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9話

美味しい筈の昼食が苦く感じる。

多分、これは絶望の味。


俺のグータラ生活が3日も続かなかったなんて……


美味しいご飯と可愛い女の子の為なら頑張れるが、俺の悠々自適な生活が無くなるとなるとモチベーションが下がるどころの騒ぎじゃない。


軽く死ねる。


なので適当に終わらせてさっさと裏舞台に引っ込もうそうしよう。


やってられねぇわ実際。

パンダように生きたい。

すごく働きたくない。

寝たい。


そんな思想を持つ俺が舞台に上がる事自体間違ってると思うんだ……

精霊召喚者だったとしてもグータラしてはいけ無いなんて決まりは無いだろ?


俺は今後の方針を心に決めると、胃袋に昼飯を詰め込む作業に没頭する。整理がつくとご飯が美味しく食べられるなぁ!美味い!!


あ、そういえば大事な事聞いてなかった。


会話を聞かれたら面倒な事になりそうなので、俺は給仕をしている召使いさんを下がらせる。


「もう給仕は不必要です。自分で食べられます。退室してください」


「は、はい。しかし私の仕事ですので持ち場を離れる訳には」


と、召使いさんは緊張した面持ちで発言する。

うーん。面倒だ


「…命令です。聞いてください。」


こうなりゃ麗しの美少年スマイルで可愛くおねだりだ。美少年の笑顔は最高だろ?な??


「も、申し訳ございません!!失礼します!!」


召使いは顔を真っ青にして部屋から逃げるように出て行った。


あれ?反応おかしくね?そこは真っ赤にするところじゃね?ん??


……まあ、いいや。

俺は気を取り直して俺の隣でパンを腹に詰め込んでる精霊様()に問いかける。


「ねえガルフ、お前ってこう、姿を消したりとかって出来ないんですか?俺の身体の強化が解けない範囲で姿を消すとか…」

正直デカイから圧迫感半端ない。


「まぁ、出来なくは無いな。基本的に精霊は表に出ない。故に、お前が望むなら姿を消していよう。邪魔はしない」


こいつ……散々俺の邪魔をしていた事を知らないな!

俺が人生目標を言ってなかったのが悪いって事は知ってる。でもまさか、こんなに早くポカやらかすとは思ってなかったんだよ!


俺は精霊にサラダ用のフォークを突き付け、警告する。


「今まで言っていなかったから言いますけど、俺の人生の目標は働かずに生きる事です!!俺の邪魔をしないと言うのなら、俺がベットから動かなくてはいけない騒動を起こさないでください!」


「な…ッ!お前、真顔で何を言っているんだ!?正気じゃないぞ。人間動かなくては生きているとは言えん」


「はぁ??動かない事の何がいけないんですかぁ?俺は結構前から動かなくても生きていましたよ。つっても、これからしばらくはベットでゴロゴロ出来なさそうですけど」


俺がそう言うとガルフは押し黙り、

沈黙が流れる。


気まずっ!!何か言えよ!!まるで俺が悪いみたいじゃんか!


俺はサラダをムシャムシャしながら、横目でガルフのお綺麗な顔をガン見する。


そうしてしばらくすると、精霊は難しい顔をしながら口を開いた。


「……お前が怠惰性を持っていたことは。正直予想外だ。………お前は何故、そこまで怠惰でいたいと願う?お前に何があった」

まるで想定していなかったという風に精霊が言う。


何故?何が?


俺は予期せぬ質問に少し戸惑いながらも、自分の本心の一部を話す。


「………外の世界は、怖いから」


てか、就活を思い出して絶望したからなんて言えない。


パンダのように生きるのが夢だったからとか言えない。


川で滑って転んで死んだのがトラウマだからとか言えない!!


だから大体あってる答えを返した。


だって、俺にとって外の世界は現実だ。家の外に出る事は現実と向き合うという事とイコールなのである。


前世は現実から逃げる事は許されなかったが、今世は地位と財産と権力がある。堂々と現実から逃げる事が出来るよ!やったね!!


しかし何を勘違いしたのか奴は俺の頭を撫でながらとんでも無い事を言う。


「俺が、外の世界の素晴らしさを教えてやる。厳しさもな。だから自分の世界を狭めるな」


はぁ!?ナニイッテンノコイツ!?


俺は頭の手を振り払い、精霊の目を睨み付けながら俺の心の底からの言葉を放つ。


「俺は!そんな事は望んでいない!俺が望むのは働かない怠惰な人生だ!!それが俺の幸せだ!お願いだから余計な事はしないでくれ!!」


「…ッ、そんなものが人の幸せなものか!そんな生き方では自らの心を殺すだけだぞ!」


「お前に俺の幸せを否定されたくないね!!引っ込んでろ!!」


「ーーーッお前には才能がある!未来がある!それを潰して生きるつもりか愚か者が!!!」


精霊の怒鳴り声が食堂に響き渡る。召使いを追い出しておいて良かった。まさかここまで怒るとは。


ガルフは悲しそうな顔をしながら目を真っ赤に輝やかせて、俺を睨み付ける。息は荒く今にも噛みつかれそうだ。


うっわ、精霊のガチギレ怖えぇ。しかも俺の為を思って言ってくれてるのが凄く分かるから心にクる。

だとしても、俺の今世の幸せは一つだけだ。


働かないこと。

これに限るよな!!


「俺の未来は俺が決めるし、俺の才能も俺が使う。お前がどうこう言う権利はない!」


そう言うと俺は車椅子から勢いよく立ち上がり、早足で食堂を出る。背後から制止の声が掛かるが気にせず扉にむかう。


これ以上の言い争いは無意味だし、これ以上あいつの顔を見ていられ無い。罪悪感で死にそうになる。


だから逃げる。


食堂の扉の向こう側には警備兵が数人いたが、全て無視して自室を目指し廊下をつかつかと歩く。道は覚えているから大丈夫だ。



あ"ー気分が悪い。ガルフと離れたせいか身体が少し重いような気がするし。最悪だ。

次はどんな顔して会えばいいのか……気が重いぜ!


いっその事契約を解除すれば丸く収まるのに。でもあの優しい精霊はそれをしないだろう。勘で分かる。絶対俺を働かせる気だ。


一層気分が悪くなり、急いで部屋に戻る。



今日は生まれてから一番最悪な日だった


主人公はクズ自覚系クズです

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