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楽しい訓練ターイム!

大変遅くなりました m(_ _)m


決算つらかったっす・・・ _(:3 」∠)_瀕死



 難解な先々代館長の日誌とくんずほぐれつの戦いを繰り広げたが、一日で読み切る事が出来たのはたったの三冊という、我ながらしょんぼりな成果で。

 とにかく好き放題書いてあって、読み進めるのが辛くて辛くて……館長さんが戻って来る頃には、目も頭もガンガン痛んで散々だった。病気や怪我なら治癒の術で治せるけど、こういう疲労からくるモノや精神的なモノは治せないってのが魔法や魔術の残念な点だ。意外と万能じゃ無いんだよなぁ。


 それでも諦めず、翌日からも意欲的に図書館通いをする中、館員のお兄さんが「シーデ、言っとくが、俺はロリコンじゃ無いからな」と真剣な顔で告白してきたので扱いに困った。

 彼はなぜ急に己のセクシャリティーを明言してきたのか。それもロリコンだという衝撃告白ならともかく、そうじゃ無いという主張をされても……だからどうしたの?としか……興味無さ過ぎて持て余すわー。

 「ソウデスカー」という完全なる棒読みの返事を無表情で義務的に行い、すぐさま解読に戻った私に、「何でお前そんなに無関心なんだよ?! 俺、一晩悩んだんだぞ?!」と意味の分からない事を叫んだお兄さんを、「館内ではお静かにッ!」と館長さんが投げ飛ばしていたのが素敵だった。やるな、美中年。


 そうして三日が経過し、計九冊まで読破したところで私は―――高熱をだしぶっ倒れた。




 精神に作用するとか、あの日誌マジとんでもない。

 ……いや、違う。どうしよう。とんでもないのは私だ。

 私、私……最近、脳味噌使ってなかった!!


 ベッドの中、熱にうなされながら気付いた事実にショックを受け、更に熱が上がったので何かもう踏んだり蹴ったりだ。

 久々に脳味噌を酷使し過ぎての発熱という限りなくダサい状態異常に、ひっそりと枕を涙で濡らしたのは誰にも内緒。

 私、退化してる気がする……もうちょっと頭使って生きなきゃ……。


 一日寝て過ごしても熱が下がりきらなかったので、翌日も外出禁止令が発令され、騎士団での訓練を休む羽目になり。

「サイラスししょーにおやすみしますって言いにいく……」

「毎朝来店する騎士さんに伝えてもらうから、シーデは寝ていて!」

 へろへろとベッドから這い出ようとする私と涙目な父さんによる攻防戦が繰り広げられたものの、父さんの必死さが可愛くて諦めた。ちなみにこれが母さんやばーちゃんズだった場合、元から逆らわない。

 「今日は休みます」って言いに行くとか、凄い本末転倒だよね。分かってるけど、電話が無いからさ……だから自分で言いに行くか、言付けるしか方法が無い。仕事で忙しい家族に手間をかけさせるのも申し訳無いしさ。ファンタジー、ちょっと不便。

 そう考えると、ナンパ騎士が毎朝パン買いに来てくれてるのって、こういう時にお役立ちだなぁ。まるで私専用の連絡帳のような人だ。超助かる。


 水分と栄養を補給する以外はひたすら寝て、そうしてふと目が覚めると既に日も暮れ。

 気付けばサイドテーブルに小さな可愛い花束が置かれていて、タイミング良く様子を覗きに来てくれた母さんに尋ねると、「朝の騎士さんがお見舞いにって、さっき持って来てくれたのよ」と微笑んだ。

 本当は直接見舞いたかったらしいけど、寝ているところを見られるのは女の子は嫌だろうから、という遠慮と、うっかり騒いで起こしちゃったら大変だし、という理由から母さんにお花を託してくれたらしい。

「シーデちゃんが早く元気になるように、オレ超祈っとくから!って言ってたわ♪ あと、愛もちょー込めてあるから!って」

「……そっか」

 うっかり騒いじゃう気でいるあたり、ちょっと意味が分からない。

 けれど。

 毎朝うるさいレベルで騒々しい彼の、その意外な心配りに、私の心臓がドキリと小さく跳ねた。


 わざわざ帰りにお見舞いのお花を持って来てくれて、しかもそんな風に配慮してくれるなんて。

 そんな彼を、私は―――




―――連絡帳扱いしてマジすまん。




 ただの罪悪感だった。



******



 騎士団員が使用する食堂は、練兵場の奥、お城の右隣に建っている。

 あんまり大きく無いけど、全ての団員が同時に食事にする訳じゃないので事足りてるようだ。二階部分は備品置き場になっているらしい。入ったこと無いけど。

 騎士団に所属していれば、団長からぺーぺーの見習いまで誰でも利用出来る食堂だが、しかし団長がここで食事をとる事はほぼ無い。

 役職付きクラスともなると、城内の食堂を利用する事が可能になるからであるが、かといってそれは別に格差を見せつけようとかそんな矮小な理由などでは無く。

 「団長なんてのが居たら、話せない事だってあるだろう? 飯の時間まで気を張ってろなんて酷だからな」という、団長らしい気遣いからくる行動なのだ。

 尚、副団長は日常的にこちらの食堂を利用しており、その理由を「僕は常に気配を殺していて、周りに気兼ねなんてさせないから平気だろう?」と述べていたが、それは多分見栄である。気配を殺すとかじゃ無く、気配が無いだけ。輝けない人だって、この世には居るのだ。


「―――という事なんですが」

「最後の副団長のくだりに全部持っていかれたね。何だか哀しい気持ちになってきたよ」

「違います。反応して欲しいのはそこじゃありません」

「分かっているけれど、副団長の存在感の薄さが濃すぎて」

「その言葉、矛盾しかない」

 正面の席で鶏のソテーを丁寧に切り分けるルナ王子へ、こちらは豪快にソテーにかぶりつきながらもツッコミを入れる。

 私が主張したかったのは団長の行動についてであって、副団長はただのオマケだ。

 そう言い切ると、王子が少し肩を落とし、「本気で副団長が哀れなのだけれど……今度、労いの言葉をかけよう」と小さく呟いた。

 副団長はあの存在感の無さが強みなのに、どうして哀れむ必要があるんだろう。気配が無いなんて、戦いにおいてどれだけ有利な事か。だからこそ彼は副団長の地位に居るんだろうに。

「とにかく、副団長の事は記憶の彼方に葬ってください。今は団長について、です。団長の言動についてどう思いますか?」

「そうだね……団長は上役の鏡のような人だと思う。強くて恐ろしいだけでなく、そういった気遣いが出来る人格者であるからこそ彼は慕われるんだろうね」

「そうです。団長は強くて優しくて素敵なマッチョなんです」

「マッチョ」

「でも、そういう事を言いたい訳じゃないって、分かってますよね?」

「うん? 何がかな?」

 私が何を言いたいのか察しているだろうに、穏やかに首を傾げてみせる王子。その姿に多少のイラつきを感じ、半眼で見据え本題をぶちまける。

「団長は一般の騎士に配慮して別の場所で食事をしています。でも、更に立場が上の人間がしれっとここに混ざっている事によって、その気遣いが台無しになっている、という事実を指摘したかったんですよ、私は」


 王子なんてのが混ざり込んでるせいで、騎士団員たちの憩いの場であるはずの食堂が、毎度微妙な雰囲気になってしまう。誰もが王子と同席するなんて畏れ多いと思っているらしく、彼が着席するとその長テーブルからは潮が引くように逃げて行くのだ。

 テーブルは複数あるけど、ひとつの長テーブルを王子が占領してしまうので、他がぎゅうぎゅうになってしまうというこの無駄っぷり。マジで無駄だよ。

 混ざってきてるのは王子の方なんだから、そんなに遠慮してやる必要無いんじゃないのかなぁ。

 なんて不遜な事を考えるのはどうやら私だけらしく、結果として毎回、私だけが微動だにせず、王子と昼食を共にするという状況に陥っている。


 いや、何回か私も別のテーブルに移動してみたんだけどさ……付いて来るんだよ、王子。そうすると、その度に他の騎士たちも再移動する羽目になっちゃって。イノシシから「迷惑だから動くな小娘」って言われちゃったんだよ。

 違うよ、私は誰にも迷惑なんてかけてないよ。迷惑なのは王子だけだよ。だから皆、一緒にご飯食べようよ。私一人を生贄にして食事時間を満喫するのはやめてくれないかな。出来ればイノシシと言い争いながらご飯食べたいんだけど。王子が居るから、イノシシまで昼食時は私から逃げてくんだよ。せっかく友情確認を済ませたってのに。悲しい。

 シッシッとジェスチャー付きで追い払われるぐらいなら、元から違う時間に食事にした方が心のダメージは小さいので、今日は皆より時間を後ろにずらしての昼食になった。現在の食堂は数人の騎士が点在しているだけの閑散とした状況。

 友達に逃げられる悲哀と、素知らぬ顔で食事を続ける王子への苛立ちを握りしめたフォークへと込め、狙いを定めプチトマトにぶつけようとすれば、つるんっと逃げられ更に苛立った。

 トマトのくせに生意気だ! 誰か箸を、箸を持てぇい!


「成程、君の言いたい事は理解したよ。―――僕の姉弟子がこう言っているから、魔法師長、今後は昼食は城内の食堂でいただいたらどうかな?」

 静かに口を拭い、真剣な表情で頷いた王子は、私の右隣の席へと視線を移す。

 そうして、そこで無言で食事をしていたボスへと話を擦り付けた。

 違う! 私が言ってるのは王子、お前の事だ!

 ……まぁ確かに、ここにボスが混ざってるのもおかしいんだけど。この人も役職付きなんだから、城内で食えよっていうね。

「シーデが言ったのは殿下の事でしょう。私は騎士団長と同格であり、彼より立場が上の人間という部分には当てはまりませんので」

 ボスが普段より丁寧な言葉で異を唱えている。この外道な魔法師長にも、立場を弁えるという常識はあるようだ。

 だが残念な事に、ボスの目からは『王子(おまえ)の事を言っているのだろう』という言葉が簡単に読み取れてしまう。無表情な割に目から感情が漏れ漏れなんだよなぁ、この人。口先を丁寧にしたところで、目が無礼。台無しだ。




 余談だけど、ボスはここ一ヶ月ほど出張で留守にしていたので、この食堂で王子と鉢合わせるのは今日が初めて。尚、出張土産の飴ちゃんはありがたくいただいた。どうしてこの人が私に頻繁に飴を与えてくるのかは謎だけど、飴に罪は無いので気にしない。

 王子と差し向かいで食事をしている私を発見したボスは、「何故お前は権力者に目を付けられるような真似を……」と不機嫌そうに低音で唸り、そして何ひとつ遠慮する事無く同じテーブルに着いた。さすがボス、肝が太い。

 でも、王子なんて生き物に目を付けられたのは私の不注意だけど、ボスには言われたくなかったな。だってあなたも権力者じゃないの。私に目を付けた権力者って意味では、ボスだって同じ穴の狢だ。

 そう返せば、「私が権力を笠に着てお前を無理矢理従わせようとした事があるか?」と逆に問い返された。

 うーん、そう言われると、口を開けば「モルモット」とうるさくはあるけど、魔法師長っていう権力でゴリ押しされた事は無かったかな?


 しかし、私は知っている。

「それはボスが団長に、『勧誘を止めはしないが、強制は許さん』って言われてるからですよね? じゃなきゃ今頃、有無を言わさずモルモットにされてましたよね、私?」

 団長は私に内緒にしてたけど、お兄ちゃんたちが教えてくれたんだもんね!

 そうやって言われてなきゃきっと、魔法師長という立場をフル活用して私を意のままにしてたでしょ?

 そんな思いを込め見つめる私から、無言で視線を逸らすボスという貴重な物体を拝めたので、団長には感謝しかない。ボスに釘を刺し、王子も牽制してくれるなんて、本当に団長にはお世話になりっぱなしだ。恩返し、これはぜひとも恩返しをしなくっちゃ!

 とはいえ、騎士団長様に喜ばれる恩返しって何だろう?

 お菓子を作ってプレゼント♪とかなら娘分の名に恥じない可愛らしさだと思うんだけど……私の手作りお菓子は凶器でしかないし。私を溺愛する実の父さんですら、一口食べて泣き出した(感涙に非ず)代物だからなぁ……そんな禍々しい物体X、団長に食べさせる訳にはいかない。

 となると、手料理を差し入れるとか、娘分っぽくて良いかな?

 しかし私の料理スキルは平々凡々。ごくごく一般的な家庭料理しか作れないんだけど―――いや待て、材料からこだわり抜けばいけるかもしれない。


 そうだ、熊を狩ろう。


 私が狩った新鮮な熊を鍋にすれば、きっと団長も喜んでくれるはず。いっそ解体ショーでもしてみようか。熊をも解体出来る私の家庭的な部分をアピールして見せれば、もう女子力云々と嘆かれずに済むかもしれない。

 熊解体する系女子。よし、女子っぽい!




「でも、貴方が居るとシーデが迷惑そうにしていると思うのだけれど? ねぇシーデ、そうじゃないのかな?」

 自分の中の残存女子力アピールの計画を練っていた私は、王子のその問いかけで我に返った。

私の思考を妨害してくれたその問いには、『魔法師長は邪魔だろうけれど、僕は邪魔なんかじゃ無いよね?』という白々しいまでの副音声がまとわり付いている。

 王子が投げてきた質問は、私の全力を以て綺麗に打ち返して差し上げよう。目指せホームラン!

「どっちも迷惑だ城に籠ってろ」

「シーデ!」

 カキーン!と真夏の太陽の下、気持ちよく白球を打ち返したような達成感は一瞬で、私の打ち返した球は見事、サイラス師匠の雷に打ち落とされてしまった。

 ホームランならず。無念。

 首を竦めた私へ、左隣で居心地悪そうに食事をしていた師匠が向き直り、「最近、言葉遣いが悪くなっていないか? 君は女の子なんだから……」と渋い顔をしている。


 師匠、気になるのは言葉遣いの方なの? 失礼な発言の内容については、もう気にしない事にしたのかな? それは慣れ? それとも諦め? それにしては、何だか心労を溜め込んでそうな顔つきなんだけど?

 あ、そっか。せっかく可愛い弟子(私の事ですが何か)との昼食なのに、王子や魔法師長なんてのが同じ席についてたら寛げないもんね。まぁ今日師匠を無理やり同じ席につかせたのは私なんだけどね。逃がすもんかと頑張ったよ。毎度毎度、私だけ生贄にされてたまるか。

 しかし、師匠を煩わす彼らには、やっぱり城に籠っててもらいたいものだ。

「二人とも、私の師匠にこれ以上心労を与えないでください。師匠が将来ツルピカになったらどうしてくれるんです?」

「待てシーデ、今のは聞き捨てならない」

「そりゃ師匠は男前ですし、毛根が全滅したところでその男前っぷりに大した影響は無いかもしれませんけど―――あれ、想像したら結構イケるかも」

「そんな不吉な想像はどぶに捨てろ!」

 そう叫んだ師匠は、死んだような目をして己の食事に戻った。黙々と食べてる。

 “男前”って褒め言葉だよね? 全パゲになろうとも男前だよ、って超褒め言葉だと思うんだけど……男心は難解だなぁ。


「サイラスの心労を減らしたいのなら、君が弟子を辞めるのが一番の近道だと思うのだけれど。そうして僕の下に」

「馬鹿言わないでくださいこの馬鹿王子。そうやって師匠を独り占めしようったって、そうはいきませんからね」

「誤解があるようだから言っておくけれど、僕はサイラスを独占したいとは思っていないし、それよりも途中さり気なく『馬鹿王子』と聞こえた件について」

「空耳です。殿下こそ、さり気なく勧誘を織り交ぜてくるのはやめてください」

 遠慮?

 してるって。まだ多少は遠慮してるから。大丈夫。

 でも何か、意外とへこたれないんだよねぇ、王子。一応ツッコミは入れてくるけど、あんまり気にして無さそうな感じ。むしろそれを聞いちゃった師匠の方が気にしまくってる。心配性って大変。師匠の毛根……今の内に、ご冥福を祈っとこうかなぁ。

「シーデ、殿下に誘われたくなくば私のモルモットになれ。そうすれば」

「絶望しかありませんね。どっちもお断り!って事で、この話しは終了です」


 団長やボスを含む国の偉い人たちの一部は、王子がいずれ継ぐ事になる“王弟の秘密裏の使命”とやらを心得ているようで、私にまとわり付く王子を見たボスはそれだけでいろいろと察したらしい。

 その上で、自分のモルモットになれば例え王子だろうと手出しはさせない、とつい先程も言っていた。

 王子だろうと手出しはさせないとか男らしい……!

 ……なんて言わないよ? 騙されないよ? そこまでアホじゃないからね?

 王子も王子で「僕の部下になれば魔法師長のモルモットになんてさせないよ?」とか言ってくるし。

 違う、違うの。どっちもノーセンキューなの。その提案は両者共に蹴り飛ばさせていただくから。

 どうして二人とも、「自分のモノにならなくても(相手から)守ってあげるよ」ぐらいの甲斐性を見せてはくれないんだろうね? そういう風に言ってくれれば、私……うわぁああ鳥肌立った! 王子はともかく、そんなこと言うボスは気持ち悪い。一生言わないで欲しい。


 そんな失礼な事を考えながら粟立つ二の腕を軽くさすっていた私は、ふとボスに苦情があった事を思い出した。

 私の予想が間違っていなければ、そもそもこうして王子に部下として求められるようになった原因に、ボスも一枚噛んでいるはずだ。

「話は変わりますが、ボスに聞きたい事というか、苦情があるんですけど」

「苦情を申請される覚えは無いが、聞くだけなら聞いてやろう」

「ではさっそく。例の“チュー事件”のあらましを誰かに話しましたね?」


 王子が初見の際に暴露してくれた“チュー事件”だが、あれには副団長により緘口令が敷かれていた訳で。

 いくら副団長に存在感が無かろうがもやしだろうが、騎士団で上から二番目の地位に居る人だ。あの場に居た騎士たちは、その命令を無視するような真似はしないだろう。だって背いたらボコられるから。副団長は存在感は無くても、腕は確かなのだ。

 逆に言うと、騎士でも何でも無いどころか、騎士団副団長より立場が上の魔法師長であれば、あの緘口令に従う必要は無い。特にアレは、職務とかまったく関係無い出来事だし。ただの団員同士のトラブルだからね。

 だからきっと、あの情報の漏洩元はボスに違いないと私は睨んでいる。アレだけは漏らさないで欲しかったなぁ。

「おかげで団長にまでバレて、嫌われちゃうかと思って泣きそうでした。まぁ身から出た錆ではあるんですけど……」

 おうふ、思い出したら胃がキリキリしてきた。二度と団長をあそこまで怒らせはすまい。多分、今度は泣く。


「何の話か分からん。お前の言っているのは、以前ここでお前が騎士に口付けていた件の事か? それであるならば、私は特に口外はしていない」

「え、嘘」

「嘘では無い。第一、私がそれを人に触れ回るメリットは何だ」

 ラスト一粒のプチトマトにつるつると逃げられ続けている私の手元を一瞥したボスは、自身のフォークでそれを難なく刺すと、私の口元へ突き付けた。

 何を考えるでもなくそれをパクリと頬張り、確かにボスにメリットは無いよなぁ、ともぐもぐしながら頷く私の耳に、「シーデは警戒心が強いのか隙だらけなのか、よく分からないね」と困惑する声が届く。

 しまった。最近エヴァン君に『あーん』される機会がちょくちょくあったもんだから、普通に食べちゃった。迂闊。

「私の警戒心はたまに出張するんですよ……って、それは置いといて。じゃあ誰があの情報を漏らしたのか……」

「当人だよ?」

「当人?」

「そう。ええっと―――ああ、あそこの席についている彼だ」

 私の後方へと視線を流した王子につられ、上半身だけくるりと振り返ると、三つほど離れたテーブルでこちらをガン見していた()と視線がかち合った。




…………うん。見てない見てない。私は何も見てない。


「さあ、食事も終わりましたし、そろそろ訓練に戻りますか」

「今のを見なかった事にするのは、ちょっと無理があるんじゃないかな?」

 ごちそうさまでした、と手を合わせる私に、人畜無害そうな王子が嫌なツッコミを入れてくる。

 でも全然無理なんかじゃないよ。だってさ。

「私の目玉は、幸せに満ち満ちた明日しか映らないように出来ているんです」

 フッと笑い腰を浮かせると、ボスに腕を掴まれそのまま下方へと引っ張られ、再度すとんと着席する羽目になった。超デジャヴ。

 だからどうしてシーデ号を離陸させてくれないの! 度重なる離陸失敗に、そろそろ全米が涙するぞ!

「都合の良い目玉だな。非常に興味深いので今から調べさせろ」

「違います、今のはただの言葉の綾というか比喩表現ってヤツなのでお願いだから調べようとしないで! 近い、顔が近い!」

 離陸失敗にふてくされる私の頬をボスが両手でがっちりと鷲掴み、スッと身を寄せ目を覗き込んでくる。

 ガンッガン近寄って来るな、このひと! 至近距離にも程がある! そんな間近で覗き込んだところで、目玉の機能は解析出来ないと思うよ!

 あと、どうして団長もボスも私の顔を鷲掴みにするの?! 人様の顔面を鷲掴むのが昨今の流行りなの?!


「そんな事は承知の上で口実として使用したまでだ。気にするな」

 それを気にせずして何を気にしろと?!

「ちょっとほんとに放してくださいよ! 師匠、師匠助けて! 私のヒーロー、師匠!」

「いつの間に俺は君のヒーローに……何もしていないのに君の中で俺の株が上がっていく一方で、些かプレッシャーなんだが」

「私の中で“好きな人”に分類された人は何をしても、いえ、むしろ何もしなくても自動的に好感度が上がってく仕組みになってるので」

「空恐ろしいシステムだな。重圧が大きくていずれ胃にきそうだ」

 ボスに顔を固定され動けない私の背後で、師匠から哀愁漂う溜息が零された。

 いずれ胃を壊し毛髪が根絶するだなんて、なんという悲劇が師匠の未来に横たわっているんだ。そのうえ振られるとか……お世話になってるんだし、何かひとつぐらい手助け出来無いかな?

「ねえボス、師匠のために毛生え薬みたいなものを開発してくれません?」

「だから待てッ! 今は胃の話をしていただろう?! そこは胃薬じゃないのか?! なぜ君は俺の髪ばかり心配する?!」

 師匠が荒々しくボスの手から私を奪取し、よっしゃ助けてもらえた!という喜びも束の間、その逞しい腕が私の頭を引き寄せ自身の胸元に……ガッチリと固められて……あれこれ救助じゃ無くてヘッドロックじゃない?


「師匠、これは一体」

「痛いか?」

「いえ、特には」

「そうか。では徐々にいこう」

「え? ……ぅあ、あ、ちょっと師匠、なんかじわじわくるんですけど」

 じわりじわりと師匠の腕に力が込められていき、段々とこめかみが圧迫されつつあるんだけど、これってやっぱりヘッドロックだよね?

「君は小さ過ぎて、どの程度加減したら良いのか分からないからな。こうして徐々に力を加えていく方が調整し易い」

「わあ師匠気遣い屋さん、って、あ、いた、いたい、痛たたこめかみ痛たたたたたやめてやめてごめんなさい師匠ごめんなさいもう言いません言わないから許してあいたた痛たたたた」

 そんなに髪について言及されたくなかったのか……実は気にしてるの? いや、これ以上は言わないでおくけども。

 じりじりぎりぎりとしたこめかみの痛みに、もだもだと悶えながら出来る限り首を上向け、見上げた先の師匠に謝罪。

 すると、なぜか狼狽したように目を泳がせた彼は、「……もう言わないなら良い」とあっさり手を放した。

 そのあまりの呆気なさに、身を寄せたままぽかんと見つめてしまう。

 許すの早くない? 私だったらもっとネチネチいくのに。師匠はちょっと人が良過ぎじゃないかな。詐欺に合わないか心配になるわぁ。

「一旦離れて……いや、すまなかった。女の子に俺は何て事を……」

 そして、密着したままの姿勢でそれとなく腹筋あたりをさわさわと堪能していた私をべりっと引き剥がした師匠が、なぜだか落ち込んだ。


 いやいや、師匠は嫌な事を言われたから怒っただけなのに、どうして反省し始めてしまうの。今のはただのおしおきでしょ? いけない事をした子供に「コラーッ!」ってゲンコツ食らわせたのと同じことでしょ? 師匠が反省する必要は無いじゃない。

 落ち込む師匠から漂う善人オーラが、汚れた私の目には眩し過ぎるぜ。

「あの、気に病まないでください。私が師匠の癇に障る事を言っちゃったのがいけないんですから」

「しかし、女の子に暴力を振るうなんて……」

 なんという紳士! その爪の垢を煎じてボスやストーカー野郎に飲ませてやりたいくらいだ。

 師匠も団長もめちゃくちゃ私を女の子扱いしてくれるなぁ。私、女の子らしい格好も振舞いもして無いのに……ここはひとつ、師匠にも熊鍋を振る舞わなくては。二人が女の子扱いしてくれるおかげで、私の中に眠る女子力が呼び覚まされましたよ!って精一杯お伝えしなくちゃ。

 と、それはさておき、今は落ち込んじゃった師匠を何とかしよう。

「大丈夫ですって。この痛みが師弟愛の証だと思えばへっちゃらですから」

「いや、それは前向き過ぎないか?」

「私、“親愛”というモノに関してはとことんポジティブなんです。家族愛も友愛も師弟愛も、全部プラスに捉えていく派なので」


 甘やかされるのも愛なら、厳しくされるのも愛。

 お説教はめんどいから極力回避しようとはするけど、怒る理由が私のため、イコール愛から来るものだというのは理解しているので、お説教してくれるその心だけはありがたく受け取っている。

 褒められても怒られても愛を感じられる私……やだ、人生超楽しい。

「それに、この程度の痛みは毎日の特訓で慣れっこですしね。容赦なく間接キメにきますから、ウチのじーちゃんたちは」

 しかも最近では、痛がっても演技だと思われてなかなか解放してもらえないという……おかげでキメられた技を外すのが得意になってきた。師匠の今のヘッドロックだって、立ってる状態なら外せたと思う。

 ……今度じーちゃんズに、着席した状態での技の外し方を教わろっと。

「君の家族は君に甘いのか厳しいのか、どっちなんだろうな」

「激甘ですよ?」

「それを甘さと捉えられるのなら、私のモルモットになるのも平気だろう」

 ウチの家族ほど娘(孫)に甘い人たちは居ないよ!と得意げに語る私へ、ボスから本日何度目かの勧誘が。しつこい勧誘員だな。

「愛の無い実験台なんてお断りでーす」

「ほう……愛があれば良いのか」

「やめて考え込まないで。ほらそんな事より、訓練に戻りましょうよ」

 愛について考え始めてしまったボスの姿に薄ら寒いものを感じ、もうとっくに食べ終わってるんですから、とトレーを手に席を立つ。

 食器の返却口へと向かう私に続く王子が、「ねえシーデ、さっきの話が終わっていないけれど? あそこの()の件は良いのかな?」と背後から声をかけてきたが、聞こえない振りをしてとっとと食堂を後にした。

 王子よ……せっかく忘れかけてたのに、なぜ蒸し返したし。




 さっき王子につられて振り返った先に居た、視線が正面衝突してしまった()とは―――私の“チュー事件”の相手の何某さんである。

 彼にはここのところ、ふと気が付くと熟視されている事が多々ある。

 ……のだが、理由が分からなくて絶賛放置中だ。彼が何を思って私を見つめてくるのかよく分からない。

 私の事、嫌いなんだよね? だからこそ、あのとき突っかかってきたんでしょ?

 それなのに、こちらを見る視線に敵意も殺意も含まれているように感じられなくて戸惑う。

 敵意を感じるなら様子見って事でやっぱり放置するし、殺意に満ちあふれた目で見てくるんなら、殺られる前に殺ろうと行動に移せるんだけどね。あは、我ながら思考が物騒。

 ボスやストーカー野郎からの視線―――まるでアサガオを観察する小学生のような目付きである―――とも異なるような気はするものの、じゃあどんな目なんだと聞かれても返答に困るというか……ほんとにあの人、何で私をガン見してくるんだろう。

 ああやってうっかり目が合っちゃっても逸らしもしないし。むしろどうして良いのか分からなくて私が逸らすし。だって対処法が分かんないんだよ。さすがの私も、見られてるってだけで相手をしばくような真似はしないよ。

 もしや、あの時の仕返しが出来る機会でも狙ってんのか? にしてはやっぱり敵意は感じないんだけど……うーん、思考がループ。

 怖いもの見たさってヤツ、とかかなぁ? その心理は理解出来無いでもないけど。

 あれでしょ? 仕掛けたGホイホイを覗き込んじゃうのと同じ感じだよね、きっと。


 ……私はGホイホイか!




 脳内にこだました嫌なツッコミを追い払うように、頭を振って気持ちを切り替える。

 せっかく訓練に来てるんだから、そっちに集中しなきゃもったいない。余計な事に使う頭なんて無いんだよ、今の私には。ただでさえ毎日頭使ってんだから……。


 急激に頭を使ったせいで寝込むなどという、どの角度から見ても恥丸出しな失態を犯したのは既に二週以上前の事。張り切り過ぎてまた寝込んだら元も子もないと、それ以降は先々代館長日誌の解読スピードをダウンさせた。

 体調を崩さない、を念頭に、毎日時間を見つけてはちまちまと図書館へ通い、そして、それは未だに終わっていない。手掛かりだけは発見したので、前進はしているというのが救いかな。

 『壁が消えない。違いは?』という走り書きからピンと来た自分の推理力を絶賛してあげたいよ、まったく。その走り書き前後に魔術が云々とかそういう記述がまったく無かったどころか、自宅の建て替えプランについて書かれてたからね。同じ疑問を抱いた私以外が見たら、確実にその建て替えについての事だとしか思えないだろうよ。

 とりあえず、先々代館長には声を大にしてこう言いたい。

 ……業務日誌にプライベートな内容を綴り過ぎでしょうが!

 逆にプライベートな内容しか綴られてなかったんだけど、果たして図書館長の業務とは。この日誌がまかり通る辺りフリーダムな職場なのかな、とどうでもいい疑問が生まれたけど、どうでもいいからそっとしておく事にした。


 見つけた糸口付近を重点的に見直しつつ、未だ読破していない日誌にも手を付け。そうやって毎日毎日頭を使っている私にとって、週に二日ある訓練日はこの上ない気晴らしになっている。

 だからこそ、余計な事に気を取られず訓練には没頭したい。


「それでシーデ、さっきの彼の件なのだけれど」


 ……。

 ……食堂から、ずっと後ろを付いて来ていた王子が、切り替えた気持ちを台無しにしてくれる件。

 わざと? わざとなの? 無害そうな顔をして、意外と人の微妙な部分を執拗に突っついてくる派なのか?

 ……よし、気晴らしをしよう。


「殿下、お手すきでしたら、手合わせの相手をお願い出来ますか?」

 にっこり笑い尋ねると、ぱち、と瞬いた王子は「君からそう言ってくれるとは思わなかったよ。一度手合わせして以来、ずっと躱されていたからね」と穏やかな笑みを返した。

 その更に後ろから来ていた師匠が「シーデ、待て!」と焦った声を上げたが、王子自身が大丈夫だと、ちゃんと手加減するから、とそれを押し留めた。


 王子が弟弟子という事になり、一度だけ手合わせをしてみた事がある。その結果、私では無理だと判断し、以後は王子から誘われようとも相手をした事は無い。王子の手合わせ相手は大変だったのだ。

 でもま、たまには良い気晴らしになるでしょ。

 模擬用の剣を取りに動いた王子の背中へ、「ところで殿下、体中アザだらけになるのと、体は無傷で衣服がズタボロになるのとどちらが良いですか?」と声をかければ、彼は怪訝そうな顔で振り返った。

「それは、どういう意味なのかな?」

「深く考えないでください。どちらがマシだと思います?」

「……この衣服は訓練用だから、汚れたり破損したりするのも致し方ないと思っているけれど」

「分かりました。では、私の剣には治癒の術をかけておきますね」

 アザを選択していたら模擬用の刃の潰れた剣を使用するつもりだったけど、服を諦める方を選択したので自前の剣でいこう。

「まさか、真剣で行うの? 手合わせなのでしょう?」

「治癒の術をかければ大丈夫ですよ。衣服は切れても体には傷ひとつ残りませんから」

「だったら、僕の剣にもかけるべきじゃないのかな? それとも、僕は模擬用の剣を使った方が良い?」

 王子から距離をとりつつ、お好きな方でどうぞ、と背中越しに応える。真剣だろうと模擬用の剣だろうと、どっちだって一緒だ。

 適当な距離で振り返り、抜いた二本の短剣に治癒の術をかけ、そうして構えると、「……僕は模擬用の剣でいくよ。万が一、怪我でもさせたら大変だから」とこちらを気遣う台詞を頂戴した。

 ふふ、優しい王子様だなぁ。

 笑える。


「師匠、開始の合図を」

「はぁ……シーデ、せめて首から下にしておいてくれ」

「分かりました。では、合図を」

「本格的に胃が痛い……初めっ!」

 己の腹部を撫でさする師匠から合図が入り、そこから―――



 私の一方的な王子ボコタイムが幕を開けた。



 王子、予想以上に弱かったんだよね。本当に基本通りの型しか使えないみたいでさ。

 だから前回の手合わせの時、手加減するのが大変で大変で……二度と相手なんかするかと思ってたけど、憂さ晴らしには丁度良い。私に憂さを溜めてくれたのは王子だしね! それにこれは訓練だし! 不敬にはあたらない!

 例え服をボロ雑巾みたいにされたって、まさか年下の女の子にやられましたなんて言えないでしょ? プライドってものがあるもんね? あっはは、愉快愉快!

 真剣だろうが模擬用の剣だろうが、当たらなきゃ一緒なんだよ! 王子、遅いんだもん! スピードひとつ取っても断然イノシシの方が上だよ。守られる側である王子が騎士以下なのは、まぁ当然だとは思うけどさ。


 剣を構え突っ立っている案山子のような王子の懐に一息に駆け込むと、愕然とする彼の胸をまず一突き。

「っくはッ……!」

 崩れ落ちた彼の手から零れた剣が、ガラン、と乾いた音を立てる。

 地に膝を付き胸を押さえる彼の顔は強張り青ざめ、短く浅い呼吸を繰り返す。まるで瀕死の重傷人のようだ。

「ぇえ~、ちょっと殿下、大袈裟ですよ。ちょっとその手、放して。ちゃんと見てください」

 しゃがみ込みその手を胸から無理やり引き剥がし、「ほら、ちゃんと見て」と促すと、彼はそろそろと下を向いた。

 そして呆然と、「斬られ、て、ない?」とか言ってますけど、だから私、最初に言ったでしょ? 聞いて無かったの?

 付かず離れずの距離で見守っている王子の側近さんも、微動だにせず見守り続けてくれてるじゃない。彼の方がよっぽど人の話しをちゃんと聞いてるよ。


「はい、納得したところで剣を拾って。再開しましょ?」

「え、あ、あの」

「拾わないなら、このまま首、いきますよ?」

 普段の王子を真似た穏やかな微笑みと共に首筋に剣をそっと当てると、「あれは二度とやられたくないな。ああされるぐらいなら一思いに斬られた方が余程マシだ」という苦々し気なイノシシの声が聞こえた。

 やだイノシシったら、自分の訓練の手を止めてまで私を見てるの? 友達の活躍をそんなにも見たいのね?

 よし、その期待には盛大に応えなくっちゃ!



 こうして王子のボコタイムは、ちょっぴり長引く事になった。



 が、最終的に、なぜか私が師匠とイノシシに超怒られた。納得いかない。

 だってこれ訓練じゃん! しかも王子無傷じゃん! 普通に訓練してたって擦り傷・切り傷は当たり前の中、無傷で終わらせた私、えらいよね?


「心の傷をカウントしろおおおおっ!!」


 はは、キコエナーイ。




本日のハイライト


>そして、密着したままの姿勢でそれとなく腹筋あたりをさわさわと堪能していた私をべりっと引き剥がした師匠が、


シーデ、とても自然にセクハラを致す。

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