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精霊と魔法の在る生活  作者: 桐無
幼少期
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09話 父の休日

 この世界のカレンダーで1週間は、平日7日につき休日2日となっている。

風の月、火の月、地の月、水の月の4つに分かれており、各月では表45日と央日、裏45日の91日が1セットになっている。央日は休日扱いで、表45日が終わると3連休になるようだ。

 俺の住む地域は四季がはっきりしており、風の月から水の月までを順に、春から冬までに置き換えられる気候となっている。


 時間の概念は20刻で1日となり、1刻を1/5した時間を1目という。大体1目は12分くらいで、それより小さい単位は存在しない。なので、これより短い時間を示すには半目と使われることがあるくらいで、1分単位の数え方は存在しない。

数え方が若干違うが、あまり地球と変わらない時の流れのようで、慣れてしまえば、問題なさそうだ。


 そして今日は、とある風の月の休日。父が張り切って家の中の力仕事を片付けている。

我が家には男手が父しか居ないため、力仕事は主に休日になってから父が行っているようだ。兄はまだ小さいので男手にはならない。俺は……男手ですらない。


・・・・・・


父は一通りの力仕事を片付けた後で、兄と庭で遊んでいる。普段は朝から夜まで働き、休日も家での力仕事に子供への家族サービス、実に良い親だと思う。

 さっきまでは俺も一緒に遊んでいたのだが疲れてしまったので、いつもの切り株に腰掛けて2人を眺めつつ休憩している。運動後で少し火照った体を冷ますために、こっそりと微風を吹かせて涼んでいる──魔法って便利だなぁ。多分、今まであまり運動をしていなかったであろう俺は、体力があまりないようだ。少し遊ぶだけですぐに疲れてしまう。

 父も兄も実に楽しそうである。砂場やブランコがあり遊具が整った庭だが、父は平日だと仕事があるから一緒に遊べないので、兄も父と遊べるのが嬉しいのだろう。

 座って休みながら辺りを眺めていると、洗濯物を干しているタニアさんの姿が見えた。いつも世話になっているのだから、少し手伝いに行ってみよう。

「タニアお姉ちゃん、何かお手伝いさせてください」

「あら、お嬢様? 私のことは気になさらず、旦那様と遊んでいて下さいな」

「少し疲れたので、お休みしていたのです」

「あらあら。旦那様もお坊っちゃまも、元気ですからねー」

俺の体力が少ないのを分かっているのか、父と遊んでいても何度か、心配そうな顔を向けられてはいた。

話をしながらも洗濯かごから1枚ずつ洗濯物を取り出し、しわを伸ばしてタニアさんに手渡す。

「旦那様はいつもお忙しくて、あまりお嬢様達のお相手が出来ないですから、こうして一緒に遊べる時間が大切なのでしょう」

「私も、一緒にいられて嬉しいです」


 淑女の嗜みとして、これからは炊事洗濯とかもタニアさんを手伝いながら覚えていこうかなぁ……なんて思いつつ、洗濯物を手渡し続けた。

「お嬢様、ありがとうございました。お嬢様が手伝ってくれたお陰で、いつもより早く終わりました」

「いえいえー」

多分大した助けにはなっていないだろうけども、少しでも手伝えたなら幸いだ。さて、では先に家に戻って少し休もう。


・・・・・・


「・・サ、リー・・・大丈夫・い?」

ん……何か呼ばれているような?

「あ、お父様? おはようございます」

部屋の中には、いつの間にか夕日が射し込んでいた。リビングで休憩しながら本を読んでいたら、いつの間にか眠り込んでいたようだ。

本は閉じて膝の上に置かれていることから、多分無意識に閉じていたようだ。

「休憩しながら本を読んでいたら、いつの間にか眠っちゃってました」

「具合が悪いわけじゃないんだね?」

「えぇ。お外で遊んで、少し疲れてただけです」

何か心配性だなぁ。子供を持つ親は、皆こんなものなのだろうか?

「そう、良かった。少しでも具合が悪かったら、すぐに言うんだよ」

「はい、お父様」

と、話をしながらも、なぜ父は俺を抱っこしてるんだろうか……とりあえず、気にしないことにしよう。

「リーサは、本が好きなんだね」

「まだあまり難しいのは読めませんけど、色々なことが書いてあって楽しいです」

「他にも読んでみたい本があったら、買って上げるよ。書斎の本も、読めるようになったらいつでも読んで良いからね」

「はい、ありがとうございます」

ちょっと子供を甘やかしすぎなんじゃないか?なんて心配にはなるが、甘やかされているのはあくまで俺である。

欲しい物が手に入り、俺としてはとても助かっているので、俺の頭上に見える父親に向かい可愛く微笑んでみる。


 さて、折角父もいることだし、本を読んで気になった点を聞いてみよう。

「あの、精霊様が見える人は、いないのですか?」

「まだ物心がつく前の子供には見えることがある、という話は聞いたことがあるよ。成長しても見えるという例は聞いたことがないけれど、噂では森に住む人たちは、気配を感じ取ることが出来るらしい」

「森に住む人たち、ですか?」

「うん、森人族や獣人族の人達は森に住むことが多いから、そう呼ばれているんだ」

物心つく前の子供と森に住む一族……どうもよく分からない組み合わせだな。

俺が見える理由は不明のままだけど、とりあえず存在を感知出来る人はいるって事だろう。

森に住む一族か、何かヒントがあるかも知れないし一度会ってみたいな。


 しばらく考え込んでいたら、頭上から穏やかな寝息が聞こえてきた。

朝から力仕事を終えて、それ以降はずっと兄と遊んでいたので疲れたのだろう。今日も一日、お疲れ様でした。

俺は幸いにも本を読める姿勢なので、大人しくここで本を読んでいることしよう。

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