7話
気がつくと俺は自室のベッドで寝ていた。
時計を見ると針はもう12時を回っており、もう昼過ぎなのが分かる。
昨日の事は夢だったのかと思い、ふと横を見るとデカイ銀髪男が部屋の机に座りながら黙々と本を読んでいるのが見えた。
あーやっぱ夢じゃなかった………
鍵の精霊ことガルフをガン見していると、その視線に気が付いたのか本を読むのを止め、話しかけてくる。
「起きたかアルジュ。精力不足で倒れたお前をここまで運んで来るのは骨が折れたぞ。あと数回お前を起こしにメイドが来たが、なかなか起きないから諦めて帰って行ったな」
こいつが運んで来てくれたのか。よく俺の部屋が分かったな……
しかし、メイドさん起こしに来てくれてたんだ。くっそーメイドさんの顔を見て清々しい朝を迎えたかったぜクソが。
「てかガルフ、メイドに姿を見られなかったですか?ガルフは、強い精霊なんでしょう?そんな奴と契約したってバレたら色々面倒くさいんですよ。」
下手したら食っちゃ寝食っちゃ寝の生活が無くなる可能性が出てくる。それだけは勘弁してほしい。
「大丈夫だ。メイドが部屋にいるときは姿を消していた。見られてはいないだろう。……そんな事より顔色が悪いぞ。契約は辛かったか?」
ガルフは心配そうに俺の顔を覗き込む。
……ふむ。身体にもう眠気はない。昨日と同じく元気である。
しかし昨日とは違って俺とガルフが見えない何かで繋がっているような感覚がする。多分これが契約したという事なのだろう。変な感じだ……
「契約時は凄く眠かったけど今は大丈夫です。顔色が悪いのはデフォだから。気にしないでいいよ。まずは色々説明がほし「殿下ァ!!!!」?!?!?!?!」
俺の話を遮るようにいきなり扉がバーンと開き、外からメイドさんと数人の男が入ってきた。
男たちは全員抜刀しており、鋭い目つきでこちらを見ている。
え、ちょ、俺何かしたっけ??
そして男たちのリーダーらしき人物が前に出てきて声を出す。
「おい!殿下から離れろ銀髪男!!武器を捨て、両手を上げて跪け!」
お前かよ!!!!
姿見られてんじゃねーか馬鹿!!
姿消してたんじゃねーのかよ阿保!
そんな視線を込めて騒ぎの張本人を睨むと、ゴメン。という風な視線を向けて来やがった。
ゴメンじゃねーよ!!!!
罵ってても仕方がないので、俺は声を張り上げガルフを庇う。
「まってください皆さん。この銀髪男は鍵の精霊様です!!武器を収めてください!」
「……は?精霊様??ですか??
……確かにこの魔力は……。
待ってください殿下。精霊はそう簡単に姿を現さないモノです。また召喚するにしても、そうやすやすと呼び出しに応じてはいただけません。一体何処の誰が呼び出したと言うのですか?」
リーダー格の男は部下達に剣を下ろさせ冷静に問いかけてくる。
ど、どどどどうしよう。
俺が呼び出したとか言えば騒ぎは必須だ。そんな事になったら俺の夢のニート化がパァである。しかし他に何と言えば良いのやら……。
えっと、えっとえっと
困ったような目をガルフに向けると、任せろ!という風に頷き、男達に体を向ける。
おお!流石は精霊様だぜ!!上手く誤魔化してくれるのか!!
そして奴はとんでもない事を言ってくれやがった。
「俺の召喚者はこのアルジュだ。この歳で俺ほどの精霊を召喚できる器を持った人間はそういない故、その才能に惚れ込んで契約した。俺はアルジュに危害を加えない。安心して欲しい。」
ば か や ろ う ! ! !
あぁ……俺の人生、オワタ\(^o^)/
そして俺は白い灰になった。
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正気に戻るとそこは俺の部屋ではなかった。メイドさんの説明によるとここは王族がご飯を食べる場所らしい。凄く広い。
目の前にはいつもより豪華な昼食が並べられており、今までいなかった側仕えが給仕をしている。
俺の服もいつもの寝巻きではない、上等な服に変えられいた。
そして今までとの一番の違いは、俺の正面に親父がいるということだろう。
そう。俺の父親はこの国の王様であり、この国で一番偉い人だ。約二年ぶりだねパピー。なんで今まで一緒に飯を食べてなかったこの人とご飯を食べているのか。
この原因は俺の隣でパンをパクついている銀髪大男にある。
遡ること30分前
俺は灰になっていた。
いや、物理的にではなく精神的に。
俺が召喚者であることを簡単にバラしたガルフはドヤ顔でこっちを見てくる。
止めてくれ。
メイドさんや男達は大騒ぎで部屋を行ったり来たりして忙しそうだ。
かくゆう俺も、正式な精霊召喚者として王様である父に報告しないといけないらしい、ということで着せ替え人形になっていた。
その時のことはあまり覚えていない。
そして気が付いたら全身綺麗に洗われていて、寝巻きじゃなくなっていた。
そして車椅子に乗せられ食堂に連れてこられる。
で、現在である。
ん?説明が飛びすぎ??仕方ないだろ!!俺の自堕落な生活に終止符が打たれたんだから!!記憶だって飛ぶさ!!俺の夢を返せ!!
あーー飯だけは美味いなぁああ!このスープマジ美味えーー!!!
自棄になってスープをひたすら飲みまくっていたら、正面に座っている厳つい顔をした父がやっと口を開いた。
「……お前を正式に、表舞台に出したいと思う。今まで身体が弱かったお前を隠すように育ててしまい、すまなかった。許してくれ」
そう言って父は頭を下げる。
俺が望んでいるのはそうゆうことじゃないんだよパピー!!!!