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精霊と魔法の在る生活  作者: 桐無
幼少期
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05話 蝶々に問い掛け

 怪我を治せる指輪……すごいとは思うけど、実験のために自傷行為はさすがにしたくないな。こんな異世界らしいアイテムを試せないのは残念だけど、仕方がない。


 しかし、精霊かぁ……。父も食事の前の挨拶で、精霊様の恵みがどうこうと言っていたのを覚えている。この世界では、精霊信仰が主流なのかな?


 そんなことを考えながら窓辺の方に行き、ぼんやりと外を眺めてみる。見渡す限りが自然で溢れており、雲一つ無い青空だ。空気は澄んでいて辺りには蝶々が沢山飛んでいる。

地面には地精霊様が漂っているが、浮かんでいなければただのトカゲにしか見えない。もっとも、サイズがそんなに大きいわけでもないので、浮いていなければ目視は出来なかっただろうけれど。


 この家は、街から外れた場所に建っているようだ。門扉からの一本道を除いたら、全体が森に囲まれている。庭の離れには馬小屋のようなものがあるので、きっと馬が街までの主な交通手段なのだろう。


 一本道は整地されているが、アスファルトのような近代的なものではない。どれだけ周囲を見回しても、日本であればほぼ必ず目にするであろう電柱も全く見当たらない。


 この道を辿っていくと、その先には父の働いている街があるのだろう。そこまで行くには、子供の足でどれくらい掛かるんだろうか。


 この世界を知るのに時間は沢山あるだろう。だから何も急ぐことはない。しかし当面の行動可能範囲は狭く、家の中と庭くらいのものだろう。


情報収集する方法は、両親やタニアさんとの会話くらいか。

いや、何か引っかかるような……? さっき地精霊様は「風の噂で」じゃなく「風"から"の噂で」って言っていた気がする。もしかすると、その辺りに風精霊様もいるのかもしれない。

『こんにちは。風精霊様は、いらっしゃいますかー?』


1匹の蝶々が側に寄ってきて、俺の眼前を優雅に舞っている。と、さっき地精霊様に話しかけられた時のように、また頭の中に直接声が響いてきた。

『あら、リーサちゃんから声を掛けてきたのは、随分久しぶりねー。しかも今回はこっちの言葉も、喋れるようになってるのね』

どうやら外を沢山飛んでいた蝶々が、風精霊様だったようだ。


『久しぶりというと、前にもこうしてお話したのでしょうか?』

『えぇ、お話というかお願い事かしら。あの時はまだ、人の言葉も喋れない頃だったかしらね。それでもちゃんと意思を持って、話しかけられたわよ』

『えっと、言葉が喋れない頃に、どうやってそれを聞き取ったのでしょうか』

『私たちは直接意思を読み取ってるから、強い意思が自分に向けられたら、ある程度の内容は伝わるのよ』

なるほど……それで、風精霊様に話しかけたのか。

『その時のことを覚えていないのですが、私は何をお願いしたのでしょうか』

『もう何年も前のことだけど、変わったお願いだったから、ちゃんと覚えてるわ。「強い光を当てないで」っていうね。それで、今もずっと当てないよう魔法を掛けているのよ』

言われてみれば、何かそんなことがあったような気もする。曖昧な記憶でしかないのだが。

『あれ? でもそれに、魔力は必要ないんですか?』

『最初から、ずっと貰ってるわよ。そうでなければ、私達は干渉できないもの』

『ずっと、ですか?』

『えぇ、常に光を当てないようにするには、貰い続けないといけないから』

つまり、生まれた頃からずっと魔力だだ漏れ?

そう言えば、地精霊様も普段から使ってるとか、言っていたな。

『そうでしたか。もし魔力が尽きたら、その時はどうなるんでしょうか』

『使う量次第だけど、ほんの少しの不足だったら魔力が回復するまで眠くなったり、意識を失うんくらいかしら。急激に消耗し過ぎた場合は、それによって死ぬこともあるみたいだけど』


 今までの寝起きの悪さとか、もしかしてこれが原因なのだろうか?

しかし、それならなぜ今は、こんなにはっきりと意識があるんだろう。さっきも指輪作成で魔力を消費しているはずなのに。

『あの、魔力がどれくらいあるかを調べる方法ってありますか?』

『普通の人には、難しいんじゃないかしら? 多分、方法はあると思うけれども。ごめんね、人の魔術には詳しくないのよ』

『いえ、色々教えてくれて、ありがとうございました』

『あら、お礼なんていいわよー。それじゃあリーサちゃん、またお話しましょうね』

そう言って、庭の方にひらひらと舞って行った。

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