5話
ベッド偽装完成!!!
マジでベッドの毛布にくるまって眠っているみたいに見える。流石俺だぜ!!!完璧だ!!
変わり身の術を施したところで準備は完了。
今の時刻は午後10時。
そんなこんなで約四年ぶりに部屋の外に出ることになった。
恐る恐る手を掛けた部屋の扉は案外簡単に開き、俺は廊下の様子を伺う。
誰もいない。メイドさんと鉢合わせしたらどうしようと思ったが杞憂でよかった。
部屋の外に出る。実に四年ぶりだ。足が冷たいと思って下を見ると、自室のようにフカフカの絨毯は敷かれていない。自分の足も裸足である。道理で冷たい訳だ。でも靴は持ってないし、そのまま行くかなぁ……
四年前の外の記憶と照らし合わせながら、確認するように廊下を早足でペタペタ歩いていく。
俺の今の服装は薄手のパジャマ一枚だけである。なので少し冷える。何か羽織ってこれば良かったと思いながら一通り道を進むと、自分が目的地を考えてなかった事に気がついた。
「馬鹿か俺は……っ!」
慌てて記憶を探り、この屋敷で行けそうな所を思い出してみる。
厨房。武器庫。書庫。玄関……
「あ、書庫あるじゃん。」
そうだ書庫に行こう。
実は部屋にある本は全て四年の内に読み尽くしてしまい、未読の本が一冊も無いのだ。本を読むことは、1人の自分にとっての数少ない楽しみの一つだったから。
書庫に向かう事を決めた俺は長い廊下を歩いていく。
四年前の記憶通りに廊下をしばらく進んで行くと、二手に分かれた道に出た。
……あれ?どっちに行けばいいんだっけか。確か片方が武器庫で、もう片方が書庫だった筈だ。何しろ四年前の記憶。凄くうろ覚えである。
「うーん……ここは無難に左か?」
適当に直感で道を決める。
まあ、武器庫に着いたらそれはそれで面白そうなので良しとしよう。
日本では滅多にお目にかかれなかった武器だ。男なら誰しも憧れるものだろう。
そう考えて左を選ぶ。
左に曲がりペタペタ歩いて行くとそれなりの大きさの扉が目に入る。
「お、着いた。」
書庫か武器庫か……どっちだ?
しっかし、此処まで来るのに誰とも出会わなかったなぁ。ザル警備過ぎワロタ。まあ、会ってたら会ってたで面倒くさくなるのは予想出来るので、出会わなかったことは天の廻りに感謝である。
そう思いながら目の前の扉に手をかけ、押してみると、キイィと音をたてながら扉が開く。恐る恐る中に入ってみて、驚いた。
「すっごい………」
本。本。本。
扉を開けたその先は、本しかなかった。
いや、詳しく説明すると部屋は壁一面に所狭しと詰められている本と本棚とでしか構成されておらず、まるで本以外のモノは不要であるという風にそれ以外は何も無い。また書庫内はとても広く、仄かに明るい光を漏らす灯りが備え付けられている。
俺はその部屋の一角にある本棚に引き寄せられるように近づいて、慎重に歩きながら本たちの背表紙タイトルを読んでいく。
植物図鑑
トマトの美味しい調理法
アーカムの書
オーガでも分かる釘の打ち方 初級
アンリ・ドラゴンの冒険 前編
空鬼物語
カナカナぱにっく 1巻
医術本 初級
速く走る方法がわかる!……etc…etc
興味深い本や怪しい本など様々で、年甲斐もなく胸が踊ってしまう。
他にも色々本がありそうだ。
俺の四年前の記憶には、この書庫の中の記憶は無い。
なので、中に入るのは初めてという事になるのだが、まさかこんなに沢山の本があるとは思わなかった。
俺が想像していたのは学校の図書館。でも全然違った。ここの書庫は例えるなら、本の滝。上から下まで本が流れている様に見えるほど、ビッシリと本が本棚に詰まっているのだ。
俺はその本の中で気になるタイトルの本を見つける。
タイトルは『精霊図鑑』
白い紙に金の装飾がされてある美しい本である。
精霊とかめっちゃスピリチュアリズムを感じる!!
と、俺のテンションが上がってその図鑑を手に取り、パラパラとページをめくった。
そこに記されていたのは精霊の種類と名前。あと、特別強い力を持つ精霊だけは、呼び出し方や契約の仕方まで書いてあった。
俺は精霊図鑑を読み進める。
内容は大まかに言うと、こうだ。
曰く、精霊は様々なモノを司り世界のバランスを保っている。
曰く、精霊を召喚し、契約するには魔力ではなく精力を使う。
曰く、精霊契約は世界との契約でもあるため、その繋がりは海よりも深く天よりも尊い。
曰く、契約するかしないかの決定権は精霊が持つ。
ふむふむふむ。
「………胡散くせー」
どこを取っても胡散くさい。
だがそこが良い!!こうゆうの大好きだ!!!
なんか、こう、厨二心が擽られる系のモノは見ていて楽しいよな。
特にこの精霊を召喚するときの呪文とかもう最高!
凄く厨二な言葉の羅列で見ていて恥ずかしくなってくる。だがそこが良い!!!浪漫が溢れてるぅ!!
取り敢えずこの本は部屋に持ち帰るとして、次の本(獲物)を探す。
ぶらぶらと本棚を見て回っていると、足元が暗かった為か何かに躓いてコケてしまった。
咄嗟に本棚に手を付いて転ぶのを回避する。
「あっぶねぇ……」
すると手を付いていた本が本棚の奥に引っ込みカチっと変な音がした。そして、手を付いていた本棚が横に開き、地下に続く隠し階段が出てきたのだった。
「ーーーーーーは?」
何このピタゴラスイッチ
主人公は運だけはいいです。