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11話

難産でした

仮病を使って休もうと考えていた思考は遥か彼方へ飛んでいき、俺はソフィア先生の授業に夢中で取り組んでいた。


否、ソフィア先生に夢中だった。


いや、俺は熟女好きとかそうゆう嗜好なわけではない。先生は尊敬の対象だ。恋愛感情は無い。

詰まる所、俺はソフィア先生に憧れてしまったのだ。魅入ってしまったのだ。その美しさに。


所謂、一目惚れというやつだ。


だから俺はパンダの本性を必死に隠し、先生に良く見られるよう一生懸命先生の授業に噛り付いている。

先生の授業は日本での家庭教師とのお勉強となんら変わらず、マンツーマンで一つ一つを丁寧に教えてくれるので分かりやすい。


マナーや礼儀作法などは就活中に覚えた甲斐もあってか所作を少し直すだけで事足りたが、残念な事に俺には圧倒的にコミュ力と言うものが不足していた。

度を超えた人外でもないとキョドってしまうのは、日本でも此処でも変わらなかった事に驚きである。

そんな訳で、まずは笑顔を矯正されたのだが身体の調子は悪く、思うように動かない表情筋に苛立ちを覚える。


「殿下?先程からお顔の色が悪いですわ。少し休憩いたしますか?」


は?休憩?いやまだだ!まだまだイケるぞ!!せっかく授業が面白くなってきたのに休んじゃ勿体ない!!


「顔色が悪いのはいつもの通りなので気にしないでください。それよりもっと色々教えて下さいよ!」


今は丁寧な言葉遣いで相手を煽る会話術というのを習っている。

ポイントは、出来るだけ無垢で無邪気な顔をしながら相手の傷口を抉る事だそうだ。

こんなの教えて大丈夫なのかと思うがソフィア先生曰く、これくらいできないと夜会で腹黒狸共にパックリと喰われちゃうらしい。


社会は怖い。だから俺はゴロゴロしていたいのに俺の父親こと最高権力者の王はそれを許さない。


世知辛いぜ!!!


「うーん。まあ、殿下がそう仰るなら続けましょう。辛くなったら何時でもお声を掛けて下さいまし」


それでは先程の続きから、とソフィア先生は授業を続ける。


俺は先生の話しを聞きながら、メイドさんが用意したノートに要点をメモするためペンを動かす。


しかし身体の調子は時間が経つにつれ次第に悪くなっていくものだ。

つーかさっきから耳に入ってくる音が酷く曖昧で頭まで声が回ってこない。しかもどこかが痛いとかいう具体的な症状ではなく身体が鉛みたいになっていく、よく分からない苦痛が襲ってくる。


乙女ゲームの病気舐めてたわ……こんなに酷いとは思ってなかった。

あれ?これ乙女ゲームだよな?こんな苦痛が乙女ゲームにあってもいいのか?


……なんか、吐き気までしてきた。本格的に危ないやつじゃん……クッソ吐きそう。

あれ?これ見え貼らないで休憩した方がよかったやつじゃね??よかったやつじゃね???


俺は意識を必死に保ちながら先生にヘルプを出す。

意識を保たなければ口からお昼に食べたサラダと肉が出てしまいそうなので俺も必死である。憧れた先生の前でゲロは勘弁願いたい。


「……せ…せんせぇ、俺、吐きそ…うぇぇえ…う"っ……」


「で、殿下!?!?お顔が真っ白ですわよ!!しっかりなさって!今メイドを呼んで来ますわ!」


ソフィア先生は慌てて部屋から出て行ったので、俺は人の目を気にする事なく机に身体を預ける。これは授業中の睡眠学習のポーズだ。精神を統一し、胃からせり上がってくるブツを無理やり押し込める事だけに集中する。


あーー遂に視界がぶれてきたぁ……


俺は状態悪化が来るところまで来たのを察すると同時に、本能からか勝手に意識が落ちるのを感じ取った。


……あれ?俺って最近落ちてばっかりじゃね?



ーーーーーーーーーーーーー


深い微睡から意識が上がるのを感じとると同時に瞼がクソ重くて持ち上がらないという現状態に俺は考えるのをやめた。

身体が風邪を引いた時のように怠いので不調なのは目に見えている。


これは二度寝しろということですね分かります。


俺はそう結論付けると二度寝する為

再び意識を落とそうとするのだが、聞こえてきたメイドさんたちの会話に耳を取られ二度寝する事は叶わなかった。


「目を覚まさないですね、殿下。かれこれ半日ですよ。」


「お医者様は症状が悪化してるとおっしゃてたわ。殿下の精霊様もお見えにならないし……まさか契約を破棄されたんじゃ……」


「こら、口を慎みなさい。滅多な事は言うものではありませんよ。ーーー今はただ、殿下の回復を待ちましょう。」


「でもミラ、見張りの兵が噂をしていたわ。食堂で殿下と精霊様が言い争うのが聞こえたとか。もし精霊様に契約を破棄されでもしたら、殿下の魂のバランスが崩れて一層病状が悪化するかもって、お医者様が……」


「アディ、長い間、殿下付きのメイドをしていた貴女の気持ちも分かりますが、今私たちにできる事は不安を募らせる事ではなく、殿下が起きられるのを待つ事だけです。我々に治癒の力は無いのですから。」


「ーーーそうね。ごめんなさい。気を付けるわ」



寝てる場合じゃなかった!!!


ソフィア先生は家に帰ったのか?初日の授業で倒れて本当に申し訳ないし情けないしで、アルジュの免疫力をクソ認定するしかない。

てかガルフがいないってマジかよ!あの位で怒ったのかよ大人気ねええぇ!!!つか俺の身体が不調なのはやっぱり彼奴の所為か!おのれガルフ許すまじ。もう少しでソフィア先生の前でゲロっちゃう所だったんだぞ!!次顔見たらあのお綺麗な顔を助走をつけて殴ってやる。

っと、恨み言吐いてる場合じゃなかった。とにかく起きてガルフを呼び出してぶん殴らないと!

俺は有言を実行する男だ!!!


「……ッ…ぅう……は?」


俺は気合で目を開き、身体を起こすが上手く身体が動かない。動く事は動くのだが、身体が重くてダルい。例えるならインフルエンザに罹って40度の熱出した時のダルさ。何これすげぇツラい。

……え、魂のバランスとかが崩れるとこれ以上酷くなるの??マジで?


「殿下!?起きられましたか!今お医者様を呼んでまいります!」


「殿下、何か欲しい物はございませんか?何なりとお申し付けください」


メイドさん1ことミラさんは慌てて部屋から出て行き、メイドさん2ことアディさんは俺の側に侍っている。実に迅速な対応だ。

てかメイドさんの名前、今知ったよ。アルジュの記憶に残ってなかっただけだけど。


「……それじゃあ、水。…水が欲しい」


とりあえず水分補給をしないと身体が動かない。

俺はメイドさんから差し出された水差しに口を付け水を飲む。冷たい水は体に染み込む様に吸い込まれていき、いくらか気分がマシになる。


……なんか、メイドさんにお世話されるって嬉しいかも。


おっと、そんな事を考えている場合じゃなかった。


「……ソフィア先生、ソフィア先生はどこですか?」


「はい。ドミルリィ様は屋敷に戻っておられます。殿下の事をとても心配しておられましたよ」


やっぱり先生は帰ったか。次会うときまでには先生に教わった腹黒会話術をしっかりマスターして詫びよう。


そんなこんなでアディさんに水をチビチビ飲ませて貰っていると、ミラさんが医者を連れて戻ってきた。



「今までより症状が悪化しています。恐らく、精霊様と契約する事で安定した魂のバランスが、精霊様と繋がりを深くする前に離れてしまった事で余計な不可が掛かり崩れてしまったせいでしょう。」


安定させる為には、再び精霊様を側に置く必要があります。


医者は軽く俺を診察すると、真面目な顔をしてそう言った。


「………精霊万能ですね」


クソみたいな感想しか出てこなかった。


※ 主人公はあまり頭が良くないです。

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