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8話

そう。俺が望んでいるのは働かない人生。故に俺は表舞台に上がるのは望まない。


表舞台は面倒がいっぱい!何かアクションを起こさなきゃ強制的にデットエンドな毎日!


やってられるか!!


俺が望むのは変化のない日々。

毎日ダラダラして過ごすのが人生目標のクズである。今更手のひら返しなんて必要ない。

その事を精一杯父親に訴える。


「父上。俺は別に隠されて育てられたことや、表舞台に立たせて貰えなかったことを恨んではいません。むしろ感謝しています。そのお陰で俺はここまで成長できたと思っていますから。

ですので、これからも表舞台に立ちたいとも思えませんし、立てると思いません。俺は!このままで十分幸せです!!」

だから俺を養ってくれてるだけで十分だよ!!!変なことはしないで父上!!


「……そうか。無理をさせたなアルジュ。大丈夫だ。マナーやダンスはこれから覚えれば良いし、精霊様も付いている。

もうすぐ私が主催する大規模な夜会が行われる。そこで、お前を正式に王位継承権を持つ私の子だと発表しよう。」


あ"ぁーーー話聞いてねえよこの野郎!!!!!


「そんなことしなくても俺は!日陰で一生を暮らすのを望みます!精霊召喚も偶々の事ですし、そんな大袈裟な措置を取らなくてもいいですよ!」


「アルジュ。お前は精霊を召喚するという事はどのような事か理解していないのか。

精霊は言わば世界の一部だ。その世界の一部を切り離して、自分の元に呼び出す事は並大抵の話ではない。

それをお前は10歳で成し遂げたのだ。大袈裟過ぎる措置で十分だ。勿論、日陰で暮らすのも認めない。」


「だとしても、俺に王位継承権はいりません!王位を継ぐのは兄上。これは決定事項でしょう。」

王位を継ぐとか面倒事しか無いからな!継承権はいらないぜ!!


父王は深く考えて、お前がそう望むのなら前向きに検討しよう。と言ってくれた。


よし勝ったぁ!!これで俺が王になる事はない!面倒事回避フゥウ!!


「しかし、ユリウスに何か大事があれば第一継承権はお前が持つ事になる。それだけは覚えておけ」

と父王は言う。


ふっ、それだけは俺が回避するから問題ないぜパピー!


俺は内心ハイテンションのままもう一つの面倒事の話を切り出す。


「分かりました。また夜会の方ですが、私は身体が弱いので参加するのを遠慮したいのですが……」


そう、俺を公式発表するらしい夜会という名の戦場。行きたいと思う筈がない。

てか俺知ってるし!夜会って腹の黒い汚い大人達が蔓延る蜘蛛の巣なんだろ!!そんなところに行きたくねぇよ!!


しかし父王は無慈悲だった。


「それは駄目だ。精霊の召喚者となったお前をこのまま部屋で腐らせておく訳にはいかん。身体の方は精霊様が近くにおる限り強化される様だから大丈夫だろう。念のため付き人を増やしておく。心配は無い」


精霊のまさかの裏切り


……クッソ…ッ!反論する言葉が見つからねぇ!!


「大丈夫だアルジュ。何かあれば俺が守る。」

と、お綺麗な顔にパン屑を付けながら頼りにならない精霊が余計な事を言う。お前は黙ってろ!!


……こんなの!行くって言わなきゃすげー空気の読めないヤツになるじゃねえか!クッソ、やられた!!


「……わ、分かりました。夜会には出ましょう。」

渋々、そう渋々の承諾である。


仕方ない。夜会で美味い飯をたらふく食べて可愛い女の子を精一杯愛でてきてやる!!

あっ頑張れる気がしてきた。美味い飯と可愛い女の子の為なら何だって出来そう!!


「なら決まりだ。夜会には出てもらう。今後はマナーやダンスのレッスンが多く入ると思う。出来るだけフォローはしよう。」

そう言い残して父王は広い食堂から出て行く。王様も暇ではない様だ。


父王の姿が完全に見えなくなるのを確認すると俺は深くため息を吐く。

頼りない精霊は心配そうに見てくるが、半分以上はお前の所為だ。


しかしマナーにダンスかぁ…やだなぁ……


しばらくは自堕落な生活は無理そうだ。



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