1、いわゆる導入部分
短編「親戚の小学生の算数の文章題がおかしい」の続編的なものです。
しかし、前作を読んでいなくても分かる内容になっています。
※全力全開で振り切って書いてみた結果、我ながら酷い事になりました。カオス注意。
親戚の小学生の担任をやっている武井先生は、俺の旧友である。
算数の文章題で、たかし君が時速3,000kmで走ったり空を飛んだりするという、とんでもない問題ばかり作っている。
前回、インフレゲームに陥って同じような問題を繰り返していた武井を俺が叱咤激励したことにより、ついにたかし君は自力で地球の重力加速度を振りきって宇宙へ進出した。
それからだいぶ経ったある日のこと。
「これ……今年度中に終わるのか?」
親戚の小学生から借りた算数のテストをみてつぶやいた。
インフレゲームから抜けだしたことはよかったが、どうも武井が調子に乗りすぎているらしい。
あまりに設定を盛り込み過ぎてとんでもないことになっている。
とても後数回でエンディングを迎えられるように思えない。
あれ、エンディング……?
「ち、違う! これは算数のテストだ! エンディングとか俺はなにを考えている! 武井がいけないんだよ、変にストーリー仕立てにするから……」
と、その時電話がかかってきた。
「久しぶりだな!」
出てみると、武井だった。
「なんて都合のいいタイミングでかけてくるんだ。実は今お前のテス……」
「喜べ! 来月は年度末テストだぞ!」
こちらの言い分を無視して、異様にハイテンションな武井の声が響いてきた。
「……年度末テスト?」
「そうだ! 年度末テスト! 全クラスが共通テストを丸一日かけてやるという、テストの晴れ舞台だ!」
「晴れ舞台って……。まさか、あの変な問題を全クラスにばらまくつもりか? 他の先生に絶対に止められるだろ」
「あのなぁ、あれ結構親御さんとか他の先生からも評判いいんだぞ?」
なんとなく自慢げな様子が声から伝わってくる。
「嘘つけ……。『スペースたかし君』ぐらいまでは許せるが、『ギガハイパーエキセントリックアルティメットスペースたかし君』とか、一部の男子以外誰がついていけるんだ。いい加減にしとけ」
「嘘じゃないって、熱心なお父さんから毎日にようにアイディアのメール飛んでくるんだぜ?」
え、PTAと協力してるのか。
「親御さんとメアド交換したんかい……。ま、まぁ、そういう親御さんもいるとは思うけど、他の先生から、速度問題の比率が異様に高いことについては絶対文句つくだろ」
「大丈夫だって! 他の問題も入れてあるだろ! よく見ろ!」
そう言われて手元のテスト用紙を見てみる。
たしかに、存在感が無いが一応速度以外の問題もある。
「あるけど……よく見ないと気がつかないレベルというのが……。で、年度末テストは武井が算数のテスト問題作るのか?」
「まぁな。他の先生たちと臨機応変に分担するから、明確な区別はないけどな。一応、メインは算数だ」
「嫌な予感しかしない」
「大丈夫だって! とりあえず、年度末テスト、期待していろよ! 感動的な最終回を見せてやるからな!」
やばい。
この張り切り方は、ダメパターンだ。
「お、おい、ほどほどにしておけよ? やりすぎて処分とかされたら……」
「大丈夫だって! うまくやるから心配するな!」
どう考えても大丈夫じゃないと思うんだけどな。
「まぁ、がんばれよ……」
「おお!」
武井の妙に元気な声が耳に残った。