3話
《ニート》
•ニート(英語: Not in Education, Employment or Training, NEET)
とは、就学、勤労、職業訓練のいずれも行っていないことを意味する用語であり、日本では、15〜34歳までの非労働力人口のうち、通学しておらず、家事を行っていない「若年無業者」を指している。
Wikipediaより抜粋
夢を見た。
これは恐らく俺の身体であるアルジュ・ラ・レイスヴァーンの記憶だろう。
身体が弱く病気を引きがちで、いつも大きな部屋で一人寂しく眠っている記憶ばかりだ。
寂しかった
苦しかった
羨ましかった。
……そう、アルジュは羨んでいた。自分と違って健康な身体を持つ兄を。人に愛され、いつも沢山の人に囲まれている兄を。
親も病気ばかり罹って心を病んだ自分より、元気で優しい兄ばかり可愛がっていた。
そして今日も目を閉じて、寂しいと思い眠りに落ちる。
そんな、悲しい夢だった。
「……す……殿下。……時間です殿下。」
誰かの声を聞いて、目が醒める。
「ぅ……んん?」
メイドさん?
「あぁ、やっと起きられましたか。
昼食のお時間になっても起きられなかったので心配しました。お身体の方は大丈夫ですか?大丈夫なようでしたらご昼食をお持ち致しますが。」
と、全く心配そうな顔をしていないメイドさんが言う。
この人態度悪いな…面接だったら即落だぞ
「え、ああ、うん。」
俺は寝起きでボンヤリしている頭を回転させ、口を回す。
「ではご昼食をお運び致しますね。
失礼いたします。」
と、メイドさんは綺麗に礼をし部屋から出て行った。
まだ眠い。お昼ごはんって言ってたけど今何時だ……
ふと顔を上げ壁に掛かっている時計を見ると、短針が1の数字を指していた。
「まだ一時じゃんか……もっと寝かしてくれててもいいのに……」
そうボヤきながら欠伸をする。
しかし勝手にお昼ごはんまで出てくるとは……なんて便利なんだ。養われるって素敵。
そう思いながら、さっき見た夢を思い出す。
凄く寂しい夢だったなぁ……
あれが今までのアルジュの生活だったのか。
1日の時間はほぼ寝ているか、家庭教師と一緒に勉強しているかしかなく殆ど部屋から出ていない。
…………んん?俺の理想通りじゃね??むしろ改善とかしなくていい感じじゃね??
だが問題が一つだけある。
それはアルジュの兄のことだ。
アルジュである俺の兄はこの国の第一王子であるユリウス・ラ・レイスヴァーンである。確かユリウスは「Super_Psycho_Love」のメインヒーローだった筈。
妹は、完璧超人の王子様のクセに主人公には怖いくらいベッタリストーカーなところが素敵だとかよく分からないことを言っていた。妹の嗜好は本当に摩訶不思議である。
閑話休題
さて、そんな兄の何が問題かと言うと、ユリウスの特性故に主人公監禁ENDとか駆け落ちENDとかで兄が弟の俺に王位を押し付け、主人公に逃げてしまうエンディングが有るということだ!!!
王様になるのを兄に押し付け、俺は兄に養ってもらうという完璧な作戦は水泡に帰してしまう………
それだけは絶対に阻止しなければ!
そのため兄に王位を継いで貰うには主人公と健全にくっ付いて貰うか違うキャラと主人公をくっ付けて、兄に主人公の被害が向かないよう抑えるしか方法はない。
まだ本編ゲーム始まってないし、まぁ、何とかなるだろ!!
と、浅はかな考えをしながらふと、何故に完璧な兄であるユリウスが主人公にベッタリになってしまったかの理由が分からない事に気がついた。
愛すべきクレイジー乙女の妹はそこら辺の説明は省いて只々キャラクターへの愛を語っていたので教えて貰っていない。
クッソ妹め!語るなら全て諸々説明してから語れよ!!これだから現実の妹は!!!
妹にクレームを付けながら、人が人にストーカーして監禁とか駆け落ちとかしちゃうような理由を考えてみる。駆け落ちはまぁ、わかる。監禁は……ちょっと分からないですね。
中でも考えられるのは……3つ。
一つ目
小さな頃から好きで好きで堪らなくて、しかし思いを伝えたら振られてしまった場合。
うーん。未来の王様を振る女とかいるのか?いや、人には色んな人がいるからなぁ。うーん、わからん。
二つ目
嫌がらせでストーカーしてたら本気で好きになっちゃった場合
完璧超人な兄に限ってそれはない。有り得ない。と思うが人間はどう変わるか分からない。
三つ目
愛しているが思いを伝えられなくて拗れてしまい、最終手段としての監禁やら駆け落ちやらが待っている場合。
あっ、これが一番可能性高そう!!
でも完璧超人の兄が愛も囁けないとは考えられないしなぁ……
結局、俺に人の心を理解しろというのは無理だったようだ。
しかも兄であるユリウスは精神病質の才能があるしなぁ。あぁ、人の心は難しい………
兄についてアレコレ考えていると部屋の扉をノックする音が部屋に響いた。