04話 指輪の取得
拙い文章を読んでくれている人が居ることに感謝です。
リーシアは、魔法の指輪を手に入れた。
余りにもゲーム的な代物なので、ついそんな感じに表現してみたが……この指輪、どう考えてもサイズが合わない、親指ですらぶかぶかだ。
そして、それ以前の問題として、いきなり俺が指輪を持っていること自体、不自然すぎる気がする。
ある日突然、自分の子がよく分からない指輪を持っていたら、どう思うだろうか?
どう考えても怪しいはずだ。さて、どう説明したらいいかなぁ。
素直に説明……精霊様は他の人に見えていないようだから、素直に話しても変な子だと思われるだけだろう。これは無しだな。
貰い物、あるいは買った物と嘘をつく……まず、1人で家の外には出られない年齢だろうし、最近来客があったわけでもない。それなのに貰ったとか買ったとか、いくら何でもあり得なさすぎる。
そもそも貨幣価値やこの指輪の価値も、俺にはいまいち分からない。
俺にとっては十分非現実な世界ではあっても、あくまで現実なんだ。さすがにそこまで辻褄の合わない言い訳は出来ない。
もう少し現実的かもしれない方法で誤魔化すしかない。
俺の行動圏内から考えてみると、鉢の中に埋まってたとでもするか。または庭で拾った、くらいだろうか。
それでも多少不自然な気はするけど、他に上策も浮かばないので仕方ないと割り切ることにする。
そうと決まれば行動するのみ。まずはそれっぽく見えるように、指輪に泥を付けて……と。
よし上出来だ、これでそれらしく見えるぞ。後はこれを母に見せるのみだ。
「お母様、バンソの鉢にこんなものが埋まってました」
と、先程小細工をした指輪を母親に差し出す。
「あら、なにかしら?」
俺から指輪を受け取って、じっくりと眺めている。
「うーん、私のじゃないみたいね。タニアちゃんのかしら、ちょっと聞いてみましょう」
そう言って部屋から出たので俺も付いて行くと、食堂の掃除をしているタニアさんがいた。
「タニアちゃん、ちょっと良いかしら?」
「何でしょうか、奥様」
掃除を中断して、俺たちの方に向かってきた。
「この指輪がバンソの鉢に埋まってたみたいなんだけど、タニアちゃんの落とし物かと思ったのよ」
「指輪ですか? 私のではないと思いますよ。仕事中に指輪を付けることはありませんので。それに、沢山持っているわけでもありませんので、無くせばすぐ分かりますから」
タニアさんは、一応指輪を手に取って確認していたが、すぐに首を横に振った。
「そう、じゃあこの指輪は、土を取ってきた時に混じってたのね」
「あの土は、ここの庭から取ってきたものですよ。なので、もし以前この場所に住んでいた方の物だとすると、持ち主が誰か突き止めるのは難しいでしょう。少なくとも、私が知っている限りでは奥様達が初めてですから」
「そうよねぇ、私達が最初に来た時は、空き家だったものね」
この可能性を考慮していなかった。もし前の住人と簡単に連絡が取れる場合だったら、もっと面倒なことになっていたかもしれないんだ。
「じゃあ、第一発見者のリーサちゃんに上げちゃいましょうか。でも、まだリーサちゃんの指には大きすぎるわね」
「それなら、革紐で首から下げては如何ですか? 後々の長さ調整も簡単ですし」
「そうね、そうしましょうか」
よし、うまく行った。さすがに不自然すぎたし、途中はどうなることかと思ったけれど、疑り深い人達じゃなくて良かった。
「これで長さもぴったりね。うん、よく似合ってるわよ」
「ありがとうございます、お母様、タニアお姉ちゃん」
そんなこんなで俺の元に戻ってきたトカゲの指輪は、革紐を通して首から下げられることになった。
これでサイズを気にする必要もなくなったので、問題は完全に解決したようだ。