかった。そしてリーズにも。



 「ほら、リコリスさんも気にしないでいいって言ってるし。エルシー、あっちで餌やり出来るらしいから行ってみない?」


 アリシアがさりげなくエルシーの肩を抱きながら、早歩きで園内の小屋に向かっていく。その光景を見たリコリスは懐かしさに酷似した感覚を覚えた。何年も前の自分たちがそこにいるような。



 次にリコリスは、隣のリーズを見た。正面から見ても似ているが、横顔はもっと似ている。一瞬、ジュリー・オードランが戻ってきたと錯覚しそうになった程だ。


 「その、リーズ…」


 呼び掛けた瞬間に、彼女は消えてしまうのではないか。そんな不合理な恐怖に耐えながら、リコリスは恐る恐る話し掛けた。


 「何ですか?」


 リーズが向き直って来る。緑色の瞳がこちらを見ていた。ジュリーの瞳はもっと青みがかっていたような気もする。或いは、同じ色だったような気もする。



 「…あそこの建物に、子ウサギがいるらしいから見に行かない?」


 結局、リコリスの口から出たのは意味の無い誘いだった。本来伝えなくてはならない言葉が、どうしても口から出てこない。


 「はい!」


 リコリスの内心等知る由もないリーズが嬉しそうに応えて来る。リコリスは躊躇しながら彼女に右手を差し出した。

 反応が無ければすぐに引っ込めるつもりだったが、リーズはすぐに手を取ってきた。冬なので手袋越しではあるが、柔らかい感触が伝わってくる。


 (まあ、いいか…)


 リコリスは立ち上がりながら、無理やり自分に言い聞かせた。副官と親交を深めるのは悪い事では無いはずだ。


 


 「そう言えば、リコリスさんの好きな動物って何ですか? 私はウサギとかリスとかですけど」


 リーズが楽しそうに話しかけてくる。適当に受け答えしながら、リコリスは恐らく唯一の幸福な記憶が蘇るのを感じていた。

 いや、記憶ではない。自分は恐らく今、幸福なのだろう。それが…


 「怖いな」

 

 「え、何がですか?」


 心の中で呟いただけのつもりが、口に出ていたらしい。リーズが怪訝そうに聞いてきた。

 言葉に詰まったリコリスは、答える代わりに握った手の力を少し強めた。リーズの手は、確かにそこにあった。



 「何でも無いわ。少し、昔の事を思い出しただけ」


 リーズの手の感触を確認しながら、リコリスはやっと言葉を絞り出した。リーズは今、実体として目の前にいる。ジュリー・オードランの幻影ではなく。


 「リーズ、これからもよろしくね」


 リーズが怪訝な顔をする中、リコリスはせめてもの言葉を発した。自分の思いが身勝手なものであることは分かっている。それ以上の事は言えなかった。

















 


 


 この戦争の主要な戦闘の1つとなるであろう艦隊決戦の始まりは、意外なほど地味な物だった。流れ星を思わせる小さな光の筋が10個ほど交差し、そのうち3つが爆発する。

 流れ星たちはすぐに遠くに飛んでいき、後には僅かな残骸だけが残された。

 

 「先手を取られたか」

 

 『共和国』宇宙軍第3艦隊群司令官のゲミストス・ベサリオン大将は、レーザー通信で転送されてきた戦闘結果を聞いて舌打ちした。

 喪失機数は『共和国』2機に対して『連合』1機、また『連合』軍機は第3艦隊群の位置を通報する事に成功した。被害の面でも目的の達成度でも、『共和国』側の敗北だ。

 

 「航空機の性能が違う以上、致し方無い事かと」

 

 隣のエゴール・コヴァレフスキー中将が、慎重な口調で言った。コヴァレフスキーはこれまで戦隊や分艦隊の司令官を中心に勤務してきた人物だが、今回はベサリオンの下で参謀長の任に就いている。

 ベサリオンは司令官より参謀の経験が長く、幕僚の大半も同様であるため、参謀長には少し毛色の違う人物がいた方が良いという判断だった。

 

 「こちらも新型を用意してきたのだがな」

 

 ベサリオンは憮然として答えた。艦隊の防空を務めている機体は、これまで主力だったPA-25C型の改良型であるPA-25Dだ。エンジン出力が8%向上したほか、一部に新素材を使用する事で軽量化にも成功し、推力質量比が向上している。

 

 「相手はPA-25の倍近い出力のエンジンを持つ化け物です。遺憾ながら、小手先の性能向上では限界があるでしょう」

 

 「PA-27の量産開始が急がれるという事か」

 

 コヴァレフスキーが宥めるように言った言葉の意味を、ベサリオンはすぐに理解した。『共和国』宇宙軍次期主力戦闘機のPA-27は試作機が既に完成しているが、試験飛行中の空中分解事故等もあって実戦投入には未だ時間がかかるらしい。

 一方、『連合』軍はこれまでのスピアフィッシュに次ぐ戦闘機、バラグーダを既に実戦配備している。さっきPA-25Dを蹴散らしていったのも、ほぼ間違いなくバラグーダだ。

 

 戦闘結果は兵器の性能だけで決まる訳では無いが、決定要素の1つではある。そして今の所、『共和国』宇宙軍はライバルの『連合』宇宙軍に一歩遅れていた。その事がたった今、航空戦の勝敗に直結したのだ。

 


 (流石は超大国と言った所か)

 

 ベサリオンは苦い感慨を抱いた。『共和国』の戦意高揚放送では、『連合』を白蟻の巣食った大木に例えている。見かけは立派だが内部は脆く、強く蹴飛ばせばすぐに倒れるという意味だ。

 しかしいかに腐敗と分裂に苦しんでいても、『連合』が人類世界で最も古く、大きい国である事実は変わらない。その膨大な国力とこれまでに蓄積された技術力が、新たな超大国として名乗りを上げている『共和国』の前に立ちはだかっている。

 


 「空母部隊に、対空装備の機体を増やすよう命令しましょう。完全に航空優勢を取られて空襲を受けることだけは避けなければなりません」

 「分かった」

 

 ベサリオンはコヴァレフスキーの具申を容れた。航空機から艦隊を守る最良の手段は航空機だ。その航空機が質で負けているなら、量でカバーするしかない。

 緒戦で空襲を受けた結果、隊列が混乱した状態で戦う羽目になったオルトロス星域会戦の再現は、何としても回避するべきだった。

 


 「第66巡洋艦戦隊より入電。『敵艦らしきもの10を発見。敵前衛と思われる』、以上です」

 「始まったか」

 

 約2分後に飛び込んできた報告に、戦闘指揮所の皆は緊張を強めた。オルトロス星域会戦以来久々となる、『連合』相手の大規模戦闘が始まろうとしている。

 

 (オルトロスの時よりはましだが)

 

 ベサリオンは状況を確認しながら溜息をついた。『連合』側は『共和国』側本隊の位置を既に把握しているのに対し、こちらが見つけたのは小規模な前衛だけ。かなり厳しい戦いになりそうだった。

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