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閑話・説教大会

一部下ネタが混ざります。ご注意ください。

閑話ですので、この話を飛ばして頂いても差し支えありません。

説教大会。



「師匠はどこに行ったんですか?」

「騎士たちが、『検分に立ち会って欲しい』っつって連れてっちまった」

「そうなんですか。じゃあヒューたちも帰ったし、私も帰っていいですよね」

「ははは待て嬢ちゃん。師匠の代わりにおっちゃんが説教大会を開催してやるから。な?」

「何で説教なんですか? しかも大会? 意味が分かりません」

「分かるまで全員でみっちり説教してやるから、安心しろ」

「全員?! え、全員?! 何でですか?!」

「何で、だあ?! シーデ、お前、俺らがどんな気持ちなのか分かんねぇのか?!」

「お前の血まみれな姿を見たときの衝撃といったら!」

「それなのに、それが全部わざとだったってか?!」

「だって、ちゃんと太い血管は避けて斬らせましたよ?!」

「そういう問題じゃ無い!」

「自分の体を何だと思ってんだお前は!」

「女の子がそう簡単に傷を作っちゃダメだろ!」

「男女差別ですか?!」

「差別じゃねえ、区別って言うんだよ!」

「女の方が体が脆いんだから、当然だろ!」

「何ですかそれ! 牛乳パワーをさずかってる私の体は丈夫そのものです! 脆くありません!」

「そんな細い腕して何が牛乳パワーだ!」

「どう考えたって俺らより脆弱だろうがお前は!」

「私にマッチョになれと?!」

「んなこた言ってねえ!」

「マッチョなシーデなんて、兄ちゃん嫌だからな?!」

「だったらどうしろと?! 大体、体内を流れる血の量は男女で差が出るわけじゃないんですよ?! 個人個人の体格の差です!」

「それなら余計だろうが!」

「そんな小っせえんだから、血の量も少ねぇに決まってんだろ!」

「小っさくないです! それに、支障がない程度に斬られたって言ってるじゃないですか!」

「支障だらけだ!」

「斬られんのがそもそも駄目なんだよ!」

「しかもわざとって、兄ちゃんの心臓止める気かお前は?!」

「だって、他に方法がありましたか?!」

「俺らに助けを求めに来りゃ良かったじゃないか!」

「シーデの為なら誘拐野郎ぐれぇ、片手で捻ってやるっつうのによぉ!」

「助けを求めに来られる状況じゃなかったんですってば!」

「それを何とかして来るべきだったんだよ!」

「無茶ぶりにも程がある!」

「何が無茶だ! お前のやった事の方が無茶だろーが!」

「あんなに血ぃ流したら、死んじまう可能性だってあったんだぞ?!」

「だから、死なない程度にしましたってば! そもそも、男より女の方が血を流すって事には強いんですからね?! 私だっていずれ毎月、月の」

「待て! 何てこと言おうとしてんだお前は!!」

「女の子がそんなこと口にしようとするんじゃない!」

「再びの男女差別!」

「だから差別じゃ無いって言ってるだろうが!」

「はっ、さすがのテメェも多勢に無勢だな」

「……何で戻って来るんですか。あなたはヒューの護衛でしょ? ヒューと一緒に帰ったんじゃなかったんですか?」

「屋敷中の護衛が坊ちゃんを迎えに来てたからな。俺が居ねえでも坊ちゃんは安全に帰れる。俺は見送りに行っただけだ。それよりテメェに文句垂れんのが先だ」

「まだ文句があるんですか? もうお腹いっぱいなんですけど」

「あるに決まってんだろが! テメェ、よくも俺を落としてくれたよなあ?! 何が『死なないと約束してください』だ! 最初っから俺を沈めてテメェで行く気だったんだろ?!」

「当たり前じゃないですか。負け犬が行ってどうにかなると思ったんですか?」

「負け犬だあ?! ざけんなよテメェ!」

「事実です。あなたは一度あの男に負けてるんですよ? そのうえ怪我人。そんな足手まとい確定な人を連れて行くなんて、博打みたいな真似はできませんでしたよ」

「あああ?! んっだとこのクソが! テメェがそうやって勝手に行ってこのザマなんじゃねえか!」

「どのザマですか? ヒューは無事、私も無事、どこに問題が?」

「おいシーデ、お前どこにも問題が無かったと思ってるのか?」

「思ってます」

「あんな傷だらけだったのにか?」

「普段から有事に備えて、多量の陣を持ち歩くべきだった、と反省はしてます」

「嬢ちゃん、違う」

「そういう事じゃない」

「じゃあ問題点はどこですか?」

「あの傷だらけの状態は、無事とは言わないんだよ」

「無傷で勝てたら一番良かったんだろうとは思います。でも、それは無理でした。あの男とは実力が違い過ぎて。だから、これが私にできるベストでした」

「避けて避けて避け続けて、そうして小さな隙を付くようにって、師匠から教わっただろ?」

「お前にはそういう戦い方が合ってるって、口を酸っぱくして言われてたよな?」

「最初はそうするつもりでしたけど、時間なんてかけてられないって思い直したんです」

「別にあのちび助が負傷してたとか、そういう訳じゃないだろ?」

「何で急ぐ必要があった? わざわざ傷を負ってまで決着を急いだのは、どうしてだ?」

「……だって」

「だって?」

「気持ち悪かったんだもん……」

「気持ち悪い?」

「犯人が、か?」

「うん」

「だからテメェはクソだってんだよ。坊ちゃんを攫ってった奴が、爽やかな好青年な訳ねえだろが」

「あなたはどんだけ私をアホだと思ってるんですか。そんな期待はしてませんでしたよ」

「だったら、頭のおかしい野郎だって事ぐれえ予想してたんだろ? 何をそんなにビビる事があった? 剣を向けられた恐怖か?」

「違います。あの男が、本当に気持ち悪かったから」

「だから、何がだ」

「だって! だってあいつ、私を斬って、興奮してた!」

「ぁあ?」

「そりゃアレか、人を斬るのが好きな野郎だったって事か?」

「サイコ野郎か……まぁ子供にゃキツイわなぁ」

「サイコってゆうか……ド変態ってゆうか……」

「ド変態?」

「私があいつに顔を斬られたとき、痛みで顔をしかめたら、あいつ、その顔は好みだって言って」

「……好み?」

「ヒューは氷漬けにして飾るけど、その横に、苦痛で顔を歪ませた私も一緒に飾ってあげるって言われて」

「……氷漬け?」

「……飾る?」

「斬られる度に、その顔はぞくぞくするとか、たまらないとか、早く氷漬けにして愛してあげたいとか言ってて」

「……」

「言葉だけならまだ耐えれたんだけど……反応してて……」

「反応?」

「あの男の体が…………下半身が、反応してた……」

「なっ……?!」

「そっ、なんっ……」

「だから、だから私っ」

「ま、待てシーデ、もういいから止め」

「もう気持ち悪くて気持ち悪くて反吐が出そうってか消えろってより一刻も早く死ねとか思っちゃってだって何であんな変態野郎に卑猥な目で見られなきゃなんないのってか斬られて顔歪める私を見て性的興奮を得るとかありえない心底気持ち悪いし生理的に受け付けないってだから全力で倒さないとやばいと思って私、私、私!」

「待ったシーデ待った! ストップ!」

「忘れろ! んな野郎のこた全部忘れちまえ! テメェの脳からとっとと消し去りやがれ!!」

「消し去れるんなら消し去りたいけどこれ絶対消えないってか夢に出そうってより夢に出てきたら真っ先にあの野郎のイチモツを斬り落としてやりたいうんそうしたいだって血まみれの私見ておっ勃てるとか真性すぎるしまともな成人男性なら巨乳美女見て勃ててろっつうんだよあのクソが!!!」

「シーデ?!」

「てめ今なんつった?!」

「空耳です!」

「ぜってえ空耳じゃねえだろ! さらっとおっ勃てるとか言ってんじゃねえよ! ガキがどこでそんな言葉覚えてきやがるんだ?!」

「空耳です!!」

「ごり押しすんじゃねえ! 大体斬り落とすって、どんだけ物騒な思考回路してやがんだテメェは!」

「だって斬り落とせばもうそんな劣情を抱く事も無くなるでしょ。ああそうか斬り落としたらいいんだ。今すぐ斬っちゃえば二度とあんな事できなくなるよね。あいつ今どこに居るのかな牢かな会いたい超会いたい斬り落としたい斬ろう斬らせてくれるよねじゃあ行ってきます!!」

「ちょ、待てテメェ!!」

「シーデやめろ! 行かなくていいから!」

「早まるな嬢ちゃん!」

「落ち着け! とにかく落ち着け!」

「兄ちゃんが抱っこしてやるから!」

「わーい抱っこー」

「静まった……だと?!」

「抱っこが有効なのか……?!」

「有効なのは、お兄ちゃんの抱っこだけです」

「…………シーデ? もう一回、言ってくれるか?」

「有効なのは、お兄ちゃんの抱っこだけです」

「お、お兄ちゃん……ついに……ついにお兄ちゃんと呼んで……っシーデー!!」

「なあに? お兄ちゃん」

「ぐふっ!」

「おい死ぬな!」

「駄目だ気を失ってる!」

「どんだけお兄ちゃんって呼ばれたかったんだ……」

「いやいや、先輩だけズルいっすよ! シーデ、俺は?! 俺もお兄ちゃんって呼んで!」

「じゃあ抱っこ?」

「いくらでもしてやるから! ほら来い!」

「わーい。お兄ちゃん大好き」

「ぐはっ!」

「駄目だこいつも気絶した!」

「何っだこの茶番は! この道場にゃまともな人間は居ねえのか?!」

「私、超まともですけど」

「一番おかしいのがテメェなんだよ! 普段あんだけ大人じみてる癖に、要所要所でガキらしさ見せつけてきやがって! ぜってぇ歳ごまかしてんだろ!」

「やだな、私、ピチピチの8歳児ですよ?」

「そういう物言いが8歳児から逸脱してんだっつう事に気付けや!!」

「だから、何でテメーはシーデに突っ掛かるんだ」

「嬢ちゃんが大人びてんのは、別に本人の勝手だろ?」

「ウチ接客業ですから。目上の方には敬語を使うよう叩き込まれてるんですよね。たまに抜けちゃいますけど」

「叩き込まれてるとか抜けるとか、んなレベルじゃねえだろが! どう見ても計算し尽くされてて怖えんだよ!!」

「え……私、怖いの?」

「全然怖くねぇ!」

「シーデはそのまんまでいいから。こんな奴の言う事なんてスルーしとけ、な?」

「ほんと?」

「うわ、ホントだから!」

「泣かないでくれシーデ!」

「よしおっちゃんが特別に高い高いしてやろうか!」

「わーい」

「駄目だこいつら……何で揃いも揃ってこんなガキに踊らされてやがんだ……」



 かくして説教大会は、うやむやのうちに幕を閉じた。

 どうも前から、『お兄ちゃんって呼んで欲しいなー』と道場のお兄さんたちに露骨にアピールされていたが、まさかここまで効果があるとは。いざという時の為にと思い、『お兄ちゃん』呼びを取っといて良かった。己の性格の悪さ(計算高さ?)と先見の明に拍手したい。

 まぁ、弟的な存在に加え、兄的な存在ができたって事で嬉しくもあるから、深く考えるのは止めよう。性格悪い妹だけど、許してね、お兄ちゃんたち。

 ヒューの護衛はごまかせなかったみたいだけど、放っておこう。あんなに口が悪いくせに、私の本質を見抜いてるなんて、頭は口ほど悪くないんだなぁ。意外だわ。ま、一人で喚いてるだけだから、特に害はないよね。

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