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閑話・決闘後の余談

決闘直後。

 サイラスさんと師弟関係が結ばれ和やかに解散モードなその時、元道場仲間のお兄ちゃん二人が駆けつけて来た。



「シーデ!!」

「シーデ、無事か?!」

「え? お兄ちゃん? どうしたの?」

「どうしたのじゃない!」

「何してんだお前は!」

「何って、決闘だけど」

「どうしてお前はそう危ない真似をするんだ!」

「だって、申し込まれたから」

「申し込まれたからってほいほい受けるんじゃない!」

「また怪我したらどーすんだ!」

「てゆうかお兄ちゃんたち、どこでこの話聞いたの?」

「どこって、店に行ったらシーデが居ないからさ」

「シーデの親父さんに聞いてみたら、ここで決闘してるって言うじゃないか」

「そんで慌てて駆けつけて来たんだよ」

「親父さん、ちょっと泣いてたぞ」

「またか。まぁそれはいつもの事だから置いといて。ねぇお兄ちゃんたち、もう1つ聞きたい事があるんだけど」

「ん? 何だ?」

「どうして二人とも、騎士の恰好をしてるの?」

「あれ、シーデ、知らなかったっけ?」

「俺達は二人とも騎士だからな」

「えええええ?! 初めて聞いたよ?!」

「そっか? 道場の連中は普通に知ってたんだけどなぁ」

「じゃあもしかして、おやっさんの事も知らないのか?」

「おやっさんって、一緒の道場に居たおっちゃんの事?」

「そうそれ。あのおやっさんも騎士だぜ」

「えええええええ?! そうなの?!」

「嬢ちゃん、驚き方が半端じゃないな。そんなにおっちゃんが騎士なのが意外か?」

「あ、おやっさん」

「噂をすればだな」

「おっちゃん! おっちゃんも騎士なの? 何で教えてくれなかったんですか?!」

「何でって……別に自分から触れ回る事じゃねえからなぁ」

「つか、シーデ以外には周知の事実だったんだって」

「私だけ……仲間はずれ……」

「わー! 待て泣くな!」

「いや別に意図的に隠してた訳じゃないぞ、嬢ちゃん!」

「ほら、兄ちゃんが抱っこしてやるから!」

「もうそんな事で誤魔化されはしない!」

「し、シーデが大人に……?!」

「嘘だろ……?!」

「じゃあおっちゃんが高い高いしてやろうか!」

「わーい」

「おお、いつものシーデだ」

「良かった、まだまだ子供だな」



「あの……何してんスか……?」

「団長……あの鬼の団長が高い高いって……コレどゆこと……?」

「あ、コレ、白昼夢じゃね?」

「え、オレら立ったまんま寝てるってこと?」

「あ~、俺らならありうるわ~」

「現実逃避するな。団長、それに先輩方。その子とどういったご関係ですか?」

「妹だ」

「妹だ」

「娘みたいなもんだな」

「いもーと?!」

「むすめ?!」

「いや妹って、まず先輩たち自身が兄弟でもなんでもないっすよね?!」

「え、ひょっとして、触れちゃダメなお家騒動的なアレ?!」

「もしや、団長の隠し子とか、そーゆーこと?!」

「お、オレ、何も聞いてないし! 聞かなかったことにするし!」

「うるせえな。何の騒動も無えよ。シーデとは同じ道場に通ってたんだ」

「道場仲間共通の妹分がシーデっつーこと。おやっさんにとっては娘的な存在っつーか」

「ねぇおっちゃん。ちょっと引っ掛かる部分があるんですけど」

「ん? 何だ嬢ちゃん?」

「『団長』って、何ですか?」

「ああ、おやっさん、騎士団長だから」

「ええええええええええ?!」

「今日イチの驚きだなぁ」

「そりゃ驚きますよ! 騎士団長?! マジですか?!」

「そんなに意外か?」

「だって、天下の騎士団長様が私ごとき小娘を高い高いしてくれるなんて思ってもみませんよ!」

「あー、オレらもそー思うわー」

「目を疑うってこーゆートキ使うんだって、分かっちゃったし?」

「嬢ちゃんが決闘したなんて聞いて、おっちゃんは耳を疑ったがな。……さあ、説教される準備は出来てるな? 嬢ちゃん」

「うぐぅ」

「おやっさん、説教なら俺らが済ましといたっす」

「怪我も無えみてえだし、いいんじゃないですかね。反省はして無えけど」

「はははじゃあやっぱり説教だ」

「だって……売られた喧嘩を買っただけじゃないですか……」

「買っちゃ駄目なんだよ、嬢ちゃん。せめてこうなる前に、おっちゃん達に相談なり何なりすべきだったと思わねえか?」

「でも、おっちゃんたちが騎士だなんて知らなかったから。それに、おっちゃんもお兄ちゃんたちも、いつ会えるか分からないし。いつ店に来てくれるかなんて、分かんないんだもん……」

「そりゃまぁそうだが……」

「あとは、昨日の今日だから、相談する暇なんて無かったっていうか……」

「昨日の今日?」

「昨日申し込まれて、今日決闘だったの……」

「はあ?! ハイスピード過ぎねーかそれ?!」

「いや、それ以前の問題だろ。一体、どこの馬鹿が俺らの妹に決闘なんて申し込みやがったのか、それが重要だ」

「ああ、そう言えばそうだったな。嬢ちゃんを叱る前に、そっちの阿呆を叱るのが先か」

「そっすね。そんで、平民の、女の、それも子供に決闘を申し込むなんて騎士の道に外れた事しやがった野郎は、どいつだ?」

「えーっとぉ……」

「それは……」

「何つーか……なあ?」

「お前ら、庇うんなら、全員一蓮托生って事でいいな?」

「あいつっス!」

「あいつがやったんす! オレらは関係ねーってか!」

「おれらただの観客なんで!」

「見てただけってゆーか!」

「むしろその子を応援してたってか!」

「ほお……コンラッド、お前か」

「お前が俺らの可愛いシーデに決闘なんて吹っ掛けやがったのか」

「……そうです。全ては俺の責任です。どのような叱責も甘んじて受けましょう」

「えええ?! しおらしい! さっきまでの尊大さはどこ行ったんですか?! 本当に同一人物?!」

「っ貴様は黙ってろ小娘が!」

「あああ?! テメー今なんつった?!」

「小娘だあ?! 俺達の妹に向かって、大層な口の利き方しやがんじゃねえか!」

「いや、実際小娘なんで、別に構いませんよ?」

「私の耳が悪くなったのでなければ、貴様とも聞こえたな」

「おっちゃんが自分の事『私』って言うの、初めて聞きました」

「シーデ、ちょっと黙っといた方がいいぞ」

「え?」

「おやっさんが『私』っつーときは、相当キレてっときだから」

「おっちゃんって、意外と沸点低いの?」

「沸点つうか、道場では温和だったけどな。騎士団に居る時は、基本鬼だぞ」

「へぇ。どの程度の鬼なのか興味あるなぁ。ガン見しとこ」

「お前の好奇心はどこに向けられてんだ……」

「団長、待ってください。お叱りなら俺が受けます。彼は俺を気遣い今回の」

「口を閉じろサイラス。今はお前とは話してない」

「しかしっ」

「黙ってろと言ってるだろうが! お前に用は無い! 私は可愛い嬢ちゃんを貴様呼ばわりした奴と話しているんだ!!」

「……うっわー、団長、キレッキレだわー」

「チョー怖いんですけど」

「あの状態のだんちょーに話しかけるって、サイラス、マジ勇者だし」

「あーなると、どーしよーもないんだよなー、団長」

「それで、お前は、何の権限があって嬢ちゃんを貴様呼ばわりするんだ?」

「そ、れは、その……」

「さっさと答えろ下等な愚図が! 生きながら地獄を見たいのか!!」

「ま、まことに、申し訳無くっ」

「誰が謝れと言った? 私が聞いているのは、どんな理由があって嬢ちゃんを愚弄するのかという事だ!!」

「うーん……おっちゃん、おっちゃん」

「ちょ、ダメだって!」

「シーデちゃん! 危ないし!」

「戻っといで!」

「ねぇおっちゃん」

「……嬢ちゃん、今は」

「ねぇおっちゃん、抱っこして?」

「……」

「ね? ダメ?」

「……仕方が無いな」

「わーい。おっちゃん大好き」

「そうかそうか。……嬢ちゃんは本当に賢いな」

「え?」

「おっちゃん、掌で転がされてる気がするぞ。いずれ男を手玉に取るようになったら、さてどうするか」

「えへへ。がんばる」

「いや嬢ちゃん、それは頑張っちゃ駄目だ」



「だ、だんちょーの怒りが静まった……?」

「逆にチョー怖いんですけど……」

「やっぱコレ白昼夢じゃね……?」

「おやっさんもシーデには甘いっつう事だな」

「つーか今日はおやっさんばっかズルいっすよ! 俺もシーデ抱っこしたい! シーデ、兄ちゃんとこおいで!」

「今日はおっちゃんがいいの」

「兄ちゃんショック!」

「しかし嬢ちゃん、あいつが相手でよく怪我しなかったな」

「え? あの人、そんなに強いっけ?」

「強いっつーか、力が強いっつーか。あいつの剣をまともにうけたら、シーデの腕なんて折れちゃうんじゃないか?」

「目に見える傷じゃなく、どこか痛めたりはしてねえのか? 医者に診てもらうか?」

「ありがとお兄ちゃん。でも大丈夫だよ。全部躱したから」

「そっか、全部躱せたのか」

「俺達との特訓の成果だな」

「逃げ足には定評があるからね、私」

「嬢ちゃんに怪我が無かったのは幸いだが……あいつはおっちゃんが後でギッチギチに〆てやるからな」

「ううん。おっちゃん、あの人を怒らないで?」

「いや嬢ちゃん、こういう事はきっちりけじめを付けた方が良い」

「私別に、何て呼ばれても気にならないから。私もあの人の事、イノシシって呼んじゃったし」

「……イノシシ?」

「猪突猛進な所がイノシシそっくりだから」

「イノシシ……っく、ふ、っはははは! イノシシか! 嬢ちゃんは上手い事言うなぁ」

「それに、可哀想で」

「可哀想?」

「何言ってんだシーデ。決闘なんて吹っ掛けられたお前の方が可哀想だろ」

「だって、こんな小娘に、自分から吹っ掛けた決闘で負けてんだよ? 超可哀想じゃない?」

「ああ……」

「それは確かに」

「あとね、その人には後できちんと謝罪してもらう事になってるし、ついでに師匠もゲットできたし。悪い事ばっかじゃなかったんだよ?」

「師匠?」

「何の師匠だ?」

「剣の。じーちゃん師匠の代わりに、サイラスさんに教えてもらう事になったの」

「……なるほどな。そういう事か」

「シーデお前、それが目的だったな?」

「……はっ、しまった! イノシシを庇おうとして自爆した!」

「見事なまでの自爆だったな。さて嬢ちゃん説教だが」

「おっちゃん、抱っこもういいから、おろして」

「ははは、終わるまでおろさないから、安心して説教されろ。な、嬢ちゃん」

「わ、私ちょっと用事があるから」

「奇遇だな嬢ちゃん。おっちゃんも、嬢ちゃんに説教するって用事があるんだ」

「ええーっと、お、お兄ちゃーん」

「はは、シーデ、今日はおやっさんの方がいいんだろ? 良かったじゃないか」

「兄ちゃん達は用無しなんだよなー。寂しいけど、シーデがそう言うならしょーがないよな」

「ちが、ちょ、待って」

「こらこら、じたばたするんじゃない。落としたら大変だろ? さあこのまま説教といこうじゃないか」

「せめて、せめておろしてくださああい!」

「ははは駄目だ。おろしたら脱兎の如く逃げ出すんだろう? 大丈夫だ、おっちゃんは嬢ちゃんを抱えてるぐらいで疲れたりはしないから。な?」

「いやあぁぁぁぁ!!」



 おっちゃんのキレっぷりに、イノシシ騎士を利用した側として申し訳無く思いフォローを入れてみたら、見事なオウンゴールを決めてしまった。

 そして今回は逃げられず、抱き上げられた状態のまま延々とお説教をくらった。

 しかも練兵場のド真ん中でやられたから目撃者は多数。公開処刑にもほどがある。


 しかしおっちゃんもお兄ちゃんたちも、騎士だとかそんな重要な事はもっと早く教えてくれないかな。そうしたらこんな決闘なんてしなくても、ツテでサイラスさんを師匠に出来てたかもしれないじゃないか。とんだ無駄骨だよ! しかもお説教付きとか……くたびれもうけって、こういう事か。


 というか、今気付いたんだけど、ヒューが誘拐された時に私が大した事情聴取をされなかったのって、おっちゃんもしくはお兄ちゃんたちの差し金なんじゃないの? 職権乱用だなぁ。……まぁこういう職権乱用は歓迎するけどね。助かったのは事実だし。


 ちなみに、12歳にもなって抱っこされるってのは正直恥ずかしい。

 だって12歳だよ? 前世基準で言うと、小六もしくは中一の年齢だよ?

 おっちゃんもお兄ちゃんたちも相当ガタイが良いので対比すると抱き上げられててもおかしくないってだけで、どう考えても抱っこって歳じゃない。

 さすがにもう少し私が大きくなったら無理な技だよねぇ。

 抱っこが無理になったら、どうやって宥めたらいいんだろうか? 今でさえ宥めきれて無いみたいだし……うーん、ここは思い切ってハグからの頬っぺにチューとかいってみるべき?

 ……うん、私はやれば出来る子! 頑張ろう!

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