白衛ー3
エルシー・サンドフォードは、自分が乗っている機体の力に畏怖に近い感情を覚えていた。
少しアクセルを踏んだだけで、これまで乗っていたPA-25シリーズの最大出力に匹敵する加速度で前進する機体。どこまでもクイックな、軍用機というよりはレーサーを思わせる反応性と運動性能。
この機体に比べれば、これまでの戦闘機は全て練習機のようなものだ。エルシーにそう思わせるほど、現在の乗機の性能は優れていた。
ただ惜しむらくは原型機にあった操縦困難という問題点が完全には解決していないことだが、その原型機に一度乗らされたことがあるエルシーにとっては許容範囲だった。
原型機は注意していてもスピンに陥る危険があったのに対し、この機体は注意しなければ制御不能になる可能性があるという程度だ。
これでも軍用機としてはいかがなものかと思うが、原型機がアリシアのような天才にしか乗りこなせなかったことを考えれば、格段の進歩と言える。
「敵航空隊、わが方に接近中。各隊、対艦攻撃機を援護せよ」
指揮官機から命令が届き、エルシーとアリシアを含む全機がやや加速する。2人にとっては久しぶりの実戦であり、この機体にとっては初の実戦だった。
彼女たち航空隊に課せられている任務は、惑星カトブレパスに存在する敵航空戦力の一掃である。
今いる惑星カトブレパス周辺に固有の『連合』軍航空基地は存在しないが、艦船の基地に護衛空母30隻前後を含む艦隊が停泊していることが、事前の偵察によって確認されている。
恐らく現在スレイブニルにいる『連合』軍主力部隊に、補充機を送り届けるための部隊だろう。それを撃滅するために、航空隊は送り出されたのだった。
護衛空母は普通の空母より遥かに低速・低防御で搭載機数も少ないが、それでも30隻という数は脅威だ。
母艦の性能がいくら低くても、搭載されている機体の性能自体は正規空母と変わらない。それが十分な数集まれば航空攻撃力だけは、正規空母部隊に匹敵するようになるのだ。
彼らが居座っている限り、今回の作戦の第一段階である惑星カトブレパスの制宙権確保は不可能だった。
そこで『共和国』軍は本隊の接近と同時に、航空機による先制攻撃を行うことにした。護衛空母が基地を離れて機動戦力と化す前に、全力を挙げた航空攻撃で戦闘不能にするのだ。
情報アドバンテージを生かして敵を一方的に叩くという、戦理に叶った常識的な戦術だが、一方でリスクも存在する。
最初の一撃で片を付けることを前提としているため、もしそれが失敗すれば今度はこちらが一方的にやられてしまうのだ。
空母という兵器は瞬間的な攻撃力の点では凄まじいが、継戦能力が著しく低いという欠点がある。艦載機をいったん出撃させてしまえば、それが攻撃を終えて戻ってきて整備を完了するまで何も出来ないからだ。
それを考えると、全航空戦力の使用は危険だった。もし全力での攻撃が空振りに終われば、1本しかない矢を外した弓兵と同じ状態になってしまう。
しかし『共和国』軍は敢えて、護衛空母に対する全力攻撃を選択した。状況を考えれば攻撃失敗の可能性は低い。中途半端な攻撃によって敵を残存させた挙句に見失う危険の方が、それより遥かに大きいと判断したのだ。
まず護衛空母は商船用の機関を搭載しているため、速力だけではなく動き出すのも遅い。軍艦の機関は最小限の発電しか行わないモードからすぐに最高出力に切り替えられるが、急起動を想定していない商船用機関では不可能だ。
その為護衛空母はまだ基地に接舷しているか、すぐ近くにいると考えられる。航空攻撃で怖いのは敵を発見できずに空振りに終わることだが、相手が護衛空母ならその可能性は小さかった。
もう1つの懸念は敵の防空隊によって攻撃が阻止されることだが、『共和国』側には切り札があった。
2000隻の敵艦隊を掻い潜って包囲下の味方艦隊を救出するという無茶な任務を遂行する代償として、リコリスは空母に載せる航空隊として新鋭機の装備部隊を要求したのだ。
彼女の旗艦オルレアンの搭載機は既に更新されていたが、『共和国』宇宙軍全体でみればまだ装備部隊は少ない。それを纏めて渡せという要求にはひと悶着あったが、上層部は結局認めた。4個艦隊を本当に救出できるというなら、航空隊位は安い代償だと判断したのだ。
かくしてリコリスの白衛艦隊は、『共和国』軍の中で最も多くの新鋭機を装備する部隊となった。これにより白衛艦隊は、作戦途中で遭遇が予想される敵航空隊への対応策を一応手に入れたのだった。
「敵機の反応を探知。バラグーダと推定」
エルシーは念のために、誘導兼情報支援役のRE-27偵察機が送ってきた情報をアリシアに伝えた。迎撃に出てきた敵機はやはり、登場以来『共和国』軍を悩ませているあの機体らしい。
「バラグーダ……か」
アリシアが珍しく、少し不安そうな口調で呟いた。2人ともバラグーダには碌な思い出がない。最初に遭遇した時は危うく戦死する所だったし、次に対戦した時もすっきりしない結果に終わっている。
図体の割にやたら加速性能が高いバラグーダは、『共和国』軍の主力戦闘機PA-25ではそもそも射線につくこと自体が難しい上、装甲が厚いので何とか射撃を命中させても墜ちないのだ。
「この機体なら大丈夫なはず」
エルシーは彼女を励ますように言った。
2人が乗っている機体は、PA-27Aと呼ばれている。その名の通り、2人がかつて一度乗ったことがあるXPA-27の初期量産型である。
原型機との相違点としては、操縦用プログラムの変更によって散々指摘された操縦性の悪さが大分改善された他、エンジン出力が15%向上している。現在の『共和国』宇宙軍が持つ最強の戦闘機だった。
改良されたとはいえ、PA-25シリーズと比較するとまだ操縦が難しいことは否めないが、対戦闘機性能の向上はそれを補って余りあるものだ。
何しろPA-27は原型機の時点で、加速性能ではバラグーダを上回っていた。更に性能が向上した量産型なら、相手がバラグーダでも互角以上に戦えるはずだった。
2人が話している間に、両軍の航空隊は凄まじい速度で距離を縮めていった。どちらも開戦後に登場した新鋭機であるため、PA-25とスピアフィッシュで戦っていた開戦時とは比べ物にならないほど、相対速度が大きいのだ。
気づくともうすぐで機銃の射程に入るところまで、敵機の航跡は接近していた。
「流石新鋭機」
エルシーは目の前の敵機を眺めながら改めて歓声を上げた。
PA-25に乗っていた時と違うのは接近速度だけではない。モニターに映る敵機の姿の鮮明さと照準の合わせやすさも格段に向上していることに気付いたのだ。
高速化した機体に合わせ、カメラと映像の処理ソフトも改良されたのだろう。乗っていて気づく細かい問題はいろいろあるが、こういう所はやはり技術の進歩を感じさせた。
エルシーはそのまま機銃の引き金を引いた。同時にアリシアも発砲したようだ。
戦果を確認する前に、2人は機体をやや傾けた。経験上、バラグーダはこの位の距離で発砲してくる為だ。
その直後、2人が今までいた場所を無数の火箭が通り過ぎて行った。予想通り、バラグーダは2人が発砲した直後に撃ってきたらしい。
この極めて短い銃火の応酬を皮切りに、両軍は本格的な交戦に突入した。
今や見慣れたものとなっているバラグーダのごつい機体が見た目に似合わない素早さで高速旋回し、それに比べると小柄で華奢にさえ見えるPA-27が追随する。
両軍の航空機が描く航跡は複雑に混ざり合い、惑星カトブレパスの陰となっているこの宙域に平素は見られない光の饗宴を作り上げた。機銃から放たれる発光性粒子が航跡に混ざって吹雪のように飛び散り、更に撃墜された機体の巨大な爆発光が華を添える。
戦争が始まってからアリシアとエルシーが嫌になるほど見てきた光景であり、幸運であれば戦争が終わるまで見続けるであろう光景だ。
ただ今目の前で起こっている空戦には、2人が以前に参加したフルングニル星域会戦の時とは1つ違うところがあった。バラグーダを相手にしているにも関わらず、『共和国』側は押し負けていなかったのだ。
バラグーダの後ろについたPA-27は、そのままエンジン出力を最大にして追跡を開始する。
バラグーダはこちらもエンジン出力を上げて振り切ろうとするが、その戦法がPA-25相手の時のように通用することは無かった。PA-27は振り切られることなく、逆に距離を詰めていったのだ。
対戦闘機戦闘を主任務として設計されたPA‐27は、本質的には戦闘攻撃機であるバラグーダに比べて推力質量比が高く、加速性能で勝っていた。
十分に接近したPA-27は、機首とその周辺から白い光の束を吐き出した。PA-27にはPA-25の武装強化型であるD2型と同じ機銃が装備されているのだ。
装備数は同じだが装備場所が機首周辺に集中されたことで命中率と集弾性が向上しており、攻撃力は実質的には上昇している。
その白い閃光たちは、騎士が繰り出す槍の穂先のようにバラグーダのごつい機体に突き刺さった。PA-25CやPA-25Dの機銃では中々撃ち抜けなかった装甲が煌めきながら砕け、機体の原型が失せていく。
バラグーダは次の瞬間に爆発を起こし、無数の破片だけを後に残した。
その傍らでは、PA-27とバラグーダの2機編隊同士が格闘戦を行っている。
これも従来は、『共和国』軍にとって分が悪かった戦いだ。PA-25は軽い分旋回初期の小回りに優れていたが、バラグーダの方が推力質量比が大きく、連続した旋回では有利だった為だ。
格闘戦を繰り返した場合、運動エネルギーの損失によって動けなくなるのは常に『共和国』側の機体だった。
だが今繰り広げられている状況は全く違っていた。『共和国』軍機の方が軽い分初期旋回率に優れるのは従来通りだが、PA-27は最初の旋回が終わった後も、連続してバラグーダに食らいついたのだ。
PA-27シリーズの設計コンセプトは、推力質量比の極大化とクイックな運動性である。高い飛行性能とともに劣悪な操縦性をもたらしたこの設計だが、十分な機種転換訓練を積んだパイロットが操れば、世界のいかなる戦闘機でも格闘戦で翻弄できた。
格闘戦で勝てないことを悟ったバラグーダは直線飛行で逃げようとしたが、彼らはそのままさっき撃墜された先達の後を追うことになった。
PA-27は加速性能でもバラグーダを上回っている以上、同数同士の空戦では勝ち目が無かったのだ。
だがPA-27も無敵ではなかった。両軍ともに数百機が狭い空間で乱れ飛んでいる状況では、全ての方向から流れ弾やレーダーの死角にいる敵機の射撃が飛んでくる。
白衛艦隊所属のパイロットは多くがそれなりの実戦経験を積んでいたが、それでも不運や一瞬の不注意によって被弾する者は一定数存在したのだ。
バラグーダどころかPA-25と比べても華奢でひ弱そうな印象を受けるPA-27の機体に光が突き刺さるや否や、そのままエンジンの爆発を示す巨大な閃光に変わる。
PA-27は防御力の点ではPA-25と変わっておらず、バラグーダが搭載する高威力機銃の連射の前には全くの無力だった。
完全な粉砕を免れた被撃墜機からは新装備の射出コクピットが打ち出されるが、生命維持装置の電源が切れる前に味方もしくは敵が回収してくれるかは不明だった。
回収されなかった場合の絶望と苦悶を考えれば、一瞬で戦死した方がましかもしれない。
敵味方の機体が相次いで撃墜される中、エルシーとアリシアは戦場を駆け回っていた。
目の前に現れる敵機に一撃を加えては、戦果を確認せずに高速で離脱する。格闘戦に巻き込まれている味方機を発見した場合は、その横合いを狙う別の敵機に牽制射を加えて追い払う。息つく暇もなかった。
エルシーは自分がいつの間にか肩で息をしていることに気付いた。PA-27の操縦桿はごく軽く肉体的な疲労は無いはずだが、精神的な負荷が凄まじいのだ。
何しろ空戦があまりにも高速で展開されている為、PA-27の映像処理ソフトを以てしても周囲の状況はおぼろげにしか見えない。
その中で一瞬のうちに敵と味方を見分けて銃撃を浴びせる作業は、著しく精神力を消耗させた。
「エルシー、大丈夫? いったん外に出ようか?」
「大丈夫よ。気にしないで」
エルシーの疲労に気付いたらしいアリシアが心配そうに声をかけてきたが、エルシーは笑って受け流した。
アリシアの気持ちは嬉しいが、エルシーも一応は軍人なのだ。疲れたからと言って勝手に戦場を離れる訳にはいかなかった。
「そう?」
だがアリシアは不安そうな口調のままだった。彼女は仮にも財閥の血を引いている人間とは思えないほど、優しくて心配性である。人間としては美点だが、あまり軍人向きの性格ではない。
「本当に大丈夫よ。ほらアリシア、空戦に集中して。私のことなんか気にしていると、周りが見えなくなるわよ」
エルシーは敢えて少し強い口調で言った。幾らアリシアが空戦の天才でも、目の前の敵機以外のことに神経を逸らすのは危険だ。
「……うん」
アリシアが渋々と言った様子で口を閉じる。エルシーは少々の罪悪感を覚えつつも、次の敵機に照準を合わせた。
機首から吐き出される光の束はその敵機を完全に捉え、複雑な機械を一瞬で溶融する金属片に変える。
更にアリシアも別の敵機を撃ち落とし、味方の対艦攻撃機に接近していた敵機を追い払うことに成功した。
それを確認するや否や、アリシアとエルシーは隣の宙域に向かって飛んだ。そこでも敵機が対艦攻撃機を狙っていたのだ。
「っつ、間に合わなかったみたいね」
数機の味方機が爆散するのを見て、アリシアが悲鳴のような声を上げた。
PA-27の加速性能と運動性能は小型軽量の機体あってのものであり、重い対艦ミサイルを搭載すればその飛行性能は極端に低下する。
ミサイルを搭載した状態でもそこそこの性能を発揮できるバラグーダと違い、対艦攻撃時のPA-27は常に護衛が必要な無力な獲物に過ぎなかった。
「せめて、残りは救いましょう!」
エルシーはアリシアに応えるように叫んだ。疲労は更に蓄積しているが、仲間を助けるという義務感が上回っている。
エルシーは全身を襲う倦怠感に耐えながら、射撃の照準を合わせた。先ほどと同じように光の束が敵機に叩き込まれ、撃墜の爆発光に変わる。
隣ではアリシアが数秒で2機を撃ち落とし、残りの敵機は怯えたように後退した。
「見えた。敵艦隊よ」
続いてエルシーは、味方攻撃機の前方に現れたものを見て歓声を上げた。航空機が曳くそれに比べて遥かに巨大な多数の航跡が、惑星カトブレパスの『連合』軍基地にほど近い宙域を進んでいる。
間違いなく、目標の敵護衛空母群だ。
それが出現するや否や、敵機の活動は急速に激しくなった。彼らも母艦を守ろうと必死なのだろう。
戦闘中に整備を完了したらしい新手と以前から付きまとっていた古参が『共和国』軍機の正面から突っ込み、一撃を加えて反転していく。
『共和国』側の対艦攻撃隊の各所には閃光とともに虫食いのような穴が開き、撃墜はされなかったが戦闘不能になった機体がふらふらと離脱していく様子が見えた。
そこにアリシアとエルシーを含む『共和国』側の護衛が突っ込み、報復の攻撃を浴びせる。撃墜の光が続けざまに走り、バラグーダの群れは後退していった。
次に飛んできたのは対空砲火だった。護衛空母と護衛駆逐艦中心の部隊であるため正規軍艦を相手にした時のような密度は無いが、それでもかなりの数の光の球が飛んでくる。
攻撃隊のうち数機が不運にも被弾し、火球と化して消滅した。
だが攻撃隊は怯まなかった。各パイロットは、対艦ミサイルを搭載しているせいで操縦性が更に悪くなった機体を巧みに操り、加速度と方向を微妙に変化させながら接近していく。
艦隊型軍艦に比べて遥かに性能が劣る護衛駆逐艦の防空システムは、これまでのPA-25シリーズと比べて高速化したPA-27の攻撃機動に対処できず、対空砲火の大半は後ろに逸れていった。
十分に接近したと判断した各機は、抱えてきた対艦ミサイルを切り離して離脱していく。どうやら攻撃は成功したようだ。
やがて敵艦隊の隊列に数えきれないほどの閃光が走り、そのうちの幾つかは新たな恒星が誕生する瞬間を思わせる輝きとともに膨張していった。
航空機が搭載するミサイルは軍艦が搭載するASM-15に比べて威力が劣るASM-16だが、相手は装甲も機関の緊急停止装置も持たない護衛空母や護衛駆逐艦だ。急所に当たれば一撃で致命傷になる。
目の前で轟沈していく敵艦の姿は、そのことを如実に示していた。
攻撃隊に随伴していたRE-27は護衛空母全てが戦闘不能になったことを確認したらしく、「第二次攻撃の必要なし」という報告を母艦に送っている。
エルシーは小さく息をつくと、惑星カトブレパスの姿を見た。ファブニルやフルングニルに比べるとやや小さく、地表の大半が水で覆われているのが分かる。あまり多くの人口は収容出来そうもなかった。
「こんな星、占領してどうするのかな?」
同じことを思ったらしいアリシアが呟く。取り敢えず命令されたので攻撃に参加したが、この星に大した価値がありそうには見えない。新鋭機多数を投入する価値があるとはとても思えなかった。
同じころ、白衛艦隊本隊は別の敵と対峙していた。護衛空母部隊とともにカトブレパスに停泊していた艦隊が接近していたのだ。
「敵戦力は戦艦4、巡洋艦10、駆逐艦多数」
艦隊への触接を行っている偵察機隊が、その規模についての報告を送ってくる。敵戦力は概ね半個分艦隊といった所らしい。
この規模の部隊は比較的発見されにくく取り回しがいい事から、補給線攻撃や威力偵察によく使われている。
「面倒なことになったわね」
リコリスは報告を聞いて舌打ちした。
別に勝敗が不安と言う訳では無い。白衛艦隊の規模は敵の約3倍であり、その意味で敗北はあり得ないのだ。
白衛艦隊所属艦は報告された敵艦より一世代前の艦だが、その程度の質の差なら量で補える。
真の問題は、敵がそれを分かっていながら仕掛けてきているということだった。
白衛艦隊は接近時に大量のデコイを撒いており、戦力を実際より遥かに多く見せかけている。つまり彼らがこちらの戦力を過小評価しているということはありえない。
敵艦隊は白衛艦隊が自らの数倍以上の戦力を持っていることを知りながら、交戦を行おうとしているのだ。
敵はこちらの意図に薄々気付いている。少なくとも、可能性の1つとして考えている。リコリスは接近してくる敵の姿を見ながらそう判断していた。




