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2話

妹が愛する乙女ゲーム「Super_Psycho_Love」は、とても病んでるファンタジー恋愛シミュレーションゲームだ。なにしろ攻略キャラ全員が精神病質(サイコパス)という気が狂ったのかと思うような設定のゲームである。

クレイジー乙女な妹が凄くハマっていて、就活疲れの俺に嫌になる程散々語ってきたのを覚えている。


その病んでる攻略キャラの王子が何故俺なんだ……色々おかしいだろこれ。


えっと……まずヒロインを口説けばいいのか?いや、でも恋に落ちてもないのに口説のもイケない気がするし……てか俺病んでない!

いや!落ち着け俺!!落ち着くんだ!!

よく見たらまだ少年じゃねぇかこの王子。だいたい……10歳くらいか?まだ物語始まってねぇじゃん!!まだ再生可能だって俺!!

そう自分を励まし、ふと思う。


てかこの王子(俺)ってどんなキャラだったっけか?と


……確かアルジュは病弱設定だった筈だ。小さい頃から身体が弱くて、自分に自信が持てないネガティヴな人間に育ってしまった面倒くさい男だ。妹は病弱で儚げな風でいて、たまに見せるドス黒い狂気が最高とかなんとかよく分からないことを言っていた気がする。


儚い……か


今俺が鏡で見ているアルジュはとても難しい顔をしながらウンウン唸っているだけである。白金の髪に緑の目している色素の薄い綺麗な美少年なんだが、まぁ残念ながら儚さの欠片もない。これは主に俺の所為なんだが。


……なんか、コレジャナイ感半端ないな。

すまない妹よ…お兄ちゃんが王子で本当にごめんよ………


で、あらためて何故おれがサイコ王子になっているのかを考えてみる。

んーー川で滑って転んだのがいけなかったのか?

…コレが俗に言う転生というヤツなのだろうか。王子かぁ……王様にはなりたくないなぁ……つか働きたくないなぁ……就活はもうやだなぁ……サイコパスはもっとやだなぁ……


鏡を見ながらアレコレ考えていると、部屋のドアがノックされる。


「殿下、お医者様をお呼びいたしました。」


メイドさんが帰ってきた!


はっと、今の自分の状態を見直す。俺は今、部屋の壁側にある鏡をガン見しているなうである。ハタから見ればナルシスト野郎だ。それでは既に壊れかけている儚い王子の印象を更に壊してしまう!


それはマズイと思い、まだ扉を開かないようメイドさんに言ってから急いでベッドの上へ戻る。


これでよし!


「えっと、入って良いですよ!」


扉の向こう側へ声をかけると、メイドさんと一緒に初老のおじさんも入って来た。


「おはようございます殿下。お身体の方は大丈夫ですかな?」


と言いながら初老のおじさんは礼をする。


誰だこいつ

誰だか知らないけど知人っぽいしそれなりに答えるか。


「おはようございます。身体の方は大丈夫です」


噛まなかったぁ!!


それは良かった、と言いながら医者のおじさんは俺に近づき診察を始める。


「熱は確かに無いようですね。身体の方でどこか違和感があるところはありますかな?」


「無いです!」


身体に違和感は覚えない。ずっと前から自分の身体だったかのようにしっかりと自分に馴染んでいる。


「ははは。本日の殿下はお元気ですなぁ。良い事です。しかし今日は念のため安静にして寝る事をお勧めいたしますよ」


おおー。やっぱ少年期アルジュは元気が無かったのか。

しかし精神年齢22歳に10歳の演技が出来るものなのだろうか?

いや、大丈夫だ。頑張れば出来るぞ俺!!頑張れ俺!!

いつまでも子供のままねぇ〜とか伊達に言われ続けてないし、好きな人に告白しても「もっと大人になってからね。」とかいう理由で振られていない!そう!俺は齢22で子供のような元気の良さを持っているのだから!!!


……………別に泣いてないし


「そんな顔をしないで下さい殿下。風邪をぶり返しては困りますので安静にするのですよ。」


ん?なんか慰められた。

取り敢えず微笑んでおく。美少年スマイルは最高の輝きだろ?お??

とか思っていたのが顔に出たのか、医者には生暖かい目で見られた。


解せぬ。


医者は俺を生暖かい目で見た後、診察は終わりだと言って席を立つ。

俺に安静にしているよう言い含めると部屋から出て行ってしまった。


この後はどうするのか、という目でメイドさんを見たら


「今日のお勉強は全てキャンセルいたしました。ご昼食まで時間がありますから、それまでお休み下さいませ。私は扉の近くで待機していますので、ご用が有りましたら声をかけて下さい。」


と言い残し、メイドさんも出て行ってしまう。


そしてだだっ広い部屋に、ぽつんとベッドに寝かされた俺だけが残る。


あ"ー、これからどうしよう。

俺はベッドの上で突然の死と予期せぬ転生でこんがらがっている頭を冷静にさせたところで生存戦略を練る。


俺は今恐らく10歳である。10歳という事はまだ親の庇護下に置かれている年齢だ。つまり、まだ働かなくても良いという事だ!!!ふははーーーー!!!生存戦略を練るまでも無かった!!寝よう!!惰眠を貪ろう!!!

いやー子供最高!ふかふかベッド最高!お金持ちキャラ最高!!

しかも王族ってことは下手したら一生働かなくてもいいんじゃね??サイコパスになる気は無いし、将来は安泰だ!最高過ぎるぞ王子!就活なんて無かったんや!!


そして、今世での生きる目標が決定された。


•できるだけ働かずに生きる


人生これに限るよな!!




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