決闘2-攻略対象その2-
「そこまで!!」
―――力を込めようとしたところで、背後から鋭い声がかけられた。
それと同時にぐいっと肩を引かれ、体ごと半回転させられる。
目の前には、一人の長身の騎士。
実用的な筋肉の付いた躰と、焦茶の短髪に同色の目をした、なかなかに男前な顔面の騎士だ。かなり背が高いので、見上げるようにしないと目線が合わない。いや、決して私の背が低いわけではない。と思いたい。
「そこまでだ。もうやめてくれ」
私の肩を掴んだまま、真摯な目で懇願するように言ってくる。
「でも、まだ勝敗が決してませんよ?」
「いいや、もう勝負はついた。君の勝ちだ」
だから、剣を鞘に収めてもらえないだろうか、と続けた騎士の言葉には悲壮感が漂っている。その精悍な顔には似つかわしくない、非常に悲痛な声だ。
……まるで私が悪者のようなんだけど。これ決闘だから、別に私、悪くないよね?
「では、あなたも負けに納得してくれますか?」
決闘相手の騎士に尋ねるも、やはり返答はない。
「首だけ解放して」
巻き付いた花に指示し、彼の首を解放させると、もう一度聞く。
「あなたは、私に負けた事を認めますか?」
ぶんぶんと千切れそうな勢いで首肯する騎士に、何だか生温い気持ちが芽生えた。仕方ない、剣はしまおう。
私を止めた長身の騎士は安心したように息を吐いている。が、その手はまだ私の肩を掴んだままだ。地味に痛い。
「手を放してもらえますか? ちょっと痛いです」
「あ、ああ、すまない」
ぱっと手を放した騎士の慌てた表情に、記憶が刺激された。ちょっと若いけど、見覚えがある。一応確認しておこう。
「あなたは、どなたですか?」
「これは失礼した。俺はサイラス。そこで花まみれにされている彼の同輩だ」
はい当たりー。
私に負けたそこの騎士が、決闘の申し込みの時に口にしていた名前だ。
そんでもって、その名前を聞いた私がちらっと予想したことが当たっていた。
この人、ゲームの攻略キャラの一人でーす。見覚えあるわー、この顔。
でもまぁそれはちょっと置いておこう。
「ああ、あなたがこの決闘の原因ですか」
「それは……」
「我が同輩を苦しめた罪、その身で贖え! と、そこの花まみれの人に言われたので」
「……そうだ。俺が原因だ。君にはどう謝罪すれば良いのか……」
「謝罪よりも、理由を聞かせてください。身に覚えがなさ過ぎて困ってます」
「それは、そうだろうな。君には関係の無い事だから」
固い顔で目を伏せるサイラスさんの言葉に、一瞬きょとんとした後。
「……はあ?!」
呆れと驚愕の混ざった感嘆詞が漏れた。
私に関係ないって何? じゃあ何で私は今ここに居るんだ!
「いや、関係ないって何が? 決闘までしたのに! とにかく理由を教えてくださいよ! 納得のいく理由を!」
若干口調が崩れてきたが、これは私のせいでは無いだろう。
「いや、それはちょっと……」
「何で言いよどむんですか? 私には知る権利がありますよね?!」
とっとと吐け!と詰め寄る私に、困惑の表情を浮かべるサイラスさん。
そんな風に私たちが揉めているのを見かねたのか、見物していたお仲間らしき騎士たちがぞろぞろと寄って来た。
「どーかしたー?」
「なにモメちゃってんのー?」
軽い! チャラいっぽい! これが騎士かよ!
「この決闘の理由を知りたいの。誰か知ってます?」
「え~? ダレか知ってる~?」
「え、オレそれ知らねーし。何かイベントあるからって聞いただけでー」
「ってゆーか、きみ強いねー。おにーさんビックリしたわー」
「つーかこの子、可愛くない? 今度デートしよーよ」
ナンパか! このロリコンが!
というか、そろいもそろってアホか! 騎士は皆アホなのか! アホしかいないのか! 大丈夫かこの国?!
「誰でもいいから、理由を教えてってば!」
「あー、怒った顔も可愛いねー。いつデートしよっか?」
「わしらの孫に粉かけるたぁふてぇ野郎だ」
「うえっ?! 何で?!」
ナンパ騎士の背後から現れたじーちゃんズが、彼を拘束した。現役の騎士に気配すら悟らせないとは……さすがじーちゃんズ。
よしよし、そのまま押さえておいてください。ついでに口も押えておいてね。うるさいから。
ちなみにばーちゃんズは、離れた所でご婦人方と井戸端会議中みたい。目的忘れてない? 抗議するつもりじゃなかったの? 孫は放置ですか?
「で? 理由は?」
「いや……」
一番まともっぽいサイラスさんに再度聞くも、ごにょごにょするばかりで話にならない。
仕方が無いので、花のオブジェな騎士を振り返り、口を塞いでいた花を取り除いてあげた。
「あなたなら教えてくれますよね? この決闘の理由を、詳しく」
「いいだろう、教えてやる」
鷹揚に頷く彼は、首から下はオブジェ状態なのに相変わらずの尊大な態度だ。肝が太いわ、この人。
「待て!」
「じーちゃん、この人も拘束して」
「よっしゃ、任しとけ!」
サイラスさんが割り込んでこようとしたので、じーちゃんズの片割れに彼の拘束を頼んだ。頼りになるじーちゃんを持って幸せです。
「では、理由をどうぞ」
「よし。お前の父親はな、妻帯者の身でありながら、他所の女を誑かす酷い男なのだ」
「……はい? 何の話ですか?」
「つまりだな。そこのサイラスには婚約者がいる。その婚約者であるご令嬢が、お前の父と好い仲になってしまったのだ。その事にサイラスは深く傷ついている。しかしそいつは優しい男だ。とてもお前の父に向かってはいけない。そこで俺が代わりに決闘を申し込んだ。こういう訳だ」
納得できただろう、と怒りを抑えながら滔々と語ったオブジェな騎士は、きっと仲間思いの良い奴なんだろう。例え行動がイノシシ並みに一直線だとしても。
でもね。
納得は出来無い! ちっともできないよ! 濡れ衣だよコレ! 冤罪ですわ!
「うん、それは絶対、誤解ですね」
「ふん、父親を庇いたい気持ちは分かるがな。これは事実だ」
「いや、その話、誰から聞いたんですか? 出所教えてもらえます? 完っ全にデタラメですよ!」
母さんにゾッコンな父さんがそんな事する訳無いって。マジで。
仮に世界で一番の美女に全裸で迫られたとしても、「シルゥの方が綺麗だし可愛いし僕の妖精だし」とか言うよ、父さんは。
「俺はサイラスから相談を受けて知ったから、出所は知らんな」
「じゃあサイラスさん、その話をどこで知ったんですか?」
「いや……その……」
「……どこですか?」
「それは……だから…………」
「……早く答えないと、花々が血で染まりますよ」
言葉を濁し口を割ろうとしないサイラスさんに業を煮やし、オブジェなイノシシ騎士にちらりと視線を向け腰の短剣に手をやると、狼狽えた彼は絞り出すような声で答えた。
「っ……婚約者だ! 俺の……婚約者から、聞いた」
ようやく観念したサイラスさんに、しかし私は思わず首を傾げる。
「はあ? 何ですかそれ?」
「小娘! その人を馬鹿にした態度を改めろ! これ以上我が友を傷つけるな!」
うるさいよオブジェ。
「もうちょっと詳しく。あなたの婚約者は、あなたに何て言ったんです? 浮気してまーすとでも言ったんですか? 正直者すぎません?」
「そんな直接的な表現はしてない! もうちょっとこう、婉曲な言い方、というか」
「好きな人ができました、とか? 心変わりしましたとか?」
「もっと遠回しだ! その……彼女は貴族の令嬢なんだが、お忍びで出掛けた先のパン屋で、素敵な人と出会ったと」
「……出会っただけなら父さん悪くなくない?」
「しかし、彼女はそれ以来、何度もそのパン屋に出向いて……」
「……パン買いたいだけでしょ? ウチのパンが気に入っただけでしょ? 何が悪いの?!」
もう口調を繕う事もできやしない。
「いやでも、君の父君は彼女に『また来て下さったんですね、美しい方』とか、『またあなたに会えるのを楽しみにしています、私の可愛い人』とか言っていると……その、これも全部彼女がそう言っていて……彼女は完全にメロメロ状態で……俺は……俺は……」
……うん、分かった。
こいつもアホだ。本当に、アホだ。
というか、これで腑に落ちた。私に決闘を申し込んだくせに、なぜか父さんを詰ってたのはそういう訳か。
激しく落ち込み始めたサイラスさんを生温く見つめると、そんな私の気配を察した彼が顔を上げたので、噛んで含めるように言ってやる。
「よく分かった。あなた方が、酷い勘違いをしている事がね」
「……勘違い?」
「あなたの婚約者は、私の父の事を素敵だと言った訳じゃないでしょ?」
「え?」
「正確に思い出して。パン屋の誰の事を言ってたのか」
「思い出すまでもない。パン屋の……シーデ殿の事を言っていたんだ。シーデ様は凛々しくて本当に素敵な方なの!と……」
めちゃめちゃ勘違いでーす! このアホー!!
「あのね、シーデは私」
「…………は?」
ぽかんとするな! この間抜け面!
「私がシーデなの! というか、考えたら分かるでしょ?! そこのアホ騎士がシーデに決闘を申し込んだんだから、その決闘を受けてたった私がシーデに決まってんでしょうが! このアホどもが!!」
ああもう、面と向かってアホって言っちゃったじゃないか。
「ちなみに! 父さんの名前はデズモンド! 母さんがシルゥ! 二人から一文字づつもらった私がシーデ! 分かった?! 覚えた?! 覚えたね?!」
そう捲し立てる私に、ぽかんとしながらもこくこくと頷くサイラスさんとは対照的に、オブジェなイノシシ騎士は声を荒げた。
「では貴様がそいつの婚約者殿を誑かした張本人か! 小娘の分際で令嬢を誘惑するとは! 何たる性悪!!」
「誰が性悪?! 大体、誘惑なんかしてないし! お客様に愛想良くするのは看板娘として当たり前でしょ!」
「だからといって口説く必要はなかろう! 大体、看板娘だと言うのならば、男の客に愛嬌を振りまくのが正しい姿ではないのか!」
「口説いてない! 褒め称えただけだし! それに、男に愛嬌振りまいたら大変な事になるわ!」
「訳の分からん言い訳をするな! 見苦しいぞ!」
見苦しいって何だ! オブジェ状態のあんたの方がよっぽど見苦しいわ!
「だったら実践してあげるからしっかり見てなさい! じーちゃん、その人離してあげて」
「あいよっ」
「うー、ひでー目にあった。オレが何したってのよ」
解放され立ち上がったナンパ騎士は、拘束されていた際に服についた砂をパタパタ払っている。
「じゃあ見てて」
周りの騎士にそう言って、ナンパ騎士へ近づいた。
さあ、今こそ封印されし技を解き放つ時!
みなのもの、我が雄姿を刮目して見よ!
「おにいさん」
ナンパ騎士に声を掛けると、目を丸くして見つめ返される。
ナンパな言葉ばっかに気がいってたけど、この人、顔立ちは整ってるな。ちょっと垂れた紫の目に、愛嬌と色気が混在してる。
……もったいない人だ。その顔なら、まともに口説けばついてくる女性の一人や二人いるだろうに。
「今日もいっぱい買ってくれてありがとう。そんなにウチのパンを気に入ってくれたの? 嬉しいな♪」
残念な彼への感想は隠し、ニコニコと笑いかけると、「へ? へ??」と狼狽えている。……ちょっと可愛い。
「また来てくださいね。待ってますから」
彼を見つめながら、その手にそっと触れ。
「ね? 素敵な騎士様?」
小首を傾げ、うっとりと微笑んでみせると。
「素敵な騎士様?! やっばい超かわいーんですけど! 買う! めっちゃパン買うし!」
彼はそう叫んで私に抱きついた。
どうだ! これぞばーちゃんズ直伝、“男を虜にする接客術~騎士バージョン~”だ!
「ほら見ろ! ロリコンが釣れたじゃないか! 男に色目使ってもロクな事にならない! というか、この人ほんとに騎士なの?! 抱きしめ方に遠慮がなさすぎるんだけど! こんなのに街の治安が守れるの?! 逆に悪くならない?!」
私が叫び終わる前に、ナンパ騎士はじーちゃんによって私から引き剥がされ、再度拘束された。今度は地べたに転がされ、ついでに間接技をキメられている。容赦がない。
「こんなロリコンを釣り上げるぐらいだったら、ご婦人やお嬢さんを称賛してキャッキャされてた方がよっぽど実害がないわ!」
「野郎相手じゃあ、実害どころの騒ぎじゃないわな」
「しかも数年前より進化しとる。いつの間に技に磨きをかけたのか。我が孫ながら末恐ろしい」
「こりゃ危険すぎるわ。再度封印するのもやむを得んな」
じーちゃんズも険しい顔だ。
幼少時にこの技が禁止されたのは、私がうまいことやれなかったからじゃない。
逆に、うまいことやりすぎてしまい、幼女趣味の男を量産しかねないと家族が憂慮したからだ。教わったからには全力でやらないと、と頑張りすぎた結果というか。私の女優魂が燃え過ぎたというか。
お前の長所は向上心があって努力するところ、でも短所も向上心があって努力するところだって前世の友人が言ってたな。要は、やりすぎってことらしい。
あーでもこれで、男を虜にする接客術、また封印されるなぁ。いつか役立たせられる日がくるんだろうか。せっかく教わったのになぁ。
「これで私の接客方針の理由が分かった?」
振り返ると、数人の騎士が申し訳なさそうに目を逸らした。
ひょっとして、ナンパ騎士のロリコンは有名なのか。よく騎士になれたな、本当に。
「いや違うって、そいつ別にロリコンとかじゃないっつーかさー」
「そそ、ただちょっと、自分に正直? みたいな?」
「好みのコ見ると、止まんないってゆーか?」
止まんないなら誰か止めてやれよ!
というか、それはフォローしてるつもりなの? 私が好みの範疇に入るんだとすれば、それはやっぱりロリコンだと思うんだけど。
「はぁ……もういいです。疲れた。とにかく、サイラスさん。これで誤解は解けましたね?」
「あ、ああ。そう、だな。彼女は、年下の女の子にキャーキャー言ってただけだったのか……」
「そういう事です。ファン心理、というやつだと思いますよ。いずれ覚めるでしょうから、気にしないであげてください」
まぁその婚約者さんとやらがどのお嬢さんだか知らないけど、他にも私のファンだと言う奇特なお嬢さんたちが居るからねぇ。皆いずれ目を覚ます日が来るだろう。きっと。
「お前が婦女子を惑わさなければ良いだけではないか!」
「うっさいイノシシ」
「い、イノシシ?! 誰の事だ?!」
「一直線に突っ込んでくる事しかできない単純なあなたの事です。もう少し戦略というか……いろいろ考えて動いた方がいいんじゃないですか?」
「考える前に動くのが俺のポリシーだ! 先手必勝と言うだろうが!」
親切心からのアドバイスを放り捨てられた。このイノシシめ。
「さて、そちらの誤解は解けたという事ですが、こちらとしてはこれで一件落着とはいきません。分かりますよね?」
「何が言いたい、小娘」
「あなたは、私の父をけなし貶めました。全力での謝罪を要求します」
「それはっ……くっ、致し方な」
「言っときますけど、ただの謝罪は受け入れません。父さんの眼前で、全裸で這いつくばって許しを請いなさい」
「ちょっと待て! 何だその嫌なプレイは! そのような謝罪などせんぞ!」
「……へえ、そう。自分の勘違いから父さんを口汚く罵ったくせに? 謝る事もできないと? へーえ……」
きっと、今の私の眼は座っている。
周囲の騎士たちが「あーちょっと、落ち着こっか? ね?」と宥めてくるあたり、性格の悪さがにじみ出た陰険な目付きをしてるのかもしれない。でもそんなのどうでもいい。
半眼でイノシシ騎士を見据えつつ、腰に付けた鞄(いわゆるウエストポーチ。肩掛けの鞄では動くとき邪魔になるので、ばーちゃんズに作って貰った)から数枚の紙を取り出し彼の目前に掲げた。もちろん魔術の陣が描いてある紙だ。いろいろ用意してきてよかった。
「では、どの陣がいいですか? 一枚選んでください」
「選ぶ?」
「はい。選んだ陣を発動させるので、それを謝罪代わりにくらってもらいます」
「なぜ俺がそ」
「負けたくせに謝罪をするのは嫌だとあなたが駄々をこねるからですが?」
「な! 誰が駄々な」
「早く選んでください。あなたと違って暇じゃないんですよ、私」
「誰がひ」
「ほら早く」
「話を」
「早くってば」
イノシシ騎士の全発言に、急かす言葉をかぶせていく。駄々なんて聞いてあげないよ。
「てゆーか、魔術の陣なんてパッと見じゃ、どれが何だか分かんないんじゃね?」
「そーそー、オレら騎士って魔術とかサッパリだし?」
「全部いっしょに見えるつーかー。効果とか言ったげた方が選びやすいんじゃん?」
「つか、その陣ちっさくね? 何が描いてあんのか見えないんだけど~?」
「どれが何か分かんない状態で選んだ方が、ドキドキ感が味わえますよ」
うっひょーすげースリル! オレだったら絶対無理だわー、とけらけら笑いあうチャラ騎士たちは、完全に他人事だ。呑気。
「……選ぶ選ばないはともかく、どれが何の術なのか教えてもらえないだろうか」
サイラスさんも口を挟んできた。この人はイノシシ騎士と友達らしいし、あまつさえ原因は自分なもんだから、イノシシ騎士に対して申し訳なく思ってるんだろうな。
しょうがない、軽く説明してあげよう。
「じゃあまず、この陣は体中の血をじわじわ抜く術のもので」
「よし待て」
「はい?」
「非常に物騒な言葉が聞こえた気がするんだが」
「気のせいでしょうから続けますね。こっちはじわじわと記憶が消えていく術で、こっちは毎晩悪夢に侵されるもので」
「えー、悪夢とか、急にやさしーじゃん? やっぱ女の子だねぇ」
サイラスさんの突っ込みを受け流し続けるも、今度はチャラ騎士の一人が口を挟んできた。
「飛び起きるほどの悪夢が毎晩ですよ? まどろんだ次の瞬間、恐怖に駆られて跳ね起きるのを毎日繰り返して、まともに眠れず頭も働かない状況に精神が削られて、じわじわと狂ってくのって、優しいんですかね?」
「……わーお」
「なにそれチョー怖いんですけど」
「つーか全部じわじわくる系ばっかだし。嬲られてる感はんぱねーっつーかー」
「オレぜってー無理だし。じわじわ系こっわいわー」
チャラ騎士たちがドン引きしてる。
だって、嫌な術じゃなきゃ謝罪代わりにはならないでしょ。
「一瞬で終わりな術もありますよ。これはこの世界のどこかに身一つで転移するための陣。それでこっちは、男性としての機能を無くす術の陣です」
「転移? 転移ってさー、そんな複雑な模様だっけ? いや、ちっさすぎてあんま見えねーけど」
「どこに転移すんのかは内緒なワケ~?」
「内緒もなにも、私にも分かりませんから。普通の転移の陣と違ってコレはどこに行くのか完全にランダムなので。見知らぬ森の中かもしれませんし、獣の巣の中かもしれませんし、ひょっとしたら国外とか海の上とかの可能性もあります。しかも身一つでの転移なので、武器どころか服も無しの状態ですから、きっと戻ってはこれませんよね」
「全裸転移?! おにーさんそれ絶対ヤだわー」
「オレどっちかっつーと最後の陣が気になるかも。機能をなくす? ってナニ~?」
「要するに、股の間のお宝が役立たずになるって事です。この中では一番優しい術ですから、これにしときますか?」
「…………」
あれ?
チャラ騎士たちが無言で私からじりじり距離をとり始めたんだけど……若干内股なのは何でだろう?
何か不都合な事でもあったのかな?




