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私の弟を返しなさい!

 薄暗く、窓も家具もない石造りの広い部屋。

 光源は、天井から吊り下がった小さな電球のみ。

 唯一の出入り口がドアではなく、上へと続く階段だという点と、湿ったようなかび臭さを感じるところから、地下室ではないかと推測できる。


 転移したその部屋をざっと見回すと、部屋の隅に、縮こまって震えているヒューが居た。

「ヒュー!」

 今がどんな状況で、ここがどういった場所か。そんな事は頭からふっ飛んで、大声で名前を呼び、駆け寄る。

「お、おね、ちゃ……?」

 そろり、と上げられた顔は、涙でぐちゃぐちゃだった。

「ヒュー、良かった! 怪我はない?! 痛いところは?!」

「だ、いじょ、ぶ……おね、ちゃ、おねえちゃああああ!!」

 私にしがみつき泣き叫ぶヒューをぎゅっと抱きしめ、背中を撫でさする。

 ……無事だった。無事だった!

「ヒュー、がんばったね。良く、がんばった」

 目頭が熱くなったが、ぐっと堪えた。今はまだ早い。発見しただけで満足してる場合じゃない。早く、ここから逃げ出さないと。


「声がすると思ったら……どこから入り込んだのかな?」


 背後からかけられた、その、絡み付くような声。

 咄嗟にヒューを背に庇いふり返ると、青年と呼べるような年齢の男が、階段を下りてくるところだった。

「……お前が、ヒューを、攫ったのか」

 怒りで震えそうになる声を宥め、喉から絞り出す。こいつが、こいつがヒューを。

「初対面の人間に、“お前”呼ばわりは失礼じゃないか」

「……何、言ってんの。誘拐犯のくせに」

「ふうん、礼儀のなってない子だ。でも先ずは、僕の天使を離してくれないかな」

「離すと、思う?」

「その天使は僕が攫って来たんだ。もう僕のものだ。ほら、こっちへ渡して」

「……やめて」

「どうして僕の天使は、君にしがみついて泣く? 僕のもとで泣くべきだろう?」

「やめて……やめて!」

「さあ、こっちにおいで、僕の」

「だまれ!! この子はお前の天使じゃない! 私の弟だ! 誰がお前なんかに渡すか!!」

 立ち上がり、拳を固く握りしめ、全身全霊で吼えた。

 この一年、しょっちゅうまとわりつかれ、おねえちゃおねえちゃと全開の笑顔で懐かれて。私の中でヒューは、完全に弟になっていた。守るべき、大切な私の弟。

「弟? その天使に、きょうだいはいなかったはずだけど……ああ、もしかして」

 こいつ、気持ちが悪い。

 話し方は平坦で、感情があまり込められていないように感じる。なのに、その声は体中にまとわりついてくるようにべたべたとしていて、生理的嫌悪感が沸き上がる。

「君が、その天使が図書館へ通っていた理由なのか」

「……」

 何と返していいのか分からない。こいつは、何を言いたいのか。

「週に二回、決まった日に、同じ道を通る馬車。とても簡単だったよ。君のおかげだ」

 ありがとう、と目を細められると、私の背中を悪寒が這い登った。


 私は、週に二日、毎週同じ日に、図書館へ通っていた。

 ヒューは、それに合わせ、図書館へ来ていた。

 それを狙われたのか。


 だったら。


 私が、ゲーム上のシーデのように、パン屋の看板娘としてだけ生きていれば。

 私が、魔術を学ぼうとせず、図書館に通っていなければ。

 ヒューが私と出会う事はなく、こんな目に合う事も、なかったのではないのか。


 一瞬、浮かんでしまった、別の未来。

 動揺なんてしてる場合じゃないのに、一度浮かんだその可能性は消えなくて。

「君は、その天使を弟だと言ったけれど……弟の身を危険に晒すのが、姉のする事なのかな?」

 揺れる私の心を見透かすかのように、男から追い打ちがかけられる。

「君さえ居なければ、その天使は、堕ちる事はなかったのに……ね?」



 私が、ヒューを、こんな目に、合わせたの?



「っが、ちがう、もん! おねえちゃ、悪くない!」

 男の言葉を否定することができず、立ち尽くす私の後ろから、ヒューが声を張り上げた。

「ぼくが、ぼくがおねえちゃに、会いたかっただけだもん! おねえちゃは、来るなって言ってたもん!」

 背後に庇ったはずのヒューは、ギクシャクした足取りながら、それでも私の前へと出て。

「おねえちゃは、悪くない! おねえちゃをいじめるな!!」

 その震える小さな腕を精一杯広げ、全身で、私を庇おうとする。



 ああ―――なっさけない!

 何を子供みたいに震えてるんだ私! 大人な精神年齢はどこに行った!

 誘拐犯なんかの言う事を真に受けて!

 こうしていたら、なんて、そんな後悔に囚われて!

 挙句の果てに、助けに来たはずの弟に守られて!

 しっかりしろ! 後悔なんて、何の役にも立たない!

 私が今すべきなのは、ヒューを助けること、それだけだ!



「ヒュー、ありがとう。でも、危ないから、下がってて」

 震えるヒューの肩を背後からつかみ、引き寄せる。

「おね、ちゃ」

 振り返ったヒューは、やっぱりまた泣いていた。ごめん、情けないおねーちゃんでごめん。

「鞄、持っててくれる?」

 こくりと頷いたヒューの手に、肩から下げていた鞄を渡す。

「危ないから、隅っこで座ってて。座ったら、耳を塞いで目をつむって。いい?」

「でも、でもっ」

 泣きながらイヤイヤと頭を振るヒューの耳に口を寄せ。

「絶対に、あいつを倒して、ヒューを助けるから。約束するから。ね?」

「……わか、った」

 そう約束すると、しゃくり上げながらも頷きを返し、私の指示通り、部屋の隅でうずくまった。

 それを確認し、一言。

「結界」

 鞄の中に入れてあった陣と、自分のポケットに入れていた陣、2枚の結界の陣を発動させる。これで、ヒューの身の安全は確保できた。私の身も、部分的には安全だ。

「これで、心置きなく闘えます。覚悟は、いいですか?」

 ゆっくり男へと向き直り、腰の短剣を両手に持ち、構える。もう大丈夫だ。私は、落ち着いている。

「へえ、今のは魔術か。めずらしい。どうせなら魔術でかかってくればいいのに。あえて剣で挑むのは何でだい?」

「陣の持ち合わせがないもので」

「本当かな? まあでも、僕がそれに合わせる道理はないね―――ウォーターガン」

 男が私へと、水の魔法を放つ。

 当然、結界に阻まれ、私には届かないが……この男、このレベルの魔法を詠唱無し、術名を口述するだけで使えるのか。厄介な。結界張って良かった。

「結界を張りましたから、魔法は効きませんよ」

「どうあっても剣で闘いたいと? 分からないな。君のような少女が、僕に敵うと思うのかい?」

「さあ、どうでしょう」

「剣は、あまり好まないんだけどね……ぐちゃぐちゃにしてしまうから」

 腰の剣を引き抜きながら、男は、暗く嗤っていた。


 死闘は、こうして始まった。



******



 剣が激しくぶつかり合い、金属の擦れ合う音が響く。

 なんて事は、一切無い。なぜなら、すべて避けきってるから。

 逃げ足磨いといて良かった! と思ったのは、今日が初めて。「ぐちゃぐちゃにしてしまう」と男が言っていたのは大げさじゃなかった。尋常じゃなく強いよ、こいつ。

 男が扱っているのは長剣。それも、通常の長剣より遥かに刃の幅が広い。すなわち、通常の剣よりも重いだろう。それを片手で易々と振り回し、的確に急所を狙ってくる。細身なくせに、どこにこんな力があるんだ。

 この一年、じーちゃん師匠から「可能な限り剣を受けるな、徹底的に避けろ」と教わってきて良かった。こんなの受けたら一撃で終わる。受け流す事すら、今の私では無理だ。

「逃げ足が速いね」

「おかげさまで」

「僕の剣からこれだけ逃げ続けられるなんて、誇って良いと思うよ」

「それはどうも」

 ごくごく普通の調子でやり取りをしているが、その間にも男は剣を振り下ろし私の頭を砕こうとしてくるし、私はそれを飛び退いて(かわ)している。会話だけが通常運行。

「でも、逃げるだけでどうなるのかな? 永遠に逃げ続けられるとでも思ってる?」

「さあ。教える義理はありませんね」

 喉めがけて突き出された剣先をひらりと躱し、滑り込むように男の背後へ回る。

 逃げるだけじゃ埒が明かないのは分かってる。だけど、斬り込む隙がない。今だって、背後を取ったと思った次の瞬間には、男は振り向いている。


 パワーがあるだけでなく、スピードもあって、強い魔法も無詠唱で行使できるって……チートか! お前が私の憧れたチート持ちなのか?! ちょっと神様、物申したいんですけど! どうしてこんな誘拐野郎にチートを授けたの?! 酷くない?!


「本当にチョロチョロと元気な子だな―――自分のしたことも忘れて」

「何の話ですか」

「言っただろう? 君のせいで、天使が僕の手に堕ちたんだと」

「あはは、馬鹿言わないでください。その理論は破綻してますよ」

 胴を薙ぎ払いにきた剣をしゃがんで躱しながら笑ってみせると、男は不思議そうな目を向けてきた。

「おや、どこが破綻してるって?」

「私のせいでヒューがこんな目に合った? それは違う。ヒューがこんな目に合ったのは、他でもない、あなたのせい。あなたが身勝手にヒューを攫った。それがすべて」

 さっきの私は、本当に馬鹿だった。冷静に考えれば分かる事だ。犯人側の自己中心的な理屈に引っぱり込まれるとか、さっきの私を殴り倒してやりたい。

「そうかな? あの天使が、決まった日に決まった場所を通ったりしなければ、僕はこんな事をしなかったかもしれないよ?」

「ああ、そういうのって、痴漢が言いそうですよね」

「……痴漢、だって?」

「ええ。あいつがあんなに足を出す恰好をしていなければ、あいつにあんなに色気がなければ、自分は痴漢行為なんてしなかった、とか言いだす輩と、あなたは同じ」

 犯行に及んだ経緯を人のせいにするなんて、卑劣にも程がある。どう考えたって、攫った奴が悪いに決まってるじゃないか。

 こんな奴の言う事に、もう惑わされはしない。

「僕を、痴漢扱いするのか。どこまでも失礼な子だ」

「はは、痴漢に何を言われても気になりませんね。しょせん痴漢の戯言。あは、ウケる」

 軽口を叩きながらも、実は少し必死だったりする。

 痴漢発言から、男の剣を振る速度が増した。まだ余力があったのかこの野郎!

「っつ」

 ギリギリで躱しきれなかった剣先が、頬をかすめた。ぱた、と床に血が落ちる。

「へえ……君は、痛みを味わうと、いい表情をするんだね。その顔は割と好みだな」

「はははありがたくない」

 好むな! 変態の嗜好に興味はないわ!

「そうだ、良い事を思いついた。あの天使は氷漬けにして飾るつもりだったけど、その横に君も並べて飾ってあげようか」

「…………」

 男の猟奇的な発言に、鳥肌が立つ。

 こいつは、駄目だ。頭のおかしさが桁違いだった。予想以上に酷い思考と嗜好を持ってる。氷漬けとか飾るとか、理解できない。

「おや、元気がなくなったね。じゃあ早く、死んでもらえるかな。そのままの君には興味ないから。死の恐怖と苦痛で顔を歪ませた君を、僕は愛でたいんだ」


 うん。これは、一刻も早くケリを付けよう。怖すぎる。

 紙一重で男の剣を躱し動き回りながら、頭の中は冷え冷えとしていた。怖すぎて私、今、超冷静。悟りをひらけそう。ひらかないけど。

 逸る気持ちのまま、準備もせずここへ来てしまったので、攻撃に使える陣をまったく持っていないのは痛手だ。さっきこの男に「陣の持ち合わせがない」と言ったのは、作戦でも何でもなく、ただの事実。作戦ならどれだけ良かったか。

 まともな攻撃じゃ、この男には届きそうにない。

 だったら、手段はひとつだ。

 大丈夫、やれる。この部屋なら最適だ。あとは、度胸だけ。



 覚悟を決めろ、私!



「ごちゃごちゃとうるさい痴漢ですね。あなた専用のインテリア雑貨だなんて、死んでもお断りです」

「ふふ、許可なんて要らないよ。だって、死んだら断れないだろう? だから君は、早く死んでくれればいいんだ」

 実に楽しそうな笑顔で剣を振り下ろす男の脇をすり抜け、駆け抜けざまに男の片膝の裏を蹴り込む。わずかに体を(かし)がせた男へ、手にした短剣での反撃を試みるも、あっさりと避けられ。

「ほら、捕まえた」

「っあああ!!!」

 左腕を、ざっくりと斬りつけられた。

「ああ、その顔、いいね。ぞくぞくするよ」

「っく、ぅ」

 ギリギリで体を捻ったので、そう深い傷ではない。だか、焼けるような痛みと、流れ出る血は止まらない。だらりと下がった腕から、握った短剣の先を伝い、血が細く細く床へと垂れていく。

「痛い? 痛いよね? ああ、たまらないよ君のその表情。結界を解除してくれれば、息の根を止める前に、氷漬けにしてあげる。どう?」

「っ、それは、どのみち、息の根が止まります、ね」

「斬られて死ぬよりは良いだろう? さあ、結界を解除して」

「しません。私は、負けない」

 歯を食いしばり、痛みを耐える。

「負けない? 両手でも僕に敵わないのに、片手でどうしようっていうのかな? そっちの腕はもう、上がらないだろう?」

「黙秘、します」

「聞き分けの悪い子は好きじゃないな。結界を解除する為には、やっぱり君を斬り殺すしかないみたいだね。大丈夫、顔は避けてあげるから」

「簡単に、やられてなんて、やりません」

 男の猛攻が再開されるが、それをひたすら、躱しに躱す。左腕は垂れ下がったまま、血の線を床へと滴らせ続けている。

「血を流し続けていたら、結局は死ぬだけなのにね。諦めて氷漬けになったらどう?」

「……」

「ああ、もう応える気力もないのかな。それにしては、よく逃げる足だね」

 きっと、この時のために逃げ足を磨いていた。そう思う。血を撒きながら、とにかく走り回る。


 まだだ、まだ、足りない。


「ああ、何ていい顔をするんだ。早く、早く死んで。早く、その顔を永遠に閉じ込めなくては」

 恍惚とした表情の男が振るう剣は、それでもその正確さを失う事はない。私の心臓めがけ繰り出されるそれを身をひるがえし避けるが、その拍子に左腕が男の剣へと触れ、また左腕に鋭い痛みが走る。

「っ、あ」

「その顔、その顔だ、ああ、我慢できない、早く、早く、早く!」

 男の声が、顔つきが、どんどん狂気じみたものへと変貌していく様は、見ていて反吐が出そうだ。


 でも、あと、少し。


「あははもう終わりだよほら死んで早く死んで死んで死んで!!」

「ああああっっ!!」

 左腿を斬られ、たまらず倒れ込む。

「はあ、は、あはは、終わりだ、終わりだよ。どう? 今の気分はどう? 怖い? 助けて欲しい?」

「っう、あ、あああ」

 倒れ込んだまま、痛む左半身を無視し、右腕で床を這うように移動した。

「だめだよほらこっちを向いて僕に君の顔を見せてほら僕を見て痛みと恐怖がないまぜになったその顔を見せながら死んでほら見て僕を見て」

 這いずる私の背後へゆっくり迫る男へと、体を向き直させる。

「ああ、ああ、その顔だその顔、その顔で死んでそうしたら氷漬けの君を僕が永遠に愛して」

 男の足が、部屋の中央へと差し掛かった、そのとき。



「やれ!!!」



 私の叫びと同時に、私が床に垂らし広げた血の模様―――血で描いた陣が、発動した。

 床から真上へと吹き上げる凄まじいまでの風圧が、男を襲う。

 私を追い詰めたと思い、何の警戒もしていなかった男の体は易々と吹き飛び、天井へと叩き付けられ、そのままの勢いで落下した。


 床へと落ちた男の体は、腕や足がおかしな方向へ捩れている。微動だにしないのは、意識を失っているのか、それとも―――いや、とりあえず考えないでおこう。



 ああ―――キツかった!


 男に踏み荒らされないよう、計算して描いた血の陣。

 その陣を描くために、不自然でないよう斬られてみせた腕。

 男が私の行動に不信感を抱かないよう、怯え逃げ惑っているように装い。

 私、超がんばった……!

 現時点での自分の持てる技を、全部出しきったよ……!


 床に足を投げ出し座り込んだまま、そう達成感に包まれていると。

「お、おねえちゃ、おねえちゃああ!!」

 ギャン泣きのヒューが駆け寄って来た。

 誘拐男が天井、及び床に叩き付けられた音は、塞いでいた耳にも届いてしまったようだ。さすがに目を開け、現状に怯えているんだろう。怖がらせてごめんね。

 と考える私へ、可愛い弟は、ダッシュの勢いのまま、全身で飛びかかってきた。

「ぐふっ!」

 腹にヒット! ちょ、私ケガしてるんだけど!

「ひゅ、ヒュー、痛」

「おねえちゃああああああああ」

 聞いて!

「おね、ちゃ、おねえちゃ、ち、ちが、いっぱいぃぃ」

 うん?

「ちが、いっぱい出てる、おねえちゃ。いたい? いたい? いたいいぃぃぃぃ」

 あ、怖がってしがみついてきた訳じゃないのか。私を心配してくれてるのか。

「大丈夫だから」

「だ、だいじょぶじゃないぃぃ! おねえちゃ、お顔もけがしてる!」

「顔? ああ、そういえばそうだった。でもそれは後で。とりあえず、ここから出よう。ね、ヒュー」

「あのひと……起きてくる……?」

「分からないから、急いで逃げよう」

 怯えた目で倒れ伏した男を見るヒューに私の上からどいてもらい、立ち上がろうとすると、左足を刺すような痛みが襲った。

 そうだ、左足も斬られたんだった。これ、歩くのツライな。何か……あ、アレでいいか。

 左足を引きずりながら歩き、未だぴくりとも動かない男の傍らに転がる長剣を拾い上げる。


 え、なにこの剣。めちゃくちゃ軽い。何で? 空振っては床やら壁やらに激突して、それなのに刃こぼれもしてないほど頑丈な剣なのに、何でこんなに軽いの? 特別な金属とかなの?

 ―――よし、この剣はもらおう。戦利品だね。絶対返してやらん。

 追い剥ぎのような事を考えながら、ゲットした剣を杖代わりにした。よしよし、これなら歩きやすい。

「おねえちゃ、足、いたい? だいじょぶ?」

「だいじょぶだいじょぶ。ほら、逃げるよヒュー」

「うん」

 本当の事を言うと、いまだに足からも腕からも出血しているが、構ってられない。ここから逃げる事が先決だ。あの男が起き上がって来たら怖すぎる。……二度と起き上がらない可能性もあるが……だめだめ、考えたら駄目だ。後にしよう。

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