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雑記録  作者: 鱈井 元衡
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文明退行論

 人類が破滅に至る道を刈り取る一つの方法に、『文明を退行させる』というものがある。これは僕が思いついたことだ。

 現在、科学技術はすでに人間が世界中のことをそこにいながらにして知り、地球の外に出るほどまでに進化し、その恩恵にあずからぬ者はいない。

 だが一方で、科学技術は少し間違えば世界の破滅に繋がりかねないほどのものにもまた、なってしまった。それは現に我々の身近なところに存在している。

 発展の末に脅威におちいるならば、それが『発展』だのと言えようか?

 だいたい科学の発展とは何のためにある。そもそもそれは、人間の生活の利便性を高め、質の良い幸福を享受するためにあった。それはそれですばらしいものであったろう。

 だが、現在その『発展』が行き過ぎているせいで、逆に人間が損を蒙ってしまうことも多くなってしまった。さまざまな便利すぎる機械のせいで人間が本来持っていた力は失われつつあり、核を始めとする破壊兵器は世界を破滅させる可能性をもっている。

 これは大変なことだ。この状況が長く続けば、人類の滅亡は夢物語などではなく、本当に在りうる話となってしまうだろう。その時にはもはや手遅れだ。

 だから僕が提案するのは、『発展』ではなくむしろ『退行』に重点を置くべきであるということ。

 少なくとも十九世紀前半の文明水準に戻らなくてはならない。

 では何をするべきか。

 一つ目は、それまで使っていた道具をなくしたり、アナログなものに置き換えること。

 当然文明の利器は一度使うとなかなか手放せないものだから、まず手始めに『基本的にはいらないもの』をなくすのに努めることをおすすめする。

 例えば娯楽だ。ビデオゲームとか美食とか華美な衣服だ。そんなものは人間にあらぬ欲を生み出すから、ない方がいい。それらの存在は全力で抹殺すべきなのだ。

 二つ目は、科学技術に関する情報を抹消すること。『太陽の周りを地球が回っている』という情報を別として、兵器の製造方法とか、何かの用途に応用できるような知識は特に。

 三つ目は、科学技術を発展させない枠組みを造ること。どんなに優れた道具や理論があっても、人々に知らせてはならない。そういったものを知った人が現れたら粛清し、かといって一つの組織にそれらを独占させ悪用させる余地も残してはならない。

 四つ目は、自分たちよりもはるかに科学の発達した世界に対する憎悪を人々に植え付けること。

 ゆくゆくは、原始時代の世界に戻ることも悪くない。というより、それが一番の理想だと思っている。

 誤解してほしくないが、別に心の方まで退化することを用いないのだ。現代人がたどりつき得ているモラリティを維持したまま、昔ながらの自給自足世界に移行するべきだと説いている。

 さすがに原始時代への退行が急速に行われることには僕も反対だ。しかし、ある程度行き過ぎた『発展』の枝を切り取らねば、世界が誤まった方向に進むのは避けられないと確信している。

 それに、これが最善の道であるとも決まっていないのだ。

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