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褒められるまでが狩りです(真顔)

「それで、行きたい場所は……いえ、もうズバリ聞いちゃいますけど、最終目的地はどこなんですか? そこまで馬車でどのぐらいかかるんです?」


 踏み込みたくは無いけど、もうこれだけは聞き出した方が話が早いんじゃなかろうか? という判断から、思い切って聞いてみる事にした。

 馬車に結界を施し、それを引く馬にも結界、プラス身体強化をかけてやれば、ある程度の攻撃は防ぎつつ距離を稼げるだろう。この方法ならこの場で術をかければ良いから支障はないし、魔術ならまたしても魔法封じの魔具とやらを使われても影響は無いはずだ。

 ただし遠すぎる場合、そこまで馬が()たない。その上、無事使命を全うしてくれたとしても、反動でしばらくは使いものにならなくなる恐れがある。それは馬自体のポテンシャル次第だけど……馬の潜在能力とか、どうやって見極めたらいいのか。謎だ。


「最終目的地は王都だが、そこまでは余りにも遠い。ここから一番近い大きな街までなら、そうだな、一日もあれば」

「ちょっと待った! 王都? 王都がゴールなの?!」

「あ、ああ。王都がゴールだが」

 班長さんの発言を遮り、詰め寄る勢いでゴール地点の確認をすると、私の剣幕に押された彼は上体を軽く仰け反らせながら私の言葉を肯定した。


 うああ、時間を無駄にした!

 私が住んでるのが王都だよ! そこが目的地なら最初っからそう言って……いや、彼らの事情を探るまい探るまいとしていたのは私だな。ついでに、自分の事情を隠そう隠そうとしてたのも私だ。

 初対面の明らかに堅気で無さそうな人たち相手には当然の対処だったけど、何か悔しい。ここまでのやり取りが全部無駄っぽいのが非常に悔しい。

 下を向き、ふはぁぁぁ、と疲れたおっさんのような溜息を吐いていると、「いや、だから、王都までとは言わない。そこまでの無理を押し付けるつもりは無い」と、班長さんが少し焦っていた。

 時間の経過と共に、感情が分かり易く漏れ漏れになってきてるよ、班長さん。気を付けた方が良いんじゃないのかな。


 そんな余計な指摘をしてやる義理は無いので、「無理では無いです。逆に手っ取り早いので、王都に連れて行くって事で良いですね?」と確認を取るに留める。

「手っ取り早い? どういう事? 王都はかなり遠いよ?」

「お茶の子さいさいですよ」

「いやいや無理だって!」

 暗に、無理でしょう?と尋ねたお兄さんに肩を竦めて請け負えば、今度は明確に無理だと断定された。

 ふふ、私を舐めないでもらおうか。

「転移陣で帰れば良いだけです。他の場所は無理ですが、王都なら大丈夫。私が帰るのも王都ですから」


 私が王都民で良かったね。偶然に感謝すると良いよ。というか、私に感謝すると良いよ。そしてその感謝の気持ちを報酬額に上乗せという形で表してくれたら言うこと無いなぁ。

「はぁ……転移陣と言うが、それは君が帰れるだけの陣だろう? 我々を、ましてや馬車を共に連れて行く事など不可能だ」

「アホの子を見る目で見ないでもらえます? どうにかしますから」

「簡単にどうにか出来る事では無いと思うが……」

「出来もしない事をやるって言うようなつまらない見栄は張りませんよ、私。下準備が必要なので、そうですね、あなたたちは小一時間ほどここで待機しててください」

「いや、待機していろと言われても……」


 困惑の面持ちになった三人に、若干の面倒くさい心が発生した私は、もうこれ以上は説明するより行動に移してしまおう、と彼らを馬車へと追い立てる。結果的に王都に帰れさえすれば文句も出ないだろう。

 三人が馬車の傍らへとまとまったので、それらを囲むように結界を三重に展開。これで、私が離れている間に彼らが死体になっていたなんて事態はほぼ防げる。

 尚且つ、この結界は通常のものとは違い外からの攻撃を防ぐだけでなく、内側から出る事も出来無いという閉じ込め型(但し私は除く)だ。

 代わりにあんまり大きなサイズで展開する事は出来無いし、実は内部からの衝撃にはそこまで強く無いという代物だけど……それは言わなきゃバレやしないさ。彼らにはうろうろしないでもらいたいので、強制的に狭い所に閉じこもっていてもらおう。

 ついでに結界の周囲に数枚の陣を撒き、召喚した“花”に隙間無く結界を覆ってもらうと、班長さんたちが驚愕していた。


「ちょっと待ってくれ!これは何だ?!」

「完全に閉じ込められた……?」

「お嬢さん、我々をどうするつもりなのか聞かせて貰えますかな。覚悟を決め直し、心の準備をしておきたいのでね」

「人聞きが悪い!」

 物静かそうなおじさんが、神妙な顔して毎度一番タチの悪い事を言ってくるんだけど!

「ちょっと大人しくしてて欲しいだけじゃないですか。くれぐれも、結界を壊そうとかしないでくださいね? その場合、命の保証はしませんからね? 頼みますよ?」

「だから待ってくれ、不安を煽る言葉を残さないでくれ!」

「やはり心の準備をしておきましょう」

「そんな準備要りませんよ。おうちに帰って家族と再会したときの心温まる言葉でも考えといてください。じゃあ後で!」

 それだけ言うと、“花”に避けてもらいさっさと結界から出た。

 ちゃんと帰らせてあげるから、駄々こねないで待っててね。



******



 閉じ込めた人たちの事はひとまず忘れる事にして、周辺に倒れている追い剥ぎたちを一瞥した私は鞄の中を漁り、数枚の陣を取り出し足元へとばら撒く。

 そうして“彼ら”を召喚し、武器の回収と後始末を同時に終えた。所要時間は十分にも満たない。

 ……優秀だな、“彼ら”。見た目はちょっとアレだし、対価が重いけど、また呼んじゃうかもしれないな。

 具体的な方法は乙女の秘密だが、既にこの場には回収した武器(てんこ盛り)と、各所に散る血痕だけしか先程の戦いを連想させるものは残っていないと言っておこう。

 これらの方法を見せたく無くて、班長さんたちを閉じ込めたし視界も塞いだんだよね。乙女の秘密は断固死守!


 そこまで済ませると地面に転移陣(出口)を埋め、別の転移陣(入口)を発動し、ラキラの居る森へと戻った。

 出迎えたくれたラキラに、熊が超でかかったよひゃっほう!と感謝し、次いで、ちょっとゴタゴタに巻き込まれたから今日は遊べないよごめんね!と謝罪しながら軽く事情を説明。

「その人間達を消せば、わたしとの時間は確保出来るであろう?」

 何か物騒な事を言い出した。

 いかん、せっかく助けたのに、人外による人生終了のピンチイベントが彼らに発生しつつある。この不穏な思考をどうにかせねば。

 今日の私は宥める係なのか……。あっちで宥め、こっちで賺し。大忙しだな。



 そうして何とか宥めきったラキラと別れ、一旦森から出る。

 道のど真ん中だと迷惑だから、ちょっと外れた位置にしよう。

 そう決め、開けた場所に結界を張り、その内部の地面に馬車ごと転移出来る陣(出口)を描いていった。結界を張っておけば誰かに陣を消される心配は無いし、風とかで崩れる心配も無い。

間違い無く描けているのか点検し、パーフェクト! 天才! と自画自賛してご機嫌で山へと戻った私は、やはり班長さんたちはそのまま放置し、狩った熊の元へと向かう。

 まだ血抜きが中途半端だけど、仕方が無い。


 小型の結界で熊を包み、風の術で浮かせて班長さんたちの居る川へと戻ると、目隠しという立派な使命を果たしてくれた“花”たちを還す前に、対価である私の血を召し上がれ、と告げる。

 うん、どうせなら、追い剥ぎたちの血を与えておけば良かった。失敗失敗。

 内心で、てへぺろっと舌を出していると、“花”たちは私の血よりも熊の血が欲しいとねだり出した。

 ……そうね、この熊の血を吸い尽してくれたら、血抜きも完了するから助かるけど。私の血を与えなくて済むのもありがたいんだけどね。とても合理的な申し出をしてもらったと理解してる。分かってるんだけどさ。

 けど、どうにも……乙女の血より熊の血の方が良いと、突き付けられたその事実に衝撃を隠せない。

 マジか。私の血は熊に劣るのか。へこむ。

 “花”たちが一心不乱(いや、心があるのか知らないけど)に熊の血を吸い続ける間、私のテンションは死んでいた。多分、死んだ魚を腐らせたような目をしていたに違いない。

 ……うん、忘れよう。それが良い。


 心に負った軽傷から目を逸らしつつ、満足したらしき“花”たちを還しながら、同時に結界を解く。

 すると、何の前触れも無く開けた視界と解かれた結界に、内部に居た班長さんたちが即座に身構えていた。うむ、きちんと警戒していたようで何よりだ。

 そんな班長さんたちの傍へ、血抜きの終わった熊をふわりと移動させれば、彼らは呆気に取られたように口全開でそれをガン見。

 まぁ、この熊でかいからね。ふふ、私の熊狩りの腕前を称えてくれても良いんだよ? 褒め言葉は常時受け付けております!


「……ブラックベアーじゃないか!」

 けど残念な事に、我に返った班長さんの口から飛び出たのは称賛の言葉では無かった。こちらを指差し、熊だ!と愕然としているが、そんなの見れば分かるし、もう息絶えてるから危険は無いよ。

 ちぇ、褒めてくれないのかー……。

「君は熊を狩ったと言っていなかったか?! それはどう見てもブラックベアーだろう?!」

「はい、熊です」

「違う! ブラックベアーだ!」

「? ええ、黒い熊、ですね?」

 なぜ何度も熊を連呼するのか分からなくて首を傾げると、班長さんがじれったそうに「熊じゃ無い! ブラックベアーは魔獣だ!」と声を張り上げた。

 随分でっかい熊だと思ったけど、どうやら熊では無かったようだ。

 ……ひょっとして、“花”たちが私の血じゃなくこっちが良いって言ったのは、魔獣だったからなのか。って事は、私、熊に負けた訳じゃ無いって事だ。おおお、心の軽傷が癒えてゆく。


「なるほど、これ魔獣なんですねぇ」

「反応が薄くない?!」

「いえ? 充分感心してますよ。異様に丈夫だな、と思ってましたから。息出来無いようにしてやっても平気そうでしたし、なかなか傷も付かなくて」

 水で頭を覆って平気だったのも、驚くほどのお肌の丈夫さも、魔獣ゆえという事だったのだろう。

「ああ、ブラックベアーは頑強だからね。……その頑強なコイツの首が切り落とされてるって事態に、俺は我が目を疑ってるよ」

「目の前にある現実は受け入れた方がラクですよ?」

「……そうだね」

 お兄さんが乾いた笑いと共に、諦めたように肩を落とした。どんまい。


「あれ、もしかして、熊じゃ無いって事は……」

「どうしました?」

「熊鍋には出来無いって事ですか?」

「……魔獣は食用ではありませんな」

 真剣に問い掛けると溜息を吐かれた。おじさんの私を見る目が非常に生温い。

 その視線から『可哀想に』という感情が読み取れたけど、それは熊鍋を食べられない私への哀れみなのか、私の頭が哀れだと思ってるのかどっちなんだろう。後者なら軽く殴りたい。

 しかし、食べられないのか。せっかく狩ったのに。

「しょうがない。じゃあ埋めましょう」

 ガッカリさを隠せない私へ、班長さんが目の色を変えて詰め寄ってくる。

「はあ?! 待て待て! ブラックベアーだぞ?!」

「それが何か?」

「魔獣の素材は貴重だ! 冒険者ギルドでは結構な金額で取引が」

「持って帰りましょう。一刻も早く現金に換えなくては」

「食いつきが早いな!」

 熊鍋にならないのは残念だけど、売れるというなら話は別。ちゃんと持って帰ってあげよう。無駄狩りにならなくて良かった。


「はぁ……ところで、君の衣服の血は、熊を倒した際に付着したと言っていたが」

「言いましたね。熊じゃなくて魔獣だったみたいですけど」

 気を取り直した班長さんに問われ、そうなんだよね、私の服、血塗れなんだよね、という思いを込めて頷く。

 川で洗うつもりだったけど、ここまで時間が経ったらもう落ちないだろうな。この服はおじゃんか。勿体無い。

「やはりそうか……魔獣の血は人体に多少の害がある。時間が経てば経つほど害も増すから、出来るだけ早く脱ぐべきだ」

「そうなんですか?」

 初耳の情報に驚いて班長さんを見ると、深刻な顔で首肯された。

「……うん? って事は、私はここから外套一枚で帰ると?! やばいそれ通報されちゃう案件!」

 外套(コート)の中が()って、どう考えても変質者だ。転生先で変質者デビューなんて冗談じゃ無い。


「というか、その血塗れの服の上に着ていたのだから、外套の内側にも血が付着しているんじゃないのか」

 深刻な面持ちから一転、なぜか微妙な顔になった班長さんが、ゴホン、と咳ばらいをし更に指摘してきたので、示された外套をひっくり返して見れば、言われた通りそれにも血が染みてしまっていた。

「あ、ホントだ。え、じゃあ私はここから全裸帰宅?! 変質者以外の何者でも無い! 確実に捕まる! 誰か、誰かモザイク処理班をここへ! 優秀なのを!」

「すまない、最後がよく分からない」

 焦って無駄に周囲を見渡す私に冷静なツッコミをくれる班長さんと、その背後でブフォッと噴き出すお兄さん&おじさん。

 ちょっと、これは切実な問題だよ! 笑ってる場合じゃ無いから!

「さ、さすがに今すぐ脱がなくちゃいけないってほど切羽詰まってる訳じゃ無いよ。早く帰って着替えれば大丈夫じゃないかな」

 お兄さんが肩を震わせながら教えてくれたので、可及的速やかに帰る事を決意。

 まぁ元々、後はここに陣を描いて荷物を持って帰るだけだったから、それを実行するだけだ。問題無い。



 山と積まれた武器たちを彼らに運んでもらい、自分は地面に陣を描き始める。そうしたら三人ともが驚愕も露わに凝視してきたので、眺めてないで早よ動け、と婉曲に伝えた。

 ついでに彼らの馬車に武器たちを載せてもらえるよう頼む。

 本当は自分で運びたいけど、熊(魔獣だけど)と多量の剣を全部浮かせて街に入ろうとしたら、きっと門番さんたちに怒られる。ただでさえ熊を持って帰る度にぶちぶち言われるからなぁ。ちゃんとお裾分けしてるのに何が不満なんだろう。

 それは置いといて。

 武器を載せるのはあっさり了承されたが、私を馬車の中に乗せる事は出来無いと気まずそうに言われた。御者台なら可能なので、悪いがそちらに……とのこと。


 いや、私はホラ、浮かせた魔獣に乗って飛んでくから大丈夫。馬車とか、尻が痛くなるし。この世界の揺れの激しい馬車は一度乗って懲りたよ。日本の車や電車の快適さを知っている身としては、再度乗りたいとは思えない代物だ。

 それに……どうも馬車の中に、もう一人居るっぽいんだよね。

 すべての窓が内部から布で閉ざされてて見えないようになってるけど、バッチリ気配がある。え、誘拐?!と一瞬殺意が湧いたものの、中で自由に動き回ってるみたいだし、一度窓を塞ぐ布が揺れてたから、きっとこっそりこっちを覗いてたんだろう。

 そこまでフリーダムな被害者はまずいないだろうから、きっと班長さんたちのお仲間なんだろうな。言い出さないって事は知られたくないって事だろうから、私も知らない振りを貫いている。

 ……と、そんな事を素直にぶっちゃける必要も無いので、私の事は良いから早く武器を積んでくれ、と催促。急いでくれないと、先に陣を描き終わっちゃうよ。



 そうして準備万端となり、さくっと陣を発動させ、王都近郊の森の外へと到着。

 班長さんたちが一様に驚き(どうやらまだ半信半疑だったようだ)、そして感謝しようとしてきたので、「王都に帰るまでが遠足です」とキリッと言えば、「遠足では無い」と生真面目に返された。冗談が通じにくいなぁ。

 そこから、班長さんたちの乗った馬車が走る横を並行して飛んで(飛んでるのは私じゃなくて魔獣だけど。私は乗ってるだけだけど)王都へと帰った。



******



 王都内の冒険者ギルド前で馬車が停まり、御者台から飛び降りる。

 あー、やっぱちょっと尻が痛い。

 ……いや、乗るつもりは無かったんだけど。さっき通過した門で、いつもならあれこれ言ってくる門番さんたちが、どういうわけか何も言わなかったんだよ。街中で熊(魔獣)を飛ばすな!とも言われなかった。

 言われなくて勝手に不安になった結果、魔獣は馬車の屋根に固定し、私は御者台に座って街に入る事にした。

 注意されると面倒だと思うのに、注意されないと見捨てられた気がして不安になるのは、複雑な乙女心の成せる技である。女心はややこしい。

 そうしたらそれを見た門番さんたちが総じてほっとした顔をしていたので、この判断は正しかったようだ。

 何で直接言ってこなかったんだろう。言わなくても分かれって事? ……彼氏か!


「降ろした武器は俺達がギルド内に運ぶ。君は先にその魔獣を運ぶと良い」

 馬車から班長さんたちが武器を持って降りる間、ただそれを見ていた私はひらひらと手を振ってその言葉を拒否した。

「いえ、その辺に置いといてくれれば、後はギルドの人たちがやってくれますから」

「しかし……」

「大丈夫ですって。か弱い少女には優しい人たちばかりなんで」

「か弱い少女」

「何か文句でも?」

 真顔でオウム返しされたのでにっこり聞き返せば、「いや、大人として呑み込もう」と苦笑されたが……それ言ってる時点で呑み込めてないって、気付いて。

「まぁ良いです。あなたたちも早く帰りたいんでしょう? 約束の報酬さえ支払ってもらえれば、もういつでも帰ってくれて構いませんよ」

「突き放すような言い方だが、それは君の気遣いだと受け取った。……では、これを」

 手渡されたずっしりと重い革袋を受け取り、その口を開いて中を確認。

 ……うひひひひ。


「ふふ、確かにいただきました」

「驚くほど顔が崩れているが」

「私の顔面なんて気にしないでください。私は気にしません」

 ゲットした報酬に頬が緩むのは自然の摂理だと言い切るよ、私。

「では、どうぞお帰りください」

「……淡泊だな」

「これ以上の深入りは遠慮したいんです。もう会う事も無いと思いますが、お元気で」

「本当に……お嬢さんは賢明な方ですな」

「俺達も見習わなきゃいけませんね。……じゃあお嬢さん、ここまでありがとう」

 お兄さんの言葉を皮切りに、他の二人も私へと深く頭を下げ。

 そうして彼らは、馬車に乗って去って行った。



 あー、何か、ようやく帰って来れた感があるなぁ。疲れた。

 後はギルド(ここ)で換金を済ませて、迅速に帰ろう。

 あ、でも、熊鍋の材料をゲットしそびれたから、何か代わりのものを買って行こうかな。



******



ずっと馬車に隠れていた男性と班長の会話



「いくつかの術に覚えがあったが……まさか死神が後継を得たとは……」

「は?」

「いや、こちらの話だ。それより、面白い子だったな。性格的にも、能力的にも」

「……もしや、引き込むおつもりですか?」

「あれ程の人材を野放しにしておくのは惜しい。そう思うだろう?」

「ですが……」

「ふむ。お前がそのように渋るのは珍しいな」

「彼女が現れなくては、俺達はあの山で終わりでしたので」

「だから私もあの子に感謝すべきだ、と? 本当に、お前は甘いな」

「っ……」

「ふ、冗談だ。感謝しているとも。感謝しているからこそ、引き入れたい」

「……まだ成人にも満たない子供ではありませんか」

「今は、な。だがもう十年もすれば代替わり……その時、ルナの配下として年齢的にも程良いとは思わないか?」

「次代の為、ですか……それならば、異存はございません」

「結構。では、急ぎあの少女の素性に関し情報を集めろ。私もひとつ、心当たりを探っておく」

「承知しました」


「……さて。死神は何と(いら)えるかな」




ラストで男二人がシリアスしてますが。

一方その頃のシーデ。

「聞いて聞いて!今日魔獣狩ったんだよ!凄いでしょ!褒めて褒めて!」

テンションマックスで家族に報告中。そしてそのまま怒涛の褒めラッシュに突入。シリアスとか無縁です。


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