表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/25

1話

見切り発車


それは暑い夏の日だった。


「最悪だ……」


外は暑いのに今は就職氷河期である。面接に行けども行けども貰えない内定。

しかも田舎だ。都会より職を掴むのは厳しい。今日も人事部の人の苦笑いを見てきたところだ。

また不採用の通知が家に届くのだろう。本当に勘弁してくれ。


「つーか暑い……なんだよ34度って。地球温暖化自重しろ」


スーツ暑い。マジで暑い。何これ暑い。


暑い暑いと歩いていたら近くに川が流れる道に出た。


家までもう少しだし、川に寄って行こうかな


そう思い進路を変える。あの冷たそうな川の誘惑には歴戦の勇者でも勝てないだろう。

靴を脱ぎスーツの足をめくって、川の中へ入る。


「ふっは!冷てー」


なんか、子供の頃もこうして川で遊んだ気がする。


帰ったら妹と一緒にウザがられながら遊ぶかなぁ……

そう現実逃避と避暑を両立しながら調子に乗って川の中で水をジャブジャブしてると、ぬめった石に足を取られて体勢を崩す。


「うわっ、!」


眼前に迫るは見るからに硬い岩。


あっヤベッ


そんな短い感想の後、鈍い痛みと真っ赤に染まる視界を最後に俺は意識を失った。


ーーーーーーーーーーー



……ん?


柔らかい感触を肌に感じ、俺は目が覚める。まず目に入ったのは高い天井。

次に目に入るのは大きな扉の前に立っているメイドさん。


………メイドさん??!!!?


驚きすぎて思いっきり身体を起こす。


「おはようございます殿下。ご気分はいかがでしょうか?」


メイドさんは少し面倒くさそうな顔で俺を見ている。


は?殿下??俺がか??

何言ってんのこいつ?大丈夫か色々と。


ぽかーんとした間抜けヅラをしていると、メイドさんは少し不思議そうな顔をした。

その反応を見て、マジで俺に話しかけてるんだと理解する。


あっ、何か返事を返さないと!

そう思い俺は慌てて口を開く。


「あ、あー、あ、うん。まあ、いいと、お、思うぞ!!」


噛んだぁぁあああああ!!!!!

何これ恥ずかしいめっちゃ恥ずかしい。

俺が頭の中で恥ずか死していると、メイドさんはまたまた不思議そうな顔をしながら「それではお医者様を呼んで参ります」と言い残し、礼をして部屋から出て行ってしまった。


「……え、何?ドッキリ?」


そう自然と口から漏れた声に違和感を感じる。

俺の声より少し高い気が……

そう思い、自分の身体を見る。

縮んでいる。いや、若返っている??ん??なんかおかしくねぇか?鏡、鏡


ベッドから降りて鏡を探す。

辺りを見渡せば、丁度部屋の壁側にゴージャスな鏡が置いてあった。

まるで縮んだかのような身体で鏡に近づき、そしてそこに映った自身の姿を見て俺は絶句した。


「……………は?」


そこに映っていたのはあの妹が愛するサイコ系乙女ゲーム攻略キャラの一人である、第二王子アルジュ・ラ・レイスヴァーンの幼き姿だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ