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雑記録  作者: 鱈井 元衡
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『私』からの脱出

 そもそも私とは何であるか、と考えた場合、「私とは、単なる要素の流れではないか」という結論に行きつく。ここでいう『私』とは、すなわち思念を発し、肉体に拘束されるものを意味する。

『私』とは肉体に宿る悪霊であり、我々はみんなこの悪霊に憑依されているのだ、という考えにはなかなかぴんと来るものがある。なるほどこの『私』というものはあらゆる感情の波に動かされて一時も止まることなく、常に崩壊しては繰り返し再構成されていく。

 もうやめにしませんか。

『私』とは大して高く評価すべきものではない。『私』などというものがあるから『他者』が生まれ、争いに発展する。何度も同じことが起こってきた。『私』にそこまでの価値があるのか。むしろ『私』は脱出し、捨て去るべきごみくずではないだろうか。

 この『宇宙』しか存在してはいけないはずなのだ。僕らはみんなこの宇宙の一部であり、『私』は実のところこの『宇宙』と考えるべきなのだ。

 しかし『宇宙』と言われてこの地球が属している巨大な空間ばかり想像してはいけない。はっきり言ってこの宇宙空間は、これよりもちょっとばかし大きい宇宙空間の前では、素粒子程度のサイズしかないと想っている。

 では何が『宇宙』なのかと言われると、この宇宙の外を越えて、果てなく続く無限の事象そのものだ。この物質的なものよりはるかに段階の高く、運動し、思考する存在全てを一つにまとめ上げる『神』の肉体。

 今こうして存在している万物の裏には神がいる。神は全ての構成物のもっとも基礎的な材料だ。世界には数えきれないほどの元素があるが、その元素をどんどん純化していくと最終的に神にゆきつく。

 下界に散らばる元素は、次元をのぼっていくごとに少ない数に統合されていく。

 僕たちは全て神の中にいて、事実神なんだ。そこでは『私』も『あなた』もない。ただ一つの意思だけが存在している。ただ一つの神がいるだけで、目に見えるもの、心の中に感じることは神からの分化物に過ぎない。

 だが僕たちは中心にいる神からはだいぶ離れてしまった。けど確かに神から派生してきたのだから、わずかに神の要素はまだ残ってはいる。その神の要素を極め、だんだん純化していき、段階を次第にあげていくことで、もとの神へと到達できる


 ――かもしれない。自分みたいな人間にとっては、言うことさえおこがましいはずなのに。

 そう、僕は新プラトン主義に興味を持っているのだ。プロティノスの言う『一者』の思想には強い関心を持たずにはいられない。一者からのあらゆる要素の流出……。

 あるいはイブン・アラビーの存在一性論にも惹かれる。「花が存在する」じゃなくて「存在が花する」と言うね。

 何もかもが一つ。当然ながらそれは理性でできることじゃない。だから僕はたまに瞑想に近いことをやったりする。

 プロティノスはその生涯のうちに数回、至高の神と合一したというが、当然ながらそれができる人間はごく限られている。他にはルーミーとかか。

 世界の流れはこの世界に隙間なく満ち満ちているものだ。僕はその流れのある凝縮であり、僕の意識はその結果発生しているに過ぎない。

 意識を超克しよう。世界の流れそのものと一体化するんだ。肉体である私を捨て去って、この世界全てを自分の認識に代えなければならない。'ana haqq(我即真)と叫んで刑死したアル・ハッラージュのように、現在感じている『自分』を完全に否定し去ることで、最高の段階である『世界』に返り咲くという逆説。

 普通に考えてやばいんだよなあ……釈迦も食あたりになってるあたり、別にこれによって特別な人間になれるというわけじゃないゾ。あくまで変わるのは世界への認識だけだ。でもその認識こそがより望ましいと誰が断言する?

 神に近づいた人々とは何だ? 結局自分だけが気持ちよくなっているだけなのか? だが多くの人間が自分の意識を高めれば、その分僕の間を吹き抜ける空気も騒々しいものではなくなるだろうし、僕の思考もそれに応じて落ち着いたものになっていくはずだから。

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