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6話

〈前回のあらすじ〉

なんか知らんがコケて本棚の本に手を付いたら地下への隠し階段が出た。何を言ってるか分からねぇと思うが俺も何がなんだかわかんねぇ!

「嘘だろ……地下への階段とかヤバい臭いがプンプンするぜぇ、とか言ってる場合じゃない」

驚き過ぎて口から言葉が漏れる。


取り敢えず俺は今、なぜこんな所にスイッチがあるんだとか、そんな無粋なことは考えない。

今考えるのは、行くべきか、行かざるべきか、という事だけなのだから。


ふっ……まあ悩むまでもないか。


「男なら、黙って"行く"一択だ!」


そうでなければ面白くない!!!

ビバ秘密の香り!ビバ隠し階段!


mammy!俺、今すっごくドキドキが止まらないんだ!!!!


ワクワクしながら地下へ通ずる階段へ足を掛ける。躊躇は微塵もない。今俺の心にあるのは隠されたモノを暴く時の興奮だけである。


仄暗い階段は一段一段下る度に闇を深くする。

幸いにアルジュは夜目の利く体をしていたので、前はしっかり見える。階段を踏み外して転げ落ちることはなさそうだ。


最後の階段を下りきると、目の前に重厚な金属で出来た扉があった。

その扉はよく見ると【禁書庫】と彫られており、何が仕舞われているのかが一目瞭然である。


禁書。


この言葉にときめかない若者はいないだろう。そう、あの禁書だ!!

しかも異世界ファンタジーでの禁書だとなんか、とんでもないブツがあるんじゃないのか??!!


あぁぁ!!気になる!!めっちゃ気になる!!!

「しかしこの扉、開くのか?」


凄く重厚な扉だ。俺のようなひ弱な身体じゃあ、開けられなさそうだ。

取り敢えず、試してみよう。


「ふんっ!!んんっググググ!」


扉の取手に手をかけて思いっきり引く。開かない。

次は横に引く。……開かない。


「ええぃ!!引いてダメなら押してみよ、だ!喰らえ!!引き篭もりの底力を!!!」

………しかし開かない。


「クッソ!鍵が掛かっているのか?なんて面倒な。ピッキングなんて出来んぞ俺は」

禁書を目の前に諦めてたまるかってんだ!!

金属の扉に壁ドンしながら方法を考える。

しかし開かない物は開かないので、俺は今持ってる物の中で使えそうなブツを探すしかない。


……あ

「精霊図鑑……あるじゃん」


そう。精霊図鑑だ。

しかも都合が良い事に、俺がさっき精霊図鑑を流し読みしている時に【鍵の精霊】という精霊項目のページがあった。その精霊を呼び出してみれば、この扉を開けてくれるかもしれない!


俺は暗い中夜目を効かせて鍵の精霊のページを開き、召喚呪文を見つける。


とても気になる未知の為だ。精霊さん!!召喚されて下さい!!!


そう祈りながら俺は厨二心を擽る呪文を唱え始める。

「えーと、『全ての扉を守護する鍵の精霊よ。世界と世界の次元を超えて我が元に現れよ。我はその魂をもって、汝が欲求に応えよう』…でいいのか?」


確認するように図鑑を見る。

図鑑に書いてある通りに呪文を読んで、一字一句間違えていないことを確認する。


………出てこない。やっぱりインチキなのか?


そう思った瞬間だった。

俺の周りが一気に発光して辺りが明るく照らされ始める。

そして次第に俺の前に光が集まり、俺の身長を軽く超える長身の男が姿を現した。

俺の身長は、病弱な為か子供な為か、凄く小さい。大体140くらいだ。


が、対する俺の前に立っている男は身長190は超えてるんじゃないかと思わせる高さだ。

銀の長髪をなびかせて、彫りが深く端正なその顔立は美形という枠をこえて人間離れした美しさを誇っている。そして男の双眼は紅く輝き、50cm下の俺を忌々しそうに見下ろす。


怖い。正直めっちゃ怖い。なんなの?こいつなんなの?なんで俺ガン見してんの?怖ッ!!めっちゃ怖!


俺が恐怖で冷や汗が止まらないでいると、銀髪の美丈夫が億劫そうに口を開いく。


「……お前が俺を呼び出した召喚者か」


低い声だ。落ち着いて聞けば美声なのだろうが、今の俺からしたら恐怖の対象でしかない。


「アッハイ」

咄嗟の質問で考える頭が回らず口が勝手に動く。


うわー!マジで出てきちゃったよ!!本物かよ!!!本物とか普通の本棚に置いておくなよな。

てか本物ってことはこいつが鍵の精霊になるのか?でもコイツのビジュアル鍵の精霊っていうよりは守護神じゃねえか馬鹿!!!

アッ、鍵だけに守護者ってヤツっすか!!!こりゃ一本取られたやぁ!!!あっはっはっはっは!!!


………………てか

「泣きそう」

俺は目から溢れ落ちる雫を受け止めるため、両手で顔を覆った。


想像と全然違う!!!精霊って言ったらアレじゃん!!小さくて可愛いフワフワしたヤツじゃん!!!なのに!!!!出てきたのがデカくて美形の硬そうな男って!!


夢も希望もないんだなぁ

み◯を


急に咽び泣き始めた俺にびびったのか、銀髪の美丈夫は戸惑った様子で俺に問いかける。


「どうした召喚者よ。俺を呼び出したという事は、俺に用があったのだろう?お前が支払う精力に見合う分だけは働こう。さあ、俺に求める欲求はなんだ?」

比較的さっきより優しめの声で話しかけられる。


あれ?慰められてるのかこれ??

そう思うと、混乱が回りに回って逆に冷静になってきた。


……そうだ。落ち着け俺。咽び泣いている暇はないぞ。久しぶりに部屋から出た目的を忘れたのか!!

自分にそう言い聞かせ、深呼吸を一つ。


………………落ち着いた。


「えっと、この堅い扉を開けて欲しくて召喚してみました……グスッ…欲求で言うなら知識欲です……開けてください。」


そう言って鍵の精霊に就活中覚えた60度の礼をする。

……どうだ?一見儚げな美少年に頭を下げられては「否」とは言えまい。さあ、さっさと禁書庫の扉を開けろ!!!


「……それはできない。この扉の先は危険だ。今のお前では取り憑かれて終わりだろう。無茶は勧めないぞ召喚者よ。」


こ と わ り や が っ た よ !


「……取り憑かれる?何に?」


「本に、だ。この先からは嫌な気配しかしない。余程悪名高い本が封印されているのだろう。この扉も封印の一つだ。今開けると、お前はその本たちの魔力に当てられて最悪死ぬ。諦めろ」


……諦めろと来たかぁ……

しかしまあ、死ぬのは嫌すぎる。川で滑って死んだ前世より、呪われた本にころころされる死因の方が最悪だ。

しょうがないなぁ…諦めるか。


「……分かりました。ならもう用はないのでおかえりください。」


目の前の扉の先にいけないのならもうこことお前に用は無ぇ。

もう帰って寝よ。眠くなってきた。

鍵の精霊に再び頭を下げて、俺は地上への階段へ足をかけようとする。

と、精霊が俺の腕を掴み、待ったをかけてきた。

「おい、契約はしないのか?」


あ"ぁ"??契約??


(曰く、契約するかしないかの決定権は精霊が持つ。)


俺は、先ほど読んだ精霊図鑑にそのようなことが書いてあったのを思いす。

……という事はこの精霊は俺と契約してくれるという事だろうか?


「俺と契約、してくれるんですか?」


「あぁ。……お前の召喚者としての腕の良さと弱さに見兼ねてな。なんか、心配になった。俺といれば多少は強くなる。契約するぞ。」


「ーーーーは?」

鍵の精霊に掴んだままの腕を引っ張られ引き寄せられる。こうして見ると正に大人と子供だ。


あ、契約の決定権は精霊が持つから、こっちに拒否権はないのか。

理不尽だなぁ。

てか弱いってなんだよ。そんなに貧弱か俺は。うん…貧弱だった。


「お前の名は何という。答えろ」


遠くにやっていた意識が、鍵の精霊の問いによって帰ってくる。

咄嗟の命令に、自然と口が動き、名を告げた。

「……アルジュ・ラ・レイスヴァーン、です」

鍵の精霊はしゃがんで俺の左手の爪先に口づけながら呪文を唱え始める。

なんか、くすぐったい。

契約にも精力は使うのか、俺は凄い眠気に襲われた。眠い。帰って寝たい。

精霊が唱える呪文は俺には聴き取れないくらい複雑なものだ。

そして俺が睡魔と戦っているうちに契約は完了したらしい。精霊が口元から左手を離し、口を開く。


「俺の真名はガルフ・レヴァ・キースロックという。普段はガルフと呼んでくれ。……よろしくアルジュ」

そう言って鍵の精霊は俺の名を呼んだ。


「お、……おう」

なんか知らんが俺に専属精霊ができたらしい。

……取り敢えず、守護神GET、でいいのか??


そう考えると一気に強い睡魔が襲ってきて、俺は気絶するように眠った。


鍵の精霊が喧しく喚いているのが煩わしかったが、意識を落としたら気にならなくなった。

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